日本ストーマリハビリテーション研究会誌
Online ISSN : 2759-7458
Print ISSN : 0912-0408
2 巻, 2 号
通巻3号
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表紙・目次
原著
  • 前川 厚子
    1986 年2 巻2 号 p. 9-20
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     わが国におけるストーマリハビリテーション教育について,欧米諸国の現状と比較し検討した。教育内容,時間数,実習の形態などは,オストメイトの幅広い要求に応じるには,不十分である。ストーマリハビリテーションのゴールの達成のためには,欧米のようなETスクールを発足させ,臨床でETを活用していく必要がある。
     また,ET資格取得後のナーシング業務の分担,身分保障,技術料など法的制度的問題を含め,学会レベルで明示化していく必要がある。
  • 田村 泰三
    1986 年2 巻2 号 p. 21-24
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     日本におけるストーマ・セラピストの教育のあり方について検討した。既存の教育制度としてアメリカにおけるETスクールと日本で行われているストーマ・リハビリテーション講習会を対比しながら,日本の現状に則し,将来のストーマ・リハビリテーションの確立と発展のために有用な制度を考えてみた。多くの困難な問題をかかえる日本の医療制度のなかに,新しい制度を築くことは極めて困難なことであることも理解できるが,真に必要なことの遂行に消極的であってはならない。結論として,筆者はストーマ・リハビリテーション講習会に加えて,日本においてもETスクールをスタートさせる時期にあると考える。
  • 岡本 重禮, 永田 幹男, 貫井 文彦, 吉田 一成, 藤本 恭士
    1986 年2 巻2 号 p. 25-30
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
    目的・方法:骨盤内臓器の悪性腫瘍の根治手術を行なったオストメイトに勃起障害は避けられない合併症の一つである。勃起障害の手術法として陰茎プロステーシスを用いる手術が定着しつつある。ここでは勃起の生理,陰茎プロステーシス開発の歴史,勃起障害の成因と陰茎プロステーシス,特に,inflatable penile prosthesis植え込み術について記述する。
    成績:1977年以降プロステーシスの症例は,noninflatable penile prosthesis 73例,inflatable penile prosthesis 7例で,この内オストメイトに対して31例に行なった。
    結論:オストメイトの性機能障害の治療は社会復帰の上で重要で,適応を厳選することにより,良い結果が得られることを確信する。
  • 田澤 賢次, 坂本 隆, 永瀬 敏明, 笠木 徳三, 鈴木 康将, 新井 英樹, 藤巻 雅夫
    1986 年2 巻2 号 p. 31-36
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     1978 年に発表されたSchmidtらの自家遊離腸管平滑筋を用いるcontinent stoma についてその作成法について解説し,術後の臨床経過の概要について述べた。
     用いられた結腸遊離平滑筋は排便コントロールに有効に働き,腸管内圧測定においてもその移植部に高圧帯をBalloon法により認めることができた。Barium mealを用いた注腸結果により更に明らかであった。剖検例における移植平滑筋は明らかに生着し,組織学的にも変性および壊死像を認めることはなかった。
     患者の術後における排便の自制は夜間の便漏出もなく比較的良好な結果であった。なお,今後の長期followによる移植平滑筋の変化についても充分観察して行く予定である。
  • 佐藤 エキ子, 篠原 富士子, 柵瀬 信太郎, 西尾 剛毅, 牧野 永城
    1986 年2 巻2 号 p. 37-41
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     聖路加国際病院では1965年以来,洗腸法の適応を選択して,人工肛門造設術を受けた患者に対して洗腸法による排便のコントロールを指導している。今日,術後8年~20年間と長期間洗腸をしている患者に対し「社会生活における洗腸法の長所・短所」につきアンケート調査を行い,14例の回答を得た。その結果,40~50分の洗腸所要時間で78%の患者が漏便などなく,うまくコントロールされていた。これに伴い手術前と変わらず仕事をしている者が多く,ほとんどの者が「社会生活に自信をもって過ごしている」と答えていた。また長期間の洗腸による合併症は全くみられなかった。洗腸法は人工肛門造設後の排便コントロールのひとつの優れた手段と思われる。
  • 中西 知子, 竹本 富美江, 高田 秀子, 吉川 宣輝
    1986 年2 巻2 号 p. 43-48
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     過去,私逹は術前の不安を少しでも少なくするために,ストーマ造設を患者に告げることなく,手術を施行してきた時期がある。しかし,これらの人々の闘病生活や社会復帰への怠欲に対する障害の大きさを経験し,むしろ術前から患者の悩みを理解し,軽減する努力を計り,家族を含めて,接触・指導することの方がより効果的であることが分かり,現在はストーマに対する術前指導をおこなっている。今回このような指導を充実させ,患者およびその家族によく理解してもらう目的と,またスタッフ間の教育的効果も期待してプログラムを作成した。
     現在は,これを使用した指導をおこなっており,それによってストーマケアの受容が容易となったと考えている。今回はこのプログラムの内容について報告する。
  • 山中 祐治, 森田 隆幸, 森谷 洋, 仲地 広美智, 盛岡 元一郎, 今 充, 相馬 美香子, 葛西 恵美子, 大橋 くみ子
    1986 年2 巻2 号 p. 49-55
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     人工肛門に関するアンケート調査(厚生省特定疾患消化吸収障害調査研究班外科分科会)の結果をもとに,ストーマケアの現況と問題点について検討した。対象は1979年から1983年までの5年間に15施設で扱われた人工肛門造設例1794例(結腸瘻1650例,回腸瘻144例)で,それらの原疾患内訳の実態や各施設におけるストーマサイトマーキングの施行状況,造設手技,装具の選択・スキンケア・排便法などストーマケアに関する指導方針の現況が明らかにされた。また,社会復帰状況の評価やOstomy organizationについても貴重な意見が得られ,今後の課題として専任の医療従事者の必要性とその養成・雇用の問題が指摘された。
  • 臼杵 尚志, 小松原 正吉, 寺本 滋
    1986 年2 巻2 号 p. 57-60
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     腹直筋内人工肛門造設術にともなう開腹創と人工肛門の近接化は,創感染の危険性という問題を生じている。われわれはこの問題に対し,開腹創の位置を人工肛門近傍で3~4cm正中より偏位させる試みを行っている。
     従来の開腹創による手術30例に比較し,新しい開腹創による手術4例では,下記の結果が得られた。
    1)術中の視野,手技において,困難を訴えた術者,助手はいなかった。
    2)開腹創と人工肛門の距離は,平均2.3cm広くなった。
    3)2)により,術後早期(術直後)に装具を装着したままの状態でも,創の観察は容易であり,開腹創感染の危険性の減少も期待できる。
    4)ケアにあたる看護婦からは,「術後早期の装具装着上の操作が容易になった」と肯定意見が得られた。
事例報告
  • 工藤 アキ子, 反保 直美, 菊池 浩光
    1986 年2 巻2 号 p. 65-69
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     ストーマ造設予定の患者は不安や恐怖感を持っていることが多く,そのための精神的援助は不可欠なものとなってきている。
     当院では,患者の心理状態を把握し,ストーマ受容の段階に応じた個別的援助を実践するために,昭和60年2月よりストーマ造設予定患者に対して心理テスト(Y-G性格検査)を行っている。8症例にテストを実施,分析,検討し,援助を展開したところ,ストーマの受容とセルフケアが円滑にすすめられたことを確認した。心理テストはストーマケアに有用であったと考える。
  • 浪江 恵子, 大木 令子, 杉山 陽子, 高畑 佳子, 野田 和子
    1986 年2 巻2 号 p. 71-75
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     パウチの改良・普及はめざましい発展を遂げているが,いまだにパウチによる患者愁訴の日常生活への影響は大きい。
     1984年より,当科においてパウチの常用を必要とせず,より自然に近いKock式回腸膀胱術を施行し,多くの患者が社会復帰している。それらの患者の術後管理を3期に分け,観察点,自己管理のポイントを中心にそれらの検討を行い,本術式は日常生活の質的向上という点からもより優れた方法と考えられる。
  • 松本 生子, 五十嵐 藤子, 佐竹 純子, 講堂 のり子, 坂本 隆, 永瀬 敏明, 新井 英樹, 田澤 賢次
    1986 年2 巻2 号 p. 77-80
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     人工肛門造設術を受けた患者が,日常生活をおくる上で,“排便行為”は,生涯にわたり,大きな問題であろう。遊離腸管平滑筋移植術によるコンチネントストーマ造設患者13例の退院後の生活実態から以下のような知見を得た。1)コンチネントストーマ造設患者は,以前の生活に復帰でき,それを継続していくことができる。2)簡易洗腸注)は,コンチネントストーマ造設患者にとって,容易で,支障なく持続でき,従来の方法に比し,推奨できる。3)定期的洗腸法で,漏便もなく,コントロールできる。4)簡易洗腸法採用者には,スキントラブルがない。5)「漏便に対する不安」が存在するので食事指導,その他種々の配慮により不安解消に努める必要がある。
  • 藤原 順子, 久保 五月, 泉 智子, 小田 洋子, 金山 弘代, 小松原 正吉, 森安 浩子
    1986 年2 巻2 号 p. 81-85
    発行日: 1986年
    公開日: 2025/06/30
    ジャーナル フリー
     ストーマリハビリテーションを円滑に行っていくためには,個々の患者に応じた手術前からの看護介入が必要である。筆者らは患者がストーマ造設術を自己決定できるまでの過程と看護介入について,Finkの危機モデル(衝撃,防御的退行,承認,適応)の4段階をもとに一事例について考察を加えた。その結果ストーマ造設の告知を受けた患者への各段階における看護介入モデルを作成したので報告する。
地方会抄録(地域研究会記録)
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