日本語の深層格のバリエーションは研究者によって隔たりが大きく,これらの提示根拠がコーパスベースで分析されたものは少ない.本研究では助詞ガ,ヲ,デ,ノについてWeb日本語Nグラムコーパスに深層格情報を付与し,出現頻度を検証した.検証の結果,下記の結果が得られた.助詞ガで最頻度で出現する深層格は非対格自動詞主語(32%(TYPE; 以下同))と対象(27%)であり,動作主体は8%にすぎなかった.助詞ヲで出現する深層格は対象(非変化)であり,全体の8割を占め,対象(変化)を合わせると9割を超えた.出発点や経路はそれぞれ全体の0%であった.助詞デで出現する深層格はその他(51%)が最多で,次いで材料・手段(29%),行為の場所(11%)であった.助詞ノで出現する深層格は限定・修飾(47%)が多く,所有は3%にすぎなかった.本研究によって導かれる結果には,Webコーパスの特性の影響が否めないが,深層格の偏りをコーパスベースで検証したことは言語研究上意義があると言える.
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