日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 斎藤 美紀, 櫻井 美保子, 高橋 美香, 相場 梨恵, 岩崎 諭子, 宇佐美 幸子, 齋藤 ミヨ子, 小坂 百合子, 鈴木 恵美子, 鎌田 ...
    セッションID: 2C09
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    内視鏡的逆行性膵胆管造影(以下ERCPとする)は、当科では年間約70例行われている。ERCPは通常の胃内視鏡検査とは異なり、体位等、患者の協力が必要であるが、スムーズに行えないことが多く、口頭説明だけではイメージ出来ていない事が原因と考えた。そこで、従来のERCPの検査説明における不足部分をアンケート調査で明確にし、新たにパンフレットとビデオを作製し、オリエンテーションを行った。アンケートは一昨年度当科にてERCPを受けた患者36名対し、アンケート用紙を郵送し、返信してもらい、単純集計した。23名より有効回答が得られ、男性13名、女性9名、無記入1名、平均年齢は58.6歳であった。どのような検査であるか分かったか、の問いには分かった74%、分からなかった17%、看護師からERCPについて受けた説明は、食事、水分摂取91%、点滴65%、安静時間48%などであった。分からなかった理由として、説明内容が難しかった、言葉だけの説明では分かりにくかった、看護師自体が内容を良く知らないのでは、などの意見があった。あらかじめ知っておきたかった事は、検査時の体位について、痛みについて、検査時間についてなどであった。これらの結果からビデオを活用したオリエンテーションを行う事とし、オリジナルビデオとパンフレットを作製した。ビデオは病態生理からERCP終了までの一連の流れを撮影し、医師、看護師、患者役は当科のスタッフが出演し、ナレーションで説明を入れた。パンフレットはビデオ内容を補足説明した5ページの小冊子とした。オリエンテーションはERCP前日に行い、看護師が終了後に患者から感想を聞き、質問がないか確認した。パンフレットは検査終了まで患者の手元に置くようにした。ビデオ放映後の感想としては、体の向き方のイメージが出来た、造影剤をいつ入れているのか分からない、患者役が苦しそうでないので楽な検査のように思った、などの意見があった。新たなオリエンテーション後の聞き取り調査では8名中全員が分かったと答えた。 従来の説明は食事、水分摂取時間、安静時間を記載した用紙を用い、検査の必要性や、手順の説明は明記されたものがなく、説明内容も看護師間で違いがあった。ビデオで視覚に訴え、パンフレットにより復習することで検査に対する理解と、イメージ化が出来たものと考える。また、患者の評価から、ビデオが実際の検査時間より短い事、造影剤注入の場面など、ビデオに取り込めなかった部分の補足説明の仕方や、検査に携わる医師からの評価を確認し、更に効果的なオリエンテーションを行っていくことが今後の課題である。
  • 大島 和佳子, 村山 正樹, 加藤 崇, 佐藤 舞子, 島 健二, 長谷川 伸, 倉持 元, 佐藤 宗広, 武井 伸一, 五十川 修
    セッションID: 2C10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <症例>36歳、男性、会社員。
    <主訴>食欲不振、全身倦怠感。
    <生活歴>ビール2-3ℓ/日、日本酒2-3合/日、喫煙7本/日。
    <現病歴>常習飲酒家であったが、3月下旬頃よりアルコール摂取量が増えた。平成17年4月17日より39.0℃の発熱、悪心、嘔吐、咳、食欲不振、全身倦怠感、下痢が出現し、市販薬を服用。19日、近医受診にて点滴および内服処方を受け帰宅。帰宅後、暗赤色したものを嘔吐、黒色水様便が出現。症状の改善がなかったため、4月20日当院内科受診。
    <入院時現象>身長178.0cm、体重68.0kg、血圧90/50mmHg、体温36.7℃、脈拍93/min 整。口渇あり、眼瞼結膜に軽度の貧血および眼球結膜に黄染を認めた。頸部表在リンパ節触知せず。心音、呼吸音は異常なし。腹部所見では、上腹部に圧痛を認めるも腫瘤触知せず。浮腫なし。神経学的所見では、意識レベルは軽度の混濁と羽ばたき振戦を認めた。
    <入院時検査成績>肝機能検査成績では、T-Bil 4.72mg/dl、AST 11,258IU/L、ALT 2,313IU/L、ALP 517IU/L、LDH 2,512IU/L、γ-GTP 965IU/L、LAP 992IU/L、CK 965IU/L、NH3 119μg/dlと高値。腎機能検査成績ではBUN 52.3mg/dl、CRE 5.84mg/dl、UA 13.8mg/dlと高値。BS 161mg/dl、CRP 0.48mg/dlと上昇。血液凝固検査成績では、PT 33%、HPT 27.5%と低下。ウイルス検査成績ではHBs抗原、HCV抗体、各種ウイルスマーカーともに陰性であり、アルコール性急性重症肝炎と診断した。
    <入院後臨床経過および治療方針>直ちにCHDFとステロイドパルス併用療法を開始。翌日より意識レベルと血液生化学所見の改善および羽ばたき振戦の消失が認められた。CHDF療法は1週間施行しステロイドホルモン投与量は漸減していった。
    <腹部CT画像>入院時は、広範囲にLow Density像を広め高度の脂肪肝が認められた。入院1週間後のCTでは著明に改善していた。
    <考察>重症型アルコール性肝炎は、劇症肝炎に相応する病型であり、治療法は主としてartificial liver support(ALS)を中心としたcritical careと肝移植の2つがある。ALSとしての役割を果たす血液浄化療法としては、血漿交換(PE) 療法が施行されることが多く、さらにPE療法と持続的血液濾過透析(CHDF)療法を組み合わせた緩徐血漿交換(SPE)+high flow CHDF(HFCHDF)療法が有効であったとの報告もある。本症例に対しては、炎症を抑える目的で早期よりステロイドパルス療法を実施、ALSとしてCHDF療法を選択し7日間継続した。その結果、意識障害をはじめとする全身状態および諸検査等の改善を早期に得られ、この治療方針の選択は妥当であったと考えられた。
    <結語>アルコール性急性重症肝炎に対して早急にCHDF+ステロイドホルモン併用療法を開始し、早期回復できた症例を経験した。また今回の治療では、医師、看護師、臨床工学技士間の緊密に連携したチーム医療の重要性を改めて実感した。
  • 合併症とその予防策を中心に
    酒井 智彦, 水野 伸一, 笹本 彰紀, 吉川 智宏, 玉内 登志雄
    セッションID: 2C11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>経皮内視鏡下胃瘻造設術(percutaneous Endoscopic Gastrostomy,以下PEG)は様々な原因から摂食障害・嚥下障害を生じた患者に食物のアクセスルートとして胃瘻を作る際の標準的な手技となっている。当科では1996年からPEGを施行しているが、近年では施設病院間連携、療養病棟の併設により経管栄養の適応患者が増加し、PEG施行症例が増加してきている。また、在宅介護を希望する家族の意向によりPEG造設目的に入院されるケースも増えてきている。
     PEGは簡易な手技ではあるが、対象者の身体予備能力が低下していることから合併症の発生率の報告は5.7‐33.3%と少なくない。当院でも数例の重篤な合併症を経験している。今回は、当科で経験した合併症を検討することにより、合併症を軽減するための工夫を考察した。
    <方法>1997年3月から2005年12月までに当科でPEGを施行した110症例を対象とし、その合併症を検討した。
    <結果>対象症例の性別は、男性48例、女性62例であった。原疾患は、脳梗塞・脳出血後遺症など、脳血管障害がほとんどであったが、そのほかにも消化器術後の食思不振の症例もあった。造設キットは、初期はBARD PEGキット(Pull type)を使用していたが、1998年頃よりMicrovasive One Step Button(Boston Scientific社) の使用を基本としている。しかし、患者の入所中の施設の介護基準や経管栄養接続の利便性からチューブタイプを希望する介護施設や家族もあり、症例に応じて対処している。施行時間は4分から70分で平均24分であった。合併症は、11例(10%)に認められた。その内訳は皮下膿瘍2例、瘻孔感染2例、経肝的造設1例、経結腸的造設1例、瘻孔潰瘍1例、造設時のカテーテル逸脱による胃穿孔1例、瘻孔形成不良による腹膜炎1例、誤嚥性肺炎1例、造設位置の不良による胃通過障害1例であった。
    <考察>当科では、誤穿刺を予防する手段として術前に経鼻胃管を用いて胃内に空気を500ml注入して、腹部CTを撮影し、胃の前壁と腹壁の間の障害物の有無、肋骨弓と胃の位置関係を確認して穿刺部位の予測をたてたうえ、全例X線透視下でPEGを行っていた。しかしながら、その予防策にもかかわらず2例の誤穿刺を経験していた。結腸誤穿刺の経験から、CTにて胃と腹壁の間に横行結腸の介在が疑われる症例では、X線透視下で行うだけでは不十分で、ガストログラフィンで横行結腸を造影しながらPEGを施行することとした。また、術前に肝外側区域の誤穿刺が懸念された症例では、穿刺部をエコーで確認してから穿刺するようにした。この予防策により最近4年間では誤穿刺の症例はみられない。
     PEG対象症例の全身状態を考慮すると、安全に対する十分以上の配慮が必要と考えられた。
  • 吉田 滋, 河合 庸仁, 仲田 和彦, 阪井 満, 菱田 光洋, 奥村 徳夫
    セッションID: 2C12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>癌の末期を除き、脾臓に悪性腫瘍の転移を認めることは比較的まれである。今回、我々は大腸癌の異時性脾転移の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
    <症例及び経過>患者は66歳男性。平成16年11月16日に盲腸癌(2型、20x35mm,se,H0,M-,n1,stageIIIB高分化腺癌)に対し腹腔鏡補助下で右半結腸切除術D3郭清及び胆嚢摘出術を施行。術後補助治療としてアイソボリン+5-Fuを2クール行ったのちUFT+ユーゼル(ホリナートカルシウム)→TS-1を内服するも副作用強く中止し、最終的にはフルツロン(ドキシフルリジン)の内服を外来にて行っていた。外来通院中の平成17年11月に血清CEA19.0ng/ml,CA19-9 31.1U/mlと上昇有り、腹部CTにて脾臓の尾側に21mmの腫瘤を認めた。腫瘍マーカーの上昇から脾臓への転移性腫瘍と診断した。その他の部位には明らかな転移は認めなかった。平成18年2月6日手術を行った。左季肋下切開で開腹した。開腹時、褐色透明な腹水を左横隔膜下に中等量認め、病理に提出したが、悪性細胞は認めず。腹腔内に検索できる範囲では腹膜播種や転移を認めなかった。脾臓は腫大なく、触診上結節を2個触知した。脾腫瘍の他臓器への直接浸潤はなかった。脾門部は硬化しており何らかの炎症を疑わせた。脾摘後、膵尾部の損傷が疑われたため水平マットレス縫合で膵尾部を縫合した。摘出標本では1x1.5mm,2x2.5mmの2個の腫瘍を認め、病理診断はInvasive adenocarcinomaで大腸癌の脾転移に矛盾しない所見であった。術後、ドレーン排液中のアミラーゼが高値で膵液漏が疑われたが徐々に流出は止まった。その他経過は問題無く17日目に退院した。外来で経過観察中であるが、現在腫瘍マーカーの上昇や多臓器の再発・転移の徴候は認めない。
    <考察>脾臓は悪性腫瘍の転移がまれな臓器とされており、さらに他臓器転移、腹膜播種を認めない大腸癌の孤立性転移は極めてまれである。脾転移の機序はいまだ不明な点が多く1)脾動脈経路2)脾静脈経路3)リンパ行性の3つの経路が考えられるが、脾臓にはリンパ系の発達が少ないことから主に血行性転移によるものと考えられる。異時性脾転移の切除後の補助療法の要否、またその効果についてはまだ明確な指標はないが、初回手術から早期の脾転移例では全身転移の一過程である可能性があり、化学療法を含めた集学的治療が必要であると思われるが、報告例も少なく検討が必要である。今後は他臓器への再発の可能性を念頭においた診察が必要であると考えられた。
  • 明星 匡郎, 紀平 尚久, 堀切 延寿, 斉藤 知規, 後藤 幹伸, 田岡 大樹, 別府 恒
    セッションID: 2C13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     症例は47歳男性。20歳頃より繰り返す難治性潰瘍にて近医で加療中であった。HP陽性であり、過去に2回の除菌療法施行されている既往がある。平成17年8月より激しい背部痛を自覚するようになり、近医を受診。加療後も症状は軽快せず、精査目的に同年12月当院内科を紹介受診された。内視鏡所見は、十二指腸に巨大潰瘍と瘢痕を認めた。血液検査所見では、白血球(4600/ul)やCRP(0.2mg/dl)など炎症所見は正常範囲内であり、肝胆道系酵素の上昇も見られなかった。その他膵外分泌機能検査、腫瘍マーカー(CEA:2.7pg/ml、CA19-9:17U/ml)等にも明らかな異常値は認めなかった。マルチスライスCTでは膵頭部に径8mmで境界明瞭な腫瘤を認め、辺縁に脂肪を含んでおり積極的に悪性を疑う所見は認めなかった。MRCPでは下部胆管に片側性の狭窄を認め、主膵管にも軽度の拡張を認めた。積極的に悪性腫瘍を疑う所見は認めないものの、また機能性腫瘍は否定できず、手術目的にて外科転科となった。術中所見では十二指腸穿孔を認め、十二指腸とその周囲臓器に高度の癒着があり横行結腸の剥離も困難であった。膵頭部を直接触診するも腫瘤は触れず、肉眼的には明らかな悪性所見は認めなかった。膵頭十二指腸切除術(右半結腸を合併切除)が施行され、十二指腸潰瘍の穿孔による周囲への炎症の波及および瘢痕形成、癒着を認め、膵内に及んだ瘢痕組織の中に白色の腫瘤を認めた。この腫瘤はシュワン細胞、神経周囲線維芽細胞などの神経線維束を形成する細胞を認め、その組織間には毛細血管を含む結合組織が増生、周囲は成熟した線維成分の増生を認めた。辺縁には成熟した脂肪組織が混在しており、CTの所見に一致していた。以上より、繰り返す十二指腸潰瘍により膵を含む周囲臓器への炎症の波及の結果、神経が損傷されたことにより発生した断端神経腫と診断された。術後経過は良好で、以前より認めていた激痛は改善し、術後14日で退院となった。
     断端神経腫(amputation neuroma)は、四肢の切断後に生じる切断端の有痛性の腫瘤として知られ、本体はシュワン細胞を含む神経線維の過形成である。胆道系では胆嚢摘出後の切離断端に発生するという報告はある(本邦では64例の報告があり)が、本例のように膵発生は極めて稀で、1例のみ報告があるが手術施行後の症例であり手術操作が原因であると考えられていた。非手術例では本例のみと推測される。術前診断は非常に困難であるが、断端神経腫を疑う所見としては、_[1]_胆道系手術または肝十二指腸靭帯に操作が及ぶような手術既往があり、術後長時間が経過していること、_[2]_胆道造影では一側性の管外圧排、壁内性腫瘍、良性の狭窄像として描出される事、_[3]_その他積極的に悪性を疑う身体所見、画像所見に乏しい事等が挙げられる。断端神経腫は極めて稀な疾患で、良性疾患であるにもかかわらず、有痛性であり加療が必要であるという興味深い一例であり若干の文献的考察を加味し報告する。
  • 深澤 洋
    セッションID: 2C14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    症例:44歳、男性。家族歴:糖尿病(DM)あり。現病歴:43歳からDMの治療が開始されていた。H17.1.21から2.10まで糖尿病性ケトアシドーシスおよび急性膵炎にて当院に入院。入院時の腹部CTでは膵頭部および右副腎に嚢胞はなかった。入院時は血糖値:1220mg/dl, HbA1c 14.0%、抗GAD抗体は陰性。インスリン(中間型:12単位および持効型:16単位)の投与にてDMのコントロール良好となり退院した。退院後は、禁酒していた。H17.5.28より吐気、上腹部違和感があり、H17.5.31 当院を受診、急性膵炎のため再入院となった。入院時は血糖値:171mg/dl, HbA1c 5.7%、血清アミラーゼ631 IU/L、血清リパーゼ 1015 IU/L、CRP 3.18mg/dl、WBC 15200であった。BP 158/56。絶食、補液にて、膵頭部の腫脹は改善し、食事開始も膵炎の悪化をみなかった。第12病日 血清アミラーゼ102、血清リパーゼ 81、CRP 1.02、WBC 5900と改善した。5.28入院後からDMは、インスリンの投与なしに、各食前血糖値:70_-_124mg/dl、HbA1c 5.3%と良好にDMはコントロールされた。むしろ、数回低血糖(血糖値:35_-_67mg/dl)発作があった。腹部CTにて、膵頭部の腫瘤は腫瘍形成性慢性膵炎が疑われ、周囲の脂肪織が浮腫状で、急性増悪が疑われた。十二指腸が圧迫され通過障害が疑われ、胃の拡張は著名であった。さらに右副腎が嚢胞状に腫大しており、炎症の波及による変化が疑われた。膵頭部と右副腎の嚢胞状の部分にはやや高信号の部分がみられ、仮性嚢胞内の出血の可能性があった。腹部エコーでは、膵体部腫大、膵管は膵全体に5mm程度に拡張、膵頭部背側周囲に3cm大の腫瘤を認め、境界不明瞭、低エコー、内部不均一にて腫瘍形成性膵炎が疑われた。右副腎に腫瘍が疑われた。血中コルチゾール、カテコールアミンは正常であった。131_-_I MIBGシンチでは、褐色細胞腫は否定された。2週後に経過観察のため、腹部CT施行;膵頭部の嚢胞性病変はほぼ同じであったが、右副腎の嚢胞性病変に縮小傾向が見られた。膵頭背側のリンパ節も縮小傾向が見られた。MRCPでは、膵頭部の多発性の嚢胞性腫瘤は同じであり、一部で右副腎部の嚢胞性腫瘤との交通が疑われた。胆管に明らかな異常所見はなかった。さらに1月後に腹部CT施行;膵頭部の嚢胞性病変はほぼ同じであったが、右副腎の嚢胞性病変に縮小傾向が見られた。Tuner’s Index:60とやや高く、インスリノーマも否定できず、48時間の絶食試験(血糖値:74-98mg/dl)を、その後30分間の運動負荷試験施行も血糖値:98mg/dl前後と変動はなく、インスリノーマは否定された。約2カ月半経過後も、インスリンを投与せずに血糖はコントロールされた(HbA1c 5.3%)。
    <結語>膵頭部および一過性の右副腎嚢胞性病変を呈した膵炎後に、インスリン治療が不要となった2型糖尿病の1例を経験した。
  • 中川 理, 森川 洋, 畑可 奈子, 岩渕 洋一, 小林 英之, 長谷川 聡, 吉田 研, 斉藤 功, 国定 薫, 上村 旭
    セッションID: 2C15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>近年、2型糖尿病患者の心血管系イベントに関する大規模臨床研究の結果が発表され、発症予防及び早期発見の重要性がより認識され始めた。また2005年4月には本邦におけるメタボリックシンドロームの診断基準が発表されている。そこで我々は2型糖尿病患者におけるメタボリックシンドロームと血中BNP(Brain Natriuretic Peptide)との関連を検討した。
    <対象・方法>外来通院中の40-70歳(平均年齢58.3±10.1歳、HbA1c7.6±1.8%、罹病期間13±5.95年)の2型糖尿病患者27名(男性17名、女性10名)の内臓脂肪面積をInBody 720(Biospace社)にて測定し、内臓脂肪面積100cm2以上をメタボリックシンドローム群(以下MS群)13名(男性10名、女性3名)、内臓脂肪面積100cm2未満を非メタボリックシンドローム群(以下非MS群)14名(男性7名、女性7名)に分類した。外来治療経過中に測定した1回のBNP値を両群間で比較検討した。なお既往歴から虚血性心疾患、心不全、心房細動は除外した。
    <結果>両群間で年齢(MS群58.4±9.7歳、非MS群59.0±6.9歳)、HbA1c(MS群7.7±1.8%、非MS群7.3±1.4%)、罹病期間(MS群12.4±6.1年、非MS群9.46±5.06年)では有意差は認めなかった。BNPの基準値(18.4pg/ml)以上の高値は37%に認め、MS群では29.1±19.0pg/ml、非MS群では10.5±8.7pg/mlとMS群において有意に高値であった。
    <考察>2型糖尿病患者におけるメタボリックシンドロームと血中BNPの臨床的意義を検討した。今回の検討では断面的な調査であったが、メタボリックシンドローム合併例ではBNPは有意に高値であった。臨床的意義は不明な点も多いが、心筋障害を反映している可能性があり、BNPが高値を示す場合は既に心血管系イベントの合併を考え、無症状でも積極的に循環器系検査を行うことが重要と考えられた。また、BNPのcut off値に関しては様々な報告があるが、継続的に検討することで糖尿病患者やメタボリックシンドローム患者独自の危険値を見つけることが重要である。
    <結語>糖尿病患者の心血管疾患の合併をより早期に診断し、治療することが臨床的に重要であり、その指標の一つとしてBNPの測定が有用と考えられた。
  • 加藤 大也, 口脇 賀治代, 山田 幸司, 山崎 良兼, 澤井 喜邦, 金山 均
    セッションID: 2C16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> メタボリックシンドロームは、内臓肥満、インスリン抵抗 性を基盤として、動脈硬化症発症の危険度の高い状態である。その ためメタボリックシンドロームの予防と管理、早期発見、治療が重要視されている。メタボリックシンドロームを伴った糖尿病患者に 対して、インスリン抵抗性改善作用のあるピオグリダゾン及びメト フォルミンを投与し治療効果につき比較検討を行った。
    <対象> メタボリックシンドロームを伴った糖尿病患者50名対象とした。
    <方法> 対象となる患者を無作為にピオグリダゾン投与群とメトフォルミン投与群と2群に振り分けそれぞれ薬物を12週間投与し(他の糖 尿病薬併用なし)その前後で、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、body mass index(BMI)、中性脂肪(TG)、HDL-コレステロール(HDL-C)、LDL-コレステロール(LDL-C)、AST、ALT、HbA1c、高感度CRP、フィブリノーゲン75gOGTTでの血糖値及びインスリン値、頸部動脈エコーによるmax-IMT 、pulse wave velocity(PWV)、ankl e brachial index(ABI)を測定した。統計学的評価にはそれぞれの対 応ある薬剤の治療効果の検定はpaired Studentt検定を用い、それぞれの薬剤の治療効果の変化率の検定はunpaired Studentt検定,Welch'st検定を用いた。
    <結果> ピオグリダゾン投与群ではSBP、HDL-C、AST、ALT、HbA1c、高感度CRP、フィブリノーゲン、75gOGTTでの食後血糖値及びインスリン値、PWVにおいて有意な改善を認めた。メトフォルミン投与群では、HDL-C、HbA1c、高感度CRP、75gOGTTでの食後血糖値において有意な改善を認めた。BMIはピオグリダゾン投与群では増加傾向を示し、メトフォルミン投与群では減少傾向を示した。またそれぞれの薬剤の治療効果の変化率の比較では、ピオグリダゾン投与群ではメトフォルミン投与群に比較してSBP、AST、ALT、高感度CRP、フィブリノーゲン、PWVにおいて有意な改善を認めた。
    <結論> メタボリックシンドロームを伴ったDM患者においてピオグリタゾンはメトファルミンに比較して血圧、肝機能を有意に改善し、動脈硬化マーカーをより抑制する薬剤である可能性が示唆された。
  • 大黒 景子, 大野 晴也, 石田 和史
    セッションID: 2C17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>内臓脂肪蓄積に起因する高血圧、糖・脂質代謝異常が基盤となり動脈硬化性疾患を惹起する複合型リスク症候群を、メタボリックシンドローム(MS)という概念で統一しようとする世界的な流れの中、2005年4月に本邦における診断基準が公表された。それによると、糖・脂質代謝・血圧の基準を満たす以前に、腹囲やCTによる内臓脂肪断面積(VFA)の基準を満たすことが求められている。しかし、腹囲が基準に満たないのにインスリン抵抗性改善薬が血糖コントロール改善に著効する症例がある事、腹部CTによるVFA測定は被曝侵襲や経済的負担の理由で繰り返し実施することは困難でありフォローアップに適さない事、など難点がある。本研究は健常者と糖尿病患者を対象に、安価で被曝侵襲のない体組成分析装置In Body20(IB)の信頼性評価および実態調査を行い、その有用性や臨床応用の可能性を検討した。
    <対象・方法>1)信頼性の検討:入院中の糖尿病患者21名(平均64.2才)に、腹部CTによる臍レベルのVFA測定(使用ソフト:Virtual Place Advance ver.2.0032)とIBの両方を1週間以内に実施した。 2)糖尿病患者の実態および健常者との比較:健常者22名と、当院外来通院中の糖尿病患者238名(男117名、うち2型111名, 平均65.9才, 平均BMI 23.9kg/m2 , 平均HbA1c 7.0%,/女121名、うち2型112名, 平均67.0才, 平均BMI 24.4kg/m2, 平均HbA1c 7.1%)を対象に、IBによるVFA・体脂肪総量・骨格筋量を計測し、諸種心血管系疾患・糖尿病治療・病型との関連性を検討した。
    <結果>1) 腹部CTとIBによるVFAは、良好な正相関を示した(r=0.78, p<0.0001)。 2) IBによる体脂肪総量は男女間に差はないが、骨格筋量とVFAは男性が高値であった。 3) 男女とも加齢によりVFAは増加し、骨格筋量は減少した。 4)BMIとIBによるVFAの間に正相関を認めたが、BMI低値でVFA高値である例も散見された。 5) 性・年齢で調整したIBによるVFAは、健常者に比し糖尿病患者で高値であり、VFA100cm2以上の頻度は、健常者(50.0%)や1型糖尿病(57.4%)に比し、2型糖尿病(69.7%)で明らかに高率であった(p<0.05)。 6) 性・年齢で調整したIBによるVFAは、高血圧症、脳血管疾患の既往者、チアゾリジン誘導体やビグアナイド薬使用者で高値であった。
    <考察>内臓脂肪評価において、IBとCTの計測値は高い相関性を示し、IBによるVFA測定の信頼性が実証された。健常者に比し2型糖尿病患者のVFAは高値であり、我が国の2型糖尿病患者の多くがMSの基準を満している可能性が示唆された。VFAとBMIは相関を認めるものの大きく乖離する症例も少なからずあり、BMIから安易にVFAを推測する事に関しては注意が必要と考える。
    <結論>2型糖尿病患者における内臓脂肪型肥満の発見による治療方針の決定、生活習慣改善の動機付け、体質改善効果判定に、簡便・低コストで繰り返し実施可能なIBが極めて有用なツールとなる可能性が示唆された。
  • 新谷 周三, 山本 泰三, 日野 太郎, 水谷 真之, 鶴岡 信, 富永 勉, 井上 俊之
    セッションID: 2C18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <要旨> 従来本邦では,脳卒中は内科・神経内科・脳外科などがバラバラに対応し,統一された診療体系が構築されてこなかった。しかし高齢化社会の進行につれ,脳血管障害とりわけ脳梗塞の予防・診断・治療の対策は、国家的課題となった。当院の脳卒中入院患者は,年間に脳梗塞240名,一過性脳虚血発作 (TIA)10名,脳出血80名,くも膜下出血30名と,約360名を数える。
     まず、昨今の脳梗塞の画像診断の進歩はめざましく,magnetic resonance imaging (MRI)/ magnetic resonance angiography (MRA)の普及で,脳梗塞の急性期診断と病態の把握は,臨床の場で格段に進歩した。また本来脳梗塞は、(1)アテローム血栓性梗塞,(2)ラクナ梗塞,(3)心原性脳塞栓,と大きく3つに分けられてきたが,不整脈(心房細動)を伴う高齢者の増加により(3)が急増している。この心原性脳塞栓は重症化しやすく,死亡例や寝たきりになる率も高い反面,昨年2005年10月11日に認可されたT-PA(tissue plasminogen activator)が著効する例も多い。このT-PA投与が急性期脳梗塞に対して認可され,全国の病院で脳卒中の診療体制が変わりつつある。
     しかし,この治療薬は適応を間違えば,出血を引き起こす可能性がつよく,脳卒中の専門医による投与の判断を前提としている。また、発症3時間以内の投与や,投与後の脳卒中ユニットSCU (Stroke Care Unit)での管理が必要なため,基本的には“脳卒中の専門医が常駐し,夜間でもCT/MRI/MRAの撮影可能な救急基幹病院”での使用がのぞましい。T-PAの使用について経験の豊富な米国でも,やはり投与の適応について困ることが多いらしく,救急搬送された脳梗塞患者にTPAを投与すべきか否か,農村部の病院から都市部の脳卒中センターに電話で支援を求めるシステムもある(文献1)。
     SCUについては,以前からその重要性・有用性が指摘されてきたが,脳卒中患者を専門的に扱うSCUで治療やリハビリテーションを受けた患者は,通常の病棟で過ごした患者に比べ、10年後の生存率について良好であるとの報告がされた(文献2)。つまり脳卒中患者のケアは,急性期からリハビリまで,専門のユニットで行う方が良い成績を上げられる。
     以上から当院では,本年2006年1月19日,神経内科・脳神経外科・リハビリテーション科が一体となり,新たに「脳卒中センター」を開設し,急性期からSCUでの脳卒中専門チーム(医師・看護師・リハビリテーションセラピスト)による治療やリハビリの施行,その後ケースワーカーの介在したリハビリ専門病院(回復期リハビリ病院)との連携の確立,さらに退院後の訪問看護まで含んだ体系を確立した。
    References
    1) Frey JL, Jahnke HK, Goslar PW, Partovi S, Flaster MS. tPA by telephone: Extending the benefits of a comprehensive stroke center. Neurology 2005;64:154-156
    2) Drummond, et al. Ten year follow-up of a randomized controlled trial of care in a stroke rehabilitation unit. BMJ電子版2005年8月10日
  • -地域中隔病院における10年間の分析・検討から-
    菊地 顕次, 須田 良孝, 塩屋 斉, 進藤 健次郎
    セッションID: 2C19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>秋田県本荘・由利地方におけるくも膜下出血の発症率は20年の経過で漸増し、さらに地域人口の急速な高齢化を反映して症例の高齢化・重症化の傾向が顕著になって治療がますます困難になっている現状を、昨年の第54回本学会において報告した。今回は最近10年間に当院に入院した80歳以上の超高齢者症例に焦点を絞ってその治療の現状を分析・検討したので報告する。
    <対象>1995年1月から2004年12月までの10年間に秋田県旧本荘市・由利郡内で発症し、当院で入院治療した破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血症例394例のうち、80歳以上の超高齢者症例52例を対象とし、性別、年齢、入院時重症度、脳動脈瘤部位、治療成績、および転帰等を分析・検討した。
    <結果・考察>性別は男性5例(9.6%)、女性47例(90.4%)と女性に多く、男女比は1:9.4であり、当地域の80歳以上の性別人口比率と比較しても女性に有意に好発していた。年齢分布は80歳から92歳で、年齢階層別では80歳台が46例、90歳台が6例であり、平均は84.7歳だった。入院の神経学的重症度はHunt-Kosnik分類で意識清明なgrade 1・2が15例(28.8%)、grade 3が8例(15.5%)、grade 4が5例(9.6%)で、最も重症なgrade 5が24例(46.2%)と全体の約半数近くを占めた。破裂脳動脈瘤の発生部位では、内頚動脈瘤が15例と最も多く、次いで前交通動脈瘤と中大脳動脈瘤が同数の12例で、以下、椎骨・脳底動脈瘤、前大脳動脈遠位部動脈瘤がそれぞれ6例、1例の順であり、また最重症例が最も多いことを反映して脳血管撮影による脳動脈瘤の確認に至らない症例もあり、6例で発生部位が不明だった。手術的治療が行われたのは23例(44.2%)で、その内訳は開頭クリッピング術が11例、コイルによる瘤内塞栓術が12例だった。術前の神経学的重症度は、意識清明なgrade 1・2が11例と約半数を占め、grade 3、4がそれぞれ9例と3例だった。一方、過半数の29例は内科的・保存的に治療され、そのうち24例(82.8%)は入院時grade 5の最重症例だった。治療成績では、予後良好な自立例(GOSのGRおよびMD)が手術的治療群で8例(34.8%)、保存的治療群で3例(10.3%)だったが、保存的治療を含めた全症例のoverallの転帰では死亡例が35例(67.3%)と全体の約2/3を占めており、あらためて80歳以上の超高齢者におけるこの疾患の深刻な現状が追認された。
    <結論>以上の治療成績から80歳以上の超高齢者の場合、脳の脆弱性や回復力の低下などを背景に予後は一般的に不良であるが、意識状態(神経学的重症度)や全身状態を評価するだけではなく、病前の自立度や家族の同意など社会的な背景も慎重に考慮して適切に治療方針を決定する必要があるものと考えられた。
  • 岡田 健, 山本 直人, 棚澤 利彦, 大須賀 浩二, 遠藤 乙音, 牧野 一重
    セッションID: 2C20
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     近年、脳神経外科の分野においても、患者のQOLの観点から、可能な限りless invasiveな治療戦略が好まれる傾向にある。その代表的な脳外科手術手技として経蝶形骨洞手術が挙げられる。一般的に下垂体病変、特にトルコ鞍内に留まる病変に対しては絶対的に経蝶形骨洞手術の適応であり、適応疾患として下垂体腺腫が代表的である。下垂体腺腫の中でも比較的大きなものは鞍上部に進展する場合があり、経蝶形骨洞手術か、開頭術かの選択が問題となるが、sellar plastyを行わないopen sellar methodを用いた経蝶形骨洞手術を行うことによって、鞍上部進展腫瘍が時間の経過とともに鞍内に下降し、2期的な経蝶形骨洞手術による鞍内操作によって全摘出が可能となる。鞍上部進展腫瘍が全て鞍内に下降してくるわけではなく、この場合は開頭術も選択する必要がある。また海綿静脈洞壁または海綿静脈洞内に側方進展する例では、手術による全摘出が技術的に困難となることが多い。全摘出したと考えられた下垂体腺腫において長期経過中に再発する例もまま経験することがあるが、この海綿静脈洞壁に浸潤した腫瘍が再増大することも想定される。このような症例には、適宜放射線照射(分割照射またはガンマナイフ)を併用し、腫瘍抑制効果が期待できる。また、下垂体腫瘍の特性によっては、ドーパミン作動薬の投与により腫瘍増殖抑制効果がやはり期待できることがあり、このような薬物療法も適宜併用することができる。
     我々は、非機能性下垂体腺腫における治療戦略として、鞍上部進展例や海綿静脈洞進展例においても、まずはopen sellar methodを用いた経蝶形骨洞手術によりトルコ鞍内の腺腫を可及的に摘出し、一旦経過観察とし、鞍上部進展部分が鞍内に下降した場合は再度経蝶形骨洞手術を行い、下降しない場合は開頭術を、海綿静脈洞進展例または鞍内再発例に対しては放射線照射を併用している。当院では、同一術者による非機能性下垂体腺腫手術例で長期followできている症例が、6例あり(男性2人、女性4人)、follow up期間は10年から23年(平均15年)であった。その内、2回以上経蝶形骨洞手術を行った症例は3例、鞍上部進展例に対し開頭術を要した症例は1例、ドーパミン作動薬を服用させている症例は2例、放射線照射を行った症例は4例であった。全例において腫瘍のコントロールは良好であり、また放射線照射を行った症例においても下垂体機能障害は軽度で通常のホルモン補充療法が必要な程度であった。全例において患者自身のQOLは保たれており、満足されている。このような長期follow upできた非機能性下垂体腺腫の報告は少なく、症例数は少ないながら貴重と考え、ここに報告する。
  • 高木 伸之介, 安藤 哲朗, 川上 治, 杉浦 真, 加藤 博子, 梅村 敬治郎
    セッションID: 2C21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉 急性期脳梗塞患者に対するアルテプラーゼ(rt-PA)静注療法が平成17年10月より保険適応となった。しかしこの治療は出血の危険を併せ持つため、発症3時間以内に投与するなどの制限があり、急性期脳梗塞全体において、rt-PA静注療法の適応となるの5%程度と言われている。当院では適応症例に確実にrt-PA治療ができるような体制づくりのため、スタッフ教育、救急隊との連携を強化してきた。具体的には、rt-PA治療適応の可能性のある症例を的確に連絡してもらうためのチェックリストを作成し、救急外来に第一報があった時点で神経内科のオンコール医を呼び出し、また救急センター到着後の診療手順表を作成して来院からrt-PA投与までの時間短縮を図っている。
    当院におけるrt-PA使用の初期経験を、今後の課題を考察する。
    〈対象〉 平成17年10月から平成18年4月までに当院にてt-PA静注を施行した症例8例。男性7例女性1例、平均年齢は71.4歳。
    〈方法〉 電子カルテの記録を用いて情報を取得、救急搬送、病院到着までについての記録は、救急隊活動記録を使用した。8例の診療カルテより、(1)発症から来院までの時間、(2)来院時NIHSS、(3)来院からt-PA投与までの時間、(4)効果発現時間、(5)画像診断方法、(6)病型、(7)病変部位、(8)治療効果を検討した。
    〈結果〉 全症例8例のうち、6例は院外発症、2例が院内発症であった。いずれも複数の神経内科医が診療にあたっていた。(1)院外発症では発症後40分から140分(平均65分)で来院。(2)来院時NIHSSは8-24点(平均14点)。(3)発症から投与までの時間は80分から175分(平均119分)。来院(院内では発見)から投与まで35分から70分(平均51分)であった。(4)6例ではt-PA注射後1-15分で著明な改善を認めた。(5)投与前に全例CTを施行しており、3例ではMRIも施行した。(6)8例中4例が、心原性脳塞栓症、2例がアテローム血栓性、2例はbranch atheromatous disease(BAD)と考えられた。(7)病変部位は、1例は左内頚動脈、3例は右中大脳動脈、2例が椎骨動脈系、2例は前脈絡叢動脈であった。(8)2例で頭蓋内出血を認め、1例は死亡した。1例では再開通を認めなかった。1ヶ月後mRSは0-1点が3例(37.5%)、2-3点が2例(25%)、4-5点が2例(25%)、6点が1例(12.5%)となった。
    〈考察〉 当院ではrt-PA治療で目標とされている来院から治療までの時間60分以内が達成できていた。治療開始時間を短縮するのに、救急隊との連携が有効であると考えられた。時間短縮のためには検査とインフォームドコンセントを同時に進行するのが有効であり、複数の医師が共同して診療するのが有効と考えらえた。
  • 椎貝 達夫, 八幡 真弓, 稲葉 直人, 青柳 誠, 前田 益孝, 小林 君枝, 唯根 理子, 倉持 晃世
    セッションID: 2C22
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉取手協同病院では1987年以来保存期慢性腎不全の治療を一定の治療プログラムで続けてきた。
     前医での治療時期の腎不全進行速度(血清クレアチニン値の逆数の月当りの変化-dl/mg/月)がわかっている患者は60名いる。この60名について前医での進行速度と当院に通院を始めてからの進行速度を比較すると、-0.046 dl/mg/月から-0.002 dl/mg/月へと69.5%の減速がみられた。
     この治療成績で新たに来院した患者を旧来の患者に加えて治療し、「取手市の透析導入数(D)を3年以内に30%減少させる」ことがこのプロジェクトの目的である。
    ある地域における一定の介入が透析導入数減少をもたらせば、医学的エビデンスとして重要であり、この種の治療法の普及・拡大につながる。
    〈方法〉病院、患者会「医と食の会」の共催であり、取手市保健センターが後援して展開する。透析導入数は身体障害者1級の手帳を発行したもののうち、慢性腎機能障害例を集計する。
     対象患者は、保存期腎不全患者でCcr 60ml/min以下で進行を示している例。腎不全の原因疾患は問わない。また取手市および近隣市町村在住者以外もすべて受け入れる。慢性腎不全があればたとえ進行していなくても治療を希望するのが常なので、進行性を問わず治療対象とする。
     年2回D3-30運動講習会を病院講堂で開催し、患者への参加を呼びかけ、腎疾患の治療法、病態についての知識を深め、同時に患者の連帯を強める。この講習会のポスターを市内公共施設に掲示し、新たな患者の参加をも目的とする。
    261名の当病院登録医へ、該当する患者紹介を要請する。この際当院へ全面的に診療場所を移す方法と、数回の当院への受診で治療方針を決め、紹介元へ返す方法とを提案する。
     3ヵ月毎に「D3-30ニュース」を発行し、患者の登録状況、経過などを報らせる。配布先は2005年10月以降に受診した患者、病院登録医、関係市町村、腎臓ネット等。
     4人の腎専門医が「進行する腎不全診療の手引き」に従って外来診療を担当する。患者の希望で1週間程度の教育入院を行うこともある。
    〈結果〉取手市の2004年の透析導入数は28名であった。これを3年以内に20名以下の導入数に減少させることが目的である。
     2006年2月28日までの新規の腎不全患者登録情況は53名、この中で取手市民は17人(32%)である(表)。
    〈今後の展開〉2006年10月21日に第3回患者講習会を予定している。2005年の取手市および周辺市町村の透析導入者数を県ならびに関係市町村の協力のもとに調査し、その結果を「D3-30ニュース」で登録患者等へ報らせるとともに、それ以降の対策を検討する。
     
  • 川野 圭三, 福井 直隆, 田所  学, 森本 信二
    セッションID: 2C23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>恥骨後式前立腺全摘術(Radical Retropubic Prostatectomy=RRP)は主に75歳以下の限局性前立腺癌に対する根治術である。当科では,根治可能と思われ、放射線治療、内分泌療法などのほかの治療法との長短所を説明し、インフォームドコンセントが得られれば積極的にRRPを施行している。従来、骨盤底での操作は煩雑かつ視野不良で、前立腺周囲の静脈の処理、尿道括約筋を温存しつつ前立腺を摘除、膀胱と尿道を再吻合する手術手技等は相当の経験を要するが、当科では多くの症例で自己血輸血(800ml)のみ、3時間前後の手術時間で完遂している。しかし、小骨盤が狭小ないし前立腺重量が大きい場合は手術に難渋することもある。これまで、患者の体格や前立腺重量と手術成績について検討した研究は検索しえた限り、国際的にも皆無である。今回我々は、患者の体格、骨盤の形態、前立腺重量、術前PSA値などが、手術時間、出血量などに影響を与えるか、retrospectiveに検討した。
    <対象・方法>平成17年1月より,平成18年4月までに行ったRRP24例。年齢61-74歳中央値67歳。11例が逆行性、13例が順行性に手術施行。手術前PSAは4.6-16.8(中央値8.4)。体格(身長、体重、Body-Mass Index=BMI)、前立腺重量(摘出標本重量、術前エコー予測重量),骨盤の形態(小骨盤横径、骨盤縦径、横径)、前立腺と恥骨との関係(恥骨-前立腺距離、恥骨-前立腺部尿道距離など)を単純レ線、MRI、経直腸超音波で測定。これら術前に得られるデータと、手術時間、出血量との相関を多変量ないし単変量解析を用い検討した。なお局所進行癌であった症例や手術前内分泌療法を施行した症例、骨盤リンパ節郭清を施行した症例、勃起神経を温存した症例は除外した。
    <結果>前立腺摘除標本重量、前立腺術前エコー予測重量、前立腺横径,小骨盤横径はすべて、それぞれが手術成績(手術時間、出血量)と相関する傾向が認められた。また術者も、手術成績に相関した。
    <結論>RRPにおける、患者側因子(前立腺重量、小骨盤の大きさ、恥骨-前立腺距離など)は手術時間、出血量などに影響を与える可能性がある。エコー、単純レ線などの低侵襲な検査で、手術侵襲を予測できる可能性が示唆された。
  • 石河 智子, 堀切 頼子, 水谷 伊津子, 高士 裕美, 河村 真澄, 荒木 富雄, 後藤 朋子, 馬場 洋一郎, 村田 哲也, 濱田 正行
    セッションID: 2C24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>当院の人間ドック腹部超音波検査(以下US)によって発見された、初期腎細胞癌(以下RCC)の症例について報告する。
    <症例>37歳男性
    健診時自覚症状:咳、風邪、鼻炎、腰痛
    家族歴:祖父母胃がん
    既往歴、現病歴:特記すべき事なし
    健診時検査結果:尿検査潜血(±)
    沈渣:赤血球1-4/HPF 血液生化学検査に異常は認められない
    <US所見>左腎中極腎盂よりに13.6×12.6mmの充実性病変が認められた。エコーレベルは腎実質より高エコーで、中心部エコー(CEC)より低エコー、辺縁はやや不整、境界明瞭、内部エコー不均一であった。悪性腫瘍も否定できなかったため、精査を依頼した。
    <経過>精査目的で当院内科受診、腹部CT検査で左腎に直径15mm大の比較的境界明瞭な低吸収域が見られ、RCCが強く疑われたため泌尿器科受診となり、精査加療目的のため入院となる。造影MRI検査では、腫瘤内に明らかな脂肪は認められず、造影パターンよりRCCが疑われた。セカンドオピニオンを希望され他院を受診されたが、やはりRCCが疑われたため、手術目的で当院入院となり腹腔鏡下左腎摘出術が施行された。
    <病理所見>肉眼的に左腎中極腎盂よりに12mm大で線維性被膜で覆われた境界明瞭な結節性腫瘍が認められた。割面は淡黄色充実性であった。組織学的に淡明な細胞質を有する尿細管上皮細胞に類似した細胞の索状-充実性増生からなり、淡明細胞型のRCCと診断された。術後TNM分類はpT1apNOpMXG1 StageIであった。
    <考察>人間ドックのUSの目的は多岐にわたる。そのなかで、臨床的に無症状でUSではじめて発見される悪性腫瘍を見つけることは、健診USの大きな目的である。このような悪性腫瘍の中でRCCは、早期発見・早期治療をすることにより比較的予後が良好な癌であり、健診USで発見する意義は大きい。RCCは腎尿細管上皮より発生する悪性腫瘍で線維性被膜を有し、特徴的なUS所見は腫瘍内嚢胞形成像と被膜の描出である。しかしながら今回の症例は12mmと腫瘍径が小さく、腎盂に近接して認められたため被膜は確認できなかった。また、腎実質より高エコーで血管筋脂肪腫との鑑別が問題となったが、CECよりも低エコーで辺縁やや不整、内部エコー不均一であったためUSだけでは確診が得られず、精査を必要とした。15mm以下のRCCは自覚症状がほとんどなく、その発見のためにUSの役割は重要である。
     今回12mmの小さなRCCが発見された事は腎腫瘍の治療戦略上非常に有意義なことであり、健診USの役割は重要であると思われた。
  • 神沢 英幸, 水野 健太郎, 秋田 英俊, 加藤 誠, 岡村 武彦
    セッションID: 2C25
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉 膀胱癌は予後のまったく異なる表在性膀胱癌と浸潤性膀胱癌に分けられ、その約2割を占める浸潤性膀胱癌はしばしば遠隔転移を引き起こし、治療に難渋し、予後が極めて悪いものとされる。このため、極力転移を起こしていない段階での診断、治療が望まれる。患者の全身状態が全身麻酔下での手術に耐えうるものであれば、局所浸潤性膀胱癌の根治的治療法の最も一般的なものが膀胱全摘術となる。今回我々は、当院で過去10年間に膀胱全摘術を施行し、追跡可能であった症例について検討を行った。
    〈対象および方法〉 症例は1996年4月から2005年3月までに膀胱全摘術を施行した合計30例である。手術時の年齢は平均65.2歳(46-79歳)で、男女比は26:4であった。これらの症例について、手術時年齢、術前術後のstagingと病理組織診断、Neo-adjuvant、Adjuband chemotherapyの有無、術後再発率、生存率、尿路変向術の手法、早期および晩期合併症などについて臨床的に検討を行った。
    〈結果〉 膀胱全摘術後の尿路変向については腸管(回腸)を利用する代用膀胱、回腸導管、腸管を利用しない尿管皮膚ろうなどが挙げられるが、各々3例、14例、13例に施行され、術式の選択は患者の年齢、状態、患者の希望などを考慮したうえで原則として主治医の判断で行われた。このうち尿管皮膚ろう症例でカテーテル留置例は13例中11例85%であったが、フランジ交換などのストーマ管理にトラブルのある症例は認めていない。また早期合併症として、創部感染や吻合部狭窄などが少数例に認められたが、晩期合併症は現在まで経験していない。予後については、一般に報告されている生存率と大きな差異は認められなかった。Neo-adjuvant、Adjuband chemotherapyでの違いや尿路変向術の違いによる合併症・予後などの差異は認められなかった。
    〈考察〉 尿路変向については患者のQOLを考慮し、代用膀胱が重んじられてきた時期もあったが、術後合併症なども考慮すると、ストーマ管理が術後の一時的な指導にとどまらず、病棟と外来とが十分な連携を保ち、外来レベルでも十分にフォローすることにより、患者本人が熟達すれば回腸導管、尿管皮膚ろうについても十分に受容できる術式と考えられた。
  • 大本 和美, 佐藤 大悟, 榊原 咲弥子, 梅木 英紀, 染川 可明
    セッションID: 2C26
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 多胎妊娠で一児流産後に子宮収縮を抑制することは難しく他児も娩出となることが多い。今回我々は二絨毛膜二羊膜双胎の一児流産後、妊娠継続を試みた二症例を経験したので報告する。
    <症例1> 症例1は、29歳0経妊0経産、他院通院中だったが、妊娠19週出血と陣痛にて当院へ搬送された。一児を娩出し、胎盤を子宮内に残存させたまま、抗生剤と子宮収縮抑制剤である塩酸リトドリンを投与し腟内洗浄を行いながら生児の妊娠継続を試みた。臍帯は細く膜状となり自然に消失したが先に娩出した死児の胎盤は菲薄化せず子宮内に存在していた。WBC、CRP値の変動に伴い抗生剤の種類を変更しながら経過観察した。一児娩出後炎症所見は改善し子宮頚管長も保たれていたが妊娠22週より子宮収縮を認め急激に子宮頚管長が短縮し、妊娠23週5日陣痛発来となり、他児も死産となった。先に死産となった一児の胎盤は肉眼的には暗赤色で病理組織学的には絨毛羊膜炎stageIII、後に死産となった二児の胎盤は絨毛羊膜炎stageIIであった。
    <症例2> 症例2は、30歳1経妊0経産、妊娠15週で破水し一児を娩出、死産となり胎盤を子宮内に残したまま妊娠を継続させた。炎症所見は改善傾向であったが妊娠21週にWBCは徐々に低下し始め22週にはWBC2300/μlまで低下した。塩酸リトドリンの有害事象による顆粒球減少と思われた。G-CSF製剤を投与し、切迫早産の兆候は落ち着いていたため内服薬に変更した。内服薬へ変更した後も子宮頚管長も保たれていた。WBCの値は改善し、切迫早産の兆候もなかった。一方、死児の胎盤は内子宮口を覆う形で存在していたが妊娠22週頃より菲薄化し始め、内子宮口付近には生児の羊膜が存在するようになった。妊娠26週に急激な子宮頚管長短縮と、出血を認めたため、塩酸イソクスプリンの持続点滴へ変更し妊娠を継続させた。妊娠32週頃より子宮収縮を時折みとめていたため子宮収縮抑制剤を増量し経過観察していたが、妊娠33週4日発熱と軽度のCRPの上昇を認め、その後陣痛発来し1806gの女児を分娩した。児は早産児と低出生体重児にてNICUへ入院となったが軽度の炎症のみでその後の経過は良好だった。先に娩出となった死児の胎盤は110gで菲薄化し絨毛羊膜炎stageIII、生児の胎盤は700gで絨毛羊膜炎stageIIであった。
    <結語> 2症例とも子宮内に残存させた胎盤に絨毛羊膜炎を認め、子宮収縮、陣痛発来の原因は残存させた胎盤への感染が考えられる。二絨毛膜二羊膜双胎の一児流産後に子宮収縮を抑制させること、さらに胎盤を子宮内に残存させることによる子宮内感染のリスクを考慮したうえで妊娠継続を試みたが、まだ治療法は文献でも統一されてはいない。我々が行った治療、管理方法、妊娠経過につき文献的考察を含めて報告する。
  • 藤巻 尚, 西川 伸道, 金澤 浩二
    セッションID: 2C27
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     Sertoli-Leydig cell tumorは卵巣性索間質性腫瘍の1 %、原発性卵巣腫瘍の0.1-0.5 %の頻度にみられる、非常に稀な腫瘍である。今回、我々は妊娠中に破裂をきたした低分化型Sertoli-Leydig cell tumorの一症例を経験したので、文献的考察も含め報告する。症例は34才、女性。3妊2産。妊娠29週突然の腹痛を訴え、当院受診。MRIにて充実性の卵巣腫瘍を認めた。入院後Hb 10.1 から7.2 g/dlと貧血の進行を認めたため、新潟大学医歯学総合病院に母胎搬送した。超音波検査にて9 x 5 cm大の充実性腫瘍およびDougras窩にecho free spaceを認めたため、卵巣腫瘍の腹腔内破裂と診断し、緊急開腹手術が行われた。腫瘍は右卵巣由来であり、破裂した腫瘍表面から出血を認めた。腹水細胞診は陰性で、対側卵巣は正常で、病変は右卵巣に限局し、腹腔内播種の所見は認めなかった。リンパ節の触診にても腫大しているものはなかった。腹腔内出血は約500 ml。腫瘍の術中迅速組織診では、悪性も疑われるが断定できず、診断が確定できなかったため、右付属器摘出のみを行い手術を終了した。児は術後6日目に早産となった。術後の病理組織検査にて低分化型Sertoli-Leydig cell tumorの診断(stageIc (a))であった。現在、術後補助化学療法としてPEP(Peplomycin、Etoposide、Cisplatin)療法を施行中である。
  • 田中 秀則, 木村 菜桜子, 齋藤 寛
    セッションID: 2C28
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    〈緒言〉
     子宮体癌患者には、様々な合併症を有していることが多い。たとえば、肥満、糖尿病、高血圧や高齢などである。このような症例は重篤な術後合併症となるリスクが高いと考えられる。そこで、問題になるのことは、はたして傍大動脈リンパ節まで郭清する必要があるかどうかである。子宮体癌症例では、外腸骨節によく転移をすることが知られており、また、傍大動脈リンパ節の転移と総腸骨節との関連性についての報告がある。そこで、本研究の目的はこの二つのリンパ節に転移を認めなければ、傍大動脈リンパ節の郭清を省略できるか検討するとした。
    〈方法〉
     当科、および秋田大学産婦人科で1994年から2006年まで、子宮体癌根治術を施行した101例を対象とした。
    〈結果〉
     13症例で、外腸骨節もしくは総腸骨節に転移を認めた。10症例に傍大動脈リンパ節転移を認めた。外腸骨節もしくは総腸骨節のリンパ節が陰性であった88症例のうち、87症例では傍大動脈リンパ節に転移を認めなかった。これらのデータを基にすれば、これら二つのリンパ節からみた、傍大動脈リンパ節の転移を検出する敏感度は78.0% (10/13)で、特異度は99.0% (87/88)となった。
    〈結論〉
     術中に外腸骨節および総腸骨節の迅速組織診を施行し、陰性であれば、他のリンパ節郭清術は省略できることが示唆された。
  • 田渕 昭彦, 鈴木 和広, 水野 光規, 廣瀬 有紀, 伊藤 祐, 三井 千鶴
    セッションID: 2D01
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    平成16年度より導入された新卒後臨床研修制度の救急医療分野における到達目標の一つとして、研修医は一次救命処置(BLS)を教えることができ、二次救命処置(ACLS)を行うことができるとの項目が挙げられている。従来のACLSコースは概して、長時間に及ぶ講習時間を要するため、土日・祝日に行われていたものが大半であった。しかし、最近の救急医療標準化に伴う流れとして、ACLSやJPTEC・JATECなどの講習会が土日・祝日に重複して予定されているため、各インストラクターの確保が大変困難となっているのが実情である。また、各研修指導病院単独でこれらACLS(ICLS)コースを開催するには、十分な指導者や教育資機材確保などの面でかなり大きな負担を強いられます。これらの問題を解決するために、平成16年5月より毎月平日に講習会を定期開催できるように年間スケジュールを立て、地域消防局と連携して講習会の資機材を借り入れる代わりに、一定の受講生枠を提供して、安定的なICLS講習会を開催してきました。毎回の受講生枠は15人で運用し、研修医・看護師・消防職員が参加します。原則として、研修医・看護師は院内研修の一環として認知され、当日の業務が免除されて参加することが可能となりました。平日に開催することで、救急救命士を中心としたICLS認定インストラクターを確保し易くなり、質の高いICLS講習会の安定的な運営が可能となりました。平成18年4月までに計22回に及ぶICLS講習会を開催し、救急医学会認定ICLSインストラクターも徐々に増え、院内看護師だけでも9名に達しました。加えて、研修医2年次内に毎年院内ACLS委員を数名設定し、年間を通じてインストラクターとしての参加協力が得られるようになりました。奇しくも世界的な心肺蘇生法のガイドラインが2005年度に更新され、日本版のガイドラインも今年4月に公表されたのを受けて医師・看護師を除くすべての院内職員を対象にした一次救命処置(BLS)講習会を開催することになりました。この企画は救命救急センター運営会議主催で、事務局として教育研修センターの方がバックアップをしていただけます。教育スタッフとしては、先に述べた院内における救急医学会認定ICLSインストラクターや研修医2年次の委員、消防本部から派遣して頂く講習に手馴れた救急隊員の方々で運用を考えています。当病院で働く正職員だけでなくすべての準職員・委託職員(業務委託会社職員を含む)について受講を必須としたため、総勢で700名ほどの数に上ります。毎月第4火曜日に3時間ほどの講習会(最大20名/回)を午前・午後の2部制入れ替えで定期的に開催します。概算では約一年半かけて継続すれば、対象とした受講者全部の講習が終了しますが、新規採用者やリフレッシュアップなどを考慮すると、長期的には開催間隔をあけて息の長い講習体制を構築することが必要と思われます。以上の如く、期間は要するものの全職員を挙げて救命救急処置に対する意識改革を推進するためには、平日の日勤帯に職務の一環として定期的に継続して行われる院内救急講習のカリキュラムを作成することが有効であると思います。
  • 志水 貴之, 三輪 幸利, 桂川 純子
    セッションID: 2D02
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉院内での患者様はもとより目の前での急変された傷病者に対しての基本的心肺蘇生(以下BLS)を実践する事は医療従事者(病院職員)として必要ではないかと感じ、平成15年に臨床検査科の希望者(約10名)を集めてBLS講習会を開催した。
    その後の話し合いで、臨床検査科全員でも実施したほうが良いのではないかということになり、全員参加での開催した。
    継続的に講習会を開催することによる有用性に関して若干の私見とともに報告する。
    〈方法〉第1回目の講習終了後にアンケートを実施してその結果より定期的開催する期間を決定し、平成16年より年2回の割合で実施した。第4回目の講習終了後にアンケートを実施して1回目と4回目での変化を考察した。
    BLSは人形1対に対し受講生は3ー4人、1回の講習は2時間をおこなった。各受講生は受講時必ず6ー7回の実技を行う。
    〈経過〉
      平成15年 希望者(約10名)
     第1回 平成16年 1月20日ー22日 17:00ー19:00 27名
     第2回 平成16年 7月6日ー8日 17:00ー19:00 27名
     第3回 平成17年 1月25日ー27日 17:00ー19:00 27名
     第4回 平成17年 7月26日ー28日 17:00ー19:00 27名
     第5回 平成18年 1月ー継続  17:00ー19:00 毎月3ー4名
    〈結果〉第1回、4回終了後アンケートを実施して、継続実施での効果があるかどうかを考察した。
     :講習はどのくらいの間隔で行うのがよいか
      3ヶ月に1回   11%
      6ヶ月に1回   52%
      1年に1回   37%
     :遭遇した現場でこの講習は役に立つか?
                1回目   4回目
      役に立つ     74%    68%
      わからない    26%    32%
      役に立たない    0%    0%
     :遭遇したとき出来ると思いますか?
                1回目   4回目
      少しならできる   37%    52%
      わからない     56%    48%
      できない      7%    0%
     :BLSは医療職員として覚えたほうがよいか?
       はい       100%
       いいえ        0%
     〈考察〉講習はいつも同じ事を繰り返し実施するということで、回数を重ねることにより記憶に残る部分が多くなり、スムーズに行うことができるようになった。業務中目の前での急変患者様に対しての初動もためらうことなくできると感じている受講者も増加傾向にある。
     開始当初は受講間隔が長くならないように(6ヶ月に1回程度)、慣れてきてからは1年に1回の講習で維持は可能である思われる。
     (ただしアンケートによる把握が必要)
     受講した検査技師は院内・院外での急変に遭遇した場合医療職職員として、BLSの必要性を十分に感じており、繰り返して開催し受講することの有用性は充分に感じ取られた。
     今後はコメディカルの他職種の方々にも受講できる機会を少しでも広げていきたいと思います。
  • 山下 雅代, 畔柳 敏弥, 三浦 崇則, 坪井 伸治, 勝見 章男
    セッションID: 2D03
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>安城更生病院は昭和47年より数名の研修医の受け入れを実施し、平成14年の病院全面移転以降は、毎年20名の研修医を受け入れてきている。
     当院では、研修ガイダンス終了直後から救急外来の日当直に入り、薬の処方が実施されている。しかしながら、この時期における処方行為は、薬に対する知識が不十分であるため非常に危険を伴っている。そこで、当部門では、患者に安全・安心・信頼の医療を提供することを目指して、処方に当たって先ず知っていてほしい事、また患者の立場に立った薬の選択(特に小児における適切な薬剤選択と服用アドバイス)をするために必要な知識を、研修医と共に考える研修を試行錯誤で組み立ててきた。
     そこで今回、18年度の研修医ガイダンス時に実施した研修内容の紹介と共に、研修後に実施したアンケートの一部について報告する。
    <研修内容>研修医ガイダンスの割り当て時間である午前半日(約4時間)を利用し、次の4つの内容に分け研修を実施した。(1)薬剤・供給部門の紹介、(2)処方時に注意してほしい事、過去の研修医による処方疑義照会の事例紹介、(3)救急外来にて処方される主な薬剤の紹介と小児用薬剤の味見(薬と飲料やヨーグルト等と混ぜた場合の味)および体重換算の散剤ならびに水剤の1回量比較、(4)同種同効薬選択の方法を、ワークショップ形式を用いて実施した。また研修終了時には、参加者全員に対するアンケートを実施した。
    <考察>当部門では、処方時の疑義照会の記録を残し、事例の分析を行ってきた。そして、過去の先輩研修医が誤って処方した事例を新研修医に紹介した。このことは、陥り易い処方ミスの事例を知ることで、情報を共有し、自身のミスを減らすことが出来ると考える。
     また当院の救急外来では、小児患者を診察し処方する機会が圧倒的に多いが、処方薬が服用されなければ治療結果は得られない。小児に対して適切な薬剤選択を行うためには、薬効のみならず服用性が重要となってくる。救急外来での診察を始める研修医にとって、処方する機会の多い小児用薬剤の味や1回服用量を知ることは必須であると考える。今回、「この研修で何を学びましたか?」といったアンケートの設問に対し、「何気なく処方する薬も、味や量を気にして処方する必要がある」、「自分が処方する薬の味を知ることは良く考えると必須のことであろうと思う」等の回答が得られた。臨床に出る前に、患者を考えた薬剤選択の必要性と、日当直時に患者から質問されることの多い食物と薬を混ぜたときの味を、研修医自身で体験することは非常に重要な経験であると考える。
     また同種同効薬の中から薬剤を選択するときは、個々の患者背景を知ったうえで、有効性・安全性・経済性の観点より選択する必要がある。研修医の段階から、薬剤選択の視点を持ち、常に判断することは非常に重要であると考える。
     アンケートでは「研修内容を先輩から事前に知り、とても楽しみにしていた」との意見をいただいた。医師としての第一歩である臨床研修において、患者の立場に立った処方と薬の選択が出来るよう、また臨床に生かされる薬の知識を提供できるよう、医師と協力しながらさらに検討を加えていきたいと考えている。
  • 髪の毛混入対策
    益田 弘美, 早川 美恵子, 伊藤 つや子, 中島 たよ子, 水野 正広, 岡田 京子
    セッションID: 2D04
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>一般的に食事提供に関するリスクは、『絶食すべき患者の摂食』『配膳対象者の誤認』『食事内容のまちがい』の概ね3種類に分けられるが、当院栄養科でのリスク内容の多くは異物混入・料理の欠品等であり、主な原因はルール遵守を怠っている場合である。そこで、栄養科医療安全対策部会(栄養士1名・調理師1名・調理員2名)では、異物混入の中でもメンバー全員で取り組むことが出来、かつ安全・安心=サービスという意識付けのため、髪の毛混入対策にテーマを絞り栄養科スタッフの意識レベルの向上に取り組み、良い結果が得られたので報告をする。
    <取り組み調査期間>
    平成17年12月6日から17日の12日間
    <方法>
    (1)髪の毛混入対策のテーマを決定した後、出勤者が全員集合する毎週火曜日の業務連絡会にて公表する。
    (2)メンバーの目に必ず止まる休憩室入り口、主厨房入り口、各病棟パントリー入り口にテーマを張り出し、取り組みの意識付けを行なう。
    (3)身だしなみを整えるため、主厨房入室前に設置してある姿見を見ながら、髪の毛を覆うためのディスポキャップを着用し、その上から帽子をかぶる再教育をする。
    (4)白衣に付着しているであろう髪の毛を取り除くために、粘着テープの使用を徹底させる。
    (5)アンケートを実施して自身で意識の確認をさせる。
    以上、5項目とした。
    <結果>8ヶ月で6件だった髪の毛混入が12月から3月の4ヶ月間で4件となかなか改善に結びつかなかったが、取り組み後1ヶ月間の粘着テープ使用量は、主厨房:約37m、パントリー8フロアー分:約48mで、取り組み前の約2.5倍となり明らかに使用量が増加した。又、取り組み2週間目に栄養科職員49人にアンケートを実施した結果、テーマを理解し積極的に取り組んだという意見は45人(92%)、髪の毛をしっかりネットに入れた48人(98%)、粘着テープの使用が以前より増えた44人(90%)と高い数値であったが、髪の毛の混入改善が出来たという意見は29人(60%)とやや低い結果であった。それは、髪の毛による異物混入が無くなってはいないという現状からであった。そのため、改善ができたとも出来なかったとも言えないという意見は15人(30%)となった。しかし、今後も髪の毛をネットに入れ、粘着テープの使用を継続するという意見が100%で意識レベルの向上に繋がった。又、テーマを決めて栄養科全員で取り組むことに対してどう思うか?と言う問いには、良いと思うが70%以上、行動改善だけでなく意識改善にも繋がる、全員で取り組んだ方が予防の継続になると思う等前向きな意見が多数出された。
    <まとめ>『人を良くする』と書いて“食”と読む。その食事を美味しく、安心して召し上がっていただけるように努めることが栄養科の使命であることを心にきざみ、少しでもリスクを防ぐ対策を取らなければいけない。以前からも髪の毛混入対策は、ルール化されていたが「面倒くさい」という認識の低さから遵守されていなかった。しかし、今回ルールに則り栄養科全員で取り組みを実施したことで、自己責任として問題点を捉えることが出来、それが輪になり個人から栄養科全体の意識改善が得られ良い結果に繋がったと思われる。
  • 三輪 ひとみ
    セッションID: 2D05
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>看護は、患者(療養者を含む)の家族と密接な関係にある。片田らの研究においても、よいケアができたとエキスパートナースたちが感じるひとつの判断基準に、家族へもケアができた時だとある。これは看護師たちが、家族の存在を気にかけて家族の為に何かしたいと考えている現われであるといえる。しかし、病院の在院日数は短縮化され在宅への橋渡しが必要であるにも関わらず、患者は重症化し、患者を支える資源として家族を捉えることはできても、家族を看護の対象として捉えることは非常に困難であると予測できる。看護基礎教育においても看護の対象は患者と家族であると言いながらも、実際には臨地実習で受け持つ短期間に患者家族の看護を展開することは難しい。そこで、間近に行われる看護基礎教育のカリキュラム改正において、家族看護を効果的に組み入れられるように今回のカリキュラム作成に取り組んだ。
    <方法>1.文献より、家族の概念を明確にし、家族看護に必要な内容を抽出した。抽出した内容を看護基礎教育の各専門分野で教授しやすいように分類し、共通する内容ごとにカテゴリー化した。2.学生、教員、臨地実習指導者のインタビューを行った。学生は、1年生5名、3年生5名の各グループで座談会形式により家族看護をどのように考えているか自由に語った。教員、臨地実習指導者は、家族看護について学生がどのような学びをしているか、また学生に何を学んで欲しいか、個人インタビューをした。さらに教員は、講義の中でどのように教授しているか語った。インタビュー結果からカリキュラムへの活用方法を明確化した。3.上記をもとに専門分野の目標と在宅看護論の学習方法を設定した。
    <結果>文献は、患者あるいは在宅療養者の状況と家族の関係性の視点から6つに分類した。(1)自宅で暮らす療養者とその家族、(2)退院に向かう障害を持つ患者とその家族、(3)精神障害患者とその家族、(4)終末期にある患者とその家族、(5)急性期にある患者とその家族、(6)患児とその家族である。この6つの対象別に家族の理解と家族の看護の内容をまとめた。学生のインタビューでは、臨地実習を通して家族をどのように捉えたかと、看護として、ねぎらいの声かけ、そばにいる、安らぎの時を提供するなどが語られた。また、自己体験との置き換えや既習学習との比較、家族からのフィードバック、ロールモデル、家族の一途さや必死さからの刺激により学生の感性が揺さぶられ学習行動につながっていた。教員や臨地実習指導者のインタビューでは、家族の情報はとれているが、看護としてはそばにいて話を聞くことが精一杯の状況であり、看護として家族の話が聴けていないことが語られた。以上をふまえ、専門分野の科目目標に家族看護に関する目標を設定した。目標設定は、文献から抽出した内容を表現できるようにした。(例:成人看護学:終末期にある患者と家族の関係を理解し、家族の感情を十分表現でき、気持ちに折り合いがつけられる看護支援を理解する)さらに在宅看護論は、インタビューで語られた学生の学習行動を参考に学習方法を設定した。講義形式に偏らず、フィールドワーク調査、ロールプレイング、グループワークを取り入れた。
    <今後の課題>今回は、家族看護に焦点をあてたカリキュラムであったが、カリキュラム改正に向けては、現状をふまえ看護基礎教育で教授すべき内容を抽出し目標や方法を設定していく必要がある。
  • 沢木 明美, 佐藤 愛子, 谷村 さゆ子, 田村 佳代子, 大渕 博秋
    セッションID: 2D06
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院では平成17年5月看護支援システムが導入され、看護度入力は時間効率を考え、師長及び代行者の手記入から受持ち看護師入力に移行した。3週間後、看護度評価を相対的単純集計したところ、評価に若干の違いがあった。そこで、今回の結果を分析し今後のスタッフ教育への関わりについて検討したので報告する。
    <研究目的>測定者交代により差が出るか明らかにし、今後の看護度評価のスタッフ教育への関わりについて示唆を得る。
    <研究方法>期間:平成17年2月から11月まで(2月から4月 導入前・師長記載。6月から8月 導入後・スタッフ記載。10月から11月 学習後・師長とスタッフ、同一患者記載)対象:期間中の入院患者48,409名、病棟看護師96名、経験年数平均16年。調査背景:導入前、導入後、学習後に差は見られなかった。方法:1,導入前後の看護度別集計。2,学習後の看護度別集計を師長・スタッフ別に評価。3,質問紙アンケート調査3項目。
    <結果>1,導入前後の看護度別集計では、観察度Bに差があり、生活の自由度では2と3に差があった。12分類では、A2、A3、A4とB2に差がみられた。2,学習後の看護度別集計では、1週間ごとの変化では、ほとんど差はみられなかった。3,アンケートの結果、1)入院後、何時間以内に入力したかでは、1時間62%、2時間11%であった。2)どんな時に入力したかでは、基礎情報入力時58%、業務が落ち着いてから25%であった。3)看護度入力は十分できているかでは、十分できている8%、普通64%、不十分25%、その他3%であった。4)各項目を選んだ理由の自由記述をみると、十分できているは、いつも入力しているから、カンファレンスに活用しているからであり。普通では、時々ガイドを見て入力しているであった。不十分は、間違えて評価することがある、患者の状況に合わせた評価ができていない、などが多かった。
    <考察>今回オーダリング導入を期にその前後の看護度を単純集計した結果差が見られ、カルテ調査したところ、師長は看護観察の程度に焦点をおき、スタッフは生活の自由度に焦点を置く傾向が見られた。さらに、看護度活用認識についても、経験年数別にばらつきがあり、カンファレンスに十分活かされていないことがわかった。そこで、9月を師長スタッフ学習月間とし、看護度基準マニュアルを用いた事例学習を行った。そして10月・11月に同一患者を同勤務時間に師長とスタッフが評価した結果、ほぼ同じ評価で差は見られなかった。このことから、看護度基準マニュアルを用いた事例学習は効果的であったと考える。平井らは、「看護の量を、毎日簡便に患者の状態を測定し現場に反映できるのが望ましい」と述べている。今後は、日々誰がチェックしても同じような結果が得られるよう、師長、主任合同学習会および各病棟での学習会を継続し、スタッフ全員が日々の業務に反映できるよう、看護度評価の必要性を問い続けていきたい。
    <もとめ>1、看護支援システム導入前後の看護度評価比較で、師長は看護観察の程度に焦点を置き、スタッフは生活の自由度に焦点を置く傾向にあることがわかった。2、今後は、事例学習を用いたスタッフの教育と、全部所がカンファレンスに活かせる学習会の必要性が示唆された。
  • 過去3年間の調査結果より
    杉山 小夜子
    セッションID: 2D07
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>近年の保健医療を取り巻く環境が大きく変化する中、看護職員の業務にも様々な変化が生じている。医療技術の進歩、患者の高齢化・重症化、平均在院日数の短縮化により看護職員の業務密度が高まっている。当院は毎年50名前後の新人看護職員を受け入れている。看護基礎教育の見直しがされる中過去3年間の調査をもとに新人看護職員の職務状況を検証した。
    <方法>1.対象及び方法:平成15年度-平成17年度の新人看護職員を対象に、基礎看護技術評価、知識・技術・心身面の評価、退職状況、職務適応状況を看護課長・係長よる紙面調査を実施。評価方法はA:1人で出来るまたは適応B:援助があれば出来るまたはサポート必要C:出来ないまたは不適応の3段階評価とした。新人看護師には夜勤導入時期に抱える不安についてアンケート調査をした。2.倫理的配慮:調査目的、プライバシーの保護について文章にて説明同意を得た。
    <結果>調査結果
     基礎看護技術3ヶ月後のC評価項目は特殊部署を除き、輸液中の下半身シャワー・ドライシャンプー・視力障害者の食事介助・摘便・男性・女性導尿の項目であった。与薬の舌下剤・中殿筋による筋肉注射・輸血は対象者が少ないためのC評価であると考えられる。皮内注射については、抗菌薬テストが廃止になった為と思われる。3ヵ月後には臨床現場の指導・努力により予想外に『出来ない』という項目は少なかった。就職6ヶ月後の知識・技術・心身面のC評価をみると知識面は平成15年度0%平成17年度10.9%であり10倍に増加している。技術面は平成15年度2%、平成17年度12.7%と約6倍に増加している。心身面は平成15年度4.1%平成17年度1.8%とあまり変化はみられなかった。6ヶ月以内の新人看護職員の離職率は平成15年度0%平成16年度2.4%平成17年6.3%と増加している。しかし、看護協会による調査では1年未満の平均離職率は平成15年度8.4%平成16年度9.3%と報告されており、この結果と比較すると当院は低い離職率である。また学歴別離職状況は平成15年度0名平成16年度看護専門学校卒1名平成17年度看護大学卒2名・看護専門学校卒1名であった。看護短期大学卒はいずれも0名であった。職務不適応者数は平成15年度4名中知識・技術B評価が各々2名心身面B評価は3名C評価1名であった。平成16年度4名中知識・技術B評価が各々2名心身面B評価1名知識・技術・心身面C評価は各々2名であった。平成17年度10名中知識・技術B評価は各々3名心身面B評価7名C評価については知識・技術各々6名心身面C評価2名であった。1人当たりの知識・技術評価率は平成15年度0%平成16年度50%平成17年度60%と上昇している。夜勤導入時期に関する不安については
    1)多くの患者を担当すること
    2)急変患者への対応
    3)ペアーもしくは夜勤メンバーへの負担
    4)未経験項目・不足の自覚
    といった意見があげられた。
    <考察>新人看護職員の問題は基礎看護技術1年後もB評価が約35%を占め、2年間で達成できている状況である。臨床現場で多くの患者と接しなければ培っていけない現状がある。職場不適応者は年々増加傾向にあり、臨床現場で求められる予測や的確な判断に基づく必要な知識・技術を駆使し、統合していく能力に欠ける状態で複数患者を受け持つことが問題の背景となっていると考えられる。安全な医療が提供できる新人看護職員を育成するには、教育の見直しが必須と考える。   
  • 亀井 洋子, 石川 奈帆子, 名倉 良志, 善 庄二郎, 林 琴美, 当山 清紀
    セッションID: 2D08
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 安城更生病院に併設されている当老健施設では医療安全対策についても病院組織の一員として参加している。毎年医療安全推進月間を設け、統一したテーマで全職員の安全意識の向上を図っているが、2005年度は「危険予知をみつけて」を大きな目標としてかかげ、10の具体的な要点について11月21日から12月22日までの間に各部署で運動を展開した。われわれは安全な介護・療養を提供するため「整えよう診療環境、作りあげよう作業環境」ということで危険予知トレーニングに取り組んだのでこれを報告する。
    <実践・結果> 老健スタッフに「どんな時、どんな点、どんな所で危険を感じたか?」と問いかけを行った。総数197件の意見のうち、44件と指摘のもっとも多かった浴室環境を検討の対象として選んだ。各フロアのショートカンファレンスで、実際の浴室状況を撮影した写真を提示してそれぞれのスタッフが「ここが危険だ!」と判断する点を列挙する方法で危険予知トレーニングを行った。この際、各フロアで実行手順と記録様式を統一し、検討の方向にずれが生じないような進行を図り、1週間連日で実行した。ここから出てきた対策方法を川柳の形式で表し、各フロアの浴室とスタッフがよく目にする所に掲示して常に認識できるようにした。安全推進月間の終了後に各スタッフに対して浴室環境の安全性についての意識調査を行った。デイケア部門では36%、2ヵ所の入所フロアではそれぞれ74%、69%のスタッフで危険要素を早めに見つけて対処することを心掛けるようになったとの意識変化が見られた。カンファレンスでは、川柳にして標語が作ってあるため堅苦しい言葉ではなく利用者が目にしても不快にならず、共に気をつけて安全を守るという意識が持てること、客観的な観察を心がけて危険な点を認識することができるという意見が出た。
    <考察> 一般に老健施設内でもっとも多いリスクは転倒・転落といわれており、われわれの施設でのリスクレポートの約8割がこれにあたる。幸い入浴中の大きな事故は起きていないものの浴室は危険性が高い所に変わりはない。自分たちが日常的に業務を行っている場面を写真にして集めることは比較的容易に実施できることである。それらの資料を客観的に見なおし、共同作業で問題点を見つけ出す危険予知トレーニングは転倒予防にも効果があったと思う。話し合いや川柳を掲示した後は、危険予知について認識が高まったが、これを薄れさせないよう常に心掛けていく必要がある。今回の取り組みで挙がった危険因子についての意見を安全でよりよい介護に反映していきたい。
  • 田切 志保子, 比護 佳代, 白石 美奈子, 五味川 ゆき子
    セッションID: 2D09
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <目的>当院では、平成13年度より医療安全対策の一環として4M-4Eマトリックス方式を用いてインシデントレポートを分析している。院内リスクマネジメントシステムや業務手順を整備しても職場では、同様のインシデントが発生している。
     インシデントレポートを集計分析し、職場リスクマジメントの問題を明らかにし事故防止につなげたく取り組んだ。
    <方法>
    (1)2003年‐2005年のインシデントレポートを集計分析する。
    (2)職場リスクマネジメントの問題を分析し対策を実施する。
    (3)全体学習会で現状報告し、リスクマネジメントシステムを周知徹底させる。
    <結果及び考察>3年間のインシデントの分析から、年間の平均インシデント発生件数は、43件で大きな変化はなかった。輸液・与薬・機械が全体の60%を占め、ヒューマンエラーが88%と一番多く、個々の意識の相違から報告・対応の遅れ・共有化が不十分であることが分かった。学習会の実施で現状の問題点を受け止めることで共通認識をもって行動し、輸液と機械に関しての発生件数が減少した。
    <まとめ>レポートの分析結果から、輸液・与薬・機械に関する発生件数が多く、その要因は、ヒューマンエラーであった。原因の一つとしてリスクマネジメントに対する共通意識の甘さがあり、システムを周知させ実践することで輸液と機械の発生件数を減少することができた。職場全体のリスクマネジメント機能の向上が事故防止につながるといえる。
  • 鈴木 敦子, 永山 美子, 棚谷 すみえ, 樗木 智聡, 野口 昭三
    セッションID: 2D10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>UTI(Urinary Tract Infections)は院内感染の約40%を占めるとの報告があり、そのうち75%はカテーテル留置に関連した尿路感染症(Catheter associated Urinary Tract Infections:CAUTI )である。CAUTI発生の原因はフォーレ挿入部、カテーテル・バッグ接合部、採尿部であるとの報告があり、留置ケアの改善と閉鎖式カテーテルの導入により減少の可能性が示唆された。
     高萩協同病院では平成10年に主任者会議に付属する形式で院内感染対策委員会(ICC)が発足した。平成14年10月に感染対策事項を円滑に進める目的で下部組織の感染対策室(ICT)を発足。平成15年11月、主任者会議から独立し病院長直属の機関として権限を与えられ活動を開始した。それまでマニュアルの遵守が不十分であり、スタッフの長年の経験と勘によりエビデンスに基づかない感染対策が行われていた。
     平成15年に“院内感染対策マニュアル第2版”が完成し各部署に設置したが、コンプライアンスの改善がなされない部分も見られた。今回CAUTIのサーベイランスを行い、現状把握をするとともにエビデンスに基づいた対策の徹底化を行うことにした。尿道留置カテーテルに関する報告によると、そのほとんどは閉鎖式フォーリカテーテルによるUTIの減少であり、これの使用でUTI発生率が5%減少したとの報告もある。国内施設のサーベイランスの報告によると1,000devices day当たり4.4〜12.8程度の報告がある。また感染防止先進国の米国では尿道留置カテーテルといえば“閉鎖式”を指し、約80%はこれを使用している。開放式カテーテルは閉鎖式と比べてCAUTIの発生率が高く、また医療材料としての償還における病院の負担も大きい。現在当院では100%が開放式での管理でありCAUTIの発生率が心配された。
    <方法>2005年2月から2006年1月の1年間の開放式カテーテル使用におけるCAUTI発生率をCDCガイドライン(一部編集)に基づきサーベイランスを施行した。
    <結果>2005年2月から2006年1月の1年間の開放式カテーテル使用におけるCAUTI発生率は1,000devices days当たり12.7(延べ尿道留置カテーテル使用数3,065devices days)と高値であった。この結果を受けて、現状における問題点を明確にして改善を行った。改善点としては、できるだけカテーテルを使用しない、カテーテル接合部を安易に外さない、バッグを床面に接地させない等である。閉鎖式カテーテルを使用した2006年5月からのCAUTI発生率は調査中である。
  • 齋藤 由利子, 齋藤 浩子, 池田 和江
    セッションID: 2D11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉
     病院感染対策の一環として、病院感染症サーベイランスの重要性が着目されている。病院感染は、医療コストを増大させ、また入院期間を延長し患者の精神的・肉体的負担も増大することで、患者・家族の医療に対する満足度を著しく損なうことになる。 SSIは外科手術後の最も多い合併症であり、特に消化器外科における発生率は高いといわれている。当院外科病棟においても、SSIの発生が非常に多いと感じたことから、現状を把握しEBMに基づく対策を実践することでSSIを減少させることを目的にSSIサーベイランスを開始した。SSI予防対策を検討・実践し、また改善策を実践したことにより発生率が減少したのでここに報告する。
    〈方法〉
    1.SSIサーベイランス期間
    H.15.3からH.15.8 :後ろ向き調査
    H.15.8:SSI予防対策の検討
    H.15.9からH.17.10:対策実施後の調査
    2.SSIサーベイランス対象
    外科病棟手術患者(全身麻酔・脊髄麻酔患者:肛門手術を除く)
    3.SSIサーベイランス項目
    氏名、年齢、手術日、術後診断、術式、術者、創分類、ASAスコア、手術時間、剃毛の有無、縫合糸、ドレーンの有無、抗生物質、SSIの有無、他の感染症の有無
    4.SSIの判定
    CDCによるSSI診断基準に基づき、医師が診断した。
    5.SSI発生率の算出
    手術別感染率、NNIS(米院内感染サーベイランス)リスク別感染率を対策別に算出した。
    6.SSI発生患者と発生しない患者の術後
    平均在院日数を算出した。
    〈結果〉
     対策前のSSI発生率は、外科手術全体で15.7%、対策後の平成17年10月までの発生率は5.4%に減少した。手術別SSI発生率は、大腸手術が38%から15.7%に、虫垂手術が23.5%から13.2%に、胆嚢手術が13.3%から2.0%に減少した。このうち、大腸手術はX2検定でP=0.0072と有意差を認めた。このことからSSI防止対策は大腸手術においてもっとも有効であったといえる。発生率を比較するに当たり、リスクが高いほど発生率は高くなるが、NNISのリスク2以上を比較すると、対策前は6.1%、対策後は5.2%とリスクの大差は認められなかった。
    段階的対策におけるSSI発生率は、
    (1)CDCガイドラインによる対策のうち当院で可能な対策を実施(H15.9から):SSI発生率6.6%
    (2)上記(1)に加え、術後48時間以降の手術創の解放と手術創の消毒廃止(H.16.4から):SSI発生率9.0%
    (3)上記(1)と(2)に加え、皮膚の縫合糸をモノフィラメントに統一(H.16.12からH.17.10):SSI発生率5.4%に減少した。手術創の解放と消毒廃止で一次発生率は上昇したが、対策を継続しつつ絹糸を廃止しモノフィラメントに変更、結果的に発生率は低下した。
     SSI患者の術後平均在院日数は、虫垂手術は11.7日、胆嚢手術は16.5日、結腸手術は18.5日延長し、SSIを起こさなかった場合より約2倍入院期間が延長された。
  • 本多 領子
    セッションID: 2D12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     昨年12月7日出産し退院2週間後の新生児から2月1日現在で、新生児に院内感染を疑う症例が8例続いた。黄色ブドウ球菌の感染でどこの病棟でも易感染者(未熟児、新生児、高齢者、術後患者、カテーテル挿入患者など)に起こり得るものである。今回の黄色フ゛ト゛ウ球菌は「フ゛ト゛ウ球菌性熱傷様皮膚症候群」であった。アウトブレイクが疑われた為、病棟師長、主任、病棟スタッフ、小児科医師そして感染対策委員で臨時の院内感染防止対策委員会を開催した。以下の対策を行い、アウトブレイクを終息することができたので報告する。
    <ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)とは>
     SSSSは黄色ブドウ球菌によるとびひの重症例といえる。細菌である黄色ブドウ球菌が産生する表皮剥離性毒素(エクソフォリアチン)が血流を介して全身の皮膚に達し、広範な熱傷様の皮膚の剥離を起こす。生後1ヶ月以内の新生児が発症したときには、リッター新生児剥脱性皮膚炎と呼ばれ、重症となる。治療は抗生物質の全身投与、皮膚保護、全身管理で、1週間くらいで瘢痕を残さず治癒し、予後は良好である。
    <対策>
    1.手洗い、手指消毒の徹底
    病室の入退室時に、アルコールローションによる手指消毒を行う。
    2.手袋の着用
    新生児に触れる時は手袋を着用する。
    手袋を外した時は、手洗いもしくは手指消毒をする。
    3.ガウンについて
    接触感染予防目的のマスク、キャップおよびガウンの有効性については、根拠が 不十分である。沐浴時にはプラスチックエプロンを使用する。
    4.環境整備
    (1)ドアノブ、床、ベッド柵など(患者様がよく触れる場所)は、1日1回70%エタノールを用いて、不織布で拭く。汚れのひどい場合は、水拭き後、消毒する。
    (2)体温計は使用前後に酒精綿で清拭する。体温計の容器も定期的に消毒する。
    (3)ベビーコットは70%エタノールを用いて、1日1回不織布で清拭する。
    (4)新生児室、授乳室の清掃は、委託をやめ、看護師で行う。
    5.新生児のリネン類の毛布は頻回に洗濯できないので、毛布の使用を中止した。
    6.鼻腔のブドウ球菌の除菌
    病棟に関わる医療従事者全員にバクトロバン軟膏を鼻腔内に3日間投与した。
    鼻腔に触れないようにマスク着用とした。
    7.教育
    職員にはインフェクションニュース号外で情報提供した。
    患者様には病棟でパンフレットを作成し説明する。
    8.環境検査
    新生児室、授乳室、病棟、体温計など25ヶ所拭き取り検査を1月31日に実施した。
    <考察>
     環境の拭き取り検査からはアウトブレイクを起こすような菌は検出されなかった。病院での院内感染の多くは医療従事者を介しての接触感染である。今回アウトブレイクが疑われた時点ですぐに手洗いや手指消毒の徹底を行い、新生児に触れる場合は手袋着用とした。また、頻回に触れる場所は、70%エタノールによる消毒を開始した。感染対策後2ヵ月経過したが、新たな感染は発生していないので、黄色ブドウ球菌によるアウトブレイクは終息したと思われる。今後も患者様が安全な医療が受けられるように、院内感染防止に努めていきたい。
    <まとめ>
    1.アウトブレイクが疑われた時点で、迅速な対応が大切である。
    2.職員や患者様に情報提供する。
    3.職員の院内感染防止に対する意識が高まった。
    4.院内全体に、頻回に手が触れる場所の環境整備について変更した。
  • 伊藤 幸代, 島崎 豊, 土屋 幸子, 脇坂 達郎, 大川 浩永, 諸戸 昭代
    セッションID: 2D13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>近年は、針刺し切創事例による職業感染が問題視されるようになった。当院では、1996年9月より針刺し切創報告書(EPINet)を使用したサーベイランス始め、安全性の高い器材の導入や針刺し後のフォローアップを強化している。2003年度より職員が増員したことに伴い針刺し切創事例が増加したため、安全装置付き留置針(以下、安全器材)を導入した結果、針刺し事例が減少したので導入の経緯とその効果について報告する。
    <導入の経緯>針刺し切創事例の増加と安全器材が診療報酬で請求可能となったことを踏まえて各種の安全器材について評価・検討した。
     器材の選定には、特に安全器材に要求される必要条件とその操作性、カテーテルの素材と長さなどについて総合的に検討を加えた結果、穿刺針がセーフティバレル内へ引き込まれ、カテーテルが現在使用している製品より短くカテーテルハブが翼付きタイプの製品を選択した。
     導入時の指導には、各部署単位でメーカーの米国IVナース有資格者によるプレゼンテーション形式の指導を実施した。また、新人看護師に対しては、オリエンテーション時にリンクナースやICTによって実技指導を実施した。
    <結果及び考察>導入した安全器材について穿刺針がセーフティバレル内へ引き込まれるタイプは、操作に慣れるのに少し時間を要したが使用後から廃棄までの間、針を安全に処理できるため安全性が高いと好評であった。
     カテーテルハブを翼付きタイプにした結果、カテーテルの固定が安定して皮膚への圧迫も軽減された。特に高齢者の場合、皮膚への刺激や固定のしやすさなど評価が高かった。
     カテーテルの長さを短くした結果、高齢者など血管がもろく蛇行している患者の場合は挿入しやすいと評価が高かった。
     安全器材導入前後の針刺し事例は導入前が64件中12件、導入後が31件中2件と減少した。この2事例は、安全器材を正しく操作しなかったためであった。
     各部署におけるプレゼンテーションは、基本的な解剖・生理や血管に見立てたモデルを使用して、安全器材の操作方法とQ&Aなどを取り入れた結果、スタッフにわかりやすい内容であった。また、安全器材の操作説明用のVTRを院内Webよりいつでも視聴できるように配慮したこともあり、安全器材はスムーズに導入できたと考える。
     新人看護師の実技指導は、各部署でのプレゼンテーションと同様に、VTRと血管のモデルを使用して実施した結果、カテーテルの挿入が具体的でわかりやすく好評であった。実技指導中に新人より「実際に使用してみたい」との申し出があり、新人同士で実施したことで自信に繋がり、病棟での実技に有効であった。
    <まとめ>安全器材は各製品の特徴を検討して選択することが重要であり、導入時はメーカー担当者、リンクナースやICTなどの人材を活用することが必要である。
     今回の安全器材導入によって、針刺し事例が減少することが証明された。
     今後は、針刺し切創事例の発生頻度が高い採血針、インシュリン針などの器材変更を検討するとともに、針の正しい取り扱い方法について指導を強化して、職業感染のリスクを低減していきたい。
  • 吉澤 裕義, 冨永 等, 横山 茂, 大久保 吉弘, 原 敏博
    セッションID: 2D14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>2004年当時、当院で使用中の速乾性擦込式手指消毒剤(以下消毒剤と略)について、薬剤部からの払い出し量が職員数に比べて少ないことに気が付いた。その原因解析のためにICTにより職員に使用感・使用頻度などに関するアンケート調査を行った。アンケート結果と当院の臨床分離菌に対する抗菌力の比較から消毒剤を変更した。また、ICTによる院内ラウンド活動により使用量がどのように変動するかの解析を行った。
    <経過1:消毒剤見直し前>アンケートの結果、2004年当時使用中の消毒剤は「必要量をとりにくい」「ベトつく」と答えた職員が全体のほぼ半数に達していた。「使用時の不快感による使用頻度の低下」と考え、消毒剤の見直しを行った。見直し作業は、3社の同効製品[グルコン酸クロルヘキシジン含有50%エタノールゲル(以下A剤と略)と同効のグルコン酸クロルヘキシジン含有80%エタノールジェル(以下B剤と略)および80%エタノールゲル(以下C剤と略)]において、使用感の比較、当院臨床分離菌4種に対する抗菌力の比較を行った。これらのデータから「使用感が良好であること」「均等な殺菌力を持つこと」からB剤とC剤を選択し、「消毒有効成分が乾燥後も消毒面に残ること」を考慮しB剤を採用することとした。
    <経過2:消毒剤見直し後>2004年11月に院内一斉にA剤からB剤に変更した。その結果、変更後約一ヵ月後の2回目アンケート調査では、「使いやすい」「使用回数が増加した」と答えた職員が約80%にのぼった。変更した消毒剤の薬剤部からの月間払い出し量は約2倍と増加し、1回使用量で補正した手指消毒回数は約3倍に増加したと考えられた。
    <経過3:ICTラウンドと使用量変化>消毒剤変更後、使用量を継続的に追跡していたが、使用量の増加が充分ではなく、払い出し月によっては前月よりも低下することも観察された。その状況を改善するために、(1)手指消毒の重要性に関する院内講習会の開催、(2)ICTのラウンド時に、消毒剤配置の適正化、使用手順の確認について現場との協議、(3)現場でのスタンダードプリコーションにのっとった消毒剤使用の啓発、を行った。その後もラウンドを重ねるたびに特に消毒剤使用に関する啓発を繰り返し行った。その結果、薬剤部からの消毒剤の払い出し量は、ラウンド時の啓発開始前と比較して、43%増(2006年3月現在)となった。
    <考察>使いやすい消毒剤への変更により以前より使用量は増加したが、その後の使用量の増加が充分ではなかった。ICTラウンド時に、消毒剤使用の啓発などを繰り返し行ったところ、徐々に使用量の増加が見られた。消毒剤の薬剤部からの払い出し量を手がかりとして各現場での実際の使用状況を観察した上で消毒剤使用に関する具体的な啓発活動を繰り返し行うことが重要であると考えられた。
  • 齊藤 真, 小松 貞子, 奥山 江利子, 菊地 律子, 多田 豊一, 佐藤 多恵子, 村上 清子, 工藤 つぎ子
    セッションID: 2D15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>2005年2月1日、医療法施行規則の一部を改正する省令が公布され、手術室の構造設備に関する規定が、「滅菌水手洗いの設備が必須ではない。」と改正された。
     当院でも設備の維持管理に年間約260万円の経費がかかっている。積極的なコスト削減策は重要な事項である。このため改正医療法に沿った取り組みを求められることは必定と思われた。
     しかしただちに変更することに抵抗を覚えるスタッフが多いのではないかと考え、手術時手洗いに対する現在の考え方を知り、今後の方向性を見出す目的で調査に取り組んだ。
    <方法>研究方法:無記名による質問紙調査
    調査内容:法改正・水道水による手洗い・速乾性手指消毒剤の使用
    調査期間:平成17年5月7日から9月9日
    調査対象:外科系医師35名、麻酔科医師3名、研修医28名、手術室看護師20名
    <結果>84名から回答を得た。回収率97.7%。
     『平成15年度厚生労働科学研究費補助金による緊急特別研究「医療施設における院内感染(病院感染)の防止について」の研究報告について知っていますか。』に対し「知っている」28名、「知らない」54名。「水道水で手洗いをすることに抵抗を感じますか。」に対し、「抵抗あり」30名、「抵抗なし」54名。抵抗ありの理由は、「経験がないので、なんとなく戸惑いがある」20名と最も多かった。「手洗い後、速乾性手指消毒剤を使用していますか」は、「使用している」41名、「使用していない」39名。使用していない理由として、「手が荒れる・しみる」をあげた13名の手洗い方法は、ブラシ使用が11名であった。
     「今後、水道水で手洗いを施行することとなった場合、取り組まなければいけない課題などはありますか」に対し、「速乾性手指消毒剤使用の徹底」を挙げたのは37名、「術中の手袋交換」は21名であった。
    <考察>掲示した規則に対して、知らないとの答えが54名と多かったのは改正後、日が浅かったことや、カンファレンスルームへの出入りの頻度、日頃の感染に対する関心の程度が影響していると推察する。しかし法改正を知らなくとも水道水で手洗いをすることに抵抗を感じない人の方が多かった。法改正を知っているか知らないかは、手術時手洗いに水道水を使用することに対しての抵抗感に関連しないといえる。
     2002年のCDCガイドラインで高く推奨されている速乾性手指消毒剤の使用は必須である。しかし半数が使用しておらず、理由として「手が荒れる・しみる」をあげた13名中11名は手洗い方法としてブラシを使用していた。微生物学的な観点から皮膚の損傷を最小限にする必要があり、個人のハンドケアや手洗い法の見直しも重要となってくる。さらに保湿効果のある速乾性手指消毒剤の導入などの検討が必要と判った。
    <結論>1、法改正について知っている・いないに関わらず、54名(62.7%)が手術時手洗いに、水道水を使用することに抵抗を感じていないことが分かった。
    2、水道水使用に抵抗があるは30名(35.7%)でその理由は経験がない、衛生管理が心配、習慣的なものであった。
    3、速乾性手指消毒剤の使用は41名であった。使用しない理由として、手が荒れる・しみるが13名と最も多かった。
    4、水道水に関わる衛生管理の状況報告や速乾性手指消毒剤使用の必要性・正しい知識の浸透など今後の取り組みの方向性がわかった。
  • 永山 美子, 棚谷 すみえ, 樗木 智聡, 野口 昭三
    セッションID: 2D16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>県北医療センター高萩協同病院での輸液ミキシングは末梢輸液,高カロリー輸液ともにスタッフステーション内の調整台で行われている。輸液中に細菌・真菌などが混入することが一つの原因となって起こるとされているカテーテル関連血流感染(以下、CRBSI)がある。NNISレポートによると,CRBSI(1992‐1999年)の起因菌は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(以下、CNS)37%,カンジダ属8%などの弱毒菌がひき起こしているとの報告がある。患者のケアを行ったスタッフの手→不十分な手洗い・細菌汚染された調整台→輸液ミキシング行為→注射薬へのコンタミネーション→投与患者のCRBSIとなることも想定できる。本来であるならば輸液ミキシングはクリーンベンチ内で行うことが理想であるが,現在の状況下において最善の治療サービスを提供するために,調整台と手指の高頻度接触表面の細菌学的調査を行うこととした。
    <方法>検査対象:(1)各病棟,各外来の輸液調整台,(2)各病棟,各外来の高頻度接触表面(ベット柵・ドアノブ・手すり)の細菌調査を行う。
     培養方法:滅菌生食水で湿らせた滅菌綿棒で表面を全体的に拭い,それを直接,血液寒天培地とMDRS‐II培地に塗抹する。
     培養条件:37℃48時間培養(好気培養)
     調査日:12月、2月、3月の計3回
    <結果・考察>各病棟・外来調整台よりCNS,カンジタなどが多く検出された。救急室など不特定多数の医療従事者が出入りするところでは、菌量が他のところと比べると多くみられた。また,下腿創部よりMRSAが検出された患者の部屋近くの手すりからは,MRSAが検出された。(2月検査のみ)今回の調査結果によって環境整備の徹底を行った。当院ICCの調査によると,各科の病室清掃は各個人によるものにまかせていたので,方法などばらつきがあった。輸液調整台などは各勤務帯のミキシング行為直前にアルコールでの清拭をすることとした。そして,各科に手順をパンフレットにし配布,各科統一した。高頻度接触表面は1日1回清拭を行うこととした。CDCガイドラインにおいても,経験のないスタッフが血管内カテーテルの管理・維持を行うことはカテーテルの菌定着やCRBSIの危険性を増加させる可能性もあるとされている。以上のことからも院内教育の重要性があげられる。当院ICCによる(1)新人研修,(2)ICTにおける手洗いの勉強会,(3)職員再教育,(4)血管カテーテル挿入時のマニュアルの作成,(5)病棟ラウンド,(6)病院感染症サーベランスを行うことが望ましいと思える。現在は(2)・(5)・(6)においては実践されているが,教育においてはまだ行われていないのが現状であるため早急に解決したいと思う。尚,当院は平成18年4月より新築移転し高カロリー輸液は薬剤部のクリーンルームで末梢輸液はサテライトファーマシーのクリーンベンチで行う予定である。この場合スタッフの手指衛生がとても重要になってくる。院内感染防止で手指衛生は基本であるため,教育・啓蒙をすすめていきたい。
  • 島崎 豊, 脇坂 達郎, 伊藤 幸代, 土屋 幸子, 諸戸 昭代, 大川 浩永, 高橋 幸広
    セッションID: 2D17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 近年は,感染防止の基本として標準予防策の実施が要求され,手袋・マスク・プラスチックエプロン等の個人用防護具を適切に配備し,その使用方法について職員へ周知する等の対応が必要となっている。これらの個人用防護具を適切に使用するためには,病室などにおいて使いやすい場所に設置することも重要な課題である。当院は,ダンボールなどを廃物利用して手作りのホルダーを使用してきたが,新病棟移転に伴って病室などの美観を害することや耐久性に乏しいことが指摘されていた。それらの問題点を解決するために入手可能な製品について検討したが,使いづらいものや経済的に負担が大きいなどの理由で導入には至らなかった。 今回,感染対策チーム(ICT)が中心となって,使いやすい4段式の専用ホルダーを開発したので報告する。
    <開発の経緯>
    (1)現在入手可能な製品の評価
     安価な製品はマスクや手袋などが3個までしか収納できず,それらの補充にも問題があった。他の製品は,デザイン性に優れホルダーを増やすことも可能であったが,コスト面で問題を残した。
    (2)プラスチックエプロンの見直しとホルダーの形状について
     現在使用しているプラスチックエプロンは,導入後約10年が経過しており50枚入りの物をフックなどに吊り下げるタイプの製品である。そこで,他の製品を評価したが100枚入りで大きく重い製品が多く見られたため,日本文化連を通じて50枚入りで容器が手袋と同様の形状,大きさの製品の開発を依頼した。
    ホルダーの形状は,マスク・手袋(SサイズとMサイズ)・プラスチックエプロンの容器が4個収納でき,ホルダーの横から容器を交換できる物とした。
    (3)ホルダーを製品化できるメーカーの選定
     日本文化連の紹介でメーカーを選定することが可能となった。
    (4)ホルダーの設置方法・大きさ・材質・重量・コストについて
     看護ケアの多い患者やMRSAを始めとする耐性菌感染症の患者は,主に個室で管理されることが多いため病室入り口にあるフックを利用して設置することになった。ホルダーの大きさは,各メーカーのマスクや手袋の容器から算出した。材質は,軽量化を図るためプラスチックやアルミ製を考慮したがコスト増に繋がるためスチール製とし,スチールの肉厚と溶接部分を削減して約2Kgにすることができた。
    (5)試作品を使用して細部にわたる再評価を実施
     試作品は2種類作成し,対象病棟を選定して2から3ヶ月間使用し細部について評価・検討した。
    <結果> 医療材料や医療用具の新規導入には,現状の製品を見直し経済性を考慮した取り組みが必要である。また,臨床現場で使いやすい医療用具などは,メーカーと使用者サイドとの情報を共有して製品に反映させることも重要である。 今回開発した専用ホルダー導入後は,スタッフより病室内の美観を損なわず使いやすいと好評を得ている。 また,購入費用についてはプラスチックエプロンを変更することで,現状の製品より安価となり購入費は年間528,000円削減できると試算された。ホルダー130個の購入費は477,750円となったが,プラスチックエプロンの変更で削減可能な費用をホルダー購入費に充てることができた。
  • 菅沼 康久, 大矢 江里子, 北村 顕
    セッションID: 2D18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院は平成16年3月に国際規格ISO9001(2000)を認証取得した。ISO認証取得までには、医療サービス方針、医療サービス目標、医療サービスマニュアル、規定・手順書、様式、記録など数多くの事を実施した。手順書については、全部署において作成した。手順書の内容は、1部署のみで使用する手順書を業務手順書とし、複数部署に関連する手順書を“PMR”(プロセス・マニュアル・ルール)として作成した。
     PMRは、文書管理規定により「内容別作成区分」「危機度別分類」にそれぞれ分類され、「危機度別分類」は(1)重度、(2)中度、(3)軽度に分類されている。今回、検査科が主管となるPMRのうち、危機度が(1)重度となっている「極異常値データー報告ルール」について紹介したい。
    <内容>「極異常値データー報告ルール」の定義は「極異常値データーとは患者の病状の急変や生命に危険を招く場合など、緊急時の病態を反映する検査値とする」とした。目的は「極異常値データーが得られたら速やかに主治医に緊急連絡し、早期診断・早期治療に役立てる」とした。極異常値データー報告手順は、あらかじめ定めた緊急連絡しなければならない検査項目と極異常値を定め、極異常値が発生したら、検査担当者は主治医に至急報告する。直接主治医に報告出来ない場合は、看護師を通じて仮報告書を添えて主治医に連絡する。再検査を行い、最終報告とし主治医が検査結果を確認する事としている。注意事項として、極異常データーの報告は初回検査のみとするが、主治医から報告依頼があれば随時報告する。極異常値の報告は夜間・休日も同様とする。主治医が不明の場合は外来・病棟へ問合わせ主治医を確認する。人間ドック及び健診受診者の場合は、検診センター長に連絡する。検診センター長が不在の場合は院長に連絡する。としている。緊急に連絡しなければならない検査項目は、生化学検査12項目、血液検査5項目、尿検査2項目、薬物検査2項目、免疫検査1項目でそれぞれに緊急報告基準値を設定した。主治医への連絡手段として、主にPHSを使用している。
    <考察>極異常値を主治医に緊急報告する事は早期に適切な治療を行うための支援として、検査科として重要な業務である。極異常値として報告する検査項目・検査値を定めルールとして文章化した事により、各スタッフの極異常値に対する個人差や迷いが無くなり、検査科スタッフは自信と安心をもって極異常値の報告が行える様になった。
    <まとめ>ISO認証取得により業務内容を文章化した事により、個人の判断で行っていた事を共通の理解の中で業務が行う事ができる様になった。また、他部署と連携される業務も文章化された事により円滑に業務ができ、患者様が求める医療サービスを効率的・効果的に提供できるようになったと実感した。今後も、ISO認定取得したメリットを最大限に活かすために、日々継続的改善を図る事が必要と考えます。
  • 野口 千夏, 朱宮 哲明, 舟橋 恵二, 尾崎 隆男
    セッションID: 2D19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>ATP(アデノシン三リン酸)ふき取り検査は、ATPを汚染指標として迅速、かつ簡便に食品調理機具類の洗浄度検査を行う手法である。今回、当栄養科厨房内の調理機具の洗浄度を把握し、今後の厨房衛生管理に役立てる為に、ATPふき取り検査を実施した。また、付着細菌の種類を特定する為に、細菌の検出検査も実施した。
    <材料と方法>厨房衛生管理を行う上で作業上特に重要な、厨房器具8箇所および栄養科職員の手指を「ハイリスクポイント」として選定し、ATPふき取り検査を行った。ATPふき取り検査は、ルミテスターPD-10&ルシパックワイド(キッコーマンKK)を用いた。選定した9箇所を1回測定後、その結果を栄養科全職員に報告すると共に、器具洗浄マニュアルを作成した。その後2日間計2回測定し、数値が高い個所は問題点を改善後、さらに2日間計2回測定を行った。測定値は,Aランク(合格):相対発光単位(Relative Light Unit ,RLU )100以下,Bランク(注意):RLU 101から1,000,Cランク(不合格):RLU 1,001以上に分けて評価した。細菌の検出は1回のみの検査とし、5回目のATPふき取り検査時に採取し、当院の細菌検査室にて寒天培地を用いて行った。
    <結果と考察>計5回施行したATPふき取り検査成績をに示す。今回の検査を行うまで調理器具の洗浄は各調理担当者に委ねており、1回目のATPふき取り検査結果でCランクが多かったことは、洗浄の工程や内容に問題があったと思われた。しかし、洗浄マニュアル作成後の3回目の検査結果では、Cランクはザルと包丁の2箇所であった。ザルは構造上洗浄が難しく、包丁は洗浄時に使用するスポンジおよび包丁を保管する器具庫の汚れによよる交差汚染が考えられた。よって、スポンジは毎使用後に洗浄し、包丁保管庫においては業務終了後に洗浄を行う等、問題点の改善を行った。そして改善後の5回目の検査結果では、Cランクの箇所は見られなかった。
     細菌検出結果は、RLU 100以下の箇所では見られず、RLU 101以上の箇所では、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌、大腸菌、カンジタ菌が検出された。栄養科職員の手指(手洗後)においては、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌が検出された。手洗いは食品衛生管理の基本である為、手洗いの方法や時間の再確認が必要と思われた。
     今回のATPふき取り検査の測定値と一般生菌の検出率の調査において、RLU 100以下では、一般生菌は検出されなかった。全ての器具のRLUを100以下に保つことは困難であるが、現在の衛生作業手順を見直し、低い数値を目標に管理を行うことが職員の衛生意識向上に繋がるものと思われた。
    <結論>衛生管理においてATPふき取り検査は有効であり、RLU 100以下が食品衛生管理上の目標値と考えられた。今後も定期的にATPふき取り検査を行い、厨房衛生管理に役立てていきたい。 
  • 原川 隆司, 玉内 登志雄
    セッションID: 2D20
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>病院設備を管理する上で、鳥獣による公害対策はさけて通れない課題である。なかでもドバトによる糞公害は、構築物劣化の助長、動物由来感染症発症などの危険性が指摘されている。ドバトにより引き起こされる主な病気、その他の被害、ドバトの生態を簡単に示した上で、当院で実施した対策及び経過を報告する。
    <ドバトについて>ドバトの糞により引き起こされる主な病気としては、オウム病、クリプトコッカス症、ニューカッスル病、トキソプラズマ症、サルモネラ食中毒、脳炎、アレルギーなどが上げられる。
     またその他の被害は、糞による構築物の腐食、糞や営巣用の小枝・ワイヤーなどによる排水管の詰り、糞によるネズミの誘発などが上げられる。
     産卵は普通1回に2個だが、1個または3個の場合もある。繁殖期は、2月末から10月末が一般的だが、冬場でも温かいところでは卵・雛が観測されることもある。繁殖回数は3回以上が一般的で、巣から落下などにより卵が無くなった場合には、すぐに新たな卵を産卵するほど繁殖力は強力である。また、帰巣本能が強いためか、生まれた付近での営巣を試みるため、1組の営巣が、数羽、数十羽の繁殖につながる。
    <対策前>以前は、2カ所のライトコート、休床病棟のベランダ、屋上水槽タンクなど至る所に鳩が営巣していた。感染症の報告はなかったが、建造物の汚れや、臭気、ベランダ歩行困難などの苦情が殺到していた。
    <対策>以下13の対策を実施したのでそれ毎に狙いを含め報告する。1.手摺り等の鳩一次着地場所への粘着性発熱薬品の塗布→鳩が最初に着地するところに粘着性発熱薬品を塗布し、鳩の飛来防止。2.鳩一次着地点から10cm上部に釣り糸を渡す→鳩が最初に着地するところに光る釣り糸を着地点から10cm程度の所に設置し、鳩の飛来防止。3.目玉型風船の設置→風船により鳩を威嚇し飛来防止。4.ぬいぐるみや猫の型紙の設置→ぬいぐるみ等で鳩を威嚇し飛来防止。5.一般品の永久磁石設置→磁力で鳩の方向性を損ない飛来を防止。6.ライトコートへの網張り付け→上部に網を張り付け鳩の進入を防止。7.1F駐車場天井部網み張り付け→露出天井配管への営巣防止。8.雨樋・外部配管へ有刺鉄線取付け→鳩の着地場所に有刺鉄線を設置し飛来や営巣を防止。9.外部配管やバスダクト上部へ防鳥用剣山取付け→鳩が最初に着陸するところに有刺鉄線を設置し飛来や営巣を防止。10.人力により鳩威嚇用具や威嚇音で鳩追い払い飛来を防止。11.餌付け禁止により飛来を防止。12.ダミー卵を巣へ設置→ダミー卵の存在により排卵・繁殖防止。13.エアコン室外機(ベランダ釣りタイプ)の上部等に網を設置→営巣の防止。
    <結果>現在では、営巣している鳩はほとんど見られない。しかし一次飛来している鳩は多数存在し、一部鳩の糞で建物の汚れが見られる。鳩は一寸した休憩所となる物が有れば飛来し、営巣も行う。6の対策が効果的ではあったが、万全とは言えず、2・3年に1羽程度の進入が見られる。その他8910が局所的には効果的であった。現在も鳩の糞や姿を見た時点で8910を中心として対策を講じている。今後も粘り強い対策の継続が必要である。
  • 伊藤 雅彦, 諦乗 正, 武田 佳子
    セッションID: 2D21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 当院は旧員弁厚生病院から平成14年9月のいなべ総合病院へ新築移転に伴い、診療科の増加、医師の増員、救急受入れ態勢の強化等により、自費未収金の増加及び保険診療に対する査定減が大幅に増加してきた。
     このような状況に対して、医事課が中心となって病院経営改善について取り組んできたので現在のところ十分な効果が出ているとは言えないが、途中経過として報告する。
    <経過>
    ○自費未収金対策について
     三重県厚生連自費未収金回収マニュアルに沿って、毎月未収債権対策会議を開催し、早期対応、長期未収金についての回収進捗状況の検証・対策等の検討を行った。
     対策としては、預り金・債務確約書の徴及の徹底、住民票の請求、内容証明付文書による請求、支払督促の実施、現地調査、事例によっては訪問回収の実施などマニュアルにそった回収を行った。
    ○保険査定減対策について
     管理職への査定減の事例報告、保険請求システム検討委員会を毎月定期的に開催し、其の中で査定減事例検証と検討・対策を行った。
     また、適正な保険請求のために、医事課職員の研修、院内においても医師をはじめ全職種に対して保険請求に対する研修会・勉強会等を行った。
     特に医師に対しても、薬剤部・看護部等の協力のもと継続的な検証・対策が、従前の返戻あるいは査定となる保険請求に効果があったと考える。
    <最後に> 長期自費未収金の圧縮、査定減の削減は、病院経営において永遠の課題であり早期に大幅な改善は難しいが、ある程度の期間を考慮し、事務部門が中心となって積極的にこれらに取り組むことが病院の健全な経営につながるものであると考える。
  • 神戸 徳彦, 上原 善秀, 山本 和彦, 村松 友雄
    セッションID: 2D22
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>長野松代総合病院(以下当院)では毎月入院約800件,外来約14,000件の保険請求を行なっており,査定による減収は病院経営に直接影響をあたえている。全ての診療行為を完全な収入に繋げるため査定内容を分析し,査定減少に向けての対策を検討したので報告する。
    <対象>2004年4月から2005年3月の1年間に請求した社保レセプト81,165件,国保レセプト103,540件に対する査定増減(社保765件 社保全請求数の0.9%,国保1,643件 国保全請求数の1.6%)を検討対象とした。
    <方法>1.対象を5つの査定事由に分類し,社保と国保での審査における傾向を分析した。2.再審査請求を行なったレセプトの審査結果と診療科別の再審査件数を検討した。3.長野県厚生連において当院と病床数が同規模又はそれ以上の病院との過去2年間の査定件数比率を比較した。
    <結果>
    1.2004年度の社保レセプト件数81,165件中765件(0.9%)で国保においてはレセプト件数103,540件中1,643件(1.6%)だった。(1)適応と認められなかったもの(レセプトチェック漏れ)は社保145件(0.17%),国保328件(0.31%)だった。(2)過剰とされたものは社保186件(0.22%),国保684件(0.66%)であった。(3)重複とされたものは社保3件であった。(4)不適当または不必要とされたもの(診療に関するもの)は社保430件(0.53%),国保630件(0.6%)であった.(5)固定点数が誤っていたものは計2件(0.1%)であった。
    2.査定された2,408件中102件(4.2%)に対して再審査請求を行なったが原審(審査結果のまま)67件,復活が35件という結果で再審査請求を行なうことによって減収を防ぐことができた。
    3.当院の査定件数は2003年度よりも44件減少していたが査定金額では373,000円の増加であった。
    <考察>保険請求したレセプトが査定される事により減収となり,直接,病院経営に影響している.今回,査定された内容を分析した結果,医事課職員によるチェック漏れでの査定が計473件,全体の約20%であった。知識を身につけて査定防止に努めていく事が医事課職員としての役割だと考える。又、レセプト審査は書面審査であり,病名とレセプト内容から判断して診療内容が適当かどうか審査されるため医学的な根拠を症状詳記として添付する事が重要であると考えた。社保においては不適当等の査定が最も多く,逆に国保では過剰と判断されたものが査定全体の4割で社保とでは大きな相違が認められた。当院での再審査請求は1割にも満たないのが現状で減点されたレセプトをあきらめて放っておくのではなく,点数の高い低いにかかわらず納得のいかない査定に対しては再審査請求する事が重要である。医師との連携を深め,不当な査定については再審査請求を行ない審査委員に病院の医療に対する姿勢を伝える事も重要である。過去2年間の査定件数を他の医療機関と比較したが大きな差はなかったが査定の重要性を再度認識し,査定減少に向けて努力していく事が重要だと考えられた。
  • -0.1%の査定減を目指して-
    鈴木 洋行, 吹野 陽一, 鹿島 信一, 小川 政満, 藤澤 忠光, 藤原 秀臣
    セッションID: 2D23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院ではレセプト査定減対策として、保険査定減対策委員会を発足し活動してきた。平成15年度からこの名称を変更し診療報酬適正化委員会として今日に至っている。委員会は月1回開催され、そのメンバーは医師、薬剤部、検査部、医事課職員の代表者で構成している。主な検討内容は、保険情報(診療報酬改正等)の把握とレセプト査定対策である。この活動結果を医事業務にどう活かせたかを報告する。
    <方法>
     1.委員会での決定事項を、代表者が医事課会議で各担当者へ文書・口頭・会議で周知徹底し保険請求に活かす。
     2.毎月の医事課勉強会で返戻・査定情報を担当者が各自発表し能力向上、医事課の入力ミスの減少、レセプト点検ミスによる査定減防止に努める。
     3.委員会で再審査申請が決定したレセプトについては、症状詳記を医師に依頼し医事課で点検後、保険請求する。
     4.中央審査レセプトに至っては医師と事務が点検したものを委員長が最終チェックし高額レセプトの査定対策としている。
    <結果>年度別平均査定率をみても、平成15年度までは0.4%台で横ばい傾向であった査定率も16年度を境に減少、17年度は0.2%台となった。再審査請求も活発に行い、平成15年度は35件、16年度は79件、17年度は37件を提出したが、再審査の復活率は15年度が11.4%、16年度が16.5%、17年度が10.8%となっており全体の約1割が認められた。高額査定レセプトの査定減の減少については、平成15年度は月平均31件、平成16年度は月平均19件だったが2005年度は月平均14件に減少した。
    <考察>診療報酬適正化委員会の活動により、レセプト査定減防止対策として大きな成果をあげることができたが、今後も医事課職員として能力向上を目指すとともに、各部署との協力体制を強化し、検査及び投薬の過剰、血液製剤の使用量の対策、再審査請求レセプト対策などの問題点を克服し、より適正な請求に取り組んでいきたいと考える。
  • 青柳 正興, 細井 泰子, 須田 茂男, 北島 隆司, 輿水 賢治, 西沢 延宏, 盛岡 正博, 夏川 周介
    セッションID: 2D24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     平成15年4月から大学病院などの特定機能病院にはすでに導入され、平成16年から、その範囲が拡大され試行的適用が行われ、全国で62病院が参加しました。その際に当院も参加するかで議論いたしました。結局、当院は調査協力病院としてデータ提供という形で参加いたしました。2年後の導入をめざし、平成16年8月、各職種が参加したDPC対策委員会を発足させました。月に1回から2回開催いたしました。委員会内で学習会を行い、DPC制度の理解を深めました。他施設を参考にするために、平成17年3月戸田中央総合病院、8月信州大学付属病院、12月山梨大学付属病院、杏林大学付属病院、平成18年1月昭和大学付属病院の計5病院を視察しました。システム、運用、コーディング等、大変参考になる視察でした。診療情報管理課(5名)と医事課入院係(12名)が連携できるような体制整備が必要であることから、平成18年1月に両課がワンフロアーで業務ができるようにしていただきました。DPC業務は格段にやりやすくなっております。平成17年10月以降勉強会を診療情報管理課、医事課合同で月1回または2回行いました。平成18年3月全職員対象に、外部講師を招き勉強会を開催しました。
     当院では、平成16年4月より富士通社のオーダリングシステムを使用していたため、平成17年10月より同社DPCシステムの導入用意をはじめました。同時に院内の運用も考えはじめました。電子カルテ、フルオーダーシステムではありませんが、医師と診療情報管理課、医事課との連絡に一切紙を使用しないことを前提としました。医師には、DPCオーダー画面の「主病名」、「医療資源を最も投入した傷病名」、「入院契機となった傷病名」を入院後2日以内に入力していただくようお願いしました。看護師には「入院時ADL」、「喫煙指数」等、4項目の入力をお願いしました。「調査項目」は、診療情報管理課で入力。「患者基礎情報」、「出来高部分」は医事課で入力としました。退院日前、または当日に医事課より退院予定者を診療情報管理課へ連絡し、診療情報管理士が、病棟にてカルテを確認しコーディングを行います。確定したDPCコードを、医事課に連絡し請求書を作成します。平成18年4月よりDPC導入となりました。今後、データを有効利用して経営分析、経営改善、診療内容の検討、他施設との比較等していきたいと考えます。
  • -昭和病院と愛北病院の統合に向けて-
    今尾 仁, 吉川 秋利, 古田 和久, 左右田 昌彦, 三輪 明生, 奥田 隆仁
    セッションID: 2D25
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 平成20年に昭和病院と愛北病院が統合し新病院設立を控え、病院システムや放射線機器の選定を両病院の技師でチームを組み行っている。遠隔地のため、討議の機会・時間の制約が問題となっていた。討議の支援のためにグループウェアを利用し、その有用性を検討した。
    <方法> システム概要:desknet’s(ジェービーピー社)を採用した。Application Service Provider(以下ASP)形式であり、インターネットに接続できる環境下でパソコンや携帯電話からWebブラウザを使って自由に利用できる環境とした。セキュリティーのためパスワード入力によるログイン環境とした。機能として、チーム全体に広報を行うため掲示板機能、スケジュールを共有するスケジュール機能、打ち合わせやテーマに対して討議する電子会議室機能、書類をデータベース化して共有する文書管理機能を主な利用目的とするシステムとした。また、各機能におけるファイル添付機能も活用した。
     アンケート項目:1)利用頻度、2)利用用途、3)利用による委員会討議の変化の有無、4)グループウェア利用前後での問題点・意見などを主な内容とし、アンケート調査を実施し有用性と問題点の評価を行った。
    <結果> 10名の委員全てから回答を得た。「利用頻度」は、毎日から3日に1回が80%を占めた。平均は2日に1回であった。「利用用途」は、各機能への閲覧が10名(100%)であった。掲示板機能、電子会議室機能への書き込みは3名(30%)であった。「委員会討議の変化の有無」は、有りが8名(80%)、無しが2名(20%)であった。
     記載のあった代表的な意見は、グループウェア利用前より、1)コミュニケーション不足を乗り越え、委員会のメンバー以外でも意見の交換が行えた8名(80%)。2)いつでも、どこからでも討議内容の確認が行え、情報の共有化が出来た7名(70%)。3)連絡や確認事項を行う際に時間短縮が図れた7名(70%)。4)委員全てのスケジュール把握が簡便になった4名(40%)。5)個々に作成された事前資料や議事録を一元管理する事が可能となった3名(30%)。6)多くの紙が発生していたが、一部でペーパーレス化が進んだ2名(20%)。
    <考察> 遠隔地のチーム間で討議を行う際に、グループウェアの利用により、迅速な情報の共有化や多様なコミュニケーションが図れる可能性が示唆された。スケジュール機能や文書管理機能は、多く利用されていたが書き込みに関しては一部の委員に限られており、より有効活用するためには、積極的に情報を登録してもらい共有を促す必要がある。また利用にあたっては、サービス提供事業者のサーバ上に各種情報が蓄積されるため、情報の取り扱いポリシー等の利用規定をどのように定めるかがあり課題である。今後は、導入のコストに対する、「得られる効果・時間」「節約できた労力」のトータルバランスにおける導入効果を検討の後、他の委員会や放射線科全体のミーティングといったより大規模な利用が期待される。
  • 大橋 ひとみ, 藤川 千恵, 池滝 和史, 足立 千鶴, 畑中 剛喜, 林 八重子, 倉田 守
    セッションID: 2D26
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 当院検査部では、平成14年9月病院新築移転と同時に開設された健康管理センターへ業務支援を行っている。今回、当院の健康管理センターへの検査部からの業務支援の現状と課題について報告する。
    <当院概要> 一般病棟 220床、内科・外科・整形外科・泌尿器科・眼科・耳鼻咽喉科・脳神経外科・腎臓内科(人工透析科)・小児科・皮膚科・産婦人科・透析センター・健康管理センターを併設して17の診療科を有する医療・保健・健診を柱とした地域密着型の中核病院である。
    <健康管理センター業務の概要> 健診コースは主に半日ドック、企業・法定健診、基本健診、脳ドックがあり、依頼の多いコースは半日ドックと企業・法定健診である。生理検査の項目は、身長、体重、体脂肪率、血圧検査、眼底検査、眼圧検査、視力検査、聴力検査、超音波検査(腹部、頚動脈)、心電図・負荷心電図検査、肺機能検査がある。スタッフは、病院と兼務で医師5名(総合診察1名・眼科1名・婦人科1名・内科1名・脳外科1名)、臨床検査技師1または2名、(生理一般検査1名・超音波検査1名)、診療放射線技師1名、看護師1.5名、事務員4名で行っている。
    <検査部の概要> 検体検査(生化学検査、血液・輸血検査)2名、一般・生理検査 4名、細菌検査 1名 臨床検査技師 計7名体制である。うち1名はフレックスタイム勤務で夜間時間外はオンコール呼び出し体制である。
    <運用と業務支援の現状> 受診順序として、受付、問診表の確認後、事務員・看護師・診療放射線技師と共に各種検査および外科、婦人科、眼科を受診終了後、担当医による総合診察の順序で行っている。
     検査部業務として血液・尿・便検体を院内検査室へ搬送後、院内日常検体と同様に処理している。
     生理検査は健診受診者数に応じてフレックスタイム勤務体制で検査部の技師1名ないし2名が健診センターへ出向き検査を実施している。
     報告については、検体検査はオンラインと時系列報告書にて、生理検査については、報告書のみにて行っている。
    <今後の課題> 受診者数が一日15名程度であれば現状の技師1から2名で対応可能であるが、20名程になると、超音波検査は時間がかかる為、超音波機器の増備と、フレックスタイム勤務を組み合わせれば現状の増員なしの運用で対応できると考えている。しかし、20名を超える場合、午前の総合診察時までに検査結果を間に合せる為には,パート等の増員も必要と思われる。
     将来の健診業務の効率化として検査データの一元管理、迅速な画像報告、コスト削減を課題とし電子カルテシステム導入、午後の健診へのシフトも必要になると思われる。
  • 奈良 和幸, 石黒 梓, 篠崎 志津子, 玉内 登志雄, 笹本 彰紀, 酒井 智彦, 吉川 智宏, 静岡厚生病院 NST
    セッションID: 2D27
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>静岡厚生病院では2005年9月よりNST推進委員会を発足し、準備期間6ケ月を経て、NST推進委員会の目的であるSGAに基づいた栄養スクリーニングによる入院患者一人一人に対しての栄養管理を実施し、栄養不良の早期発見と早期治療を図るため2006年3月よりNST活動がスタートした。当院における活動状況と今後の課題について報告する。          
    <方法>NST推進委員会の構成スタッフは医師4名、看護師5名、コメディカル8名(薬剤師1名・管理栄養士3名・臨床検査技師3名・理学療法士1名)、事務員2名の計19名である。NST推進委員会は月1回で、NST活動の検討や症例報告も実施している。NSTラウンドも毎月第1、3金曜日の午後5時30分より医師も含め推進委員会のメンバーで行っている。対象患者についてはSGAを用いたスクリーニングを行い、栄養状態に問題のある患者を抽出し介入する。ラウンド終了後にカンファレンスを行い、NSTカンファレンスシートを用いて委員会のメンバーにより問題点やプランを上げ、主治医に提案する。経過観察としてはNutritionReport用紙を使用し、委員会のメンバーが身体状況や検査データ、栄養補給法などの情報を共有する。
    <結果>NST介入症例数は活動期間がまだ短いため、外科病棟における10症例と少ない。対象患者の年齢は平均74.7±14.2才(90代1名・80代3名・70代1名・60代2名・50代1名・40代1名)である。NST開始時の血清Alb値は2.6±0.3g/dlで、TP値は5.6±0.5g/dlであった。また、BUN値・Na値・K値の異常による脱水や下痢などの症状についての患者もリストアップする。TLC値については、経過観察時の測定とする。当院におけるNST介入基準値はAlb値3.0g/dl以下、TP値6.0g/dl以下とする。栄養補給法としては当院の約束食事箋に基づき、経腸栄養剤や特別治療食を用いて決定する。補食としての特殊食品の活用も行っている。今後天然経腸栄養剤
    <今後の課題>NST活動期間がまだ短いため院内スタッフへの浸透度が低く、活動自体も理解されていない所が多い。2005年4月よりNST勉強会を実施したが、参加者も同じスタッフばかりであった。院内スタッフの栄養に関する意識もまだまだ低い状態である。今後はNST活動を各病棟に広めて行き、リンクナースの設置や栄養管理への関心度を高めていきたい。そのためにもNST推進委員会のスタッフへの栄養管理の必要性、早期介入の重要さ等の啓発が必要だと思う。また嚥下チーム、褥瘡チームへのリンクも今後必要とされてくるはずである。最後に、医師に対してのNST活動の理解と信頼を勝ち取るためにもより良い症例を上げていき、チーム医療のすばらしさを表現していかなければならないと考える。そのためにも、NST推進委員会のモチベーションの維持が最も重要だと思われる。
  • 技師の関与と検査及びデータ提供
    黒田 倫枝, 柳原 千珠, 鈴木 泰秀, 池上 公一, 伊藤 喜章, 玉内 登志雄, 笹本 彰紀, 酒井 智彦, 吉川 智宏, 静岡厚生病院 ...
    セッションID: 2D28
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <緒言>栄養管理が疾患治療の上で重要であり、合併症や感染症の防止、手術後の早期回復にかかせないと言われる昨今、また日本医療機能評価機構による病院機能の第三者評価でも取り上げられたことにより、当院でも遅ればせながら栄養サポートチームNutrition support team(NST)が外科の医師を中心として立ち上げられた。
     NST活動を始めるにあたり、2004年より講演会や院内で勉強会が行われた。当初、臨床検査技師への委員会参加の依頼はなかったが、当検査科からの要望により、メンバーに加えさせていただいた。委員会発足当初はNST経験者がいなかったが、検査科には厚生連他病院からの転勤者でNST経験者がおり、臨床検査科が参加することで、2006年3月より、医師4名・管理栄養士3名・薬剤師1名・看護師5名・検査技師3名・理学療法士1名・事務員2名にて、NST推進委員会の活動が開始された。
    <方法>静岡厚生連には四病院があり、そのうち遠州総合病院では認定NST施設として第1回の認定を受けている。清水厚生病院でも2005年よりNSTが稼働しており、この二病院から指導を受けることができた。
     NST活動の最大の課題は栄養不良患者の抽出である。当院のNST活動は毎月第1金曜日にNSTカンファレンス、第3金曜日にNST推進委員会が開催されている。検査科では、病棟毎の血清アルブミン値一覧表と、3.4g/dl以下の患者の時系列データを作成、病棟に提示する。この中から病棟看護師が検討患者を抽出し、医師が患者の栄養摂取状態、褥創の有無などから対象患者を決定している。
     また、医師からの依頼により、便の消化状態(便中脂肪)の検査を試みたので報告する。
    <結果>時系列データとして病棟に提出している項目は、総蛋白・アルブミン・コリンエステラーゼ・尿素窒素・クレアチニン・電解質・TG・TC・グルコース・CRP・ヘモグロビン・総リンパ球数の12項目である。
     NSTが稼働して2ヶ月が経過して、検討した患者は計8名、のべ12名であった。外科病棟での導入のため、消化管が十分使用できない患者、燕下障害のためPEGを設置した患者、褥創が悪化しすでに壊死をおこしている患者など、どれも治療が困難な症例であった。
     また、経管栄養による患者の排泄便に異常が多くみられるため、投与栄養剤が患者にどのように影響を及ぼしているのかを検討するために便中の脂肪を検査してほしいという医師からの依頼があった。検査方法は検査提要を参考にし、当院の判定方法で判定し、便中脂肪の陽性陰性は分かるものの、常食と経口食との因果関係解明にはまだ結論がでず、今後マニュアルを確立するために、これからも検討を続けていきたい。
    <考察>これらのデータを提供するにあたり、安定した正確なデータを出す事は言うまでもないが、今後は、短時間で変動する鋭敏な栄養指標であるRTP(Rapid turnover proteinプレアルブミン、トランスサイレチン、レチノール結合蛋白、トランスフェリン)の測定についてもNSTの進展やコスト面での問題をみて、導入していく事も検討していきたい。また、現在当院では、血清アルブミン測定はBCG法を実施しているが、BCG法は反応特異性に欠け、グロブリン分画とも反応するために、炎症性疾患等で偽高値となるが、これを解消するために、改良BCP法の導入も検討していきたいと考えている。
  • 山田 幸司, 宇野 志保, 山口 悦子, 下竹 美由紀, 中根 生弥, 山崎 良兼
    セッションID: 2D29
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当病院検査室では、数年前より病棟採血の要望が看護部門からあった。それに対し検査室理念「診療支援を絶えず追求する」のもと病棟検体集配、試験管予約発行、糖尿病教室への参加、外来採血、などにより病棟支援を行ってきた。また平成15年5月よりオーダリング導入と同時に検査室の業務拡大と、予てから看護部門からの要望であった病棟支援に対応するため、『臨床検査科病棟支援協議会』を立ち上げ、平成15年7月より病棟支援を施行し約3年が経過した。
    <対象病棟>腎・代謝・膠原病疾患病棟へ検査技師(糖尿病療養指導士)1名を終日対応で派遣。
     <病棟支援業務内容>採血、出血時間検査、採尿(計測、蓄尿容器準備、コンピュータ入力等)、血糖自己測定の個人指導と指導内容のカルテ記載、簡易血糖測定器による血糖測定、カルテ整理、検査オーダー代行入力(権限として中止や変更など)、患者への各種説明(検査目的・方法について)、検査結果の解説(医師とのコンセンサスのもと)、糖尿病教室への参加「尿糖・血糖の自己測定について、糖尿病の検査について (特にヘモグロビンA1c、神経機能検査など) 」、各種問い合わせ (病棟と検査室間で、速やかな解決を目的とする。医師や看護師への啓発)、検査関連機器のメンテナンス、etc。
     これら以外にも事務的業務を手伝う事もある。これは他職種とのコミュニケーションの場であり、病棟業務全体を広い視野で観ることもできる。
    <食後採血の導入>当病棟では早朝採血数が多かったことから、食事の影響を受ける検査項目以外の採血について病棟検査技師による朝食後採血(朝8時30分以降)を導入した。
     導入後の効果として、「朝早くから患者を起こす必要が無く、検査技師が採血する為、適量採血が可能となり患者の負担軽減に繋がる。看護スタッフにおいては採血にとられていた時間を他の看護業務に費やせる。」ことなどが挙げられた。
    <実践から生まれた病棟支援効果>
    ・間違えやすい検査の準備と対応・教育により、検体採取ミスの減少と看護師の検査知識向上(検査関連インシデントの減少)。
    ・検査関連看護業務の負担軽減により、看護師と患者の対話時間の増加。
    ・検査技師による検査説明により、説明不足によるトラブルの減少。
    ・各種問い合わせへの対応により、病棟と検査室間のトラブル減少。 など
    <結語>現在、病棟検査技師業務は一歩ずつ確実に前進している。その背景として当病棟スタッフの協力は必要不可欠であった。患者を中心とした本来のチーム医療(臨床の現場)の中で病棟検査技師は病棟スタッフと共に医療を支えあっていることを強く感じている。-チーム医療に対する共通の想い。-
     近年、在院日数の削減やリスクマネージメントが強く求められており、看護業務がより高度に、かつ多岐にわたるようになってきている。当院においても看護師不足の声を耳にするが、従来看護師が行っていた検査関連業務を病棟検査技師が担うことにより看護ケアの充実とリスクマネージメントに役立てたものと確信している。
    ※)Ward medical technologist
  • - 患者向け説明用紙の作成 : インフルエンザを例にして -
    石原 友恵, 中村 和行, 村越 みづほ, 河村 真由美, 高橋 和久, 山下 雅代, 杉浦 洋二, 三浦 崇則, 畔柳 敏弥, 勝見 章男
    セッションID: 2D30
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉
    近年,医薬品報道に対する患者の関心は非常に高く,医療機関として迅速な対応を求められるケースが多くなってきている。当院では,以前より報道内容の認知と初期対応が患者との信頼関係維持に特に重要であると考えており,薬剤・供給部門を中心に院内および地域医療機関への情報提供および周知徹底に対する取り組みを実施している。今回は,その1例として,2005年11月頃よりインフルエンザおよびリン酸オセルタミビル(以下,タミフル)に関連する多くの報道が発信された際に,当薬剤・供給部門において実施した院内統一の対応方法作成および周知徹底活動について報告する。
    〈2つの報道内容〉
    2005年,マスメディアより発信された報道は以下の2つに大別される。
    (1)タミフル服用患者の異常行動死
     国内において,タミフルを服用した中高生2人が異常行動を起こし死亡した。また,これまでにタミフルを
     服用した少なくとも6人の乳幼児が突然死している。
    (2)新型インフルエンザ大流行(パンデミック)に対するタミフル備蓄
     パンデミックに備え世界各国がタミフルの備蓄計画を作成し遂行している。日本においては5年間で
     2500万人分の備蓄が計画されているが,現時点ではほとんど備蓄されていない。
    〈院内統一対応方法の作成・周知〉
    さまざまな報道の影響により,治療薬投与の必要な患者が投薬を拒否したり,必要のない患者までもがタミフル処方を希望するなどの問題が懸念された。そのため,院内での混乱を避ける目的で,病院としての方向性を統一しておく必要があると思われた。そこで,中央医薬情報室(DI室)を中心に,各種マスメディア報道および製薬企業担当MRより情報を収集し,以下の内容を盛り込んだ文書を作成した。この文書を管理者会議に提出し,承認を得た上で院内の全部署に配布した。
     ・タミフルに関連する2つの報道の概略
     ・使用可能なインフルエンザ治療薬
     ・治療薬の効果および副作用について
     ・治療薬を投与すべき患者について
     ・医師による患者への説明(院内統一説明用紙を用いた説明)について
    〈患者向け説明用紙の作成・運用方法〉
    成人用,小児用に分けて以下の内容の説明用紙を作成し,各診察室に配布した。
     ・インフルエンザの症状について
     ・治療薬の効果,副作用および使用期間
     ・使用可能な解熱剤について
     ・周囲への感染防止対策について
    また,今回は電子カルテにおいてインフルエンザウイルス検査オーダ時および治療薬オーダ時にすぐに説明用紙を印刷できるようなシステムを活用した。そして,インフルエンザ疑いの患者全員が説明用紙を用いた説明を受け,治療薬の使用に納得された上で,医師が治療薬を処方するという運用を実施した。
    〈まとめ〉
    医療に関連するマスメディア報道の際には,医療機関として迅速かつ適切に対応することが重要である。特に医薬品に関しては,その情報の収集と分析を普段から行っている薬剤師が,その能力を活かし,リーダーシップを発揮することが求められる。今回の事例においても,インフルエンザ流行シーズン前に対応を行ったことから,院内で混乱を生じることはなく,患者も納得して治療を受けることができたのではないかと考えている。
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