計量国語学
Online ISSN : 2433-0302
Print ISSN : 0453-4611
特集号: 計量国語学
33 巻, 7 号
2022年度テーマ特集 文体,ジャンルの特徴をとらえる計量研究
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
2022 年度テーマ特集 文体,ジャンルの特徴をとらえる計量研究
  • 山崎 誠
    原稿種別: 巻頭言
    2022 年 33 巻 7 号 p. 421
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • 「まとめて検索KOTONOHA」を利用して
    中俣 尚己
    原稿種別: 特集・招待論文A
    2022 年 33 巻 7 号 p. 422-434
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録
    この論文では,「中納言」の包括的検索システムである「まとめて検索KOTONOHA」を利用し,話し言葉5ジャンル,書き言葉5ジャンルにおける並列を表す接続詞の出現状況を分析した.結果に対し,主成分分析を行うことで10ジャンルの関係を可視化するとともに,各接続詞の特性についても分析した.  分析の結果,ジャンルは4つのクラスターに分けられ,「職場談話」と「模擬講演」,「名大会話コーパス」と「日本語日常会話コーパス」が近い文体的特徴を持つことがわかった.また,「学会講演」は「新聞」「国会会議録」と同じクラスターに入る.さらに,4つのクラスターに特徴的な接続詞のグループは,接続詞を意味・用法の観点から分析した先行研究における分類と対応することが確認された.
  • 『語の文体値データ』を利用した「文章の文体」の推定
    馬場 俊臣
    原稿種別: 特集・招待論文A
    2022 年 33 巻 7 号 p. 435-450
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,まず,多数の語の文体(書き言葉的な硬い文体-話し言葉的な軟らかい文体)の程度差を連続的な数値で示している『語の文体値データ』の概要を紹介した.次に,このデータの活用例として,「語の文体」に基づいて「文章の文体」を,「文章文体値」という数値を用いて推定することを試みた.推定に用いた文章は,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』のコアデータであり,各レジスターの文体的特徴を再現することができた.これを通して,『語の文体値データ』及び「文章文体値」が文体研究に有効に使えるデータであること,また,「語の文体」と「文章の文体」との相互依存関係を計量的手法により実証的に分析可能であることを示した.
  • 小林 雄一郎, 岡﨑 友子
    原稿種別: 特集・招待論文A
    2022 年 33 巻 7 号 p. 451-465
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,日本語歴史コーパスに収録された奈良時代から大正時代までのテキストを用いて,指示代名詞の通時的分析を行うものである.指示代名詞の形態は時代によって若干異なるため,系列別(コ系列,ソ系列,カ系列,ア系列),型別(ゼロ型,ノ型,レ型,コ型,ナタ型,チ型)の分類に基づく分析を行った.具体的には,系列別・型別に集計された頻度に対してLOESS平滑化を実行することで,指示代名詞の使用傾向の経年変化を調査した.そして,(1)指示代名詞の総数が増加していくこと,(2)ソ系列は増加傾向を示し,コ系列とア系列は1700〜1800年代に多く,カ系列は緩やかに減少したあとで再び増加すること,(3)ゼロ型は減少傾向,レ型は増加傾向を示し,ノ型は1700年以降に増加し,他の3つの型はいったん増加したあとで減少すること,などを明らかにした.
  • ブログとTwitterを例に
    岸本 千秋
    原稿種別: 特集・招待論文A
    2022 年 33 巻 7 号 p. 466-480
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    ブログとTwitterを対象として文体の特徴を明らかにした.ブログについては,品詞比率,語種比率の結果から,きわめて話しことば的であることを確認した.Twitterについては,品詞比率からは書きことばに近いととらえられるが,これは,字数制限が影響しているとの解釈が妥当であるとした.Twitterの語種比率では,和語の値が高く,話しことば的な俗語,書き手の感情や状況を強調して表す語,物事に対する評価などを表す語が上位にランクインした.また,ウェブ記号が文体にどのような影響を及ぼすかについて,ウェブ記号がある文とない文との品詞比率の差をロジット変換によって再表現した結果,ブログもTwitterも,ウェブ記号がある文は形容動詞・感動詞について,ウェブ記号がない文は,連体詞・接続詞についてより大きく評価された.
  • 文末表現についての計量的な検討
    土山 玄
    原稿種別: 特集・招待論文A
    2022 年 33 巻 7 号 p. 481-492
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,夏目漱石の小説において,出現傾向が継時的に変化する文体的特徴を明らかにすることである.夏目漱石は1905年から1916年まで作家として活動しており,本研究ではその間に発表された23作品を分析対象として採り上げた.ただし,会話文や書簡文は分析から除き,地の文のみを対象とした.分析ではランダムフォレスト,主成分分析,線形回帰分析を行った.その結果,文末表現が継時的に変化していることを明らかにした.特に,文末に用いられる助動詞の「た」は増加傾向にあることを示した.
  • MVRと品詞構成率の心理学的検討
    井関 龍太, 菊池 理紗, 望月 正哉, 福田 由紀, 石黒 圭
    原稿種別: 特集・論文A
    2022 年 33 巻 7 号 p. 493-509
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    日本語の文章の文体特徴を品詞構成の観点から計量化した指標としてMVR(Modifier-Verb Ratio)が広く用いられている.このような指標によって捉えられた特徴は,読者が文章を読んで抱く印象とどのように関わるのだろうか.本研究では,MVRおよび品詞構成率と主観的印象との関係を質問紙調査によって検討した.マルチレベルモデルによる分析の結果,名詞率と動詞率は登場人物や場面のイメージしやすさの印象に負の影響を及ぼすが,形容詞・副詞類の割合はイメージしやすさに寄与しなかった.文ごとの品詞構成率を説明変数とすることによって品詞間の交互作用が明らかになり,形容詞・副詞類が多いほどイメージが浮かびやすくなるのは特定の品詞構成の組み合わせが成立した特殊な場合であることが示唆された.一方,展開の早さの印象については,本研究で扱った範囲では有望な説明変数を見出せなかった.品詞構成と文体の印象との関係について考察し,文ごとの品詞構成に着目することの意義,分析概念の再考について論じた.
  • 叙述語を指標に
    大川 孔明
    原稿種別: 特集・招待論文B
    2022 年 33 巻 7 号 p. 510-525
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,叙述語を指標に,コレスポンデンス分析,クラスター分析を用いて鎌倉時代の和文作品,並びに和漢混淆文の一種とされる軍記物作品の文体が類型的にどのように位置づけられるのかについて,大川(2020)の結果との比較から考察した.その結果,鎌倉和文は紀行文和歌集型と強紀行文和歌集-和文体型に分けられ,さらに大川(2020)にて強紀行文和歌集型とされた『海道記』は強紀行文和歌集-漢文訓読文寄りの文体型に位置づけられること,軍記物は物語日記-漢文訓読文寄りの文体型に位置づけられ,『今昔物語集』などの作品と,和漢の文体対立から見たときにも,ジャンル文体から見たときにも概ね同様の文体的特徴を有することが明らかとなった.
  • 李 文平, 劉 海濤, 呉 長紅
    原稿種別: 特集・論文B
    2022 年 33 巻 7 号 p. 526-540
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では芥川龍之介の児童文学の文体的特徴を分析するために,芥川の児童文学8作品を対象に語彙の難易度,語彙の豊富さ,統語複雑度,平均文長を計量的に分析した.その結果,次の3点が明らかになった.第一に,芥川の成人文学に使われている語彙に比べて,芥川の児童文学に使われている語彙はより簡単であり,語彙の種類もより少ないことが明らかになった.第二に,彼の児童文学において統語複雑度は成人文学より低く,平均文長も短いことがわかった.第三に,芥川の児童文学の文体的特徴は一般の児童文学の文体的特徴をある程度反映していることが明らかになった.このことから,芥川の成人文学に比べて児童文学は読みやすいことが示唆された.これは彼が自らの子ども,親せきの子ども,主治医の子どもを直接の読者に想定して児童文学を創作したことによるものであると考えられる.
  • 伊藤雅光氏の研究手法を用いた卒業論文の紹介
    丸山 直子
    原稿種別: 特集・招待論文・文献紹介
    2022 年 33 巻 7 号 p. 541-545
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
一般論文
  • 堀 恵子
    原稿種別: 解説
    2022 年 33 巻 7 号 p. 546-556
    発行日: 2022/12/20
    公開日: 2023/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    質的データを分析する際に,クロス集計表の形で示すことは,どのような手順で分析を行ったかを明確に示すために重要である.本稿ではクロス集計表に関わる用語を紹介した上で,条件とカテゴリー数の異なるクロス集計表について,検定法を示した.クロス集計表の種類は,2条件(対応がある場合,対応がない場合),対応のないi×j表を取り上げた. また,カイ二乗検定を適用することが不適切となる場合の対応法として,⑴各セルのデータ数を一定数以上とするためにデータ数を増やすこと,⑵フィッシャーの正確確率検定を利用すること,を取り上げ,カテゴリーの合併の弊害についても述べた.
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