個々のユーザーにおける過去のコンテンツ視聴をもとに新たなコンテンツのレコメンドや付加サービスを提供するような,視聴データを利活用するコンテンツサービスが実施されている.このようなサービスでは視聴データの一部に含まれる個人情報の保護の観点から,視聴データの利活用により想定されるリスクをユーザー自身で理解することに留まらず,サービス提供者がそれを支援することが望ましい.すなわちテレビ受像機等から視聴データが収集される仕組みや当該データが持つ個人情報やセキュリティのリスクに関して,今後サービス提供者からユーザーに情報提供していく環境を整え,ユーザーに理解を促すことが安心して利用できるサービスの実現に繋がると考えられる.
本研究では視聴データを利活用するコンテンツサービスを検討するにあたり,視聴データおよびコンテンツサービスに対するユーザーの理解とリスク認知との関係性に関するアンケート調査を実施した.調査は回答者を情報システムおよび通信関係の業務に従事・関与している人(IT 系)とそうでない人(一般)に予め選別して行った.さらに視聴データ利活用を支援する手段として視聴データをユーザー自身が蓄積・運用する仕組みであるPDS(Personal Data Store)に着目し,PDSを用いて視聴データを利活用するコンテンツサービスを利用することを想定した場合のユーザーのリスク認知について調査した.これらの調査の結果,IT系には一般に比べ相対的に視聴データへの利用やリスクに理解を示す回答者が多く存在し,このうちコンテンツサービス利用を希望しPDSを使用希望する人に対して,プライバシーポリシーの理解を促していくことでポジティブなリスク認知の人が増える可能性があることが示唆された.
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