農林水産省畜産局編集「家畜衛生統計」に記載されている家畜伝染病月別全国発生数を供試し, 発生数の推移および季節的 (月別) 変動について検討した。検討した期間は1950~1978年の29年間である。また, 検討した家畜伝染病は, 上記の期間連続して発生数が記載されていた10種の疾病, すなわち炭疽 (牛) , 気腫疽 (牛) , プルセラ病 (牛) , 結核病 (牛) , 馬伝染性貧血, 馬パラチフス, 豚丹毒, 豚コレラ, ひな白痢 (鶏) および腐蛆病である。ただし, 腐蛆病は1956~1978年の発生数である。
発生数は, 気腫疽と腐蛆病を除き, 1970年代にはいり, いずれも激減している。このことは, 近年, わが国における家畜の飼養管理および伝染病の予防防圧技術が向上したためと思われた。
1950, 1960および1970年代ごとに連環比率法で求めた月別発生指数から, 馬伝染性貧血, 豚丹毒およびひな白痢の発生数の季節的変動は, 1950と1960年代では大であった。しかし, 1970年代になると, この変動は小になっている。一方, 腐蛆病の季節変動も大であったがどの年代もほぼ同様である。このことは, 密蜂を除き, わが国の最近の畜産形態が, 白然から離れ, 人工的形態に変化してきたことを示すものと思われた。
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