イオン交換クロマトグラフィーはタンパク質を電荷の違いで分離する方法であり,タンパク質の取り扱い方や精製の基本を理解するのに適した教材として,学生実験によく採用されている.筆者らの長浜バイオ大学では二年次に,陽イオン交換クロマトグラフィーにより,三種類のタンパク質混合溶液からリゾチームを分離し,280 nmの吸光度,溶菌活性を用いて分離の様子を確認した後,SDS-PAGEによる分子量の測定からリゾチームを同定する学生実験を組んでいる.この実験では,リゾチームの吸光度のクロマトグラムと活性値を指標としたクロマトグラムは一致せず,リゾチーム濃度が最大の画分の溶菌活性値が前後と比べて低下する現象が確認される.この現象は溶菌された菌体とリゾチームの複合体沈殿物により,見かけ上の溶菌活性を低下させるために起こる.そこで筆者らは,溶菌後にアルカリ溶液を加えて共沈殿を分散させることで,反応液が透明化すること(中村効果)を目視で観察する実験を追加した.これにより受講生がタンパク質の電荷を実感できる学生実験となることを報告する.
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