リンゴ黒星病とは,リンゴの葉においてすす状の病斑を形成し,果実では黒褐色斑がみられる農作物病害の一つである.リンゴ黒星病菌は,Venturia inaequalisという糸状菌の一種で,一次伝染源である子嚢胞子の飛散と二次伝染源である分生子の拡散によって被害が拡大する.本研究では,2020年3月20日から11月25日まで弘前大学農学生命科学部・学内圃場内に設置した実験区において大気バイオエアロゾル(大気浮遊生物粒子)採取を実施し,アンプリコン解析によるリンゴ黒星病菌の相対検出量をモニタリングした.リンゴ黒星病菌の相対検出量は,主に8月上旬にピークが検出された.これらは分生子の飛散と考えられる.気象データとの相関では,気温,風速と相対湿度に有意な正の相関があった.SPMやPM2.5などの大気汚染予測に用いられるプルーム式を用いて推算した結果,風下10 mほどで沈着することから,大気輸送というよりも樹木から樹木への感染により拡散していくと思われる.本研究のリンゴ黒星病菌モニタリング結果などより,発病予測のみならず,拡散地域推測から農薬散布の減量化につながり,環境リスクの低減,農薬コスト削減や作業負担軽減に貢献できる.
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