計量国語学
Online ISSN : 2433-0302
Print ISSN : 0453-4611
特集号: 計量国語学
31 巻, 2 号
文法と計量研究
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集 文法と計量研究
巻頭言
特集論文A
  • 「あつめる」と「くらう」との比較を中心に
    小山田 由紀
    原稿種別: 特集論文A
    2017 年 31 巻 2 号 p. 84-98
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,受動態に関わる機能動詞について考察するものである.これらの機能動詞は,一様に同じ働きを担っているわけではなく,それぞれに特徴があると考えられる.そこで,辞典の記述やコーパスの調査によって,機能動詞の特性の違いを明らかにすることを試みた.まず概念的な考察によって機能動詞の特性を捉え,さらに,その結果を踏まえて,計量的な考察を行った.計量的な考察においては,出現分野からみた機能動詞の分布・機能動詞の名詞部分・機能動詞結合主格と能動主体との組み合わせという3 つの観点が有用である.以上の考察から,受動のタイプ,名詞部分の特徴,文体や評価極性など,機能動詞の特性の違いが明らかになった.
特集・招待論文B
  • コーパス頻度調査に基づく用法記述の精緻化と認知的意味拡張モデルの検証
    石川 慎一郎
    原稿種別: 特集・招待論文B
    2017 年 31 巻 2 号 p. 99-115
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
    格助詞「デ」の意味役割については多くの研究がなされているが,量的アプローチを組み込んだものは必ずしも多くない.本研究は,現代日本語書き言葉均衡コーパスの7ジャンルから収集した700用例に対して24種の意味役割のコーディングを行い,個々の意味役割に関して,(1)具体的特性,(2)頻度的階層性,(3)内部分類,(4)プロトタイプからの距離の4点を調査した.その結果,(1')個々の意味役割は特定の名詞群によって具現化されており,(2')時空間系が最も高頻度で手段・付帯状況系がそれに次ぎ,(3')中核グループ(場所・手段・理由・様態)とその他のグループに大別され,(4’)プロトタイプとされる場所格との距離は先行研究の言う意味拡張モデルとある程度合致していることが示された.
  • 李 在鎬, 長谷部 陽一郎
    原稿種別: 特集・招待論文B
    2017 年 31 巻 2 号 p. 116-127
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
    N-gramモデルを利用した文法項目の抽出と検証を行った.単語N-gramを利用した表現抽出によって,文法項目ないしは機能表現を効率的に獲得できることを示した.まず,日本語教育的観点からコーパス研究と文法研究を整理し,学習者コーパスに対する計量的な分析を行うことは,学習者言語の全体像を把握できる点で意味があることを指摘した.次に,李・佐々木(2015)のコロケーション表現リストを精査し,機能表現リスト(560項目)を構築した.そして,この機能表現の妥当性を検証する目的で,「YNU書き言葉コーパス」に対する使用頻度の分析を行った.分析の結果,学習者の習熟度が上がっていくにつれ,中級レベルの機能表現が増える傾向であることが明らかになった.
特集論文B
  • 劉 雪琴, 金 明哲
    原稿種別: 特集・論文B
    2017 年 31 巻 2 号 p. 128-143
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,宇野浩二の病気前後の作品を対象とし,漢字・仮名の使用率,語彙量,形態素の使用率,タグのn-gram(n=1,2),文節パターン,読点の打ち方の文体特徴量について,対応分析,統計的仮説検定の方法を用いて分析を行った.その結果,宇野浩二の病気前後の作品にはいくつかの異なる特徴があることを明らかにした.病後の作品では,漢字の使用率が増加し,語彙がやや豊富になったが,これは名詞の使用率の増加が主な原因であることがわかった.名詞の増加によって,文体が口語体からフォーマルな書き言葉になり,読点の多用が饒舌さと流暢さの喪失に影響を与えているとの所見が得られた.これらが,宇野浩二の病後の文体が変化したという印象を読者に与えた主な原因であると考えられる.また,病前に書いた「日曜日」という作品が病後の作品と類似した特徴を示していることから,入院する前に宇野浩二の文体は既に変化し始めていた可能性があることが示唆される.
  • 小・中理科教科書を対象として
    新井 庭子, 分寺 杏介, 石原 侑樹, 松崎 拓也, 影浦 峡
    原稿種別: 特集・論文B
    2017 年 31 巻 2 号 p. 144-159
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,小学校と中学校の理科教科書を対象に,語彙と構文の観点からテキストの複雑さを構成するパラメータを予測し,小・中間でそのパラメータで表現できるギャップがあることを示す.中学校に適応できないいわゆる小・中ギャップは,生活面と学習面から研究されてきたが,教科書等の教材のテキストの相違がもたらすギャップに着目した研究はない.本研究はこの点を背景に,テキストの表現形式に具体的にどのような差があるのかを,小・中ギャップに関連する段階の教科書を対象に明らかにするものである.分析の結果,小・中の教科書には特に係り受け関係の複雑さに顕著な差があることが明らかになった.
一般投稿
論文A
  • 仁科 喜久子, 八木 豊, ホドシチェック ボル, 阿辺川 武
    原稿種別: 論文A
    2017 年 31 巻 2 号 p. 160-176
    発行日: 2017/09/20
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル オープンアクセス
    We aim to construct an academic writing assistance system for learners of Japanese as a second language who are tasked with writing academic papers and reports during the course of their studies. We propose to provide suggestions for rewriting inappropriate expressions within learner compositions using a dictionary and a method of comparing learner composition text data to authentic corpus data. From among many possible language elements, this paper focuses on defining connective expressions and the construction of a connectives expression dictionary. Beginning with a definition of connectives based on their role in text, we select 568 connective expressions using a combination of manual selection and automated extraction, and demonstrate the importance of the automatic approach as well as its weaknesses. Next, we manually annotate the connective expressions with ratings on their suitability to be used in the academic register. Finally, we show the possibilities of the resulting connectives dictionary in providing guidance to learners in the appropriate selection of connective expressions within the academic register.
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