ネットワークポリマー論文集
Online ISSN : 2434-2149
Print ISSN : 2433-3786
特集号: ネットワークポリマー論文集
39 巻, 1 号
ウレタン樹脂の新展開-基礎と応用-
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 古川 睦久
    2018 年 39 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2018/01/10
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    ポリウレタンは狭義にはウレタン基を含有するポリマーの総称であり,広義にはイソシネートから生成される官能基を含むポリマーのことである。今日では,工業材料,医用材料,農業・水産業材料から家庭生活材料までポリウレタンが使用されないところはなく,我々の生活に不可欠な材料となっている。このポリウレタンが I.G.Farben(後のBayer 社)のOtto Bayer らのグループにより発明されて80 年を迎え,日本にポリエステル系フォームの製造技術が導入されて市場に出されて還暦を過ぎた。本稿ではポリウレタン開発と日本へ導入の歴史をながめるとともに,1970 年からの日本でのポリウレタンの発展の流れを概観する。

  • 山崎 聡
    原稿種別: 総説
    2018 年 39 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2018/01/10
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    ポリウレタン(PU)は,化学的な意味で,ウレタン結合を有する高分子化合物と定義されているが,工業的に,多くのPU は,ウレタンのみならず,ウレアなどの分子凝集力が高い化学結合から構成されている。それゆえ,広義には,それらの結合を形成する「イソシアネートから誘導される高分子」と定義されている。一般的に,PU の製造プロセスおよび生産性は,イソシアネートの化学構造により大きく影響される。さらに,PU の物理的性質を広く制御するために,多種多様な化学構造のポリオールが使用されている。そのため,PU の製造プロセス,成形加工法および用途も多岐に渡っている。PU は,マスプロダクトの汎用性をもつ反面,少量多品種の高い機能が求められるファインケミカルの側面があるため,絶えず高機能化や環境対応のための研究開発が行われている。本稿では,まず,イソシアネートおよびポリオールの化学について,概説した後,PU の製造プロセスおよびその原材料の特徴ならびにそれらの最近の進歩について,紹介する。

  • 古川 睦久
    2018 年 39 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2018/01/10
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    ポリウレタンは最も汎用されている極性高分子材料の一つであり,イソシアネート,ポリオール,水酸基やジアミン等の活性水素をもつ硬化剤から合成される。これは原料の化学構造と配合を変えて反応させることにより物性を自由に設計することができるためである。しかしながら,得られたポリウレタンの化学構造と高次構造すなわち凝集構造は複雑となるが,物性と凝集構造の関係は“ミクロ相分離”,“相混合”の便利な言葉で説明されるのみである。ここでは,セグメント化ポリウレタンの凝集構造と物性の関係の研究の現状とこれらの凝集構造の可視化について考える。

  • 井戸 博章, 木南 冴子
    原稿種別: 総説
    2018 年 39 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2018/01/10
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    1997 年に世界初の量産ハイブリッド車が市場に登場して以来,プラグインハイブリッド車や電気自動車(EV)を含めた次世代自動車の販売台数が世界で増加を続けており,温室効果ガス削減や大気汚染対策の観点からもこの動きは継続するものと思われる。次世代自動車のさらなる増加が予想される中,航続距離拡大の観点からバッテリーの有効利用の重要性が増している。バッテリー消費の主な原因の一つとしてエアコン負荷が挙げられる。 これを改善するため,車室内温度を早く目標温度に到達させ,目標温度の維持に必要なエアコン負荷を下げる自動車内の熱マネジメントが注目されている。本稿は冬場の暖房負荷を例にとり,車室内部品に求められる性能とは何か,金属および他樹脂と比較した場合のポリウレタン樹脂の優れた特性とは何か,そしてポリウレタンを使用した場合のEV のバッテリー消費量への影響度推算について報告する。ポリウレタンを車室内部品として使用することで,熱マネジメントの観点からバッテリーの消費量を抑え,電気自動車の航続距離を向上させる可能性があることを示す。

  • 野崎 千代志, 根本 太一
    原稿種別: 総説
    2018 年 39 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2018/01/10
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    リコーは,定着性と発色性に優れるポリエステル樹脂を用いたトナーを主に開発しており,2003 年からPxP トナーと呼ばれるケミカルトナーを製造している。本報告では,PxP トナーのエステル伸長重合法のメリットとその反応解析について紹介する。

  • 和田 浩志, 佐々木 孝之
    2018 年 39 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2018/01/10
    公開日: 2019/07/17
    ジャーナル フリー

    1937 年にドイツIG・ファルベン社のOtto Bayer 博士らによって開発されたポリウレタンは,優れた特性と取扱いの容易さから,1950 年以降,工業的に広く用いられるようになった。日本では,新しく開発されたポリウレタンが建築/土木分野の進化をサポートしており,特に防水材・断熱材用途が大きく伸長している。1966年に登場した防水材向けのポリウレタンは,塗布により2 mm 以上の厚みを持つ防水層を形成できるため,従来の薄い塗膜の塗料に比べて信頼性が大きく向上し,広く普及している1)。また,断熱材向けポリウレタンに関しては,断熱性能の向上が課題であったが,1987 年に発泡剤として使用するクロロフルオロカーボン(CFC)によるオゾン層破壊問題がクローズアップされて以降は,断熱性能の向上と共に環境への配慮も大きな課題となっている。高度成長が止まった最近の日本では,建築/土木分野のポリウレタンにも性能向上と環境配慮に加え,高度成長時代に建設された社会インフラの長寿命化も課題に挙げられている。建築/土木分野では,各国の風土に合わせた製品規格が適応される場合が多く,今回は対象を日本市場に絞って,これらの課題に対応するために開発されているポリウレタンの技術動向についてまとめた。

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