関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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ポスター
  • 安心院 朗子
    p. 321
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【目的】

    福祉用具専門相談員が利用者の機器に対する心理的抵抗感を感じることがあるのかについて明らかにすることを目的とする。

    【方法】

    日本全国の福祉用具を取り扱う事業所30 か所に勤務する602 名の福祉用具専門相談員とした。394 名より回答を得た(回

    収率65.4%)。質問紙は、事業所の責任者を通して用紙を職員に配布および回収し、郵送にて提出してもらった。調査は2014

    年12 月~2015 年3 月。本調査は無記名とし本人が特定されないよう配慮した。

    【結果および考察】

    福祉用具専門相談員が販売または貸与する機会のある機器の頻度について「とてもある」から「まったくない」までの5 段階で尋ねた。「とてもある」「ある」と回答した割合は、普通型車いすが82%(394 名中323 名)と最も多く、次いで杖が

    68%(394名中274名)、シルバーカーが61%(238名)、ハンドル形電動車いすが15%(59名)、ジョイスティック形電動車いすが14%(56 名)であった。それぞれの機器の使用について利用者から拒まれる頻度について「とてもある」から「まったくない」までの5 段階で尋ねた。「とてもある」「ある」と回答した割合は、シルバーカーが20%(394 名中77 名)と最も多く、普通型車いすが15%(57 名)、杖が11%(42 名)、ジョイスティック形電動車いすが10%(41 名)、ハンドル形電動車いすが10%(37 名)であった。利用者がシルバーカーを使用することを拒む理由として「、周りから歳をとったように思われる(73%)」「女性が使うものである(35%)」「周りからじろじろみられる(29%)」などが挙げられた。シルバーカーは杖と同様に多くの高齢者が使用している機器であるが、心理的抵抗感があることが明らかとなっている(安心院・徳田,2010)。シルバーカーの機器改良とともに、使いたいと思えるような機器へのイメージの変容が必要であると考えられる。

  • 小澤 菜津樹, 大久保 政弥, 高津 琢磨
    p. 322
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【目的】

    今回,塩尻市在住の特定高齢者を対象に,基礎体力の向上を目標に一年間の介護予防教室参加によって体力測定数値に変化があるかを検証したので報告する.

    【方法】

    平成27年4 月~平成28年3 月の期間,1週間に1回の介護予防教室に参加した塩尻市在住の女性特定高齢者(79名,平均年齢80.8 ± 5.6 歳) を対象とし,初回と最終の体力測定の結果を後方視的に検証した.当院の介護予防教室では1 回120

    分のうち運動60 分で実施している.測定内容は厚生労働省が提示している高齢者の体力測定マニュアルより1:握力2:膝伸展筋力3:開眼片足立ち4:Timed up&go テスト5:5 m歩行速度( 通常・最大) の5 項目とした.各項目に対し対応のあるt検定にて解析した.有位水準は5%とした.

    【結果】

    初回と最終の体力測定結果で,握力,膝伸展筋力,開眼片足立ちの項目で有意な向上を認めた( p<0,05).その他の項目では有意な向上は認めなかった.

    【考察,まとめ】

    全体では複数の体力測定の項目での向上を認めた.これは介護予防教室による運動指導・自主トレーニングの継続による効果と考える.運動教室への参加は身体機能の向上・維持に貢献していると考え,高齢者でも定期的な運動の介入により身体機能の向上が見込めると考える. その一方でTimed up&go テスト,5 m歩行速度の歩行要素を含む項目では有意な向上を認めていない.これは当院の介護予防教室では安全面を考慮して,歩行動作や支持基底面から大きく重心を外す課題等の訓練が少なかった為と思われる.今後は安全面を考慮したうえで,訓練内に歩行要素やバランス要素を取り入れた課題を検討し更なる基礎体力の向上・転倒予防に努めていきたい.今回は1 年間のみの調査であったが,今後も評価を継続していき身体機能の変化の経過を追っていきたい.

  • 田中 康之
    p. 323
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【目的】

    平成30 年度に向けた介護保険制度改定では見送られたが、「経済財政運営と改革の基本方針2015」に基づく議論では、要支援1から要介護2(以下、軽度者)に対する福祉用具貸与及び住宅改修を制度上全額自己負担とする議論があった。このことが回復期リハ病棟患者の退院にどのように影響すると理学療法士が推測するのかを把握するために本調査を実施した。なお、本調査は全国福祉用具相談・研修機関協議会の事業として実施した。

    【方法】

    A 県の回復期リハ病棟を有する病院が、ほぼ全数加盟する団体の会員病院48 施設(平成28 年8 月10 日現在)の理学療法部門代表者を対象に、郵送による質問紙調査を実施した。倫理的配慮として、回答者の氏名や所属を匿名とし、質問紙に回答の任意性及び回答拒否による不利益がないことを明記した。

    【結果】

    回答数25 件(回答率52%)。軽度者に関する制度議論を知らない人が13 人(52%)。平成27 年度に部署として担当した

    65 歳以上の軽度者の割合は、平均で42%。軽度者への提案割合が高い福祉用具は、「歩行補助杖」22 人(88%)、「手すり」

    13 人(52%)、「特殊寝台」11 人(44%)。軽度者の福祉用具貸与が全額自己負担となった場合、13 人(52%)が入院期間の延びる患者おり、その原因は「特殊寝台」、「車椅子」、「歩行器・歩行車」が多かった。また、12 人(48%)は「自宅に退院できない患者がいる」と回答した。住宅改修が全額自己負担となった場合、15 人(60%)は入院期間が延びるおよび自宅退院が困難になる患者がいると回答した。

    【考察】

    軽度者の福祉用具・住宅改修の自費化が回復期リハ病棟の患者の退院に影響があると推測している理学療法士が半数程度いた。今回のような議論が再燃された場合を見越し、軽度者に対する福祉用具等の有効活用方法や、福祉用具等に頼らない軽度者の支援のあり方を理学療法士として再考しておく必要があると考える。

  • 酒井 雄介, 畑中 真悟, 鈴木 修
    p. 324
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    デーサービス(以下DS)の介護福祉士( 以下CW) から集団体操の満足度改善に対する助言を求められ、CW と協働し集団体操のプログラム等を作成する機会を得た。集団体操の効果検証とともにCWとの関わりについて考察を踏まえ報告する。なお、本報告はヘルシンキ宣言に基づき目的及び方法を説明し同意を得ている。

    【対象と方法】

    DS 利用者(27 名)への満足度調査(以下CS)とCW(6 名)へのヒアリング調査( 以下HS) から集団体操のプログラムおよび実施上の問題点を分析し、プログラムの見直しを協働で行った。CW の理解度や満足度はアンケート調査( 以下QS)、利用者への満足度はCW が実施するCS にて効果の検証を行った。

    【経過および結果】

    CS、HS からCW によって指導内容にバラツキが生じており、体操における知識も個人差があるため利用者への指導が不十分であった。そこで目的や効果、注意事項を記載したプログラムを作成し、臨機応変に組み替えが出来るようにした。結果、「体操の説明はしやすいか」の質問に83.0%、「資料の分かりやすさ」「体操に対する理解の深まり」「時間配分」の質問に100%のCW が肯定的な回答をし、「自信を持って指導出来てきた」との意見も得られた。またCS では「身体に効果を感じるか」「求めている運動は出来ているか」の質問に23.5%から52.4%、「全体の満足度」の質問に23.5%から61.9%の肯定的な回答が得られ改善が認められた。

    【考察】

    CW への運動効果の教育や医学的管理、専門的評価に基づいたプログラムの立案により、運動に対する理解が向上し安心で安全な指導が可能となり、自信を持って指導が出来るようになった。また、体操の方法を統一したことで質が均一化され、選択的プログラムにより臨機応変で多様性あるプログラムが継続的に可能となった。結果、集団体操全体の質が向上しCS の改善に繋がった。今回の取り組みでリハ職種不在の施設へ教育的に関わることの有効性が示唆された。

  • 小武海 将史, 山中 香, 小塚 正智, 小田桐 峻公, 喜多 智里, 齋藤 浩之, 奥 壽郎, 芝原 修司, 岸 昌親, 牧 里佳
    p. 325
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【目的】

    介護予防を目的とした自主グループ立ち上げに際し、参加者の自主性向上を目的に行動変容ステージモデルの「準備期」から「実行期」での動機づけに着目した事により行動変化が生じ「実行期」へ定着出来たので、アンケート結果とともに報告する。

    【事業内容とステージ】

    運動:週1 回3 ヶ月実施、準備期として「説明会」「講義・体力測定」「運動指導」「グループワーク」、実行期として「PT・OT の後方支援」「効果判定フィードバック」「講義・体力測定」「最終アンケート」である。

    【方法】

    研究の目的・内容を説明し同意を得た参加者29 名(男性2 名・女性27 名,年齢73.8 ± 6.1 歳)に対し最終日に事業に関するアンケートを行った。

    【結果】

    参加について:良かった29 名中26 名(89.6%)どちらでもない1 名(3.5%)良くなかった2 名(6.9%)、同様に運動指導:わかりやすい2 8 名(9 6 . 5 % )どちらでもない1 名(3 . 5 % )、運動の強さ:きつい1 名(3 . 5 % )適度2 1 名(7 2 . 4 % )軽い5 名(1 7 . 2 % )、今後も継続したいか:はい26 名(95.0%)どちらでもない3 名(5.0%)、運動の大切さの理解:出来た24 名(82.8%)、栄養の大切さの理解:出来た19 名(65.5%)、認知症予防の大切さの理解:出来た18 名(62.0%)であった。

    【考察】

    9 割が肯定的な意見であったことから、行動変容が「準備期」から「実行期」へ移行定着したと考えられる。外的動機づけとして、介護予防サポーターを中心に活動をリード・運営していく人材の育成、体力測定・講義を行った結果、健康意識が向上したと考える。内的動機づけとして、個人に合った運動量の調整,積極的な行動には肯定的に対応する,最終日にフィードバックを実施し効果を実感させるなど、参加者の自己決定感・自己有能感を高めた。これらが、行動変容ステージモデルを活用した各ステージにおける有効的な動機づけとなり、参加者の行動を変化させる起因になったと考えられる。

  • 柳澤 知子
    p. 326
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    東京海上日動ベターライフサービス 介護事業部第1 グループ(ヒルデモア/ ヒュッテ)では、スタッフの腰痛予防と品質の高い介助技術提供のため、2015 年度より全事業所でノーリフトケアを推進している。当事業所ではノーリフトケアで使用する道具を早期から導入したが、介助技術としてのノーリフトケアの日常的実践については課題が残っていた。そのため、今回は

    2016 年度より実施してきたノーリフトケアの推進活動について理学療法士の立場から報告する。

    【目的】

    ノーリフトケアの推進活動の振り返りを行なう。次年度の課題を明確化し介助技術の向上に繋げる。

    【方法】

    1) リハビリスタッフが日本ノーリフト協会の研修を受講し、介助技術の伝達を行なう。2) 腰痛の実態に関するアンケートの実施。3) ノーリフトケアについて全ケアスタッフ対象での事業所研修。4) 各フロアで介助技術の見直し。本発表において個人が特定されないよう対象者には倫理的配慮を行った。

    【結果】

    腰痛の実態に関するアンケート結果:73 名中38 名が腰痛あり。移乗動作や排泄介助の場面で腰に負担を感じている。事業所研修: 全3 回。参加者:45 名/73 名。研修不参加のスタッフに対しては道具の使用方法などを現場実習で伝達した。各フロアでの介助技術の見直し: タオルを使用した2 人介助での移乗→道具を活用した移乗方法への変更。類似事例に応用することが出来た。

    【考察】

    道具の導入当初、スタッフは道具を活用した介助方法に苦手意識があったが、介助技術の見直しによる入居者の変化は、スタッフの道具活用への意欲を高めた。理学療法士の立場としても、介助技術がもたらす入居者の身体への影響を知識として共有し、ケアスタッフ目線での必要物品の選定、導入手順の検討が必要である事を学んだ。また今までの取り組みの問題点、スタッフ間や職種による認識や経験の差を知る事が出来た為、今後はその事を踏まえて伝達や指導をしていく必要がある。

  • 羽賀 大貴, 海老澤 玲, 若梅 一樹, 針谷 遼, 渡邊 陽, 河西 涼平, 宇野 潤, 保木山 紗千子, 水田 宗達, 土屋 研人, 矢 ...
    p. 327
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    公益社団法人埼玉県理学療法士会(埼玉県士会)に所属している理学療法士(PT)の「褥瘡予防対策としてのポジショニング」に関する意識と実態を明らかにすることを目的とした。

    【対象及び方法】

    埼玉県士会ホームページに褥瘡予防対策に関するWeb アンケートを掲載し、全会員(4042 名)に対し回答を求めた。調査期間は平成28 年9 月1 日から9 月20 日とした。

    【結果】

    116 件(急性期31 件、回復期22 件、療養20 件、老人保健施設18 件、その他25 件)の回答を得た。ポジショニングに関心のあるPT は97%、実践しているPT は90% であった。ポジショニング方法の決定頻度が高い職種はPT 81%、看護師(Ns)

    57%、介護士(CW) 13% であった。一方、ポジショニング評価について、PT が個別に実施するとの回答が66%、多職種チームで実施するとの回答が28% であった。PT と連携をとる頻度の高い職種はNs 88%、PT 50%、CW 47% であったが、多職種との連携時にPT の67% が困っていると回答した。PT がポジショニングに活かせる能力としては、59% が姿勢や動作を評価できる点と回答した。

    【考察】

    埼玉県士会では所属施設によらず、多くのPT がポジショニングに高い関心を持ち、実践していることが明らかとなった。また、ポジショニング方法をNs が決定するとの回答も約半数あったが、評価は多職種チームではなくPT が個々に実施するとの回答が多くを占めていた。評価がPT 個別で実施され、決定した方法について多職種への伝達が不十分なことが連携に難渋している要因と考えられた。今後はPTの特性である姿勢・動作評価を活かし、多職種チームでの評価や連携手段の検討が必要と考えられた。

    【倫理的配慮】

    本研究は埼玉県士会理事会にて事業承認されたものである。アンケート実施時に目的や結果の公表を明記し、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。また個人が特定されないよう、完全匿名でアンケートを実施した。

  • 渡邊 陽, 針谷 遼, 河西 涼平, 海老澤 玲, 羽賀 大貴, 若梅 一樹, 保木山 紗千子, 水田 宗達, 宇野 潤, 矢野 秀典, 土 ...
    p. 328
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    公益社団法人埼玉県理学療法士会(埼玉県士会)に所属している理学療法士(PT)の「褥瘡・ポジショニングの関心度と知識の取得源」に関する意識と実態を明らかにすることを目的に、アンケート調査を実施した。

    【対象及び方法】

    埼玉県士会ホームページに褥瘡予防対策に関するWebアンケートを掲載し、全会員(4020名)に対し回答を求めた。

    調査期間は平成28年9月1日から9月20日とした。

    【結果】

    全回答者116名のうち、褥瘡に「関心がある」、「やや関心がある」と回答した者は95%、ポジショニングは98%であった。

    褥瘡の知識の取得源の上位3項目は「職場スタッフから」で41%、「参考書」31%、「勉強会」20%であった。また、ポジショニングは「勉強会」で33%、「職場スタッフから」30%、「参考書」28%であった。知識取得源について「勉強会」と回答した褥瘡23名、ポジショニング38名のうち、褥瘡勉強会参加者の96%、ポジショニング勉強会参加者の79%が「年に1回以上」と回答した。

    【考察】

    PTの褥瘡及びポジショニングに対する関心の高さが明らかとなった。また、「勉強会」に参加したPTの多くは「年に1回以上」と高頻度に勉強会へ参加しており、知識の向上に意欲的であることも明らかとなった。知識の取得源については、褥瘡もポジショニングも「勉強会」、「職場スタッフ」、「参考書」という回答が90%を占めた。今後、知識の取得源についてより詳細に分析し、PTが求める知識内容や取得源を精査して埼玉県士会活動へ反映させる必要があると考えられた。

    【倫理的配慮】

    本研究は埼玉県士会理事会にて事業承認されたものである。アンケート実施時に目的や結果の公表を明記し、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。また個人が特定されないよう、完全匿名でアンケートを実施した。

  • 保木山 紗千子, 宇野 潤, 水田 宗達, 土屋 研人, 海老澤 玲, 羽賀 大貴, 若梅 一樹, 渡邊 陽, 針谷 遼, 河西 涼平, 矢 ...
    p. 329
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    公益社団法人埼玉県理学療法士会(埼玉県士会)に所属している理学療法士(PT)の「褥瘡予防対策としてのポジショニング」に関する意識及び実態について明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    埼玉県士会会員(4042 名)を対象とし、Web アンケートを実施した。アンケートは埼玉県士会のホームページに回答URL を添付し回答を得た。調査期間は平成28 年9 月1 日から9 月20 日とした。

    【結果】

    116 件の回答が得られた。ポジショニングの実施状況は90%であり、多職種チームで取り組むべきという回答が98%であった。実際の取り組みは73%が多職種で関わり、そのうちチームによる評価は28%、個々によるは45%であった。ポジショニングを決めている職種はPT が82%と最も多く、PT から多職種へのポジショニングの伝達方法は写真や絵付紙面73%、口頭

    71%、直接みてもらう66%、より積極的にポジショニングに関わるために必要なことは多職種の協力と理解が85%と最も多かった(すべて複数回答)。ポジショニングの連携に困っていると答えた人は68%、困難な内容で多かったものは情報伝達、職員間の再現性の差異、知識・意識、実践・継続であった(自由回答)。

    【考察】

    ポジショニングに関わっているPT は多いが連携に困難さを抱いていることが分かった。アンケートからチームで取り組むべきとほぼ全員が回答しているが、チームによる評価は28%しか行えておらず、PT からの一方的な情報伝達にとどまっていると考えた。ポジショニングには多職種連携が欠かせず、チームとしてより円滑な連携はカンファレンスなどの具体的な取り組みが必要であると考えられた。

    【倫理的配慮】

    本研究は埼玉県士会理事会にて事業承認されたものである。アンケート実施時に目的や結果の公表を明記し、回答を得た時点で同意を得たものと判断した。また個人が特定されないよう、完全匿名でアンケートを実施した。

  • 木村 和哉, 小田部 夏子, 青木 恭太, 原田 浩司, 糸数 昌史
    p. 330
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    発達性読み書き障害とは、読み書きの能力が年齢、知能、教育の程度から期待されるレベルより十分に低く、難聴や弱視などをもたない場合をいう。書きの困難さの原因として運動覚心像との関連等が報告されており、運動覚性書字再生・音読課題にて運動覚心像の評価(小田部2014)を行い、その形成が困難な場合は関節覚そのものに問題がないか評価を行う必要がある。

    本研究では運動覚心像の形成に難しさをもつと疑われる読み書き障害児1 事例に対して関節位置覚の評価を行ったので報告する。

    【方法】

    対象は11 歳7 ヶ月(小6)男児。知的発達および読み書き速度、読解は問題がないが、書きに困難さをもつ読み書き障害児であると考えられる。運動覚の評価として再現法を用いた関節位置覚の検査を実施した。利き手の前腕回内外および手関節掌背屈30°と60°の8 課題を設定した。いす座位姿勢で閉眼位にて設定した関節角度を5 秒間で記憶させ、関節中間位から再度その角度を再現させた。関節角度の抽出は検査中の動画から解析ソフトKinovea を用いた。再現角度と設定角度の差分の絶対値を求め、先行研究(木村2016)で得られた同年代児の値と比較した。本研究の実施にあたり本学研究倫理審査委員会の承認(15-T-13)後、本人および保護者への承諾を得た。

    【結果】

    8 課題中4 課題で同年代児の平均再現誤差の値から逸脱し、いずれも75 パーセンタイルの値より大きかった。

    【考察】

    先行研究より成長に伴う関節位置覚の再現誤差が減少することが明らかになっている。書字の習得過程には視覚認知や音韻や文字形態の対応、文字を構成する線分を空間的に正しく配置する能力に加えて鉛筆を動かす運動反応の学習を通した運動覚心象の形成が重要と考えられている。本研究の結果から、読み書き障害児の関節位置覚は同年代児よりも低下することが示唆された。このことより運動出力に先立つ感覚入力の精査およびアプローチの重要性が示された。

  • 浅野 雄太, 網本 和
    p. 331
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【目的】

    座位バランス能力低下症例に対するアプローチとして、直流前庭電気刺激( 以下GVS) の影響を検討した研究は、渉猟した限り報告されていない。GVS によって陽極側への身体傾斜を起こしその状態で、対側への重心移動運動( 対側刺激順応) を行うことで、GVS 終了後陰極側への運動範囲がより拡大すると予想される。本研究の目的は、健常成人においてGVS 施行下における座位での重心側方移動課題が、座位バランスに及ぼす影響を明らかにすることとした。

    【方法】

    対象は右手利き健常成人18 名とした。全対象者に本実験の主旨を説明し、書面にて同意を得た。刺激パラメータは、刺激強度を3.0 mA、パルス幅を300 μsec、周波数を50Hz とした。本実験では、GVS を15 分間付与する左陽極刺激条件( 以下real 条件)、開始30 秒後に停止する左陽極偽刺激条件( 以下sham 条件) の2 条件にて実験を行った。座位バランスの評価は重心動揺計計測を30 秒間行い、左右動揺平均中心変位(以下MX)及び実効値面積(以下RMS)を指標とし、静的座位と動的座位にて行った。GVS 介入前( 以下baseline) に計測した後GVS を5 分間閉眼にて付与し、その後GVS 介入後( 以下post1) の評価を行った。そして、GVS 施行下にて1 回10 秒間の陰極側への重心移動課題を計30 回行い、実施後にGVS を停止させ、重心移動課題後( 以下post2) の評価を行った。

    【結果】

    静的座位のMX の変化率は、real 条件にてpost1 で陽極側へ、post2 で陰極側へ有意に偏倚した。RMS は、閉眼のreal 条件において、post1 はbaseline と比較し有意に拡大した。一方、動的座位のMX 及びRMS は、両条件共に有意な変化は認められなかった。

    【考察】

    座位にてGVS が運動課題の抵抗として作用し、GVS と運動課題を併用後により陰極側へ重心が偏倚するが、動揺性には影響を及ぼさないことが示唆された。本研究により、座位バランス能力低下症例に対する新たな治療介入の展開が期待される結果となった。

  • 土屋 伸太郎, 小林 和樹
    p. 332
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    一般的にLateropulsion(以下LP)は急性期症状で2週間以内に改善すると報告があり回復期リハビリテーション(以下回復期)での経験は少ない.本症例は回復期病棟入院時に,立位・歩行時のLP を認め,立位保持困難で運動失調も併発していた.今回,LP と運動失調への介入により効果を認めたため報告する.

    【説明と同意】

    ヘルシンキ宣言に基づき書面にて同意を得た.【症例紹介】

    90 歳代,男性.診断名は左延髄外側梗塞.発症後51 病日に回復期病棟へ入院.既往に右小脳梗塞があったが病前ADL は杖なし歩行自立.

    【入院時評価】

    運動麻痺は認めず筋力は両上下肢MMT4 ~5,左表在・深部感覚軽度鈍麻と回転性眩暈を認めた.Burke Lateropulsion Scale(以下BLS)11点,SARA28点,躯幹協調検査stageIII,BBS7点.立位はWideBaceで左側方傾斜し保持困難.SubjectiveVisualVertical は5°左偏倚し歩行は困難.

    【介入】

    LP に対し意識される体性感覚を利用した硬度識別課題と身体傾斜を認知し姿勢を修正する課題を行った.経過中,運動失調に対し重錘負荷,弾性緊迫帯の介入を並行して行った.

    【結果】

    108 病日.回転性眩暈は残存したがBLS3点,SARA13点,BBS23点.立位は左側方傾斜軽減し2 分程度可能.歩行はpickup 歩行器で見守り.

    【考察】

    本症例は回復期病棟入院時よりLP を認めた.LP は脊髄小脳路や前庭脊髄路の障害で生じると報告されており,本症例も同部位の損傷を認め運動失調と回転性眩暈も併発した.運動失調への介入は体性感覚情報のフィードバック量や感度を調整するといわれており,LP の改善に必要な意識される体性感覚を利用した介入に効果的な影響を及ぼしたと考える.そのため双方への体性感覚を利用した介入が効果的であると示唆される.

  • 入部 春介, 内 昌之, 大国 生幸, 伊豆蔵 英明, 宮城 翠, 海老原 覚
    p. 333
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    好酸球増加症候群(Hypereosinophilic Syndrome:HES)は、骨髄での好酸球増殖亢進に伴う末梢血中の好酸球増加を特徴とし、好酸球浸潤に伴う臓器障害を呈する。本症候群ではしばしば神経障害を伴うが理学療法(PT)に関する報告は少ない。我々はHES による多発性神経炎を呈した症例に対するPT を経験したので報告する。本報告に際してはヘルシンキ宣言に則り、患者のプライバシー保護に配慮した。

    【理学療法経過】

    70 歳代男性、201X 年11 月に両下肢運動・感覚障害を自覚し201X +1 年1 月12 日に当院入院となった。CRP、IgG、末梢血中の好酸球上昇を認め、皮膚紫斑部や胃潰瘍に好酸球浸潤、脛骨・腓骨神経伝導速度低下を認めた。入院後5 日にPT 開始し、初期評価時は両側で膝関節屈曲伸展MMT5、足関節背屈MMT1、足関節底屈MMT2+、上肢は概ねMMT5、Barthel index(BI) は70 点であった。歩行は足関節軟性装具と歩行補助車を使用し軽介助を要した。週5 日、20 分間の下肢筋力増強練習と歩行練習を実施した。入院後7日にメチルプレドニゾロン投与が開始された。悪性腫瘍、感染症等の異常所見、アレルギー疾患の先行を認めず入院後12 日にHES と診断された。最終評価時は下肢筋力に著変を認めず、BI は85 点、歩行は足関節軟性装具と歩行補助車を使用し見守りで可能となり、入院後42 日に自宅退院となった。

    【考察】

    HES は原因不明の好酸球増多を示す疾患群の総称であり、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)と類似した症例も報告されている。橋田らはEGPA 症例の長期予後について約1 年で下肢装具なしでの歩行が可能となった2 症例を報告している。多発性神経炎は末梢神経支配領域の運動・感覚障害を認め、ADL に障害を与えるが、長期的には回復が期待されるため早期より装具や補助具の導入を検討し、残存機能の低下を防ぐことが重要と考えられた。

  • 横地 翔太
    p. 334
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    大脳皮質基底核変性症(以下CBD)利用者に対し、通所リハの20 分の関わりの中で可動域練習や筋力強化練習では機能向上が難しい印象がある。表情筋に介入をした所、改善が見られた為、報告を行う。本症例、家族には、発表に関しての同意を得た。

    【症例紹介】

    性別:女性(80 歳代) 経過:5 年前から転倒が多くなり、受診した所CBD と診断。2 年前に転倒し、右上腕骨折を受傷し回復期病院へ入院。その後、継続的なリハビリ目的で通所リハの利用となる。主訴:体が動かしにくい。(本人)声が小さく何を話しているかわからない。( 家族) 投薬:メネシット配合錠100

    【理学療法評価】

    初期評価H29.2 頃全体像:硬い表情で声量低下により聞き返しが必要。Functional Independence Measure( 以下FIM):41 点移乗動作:胸郭介助にて行う、骨盤前傾が不十分で立ち上がる。ステップは小刻みで、中等度介助。

    【介入】

    CBD は、神経伝達物質であるドーパミンが減少する事でおこる変性疾患である。橋元らによると笑いをつくる事で脳内の表情に相応した感情を起こすプログラムが刺激され、楽しい感情となるとされている。今回は、ドーパミンが増加することを期待し、笑いを作る事で症状が緩和するのではないかと考えた。介入は、笑いを作る表情筋に対して徒手的介入とユーモアのあるカウンセリングを実施した。最終評価H29.3 頃全体像:声量が向上し、笑顔が見られる。FIM:54 点(車椅子移乗2 点→4 点)移乗動作:指示にて立ち上がりが可能。ステップもスムーズとなり、見守り。QOL 評価:SF-36(MOS 36-

    Item Short-Form Health Survey)にて各項目で改善あり。

    【考察】

    笑いを作る表情筋に対して徒手的介入とカウンセリングを実施した事で心理的効果により、楽しい気持ちが起きたと考えられる。楽しい気持ちによりドーパミン大脳基底核内の神経回路網が働き易くなり、滑らかな動きに繋がったと考える。

  • 岡崎 瞬, 有賀 一朗, 松岡 大悟, 磯村 隆充, 山崎 摩弥, 遠藤 則夫, 小林 博一, 武井 洋一, 中村 昭則, 大原 愼二
    p. 335
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    LSVT (Lee Silverman Voice Treatment) ⓇBIG はパーキンソン病患者に対する運動療法として有用性が報告されている。しかし、歩容の変化に着目して解析した研究はわれわれが渉猟した範囲で見つからなかった。本研究では、LSVT ⓇBIG を実施し、介入前後での歩容の変化について、歩行周期の変動係数や前後方向の重心移動幅に着目し、比較検討する。

    【対象】

    LSVT ⓇBIG を目的に当院の神経内科に入院したパーキンソン病患者7 名でであった。また、当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した。

    【方法】

    患者の腰部に加速度計を装着し、10m 歩行路を快適歩行速度条件で歩行した。その際に得られた加速度波形より歩行周期の変動係数、前後方向の重心移動幅を算出した。また、歩行やバランスに関する評価は、6 分間歩行テスト・10m 歩行テスト・Functional reach test・Timed up and go test の4 項目を実施し、介入前後で比較した。統計解析方法はWilcoxon の符号順位検定を用い、危険率5%未満を有意差ありとした。

    【介入方法】

    LSVT ⓇBIG のプロトコルに従って、公認の理学療法士が担当した。

    【結果】

    歩行周期の変動係数の比較では、介入前で2.9 ± 0.9、介入後で1.6 ± 0.4 となり有意な低下が認められた。前後方向の重心移動幅は介入前で2.2 ± 0.8cm、介入後で2.9 ± 1.3cm となり増加傾向となった。歩行能力に関する評価項目では、全ての項目で有意な改善が認められた。

    【考察】

    LSVT ⓇBIG の介入により変動係数は有意に低下し、前後方向の重心移動幅は増加傾向となった。変動係数の低下は歩行周期のばらつきが軽減したことを示唆し、安定したリズムの歩行となったと思われる。また、前後方向の重心移動幅が大きくなったことで前方推進力が増強したのではないかと考えた。安定したリズムで前方推進力が増強したという歩容の変化がみられたことで、歩行能力に関する4 項目すべてで有意な改善を認めたのではないかと考えた。

  • 宮崎 緑, 小川 英臣, 加地 啓介, 岡安 健, 神野 哲也(MD)
    p. 336
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    多量のPLS 投与と安静による著しい筋力低下が生じた全身性エリテマトーデス(以下SLE)患者を担当した.一時ADL 重度介助であったが,本人の強いニーズに応えることを目標にしたリハビリテーション(以下リハ)を実施し,介入約1 か月で一時外泊と復職前会議参加が可能となった症例について以下に報告する.なお,患者には書面にて同意を得た.

    【症例】

    40 代男性,職業:自営業,入院前ADL:自立,合併症:ループス腎炎,高血圧,左下腿蜂窩織炎,両側大腿骨頭壊死術後,両膝OA 術後,側弯症.1995 年SLE と診断されPSL 治療開始.2016 年9 月にループス腎炎増悪し,同年10 月当院入院.11

    月より透析開始,同日よりリハ開始.【経過】

    リハ開始時mFIM86点,MMT3-4.繰り返す下血と治療により,体調不良と意欲低下が生じ11月中旬-12月上旬まで介入中止.リハ再開時mFIM23 点,MMT1-2.この時,2017 年1 月末の一時外泊と2 月上旬の復職前会議参加を強く希望され,立ち上がり,歩行,階段昇降能力獲得が必須となる.筋力トレーニングと並行し,代償動作の指導,各動作の反復練習を進めた.一時外泊時mFIM42 点(55cm 高起立,松葉杖歩行,10cm 段の昇降軽介助).2 月上旬復職前会議参加時mFIM52 点(45cm 高起立,松葉杖歩行見守り,20cm 段の昇降軽介助).

    【考察】

    本症例はSLE のほか,多くの合併症があり,筋力回復に時間を有することが予測された.しかし患者のニーズと筋力,動作能力には乖離があった.このニーズ達成のため,病棟と連携した訓練などを行いつつ,リハ介入頻度を増加させた.特に代償動作の指導や各動作の反復練習など,動作練習を増やし段階的に実施した.また外泊に向けて,家族への介助指導や家屋評価に加え,会議参加に必要な会議場周辺調査も行った.介入を進めるにあたり,機能訓練のみならず,代償動作や環境設定における様々な視点や手段を駆使することで,短期間での患者ニーズ達成に至ったと考える.

  • 永井 洋平, 五十嵐 功, 清水 弘子
    p. 337
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    脳卒中片麻痺患者の歩行訓練において、麻痺が軽度であっても杖を使用した訓練が継続される事がある。今回、脳卒中後の半球間抑制を考慮し、非麻痺側の過剰使用を抑え、麻痺側機能向上による歩容改善を目的とした無杖歩行訓練を実施した結果について報告する。

    【症例】

    左内包後脚の脳梗塞により右片麻痺を発症した60 代男性。初期Brunnstrom Recovery Stage(BRS) は上肢II 手指I 下肢IV、側臥位での股関節外転はわずかに可能。Trunk Control Test(TCT) は48 点。非麻痺側MMT は4 レベル、関節可動域制限は認めなかった。歩行では、麻痺側立脚期の骨盤左下制による非麻痺側I.C での歩隔狭小化から、左外側へバランスを崩す事が問題であった。

    【方法】

    訓練は麻痺側臀筋群促通により骨盤左下制を改善し、歩隔の確保による歩行安定を目標とした。歩行訓練は無杖にて、後方介助により骨盤左下制を制御しながら実施した。歩行訓練の実施期間は35 日間、頻度は週6日、回数は10m1 往復を1 セットとし10 セット実施した。18 病日では、10m 歩行速度は22 秒04、歩数は23 歩、ストライド長は0.87m であった。

    【結果】

    退院時(44 病日) は、BRS 上肢III 手指IV 下肢V、側臥位での股関節外転は全可動域で可能。TCT は100 点。10m 歩行速度は10 秒42、歩数は18 歩、ストライド長は1.1m であった。歩容は概ね改善し、独歩、見守りとなったが、長距離歩行では初期と同様の歩容が出現する状態であった。

    【考察】

    歩容改善に関して、半球間抑制の観点からは、無杖歩行訓練にて非麻痺側の過剰使用を抑えた事で、障害側半球の活性が阻害されず臀筋群促通を促せた事が一要因ではないかと考えられる。また、運動学習の観点からは、課題特異的に歩行訓練を主に実施し、訓練量の確保と介助での難易度調整が歩容改善に繋がった可能性もある。

    【倫理的配慮・説明と同意】

    ヘルシンキ宣言に則り、対象者に対し趣旨を説明し書面にて同意を得た。

  • 金子 佳代, 吉井 亮太
    p. 338
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    今回、補足運動野に病変を認めた患者に対し早期より装具療法を行い麻痺側への荷重感覚の促通を行った. 最終的に歩行再獲得に至ったため報告する.

    【症例紹介】

    80 歳代女性. 左前大脳動脈梗塞.MRI より、上前頭回・帯状回に病変を認め、補足運動野に関わる運動の発現・皮質網様体路の障害が予測された. 理学療法評価(入院時):Brunnstrom recovery stage(以下、BS)上肢- 手指- 下肢:V-V-II.FIM 運動項目は23 点.ADL 動作では麻痺側下肢の参加はみられず. 立位以降は麻痺側へのpushing あり. 移乗動作では方向転換時の踏み出しは困難であった. 歩行は振り出しがみられず介助を要した. 皮質脊髄路の病変はわずかであるが、補足運動野の障害により麻痺側下肢の動作への参加がみられないのではないかと考え1 非麻痺側体幹制御促通2 麻痺側体幹・股関節への体性感覚入力3 歩行リズムの再獲得を行った.

    【説明と同意】

    本報告は対象者に説明を行い同意を得た.

    【理学療法経過】

    1.2 に対し、長下肢装具を使用し立位重心移動・ステップ動作・横歩きを実施. 非麻痺側の皮質網様体路および麻痺側の抗重力筋の賦活を図りPushing 軽減に繋げた.3 に対し、T-Support を使用した歩行練習を実施. 麻痺側TSt での股関節の十分な伸展運動とIC での踵接地がみられるよう倒立振子を意識した誘導を行い、歩行パターン再獲得に繋げた. 入院4 ヶ月後: 上肢V-V-V、FIM運動項目57点.ADL場面では靴の着脱・方向転換・歩行時に麻痺側下肢の運動がみられるようになった.歩行はフリーハンド見守りにて可能.

    【考察】

    長下肢装具を使用し、容易に両側下肢への体性感覚入力を行うことが可能となった.T-Support を使用し、受動的な歩行リズムのなかで麻痺側下肢の運動の発現のタイミングが学習され、パターン化し歩行再獲得に繋がったと考える.

  • 田中 克統, 吉井 亮太
    p. 339
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
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    【はじめに】

    脳卒中症例では, 皮質網様体路の障害により非麻痺側股関節を中心とした予測的姿勢制御が困難となる. また, 立位の姿勢制御には視覚, 体性感覚, 前庭入力が重要とされている. 今回, 視覚・体性感覚入力を利用した立位練習を実施し歩行を獲得した症例を経験したので報告する.

    【症例紹介】

    60 代女性. 左後頭葉の脳出血で入院. 既往歴にクモ膜下出血, 脳梗塞を発症しており, 左右の前頭葉に病巣あり. 病前のADL

    は車椅子を使用し自宅内ADL 自立. 本報告はヘルシンキ宣言に基づき主旨を説明し同意を得た.

    【理学療法評価】

    Brunnstrom recovery stage 右上肢V・手指V・下肢V, 左上肢IV・手指V・下肢III. 表在感覚は軽度鈍麻. 立位保持はつかまり立ちで見守り, 両股関節, 左足関節に疼痛あり. 身体図式の歪みがあり, 動作全般で過剰な身体固定が見られ下肢でのpushing を認めた. 歩行は両手すり把持で最小介助にて実施可能. 高次脳機能障害は分配性注意障害, 抑制低下を認めた.

    【方法】

    KAFO を使用し膝関節伸展を補助. 平行棒内にて前方に鏡を置き右上肢はon elbow, 左上肢はon hand とし, 視覚と体性感覚情報による姿勢の修正ができるように設定. 介入では, 正中位の保持を促した後, 右側への重心移動, リーチ動作等, 動的立位課題を実施. 介入後, 固定型pick up walker とAFO を使用した歩行を行い, 治療効果を判定.

    【結果】

    入院当初より立位・歩行時の恐怖心が軽減. 右下肢での荷重が可能となり右立脚期間が延長. 左下肢の歩幅の拡大が見られた. 退院時には固定型pick up walker とAFO を使用し見守りにて歩行可能.

    【考察】

    平行棒内で鏡を利用し体性感覚, 視覚によるフィードバックを与えた立位練習を実施. 両上肢に支持物を与えることによる上下肢からの体性感覚と鏡による視覚情報を利用することで適切な難易度を設定できたと考える. 右上肢をon elbow にすることで上肢のpushing を抑制し, 体幹・下肢の近位筋による姿勢制御が可能となったと考える.

  • 川合 優輝, 倉澤 裟代, 北山 哲也
    p. 340
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    脳卒中片麻痺患者のリハビリテーションにおいて、歩行能力の向上に下肢装具を用いた歩行訓練は有効とされている。先行研究では早期から長下肢装具を使用している方が多角的機能の改善がみられており、歩行自立度が高くなる事が報告されている。しかし、KAFO を使用してからSHB への切り替えについての具体的な指標に関して報告は多くない。今回、当院におけるSHB 作成時の指標を検証し、以下に報告する。

    【方法】

    H27 年4 月~H29 年2 月までに当院へ入院した脳卒中片麻痺患者で装具診にてSHB を処方された患者36 名を対象とし、入院時とSHB 処方時での各評価項目を抽出し比較検討した。評価項目はFIM の運動項目の合計点数、BRS、BBS、麻痺側・非麻痺側下肢筋力、FIM の認知項目の合計点数を用いた。統計学的検討にはFriedman 検定及びScheffe の多重比較検定を用い検討する。本研究は当院の倫理委員会の承諾を得て実施した。

    【結果】

    入院時に比べSHB処方時には下肢BRS、BBS、麻痺側膝関節伸展筋力、FIMの運動合計が有意に高値を示した。下肢BSR(3.19 ± 0.66)、BBS(31.73 ± 12.13)、麻痺側膝関節伸展筋力(3.00 ± 0.69)、FIM 運動合計(59.58 ± 15.91) が高値で有意差を認めた(P >0.05)。しかし非麻痺側筋力は向上はしていたが有意差は出なかった。

    【結論】

    SHB 処方するにあたって、当院ではBRS がIII 以上の人が大半であった。石崎らは入院時にKAFO からAFO に変更した群は下肢BRS がIII 以上であったと報告している。また麻痺側だけでなくBBS や非麻痺側下肢筋力も高値であったため、バランス能力も含め総合的に判断することがSHB を処方するにあたって必要と考える。SHB は実用性が高くKAFO に比べFIM などADL 場面に繁華されやすい。そのため当院でのSHB 処方時もFIM の運動項目に有意に高値を示したと考える。SHB 処方はADL の自立に向けて大きく関与すると考えられるため、上記で述べた身体機能の向上を図っていく必要があると考える。

  • 瀧谷 春奈, 舘野 純子, 稲葉 沙央莉, 森下 雄貴, 猿子 美知, 赤池 幸恵, 新井 健介, 安部 諒, 谷 直樹, 坂 英里子, 宮 ...
    p. 341
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    広範な脳室穿破と急性水頭症を伴った左視床出血患者に対して、術後早期からの理学療法介入により杖歩行獲得に至った症例を経験したので報告する。

    【症例】

    68 歳男性。入院前のADL は自立していた。意識障害、頭痛を主訴に当院に救急搬送。CT 画像上広範な脳室穿破を伴う高血圧性左視床出血を認めたため、降圧剤の投与を開始し、同日緊急脳室ドレナージ術を施行した。

    【経過】

    術後1 日目から理学療法開始。開始時は、意識レベルJCSII-10、収縮期血圧140 台、Brunnstrom Recovery Stage(以下、BRS)III 以上、Barthel Index(以下、BI)0 点であった。意識レベルが悪く安静度制限もあり、ベッド上での動作練習を実施。

    術後5 日目より車椅子乗車開始となったが、収縮期血圧190 台と血圧コントロール不良で、JCSII-20 と意識レベルも悪かったため、全身状態と意識レベルに注意し離床を実施。術後27 日目には歩行練習開始となり、術後34 日目で杖歩行が介助下で可能となった。術後40 日目に回復期リハビリテーション病院へ転院。転院時は収縮期血圧110 台、JCSI-2、BRS 上肢V 手指VI

    下肢VI と改善がみられた。術後82 日目には独歩獲得し回復期リハビリテーション病院を退院した。

    【考察】

    本症例は、術後早期では血圧コントロール不良で意識レベルも悪かったが、術後早期からの理学療法介入において、画像所見の評価、血圧管理、意識レベル変動等に注意しながら離床を図った結果、有害事象なく歩行獲得に至ったと考えられる。脳室穿破を伴う高血圧性脳出血は一般的には生命予後や機能予後は不良だが、本症例のように広範な脳室穿破を伴っていても、血腫が外側に進展せず内包の破壊が免れているか軽度な症例では適切なリスク管理を行い発症早期から理学療法介入することで、機能予後が改善できる可能性がある。なお、本症例報告はヘルシンキ宣言に沿って行い、公表の有無、個人情報の取り扱いについて説明し同意を得た。

  • 佐久 瑞季, 島田 直, 北山 哲也
    p. 342
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】

    当院ではセラピストの訓練以外に看護師と連携を取りながら病棟歩行訓練を行っている。先行研究では脳卒中患者は歩行訓練開始時期が早く、訓練量が多い方がFIM の改善に繋がるとされている。できる限り早期に歩行訓練を行う為には、日常生活機能はどの程度保たれているのか把握する必要があると考える。今回、脳卒中患者を対象に、PT 歩行訓練開始から看護病棟歩行訓練開始までの日数と日常生活機能の差異を確認、検証したので以下に報告する。

    【方法】

    2016 年4 月から2017 年2 月までの10 か月間に病棟歩行訓練を行った脳卒中患者57 人を対象に実施。入院時から病棟歩行訓練を開始した平均日数(45 日) より早期に実施した群(以下A 群)と遅く実施した群(以下B 群)の2 群間に分け、FIM

    の13 項目(入院時、退院時、利得率)を比較する。2 群間の比較をする為、等分散性の検定を行った後にMann-Whitney 検定を実施する。本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施した。

    【結果】

    A 群はB 群よりも入院時、退院時ともに各FIM 項目の値が高値であった。利得率は、トイレ動作(A 群2.76 ± 1.73、B 群3.91

    ± 1.38) でB 群の方が高値で有意差を認めた。また、階段昇降(A 群2.97 ± 1.72、B 群1.95 ± 1.70) ではA 群の方が高値で有意差を認めた(P >0.05)。

    【結論】

    早期から病棟歩行訓練が可能な患者は入院時、退院時共に各評価点数が高いと考える。しかし、病棟歩行訓練の開始が遅い患者も訓練以外での歩行場面を増やすことで基本動作であるトイレ動作などで改善がみられたと考える。また、早期に病棟歩行訓練を開始することが可能な患者は、より難易度の高い階段昇降の改善がみられたと考える。その為、セラピストは見守りで歩行が行えるよう評価や治療を行い、訓練以外での歩行場面を増やすことが重要である。今後も看護師と連携を取り、病棟での歩行訓練を続けていきFIM の向上を図っていくことに努めたい。

  • 杉野 貴俊, 加藤 宗規
    p. 343
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/04/03
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

    今回,歩行中のふらつきを生じていた片麻痺患者に対して,応用行動分析学に基づいた環境設定(目印となる線の提示とその段階的消去)と結果の設定(改善への称賛)を行ない,介入による影響を検討した.

    【方法】

    対象は右視床出血により左片麻痺,運動失調,構音障害を呈した60歳代女性.介入前SIA(S脳卒中機能障害評価法)は58点(運動機能は上肢3-4,下肢3-3-4,体幹3-2).表在・深部感覚は正常.FBS(Functional Balance Scale)は25 点.サイドケインを用いた歩行中に杖と健側足部の間隔が狭く患側方向へのふらつきを生じていた.歩行時に口頭指示,文字教示を行っていたが,教示と介助に著明な減少はなかった.そこで,新たな介入として,直線10m の間に2 本の赤線を引き,杖と健側足部がそれぞれの赤線の内側に入らないように指示し,10m 歩行中の口頭指示・介助回数を記録,歩行後にフィードバックを行ない,回数の減少に対して称賛をした.そして,段階1:10m の赤線,段階2:1m おきに1m の赤線,段階3:2m おきに50cm の赤線,段階4:赤線なしの4段階で直線を消去した.段階の引き上げ基準は2回連続口頭指示・介助なしで成功の場合,翌日からとした.【説明と同意】

    ヘルシンキ宣言に基づき本人と家族から撮影と研究,発表の同意を書面で得た.【結果】

    介入前日(51 病日)の10m 歩行における口頭指示は8 回,介助は3 回であった.介入後日数(段階)結果の順に,1 日目

    (段階1)口頭指示4 回,2 日目(段階1)0 回,3 日目(段階2)口頭指示3 回,7 日目(段階2)0 回,8 日目(段階3)0 回,

    9 日目(段階4)0 回であった.介入9 日目におけるSIAS は63 点,FBS は27 点であった.【考察】

    結果より,赤線によるプロンプト・フェイディングと称賛が本症例の歩行改善に影響を与えたことが示唆された.

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