環境システム研究論文集
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34 巻
選択された号の論文の68件中51~68を表示しています
  • 奥田 隆明, 秀島 聡
    2006 年 34 巻 p. 463-471
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    バイオマスは優れた多くの特長を持つが, 同時に様々な問題点を抱えるため十分に利活用されているとは言えない. バイオマス利用を普及させるためには, これらの問題点を解決する新しい技術の開発が必要不可欠である. ところが, 新しい技術の開発には多額の資金が必要であるため, その技術が実用化された時, 環境と経済にどのようなインパクトを与えるのかについて事前に明らかにしておく必要がある. 本研究では, 木質バイオマスのガス化発電を取り上げ, そのインパクト分析を行うための方法を提案した. また, 岐阜県でパイロットモデルを作成し, これを用いて簡単な感度分析を行った. 分析の結果, 発電効率を現状の40%から50%に向上させればバイオマス利用が始まり, さらに発電効率が上昇すると林業などの生産にも影響を与える可能性を持つこと等を明らかにした.
  • 片谷 教孝, 原 秀幸
    2006 年 34 巻 p. 473-478
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    環境影響評価法の制定など, ここ10年ほどの間に環境影響評価制度はいくつかの大きな変化をとげた. その一方, 予測評価に用いられる手法については, ほとんど変化がないままに推移している. 本研究では大気環境の予測手法のうち, 自動車交通による影響の予測評価を簡便に行うことを目的として, 自動車交通量データのみを用いる統計的手法を開発した. この手法を実際のアセスメント事例に適用した結果, スクリーニングレベルの一次評価には有効であることが確認された.
  • 山田 宏之, 田中 明則, 奥田 芳雄
    2006 年 34 巻 p. 479-485
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    建築物屋上や壁面に設置することができる軽量な保水板を用いて, 実物のコンテナハウス内の熱環境改善効果の実測と, それに伴う冷房負荷の低減効果の検証を行った. その結果, 建物屋根面の温度を24.3~27.6℃, 天井面温度を6.2~10.4℃, 室内の平均輻射温度を1.7~6.1℃低減することが分かった. まだ, 屋根面のみを被覆した場合で29.3%, 屋根面と壁面のうち2面を被覆した場合で46.2%の空調電力量の削減効果が得られ, 空調排熱の削減にも有効であることが判明した.
  • 豊田 知世, 金子 慎治, 周 新, 井村 秀文
    2006 年 34 巻 p. 487-496
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    中国の農業部門では, 限られた土地を有効に利用する手段として, 農業資本投入による要素代替が行われてきた, これにより農作物の土地生産性は向上し反収は増加している. しかし, 農業資本の製造過程や使用過程に付随して環境的意味で必要となる仮想的土地投入分をエコロジカル・フットプリント (EF) の考え方に基づいて評価すると, 農業生産に必要となる土地はどのように評価すべきであろうか. 本研究では1985年と2003年の2地点を対象に, 中国農作物10品目について, 反収の増加によって直接節約された土地と農業資本投下に付随して必要となる間接土地面積の増加を土地収支として表現し, 品目や地域ごとに分析した. その結果, 中国全体では農業生産に必要な土地面積は22.5百万ha増加しており, 特に米, とうもろこし, 綿花で大きくEF指標が悪化していることが明らかとなった.
  • 周 新, 白川 博章, 井村 秀文
    2006 年 34 巻 p. 497-505
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 従来のエコロジカル・フットプリントにある2つの問題について取り組んだ. すなわち, 現行のEFには, 第1に地域差を無視し過度に単純化しており, 第2に評価結果の政策利用が難しいと言う問題がある. このため, 本研究では地域間産業連関表を用いて地域別にEFを評価する方法を提案し, 中国に焦点を当て, 地域別のEFの違いと地域間の相互依存関係を検討した. さらに, 寄与度分析や経路分析を実施し, 産業間・地域間における環境負荷の相互依存関係を明らかにし, 地域エコロジカル・フットプリントを効果的に下げるために有効な政策のあり方を検討した.
  • 水利用・循環の視点から地区整備を考える
    氏原 岳人, 谷口 守, 古米 弘明, 小野 芳朗
    2006 年 34 巻 p. 507-513
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    これまでの他地域に依存した水利用システムには限界があるとされており, 地域内の地下水涵養などによる自己水源の確保が重要な課題となっている. そこで本研究では, 人々の水利用に対して, 雨水浸透という形で自然に還元するとした場合, その地区の面積を如何ほど必要とするかを表現する指標として, ウォーターサプライ・フットプリント指標を提案し, 都市施設配置が異なる4つの地区でその適用を試みた. さらに, 水利用・浸透化のための施設導入効率が各地区によりどのように異なるかも検討した. その結果, 現状における自己水源涵養への貢献度は土地利用状況に左右される一方, 施設導入による効率性はスプロール地区と比較して, 計画的に整備された地区が高い結果となった.
  • 生活用水を例として
    韓 驥, 大西 暁生, 白川 博章, 井村 秀文
    2006 年 34 巻 p. 515-523
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では, 中国における人口移動が環境に与える意味に関して, 家庭用水需要を例として検討した. まず, 回帰分析を用いて人口移動のメカニズムを検討した. 次に, 2020年までの経済成長, 人口移動, 都市化をシナリオ分析した. 最後に, 人口移動による家庭用水需要への意味を評価した.
    本研究の結果, a) 所得格差や移動ストックや移動距離が人口移動に強い影響を与えている b) 人口移動を考慮した場合, これを考慮しない場合と比較し, 東部では2020年に家庭用水の消費量が7.2%増加するが, 中部および西部地域では逆に5.5%, 4.9%それぞれ減少する, という結果を得た.
  • 園田 益史, 大西 暁生, 白川 博章, 井村 秀文
    2006 年 34 巻 p. 525-535
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    黄河流域では深刻な水不足に直面している. 用水の用途では農業用水が最も大きなシェアを占め, 食料需要の変化が水資源に与える影響は大きい. 流域内で生産される食料は, 輸送を通じて, 流域内外の需要を満たしている. 本研究では, 供給先の需要の変化に伴う食料供給量の増減を2000年のフードバランスに基づいて推計し, 流域内の用水量の変化を検討した. 食料需要の傾向の把握として, 需要体系モデルであるAlmost Ideal Demand System を用い, 穀物, 野菜, 油脂類, 肉類, 卵類, 水産物, 糖類の7品目の需要の所得弾性値と価格弾性値を計測した. また, 食料輸送を通した空間的な需給調整については, 省の食料余剰量と不足量に基づく輸送モデルにより求めている. 結果として, 所得増加を仮定した場合には, 流域内の小麦の需要増加と流域外の豚肉の需要増加による水消費への影響が大きいことが示された. 穀物の価格低下を仮定した場合には, 流域内外の小麦とトウモロコシの需要の影響が大きいことが分かった.
  • 木山 正一
    2006 年 34 巻 p. 537-544
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    「持続可能な開発」を目的とした水環境保全政策のあり方について考察するために, 流域単位の環境・経済統合勘定と富栄養化ポテンシャルを定量した. 環境効率改善指標を用いて水質汚濁防止に係る現状システムを評価し, 環境効率を支配する地域構造や産業形態を明らかにした. また経済成長べースの水環境政策への環境効率改善指標の有効性を検討すると共に, 地域分析によって顕在化した社会問題について述べ, 特に地域格差問題に対する適切な環境政策の必要性を提案する.
  • 梶本 尚子, 丹治 三則, 齊藤 修, 盛岡 通
    2006 年 34 巻 p. 545-551
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    持続可能な農村地域を形成するためには, 都市が農村から享受している多様なエコシステムサービスに着目し, 農村地域が持つ機能や価値を再評価し, 都市側での非持続的な生産と消費を見直すことが必要である. 本研究では, 長期的な農村再生計画における有効な手段としてシナリオアプローチを採用し, 都市と農村の関係性をシナリオとして取り入れた農村再生施策検討プロセスの提案とその試行を行なった. 農村地域のエコシステムサービスを計画要素として将来シナリオに組み込み, 広域的な農村地域整備方針を作成するための枠組みと方法を構築し, そのうえで関東流域圏を対象としたケーススタディを通して将来的な施策検討への展開とその有効性について考察した.
  • 高木 朗義, 篠田 成郎, 西川 薫, 松田 尚志, 片桐 猛, 永田 貴子
    2006 年 34 巻 p. 553-561
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    環境改善施策を評価する場合, 施策による環境改善効果と市場経済への影響の両者を把握する必要がある. 近年, 水環境改善施策の環境評価はGISを用いて詳細に行なわれており, これに合わせた詳細な経済評価が求められている. 筆者らはこれまでに流域GISを援用した流域環境評価モデルと流域経済評価モデルを統合した総合環境評価モデルを構築してきた. 本研究ではこのモデルを用いて, 長良川流域を対象に農業施肥の削減と森林管理の強化という水環境改善施策に対する総合評価を行い, 環境改善による便益や市場経済便益 (不便益) を算出し, 施策実施地域, 施策対象業種, 上下流間の便益帰着構造などを分析することにより.効率的な水環境改善施策に向けた政策的示唆を行う.
  • 曹 贔, 方 偉華, 井村 秀文
    2006 年 34 巻 p. 563-568
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    フン河流域は水量の不足が続いており、1980年代前半にからは断流現象も始まっている。しかし、水文データや観測データの不足から、水循環のプロセスを解明することが困難である。本研究では、Landsatによるデータにlinear-unmixingを行い、1976年、1990年、2000年、2004年についてのフン河の河床、川幅channel width (CW)、水域率weighted-river width (MRW) を定義し、抽出した。また、フン河川水域の変化を分析した。この方法は観測データの乏しい流域に対する代替データとして有用である。
  • 和田 安彦, 三木 康博, 尾崎 平
    2006 年 34 巻 p. 569-574
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究では下水処理水を利用した3つの水辺空間 (修景水路, 親水広場, ビオトープ池) に対する利用者の満足度, 処理水に対する抵抗感, 処理水の有効利用に対する支払意思額等を調査し, 各水辺について利用価値を明らかにした.その結果, 水辺空間に対して利用者は子供の遊び場としての機能を望んでおり, 親水広場, ビオトープ池の評価は同程度であり, 修景水路よりも高い.また, 水辺の価値評価に対して, 処理水に対する抵抗感が影響しており, 処理水の臭気や透明感を維持することが水辺空間の価値向上につながることを明らかにした.
  • 佐藤 伸幸, 大久保 努, 小野寺 崇, 大橋 晶良, 原田 秀樹
    2006 年 34 巻 p. 575-583
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    インド政府はヤムナ河の水質改善のため, ヤムナアクションプランを実施し, 34の下水処理場を建設した. 本研究では, ヤムナ河流域で運転されている4つの処理プロセス (UASB法, 安定化池法, 活性汚泥法, 好気性ろ床法) の費用対効果について比較評価した. その結果, UASB法や安定化池法では, 処理水が排水基準に達しないという課題を抱えているが, 流域内の多くの都市で下水処理原価やCOD除去原価 (年利を0.75%と仮定した場合) は活性汚泥法や好気性ろ床法より, UASB法や安定化池法の方が小さくなる傾向を示した.
  • 栗本 康司, 山内 秀文, 佐々木 貴信, 金高 悟
    2006 年 34 巻 p. 585-590
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    土砂など異物を含み材質が均等でない伐根材を土木資材として再資源化するための手法を開発した. 本手法では, 道路建設に伴って排出されたスギ伐根材を用いて, 木材-ウレタン樹脂複合体の骨材となる木質部材を調製すると共に, その骨材同士を接着するウレタン樹脂も伐根材を液化することにより得た液化物から合成した. 試作した木材-ウレタン樹脂複合体は, マルチングおよび歩道材料として利用可能なことが, 屋外での施工および長期の耐久性評価を通して明らかとなった. 今後も耐久性の評価を継続するが, 法面の防草資材や屋上緑化基盤材など親環境型素材としての用途開発を進めることが可能と考えられた.
  • 船田 晋, 森杉 貴紀, 吉村 千洋, 石平 博
    2006 年 34 巻 p. 591-598
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ユビキタス社会の実現に向けて注目を浴びているRFID技術はすでに様々な分野で活躍し始めている.特に, ICタグは安価で小型であり, データの書込み読取りが可能など, 従来のタグとは異なる最新技術 である.一方, 森林内での物質輸送については, そのプロセスの複雑さゆえに未解明な部分が多く残されているが, ICタグを用いた個体 (個木, 個葉) の識別・追跡が可能となれば, 森林域から渓流への物質動態の理解に大きく貢献すると考えられる.そこで, 研究事例として, 着葉している複数の葉にICタグを貼付し, それらを追跡するシステムを開発した後, 落葉の動態をモデル化した.これにより, 個体の識別を必要とする環境動態観測におけるRFID技術の利用の有効性が示された.
  • Emma ABASOLO, Kazunori TANJI, Osamu SAITO, Takanori MATSUI, Tohru MORI ...
    2006 年 34 巻 p. 599-609
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    Cities around the world are becoming more and more urbanized. The expected increase in the number of urban residents has a striking influence on their quality of life (QOL), thus it is imperative to understand the spectrumscontributing to it. Urban life depends largely on the goods and services that come from nature. These are what are known as ecosystem services (ES), which refer to the benefits from ecosystems that human populations directly enjoy, consume, or use to yield QOL. The links between ES and QOL are very complex and diverse, but it is important to explicitly recognize them to aid policy makers to make informed decisions. There are a number of studies done to measure the contribution of ES to QOL, however, how ES contribute specifically to urban QOL at basin-wide scale is not well explored yet. The aim of this paper is thus to review the existing methods used to identify the link between ES and QOL, and to propose a new framework that may be useful in recognizing the link between ES and urban QOL. The paper is divided into three parts: 1) ES that contribute to urban QOL were identified, 2) methods commonly used were reviewed, and 3) a new framework was proposed. Some of the commonly used methods in measuring the contribution of ES to QOL (objective and subjective) are: use of indicators, economic valuation techniques and use of surveys. The proposed method aimed to capture the total contribution of ES to urban QOL by integrating the three methods namely: ecological valuation, economic valuation and social valuation. The framework is not yet validated, thus pilot studies should be done to check its applicability and reliability.
  • 大西 暁生, 井村 秀文, 白川 博章, 韓 驥
    2006 年 34 巻 p. 611-622
    発行日: 2006/10/10
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    黄河流域は, 近年の急速な社会経済の発展に伴い水需要量が増加した結果, 1970年代初頭から90年代後半にかけて断流が頻発した.このような水不足に悩む流域では, 各地域・各セクター (農業, 工業, 生活) の水需要を把握しつつ, これらを削減していくための対策を考える必要がある. また, 黄河は非常に広大な流域を誇り, 地域の産業形態や自然状況も大きく異なる. このような社会的・自然的な特徴が, 季節における水利用や水資源の変化をもたらす. このため, 本研究では, 黄河流域の水資源管理の議論に貢献するため, 地域的・季節的な変化を考慮し, 流域全体の水資源需給の時間・空間構造を県市別, 月別で表わす. 具体的には, 1997年から2000年までの水資源需給の構造を再現し, 断流現象などの需給アンバランスが発生する時間的・空間的な特徴を分析する. さらに, このアンバランスを不足量として表わし対策に必要な削減の目安として評価する.
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