本研究の目的は、2012年ロンドン大会を前に、研究者によって「予見」されていたレガシーを検討することで、オリンピック・レガシー「論」が抱える課題を明らかにすることである。主たる先行研究は、Vigor, A., Mean, M., and Tims, C. (2004)及び、Mangan, J. A & Dyreson, M. (2010)である。オリンピック大会のスポーティング・レガシーについては、以下の点が指摘されていた。一般的に大会開催は、財政とそれまでのスポーツの優先順位の変更をもたらす。その中で、競技団体や自治体はオリンピック開催に伴う各種政策に対応していく。そこで指摘されていたのは、(1)競技団体においては、強化と普及への努力の傾注と大会後の維持、(2)自治体、コミュ二ティでは、大会時点がゴールとなってしまい、その後のレガシー構築を正当化することの困難、そうであるが故に(3)ボトムアップ的なコミュニティレベルのスポーツ支援を引き下げるべきではないこと、であった。競技力強化と市民スポーツの振興との間で何をスポーティング・レガシーに設定するのかという論点が示唆されていた。
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