この論文は内燃機關の熱力學に於て次の諸項を考慮に入れる事を試みたものであつて之を空気噴油式ディーゼル機關の實驗結果に適用した報告である。a.動作ガスの比熱は温度及圧力の凾數である。b.燃焼の進渉、噴射用空気の噴込及吸込行程に於ける吸込作用の進渉によりて動作ガスの化學成分とモル數とが刻々變化する。c.燃料及噴射用空気の噴込によりて燃焼熱以外のエネルギがサイクルに供給せらる。d.燃料の燃焼熱は燃焼の始まる時の温度及モル數の變化を考慮に入れて補正するを要す。e.動作ガス中のCO_2及H_2Oは高温度部に於て熱解離を爲す。以上の考察の結果から動作ガスと気筒壁との間に起る熱交換の割合を量的に決定し從つて此の場合の全熱傳達係數αを算定し一方動作ガスの温度、圧力、化學成分及気筒室の形状及大さより輻射熱による熱傳達係數α_8を算定し更に對流による熱傳達數係をα_c=α-α_sなる關係より算出するを得た。このα_cは気筒内の渦流による所謂強制對流に依る熱傳達係數であるから之れを自然對流に依るものα_<cn>と比較してα_c/α_<cn>の値よりこの気筒内の渦流の消長を各行程に對して知るを得た。尚著者はサイクル供給熱量は常に等容眞發熱量に據りて之を算定すべき理由を明確に示し且つ效率比の基準となるべき標準理想サイクルの動作ガスとしては著者の所謂標準空気を採るべきであり其特性を擧げたのである。
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