計量国語学
Online ISSN : 2433-0302
Print ISSN : 0453-4611
特集号: 計量国語学
33 巻, 3 号
2021年度テーマ特集 新しい計量的語彙研究
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
2021年度テーマ特集 新しい計量的語彙研究
  • 山崎 誠
    2021 年33 巻3 号 p. 113
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • 翻訳文へのMenzerath–Altmannの法則の適用
    真田 治子
    原稿種別: 2021年度特集・招待論文A
    2021 年33 巻3 号 p. 114-129
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    文が内包する言語的要素の長さの均衡の様相を知るために,海外の計量言語学で研究に多用されているMenzerath – Altmannの法則(MAL)の手法を用いて調査を行った.『星の王子さま』の日本語訳2版を資料として,節の数で数えた文の長さと,その構成要素である節を形態素の個数や文字数で計って関数とし,MALの方程式を用いて回帰分析を行った.Altmannが述べている通り,翻訳文においても文と節との関係は減少関数が得られた.2つの版の回帰曲線は互いに似た傾向が見られた.一方で,分布している実データには減少関数から逸脱した箇所があり,添加や説明,挿入句,心内会話等を1文に盛り込んでいる例が見られた.これらは日本語らしい長さの均衡を意図的に崩し,表現上の効果を狙ったものと考えられる.
  • 国調査のデータを活用した福祉言語学的考察
    久屋 愛実
    原稿種別: 2021年度特集・招待論文A
    2021 年33 巻3 号 p. 130-145
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は,英語由来の語彙(外来語)が公共コミュニケーションにおいてどのように運用されるべきか,福祉言語学の視点から論じる.そのために,ロジスティック回帰分析を援用して,これまでに蓄積されてきた外来語に関する全国調査のデータを統合し,新たな視点からの検討を行う.分析の結果,(1)音訳借用語を使うことに関する意識(音訳借用語に対する「選好度」)は一般市民と自治体職員の間で異なること,(2)一般市民の音訳借用語の「理解度」は当該語彙に対する「選好度」とは必ずしも一致しないことが確認された.これらの結果から,公共コミュニケーションの実践において情報発信者側が上記のデータを解釈・活用する際に留意すべき点について考察した
  • 今田 水穂
    原稿種別: 2021年度特集・招待論文A
    2021 年33 巻3 号 p. 146-161
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    児童作文を用いて,24種類の語彙多様性指標の信頼性を調べた.語彙多様性指標は延べ語数と無相関であることが望ましいが,児童作文の場合は著者の作文能力に応じて語彙多様性と延べ語数の間に相関が見られるため,集団全体で指標値と延べ語数が無相関であることは指標の信頼性の根拠にならない.そのため,同一作文中において累積的に指標値を測定し,その変動の小ささをLMMで評価した.また,指標値の分布の形状を指定するパラメータを用いる3種類の指標について,LMMでパラメータを決定する補正を試みた.この結果,Simpson指数,実測的手法,LMMで補正した指標で比較的よい結果が得られた.これらの指標について著者の学年,および教員による作文評価(語彙評価)との関係を調べ,学年が上がるほど語彙多様性が増大すること,教員の評価において語彙多様性はそれほど重視されていないことを確認した.
  • 計量語彙論のための標本抽出法を中心に
    菅野 倫匡, 菊池 そのみ
    原稿種別: 2021年度特集・論文A
    2021 年33 巻3 号 p. 162-177
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    計量語彙論においては品詞の構成比率に着目した研究が進められてきた.しかし,品詞の構成比率は算出方法によって異なるものであるにも拘わらず,それによってどの程度の差が生ずるかという点は顧みられてこなかった.この点について本稿は和歌を対象として言語単位の問題,本文の問題,標本抽出の問題の3つの側面から実証的に検討するものである.まず,2つの言語単位を用いて品詞の構成比率を比較すると両者の間に無視し難い差が見られた.次に同一の和歌集の2つの本文を用いて比較すると両者の間に大きな差は認められなかった.続いて標本調査の結果と全数調査の結果とを比較すると統計的な誤差は見られるものの結論を揺るがすような差は認められなかった.更に標本調査の結果から和歌集全体の品詞の構成比率を推定する際には集落抽出法によって和歌を抽出する方法が単純無作為抽出法によって語を抽出する方法に比して精度の面で優ることが示された.
  • 加藤 祥, 浅原 正幸
    原稿種別: 2021年度特集・招待論文B
    2021 年33 巻3 号 p. 178-193
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    用例中の多義語の語義が,一般的な読み手によってどのように認定される傾向にあるのか,印象評定を用いた調査を試みた.計算機用日本語基本辞書IPALに含まれる用言(形容詞・形容動詞・最重要動詞,計530語)全文型の例文(5,125例)に対し,文や用法に関する読み手の印象評定,分類語彙表番号と山崎・柏野(2017)の代表義情報を付与した.多義語の語義における代表義と印象評定を対照し,代表義の印象傾向を分析した.また,各用例の代表義を算出することで,見出し語における読み手が典型的と考える用例を抽出した.読み手の印象評定傾向から,助詞をはじめとする周辺語彙の差異により想起される文脈が異なること,文脈情報が用例の意味認定に関わる可能性を考察する.
  • 中俣 尚己, 小口 悠紀子, 小西 円, 建石 始, 堀内 仁
    原稿種別: 2021年度特集・研究資料
    2021 年33 巻3 号 p. 194-204
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では会話コーパスを基に作成した『話題別日本語語彙表』についてその作成方法と利用方法を解説する.本語彙表を作るために,まず「名大会話コーパス」を複数の作業者で目視し,話題ごとにサブコーパスに分割した.次に,サブコーパスごとに対数尤度比を計算し,列に97の話題,行に3,324語を並べたエクセル形式の表を作り上げた.『話題別日本語語彙表』は「話題から語」,「語から話題」の2方向で日本語教育の現場で活用できる.前者ではその話題でよく使われている語をリストアップすることができ,機能語や言語行動なども見つけることができる.後者では類義語がそれぞれに使われている話題が違うことに気づいたり,機能語にも使用される話題に偏りがあることを知ることができる.
一般論文
  • 中俣 尚己
    原稿種別: 解説
    2021 年33 巻3 号 p. 205-213
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    数値データを比率を用いて表すことは広く行われているが,それゆえに不適切な利用も目立つ.本稿では比率をパーセントで表示する意義とその際の注意点についてまとめた. まず,パーセントを内訳として使用する際には,100を超えるデータの情報を圧縮して示しているということに留意が必要である.非常に少ないデータをパーセントで表示したり,小数点以下の値を細かく記述することは不適切な利用である.また,比率を用いて異なる母数のデータを比較するときは何に対する比率であるかを意識することが重要である.パーセント表示された値の差はパーセントポイントという単位を使って示さなければならない.また,パーセント以外の比率の単位も存在する.コーパス言語学で用いられるpmwという単位についても紹介した.
  • 2021年9月9日~11日,於オンライン
    真田 治子
    原稿種別: 学会参加報告
    2021 年33 巻3 号 p. 214-218
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/12/20
    ジャーナル オープンアクセス
    International Conference 2021 (QUALICO 2021) was held online from September 9 to 11 2021. The conference was supported by The International Quantitative Linguistics Association (IQLA), National Institute for Japanese Language and Linguistics (NINJAL), and Center for Corpus Development, NINJAL. It was originally planned to be held in September 2020 and then was postponed for a year because of COVID-19. It was the first conference hosted in Asia and also the first one held online for QUALICO. Two keynote lecturers were invited, and 39 papers as talks and 20 papers for a poster session were presented. Of 117 participants, 71 were presenters, and 44 were students. Participants joined from 26 countries and regions, i.e., EU counties, Russia, Canada, U.S.A., the Republic of South Africa, China, Taiwan, and Japan. Many papers focused on classical or fundamental topics such as linguistics laws, e.g., Zipf" law, Menzerath-Altmann" law, Synergetic Linguistics, or valency theory. Other papers also focused on the applied topics like the authorship attribution, comparative language studies, or studies using corpora. IQLA Council Business Meeting was also held, and new board members were selected. The next conference is planned to be organized in Europe in 2023 or 2024. A call for papers for the next conference will be announced on the IQLA website.
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