日本サル6頭について,A-B誘導の部位を決定するため胸部体表面の心電図を記録し,波形と電位分布とを検討した。
心電図は麻酔下で,Wils-n単極誘導法によって体表57ヵ所から記録した。
1.零電位を示す移行帯は,左腋窩から左胸部にななめに下降するもの(4例)と,左腋窩から水平に走って正中線にいたり,正中線上を下降したのち右下胸部に向うもの(2例)とがみられた。
そして陰性電位の集約は移行帯上部の右胸部または正中線上にあった。また陽性電位の集約は,5例では剣状突起部の水平線上で,正中線より左側にみられたが,1例では剣状突起の右側にみられた。
2.QRS群の移行帯の波形はRS型で,移行帯上部ではrS型を示し,頭頸部に近づくにしたがってQSまたはQr型になった。また移行帯下部では,移行帯にそってRs型で,下胸部に行くにしたがって,Rs→R→qR型に変化した。
3.PおよびT波の移行帯は,左腋窩からななめに下降し,右乳頭付近を通って胸部の右側に向っていた。そして両者とも移行帯上では二相性波を示し,移行帯を境として上部では陰性波,下部では陽性波を示した。
4 サルの仰臥位におけるA-B誘導の電極位置は,A電極(心尖部)はおおむね剣状突起の水平線上で,正中線より左側,またB電極(心底部)は腋窩下部の水平線上で,正中線上または右胸部が適当と思われる。しかし仰臥位では心臓の位置および電位の分布にそれぞれ差異がみられ,A-B誘導の電極位置についてはさらに検討することが必要である。
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