時間学研究
Online ISSN : 2424-208X
Print ISSN : 1882-0093
ISSN-L : 1882-0093
12 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 山本 晴彦, 松岡 光美, 渡邉 祐香, 兼光 直樹, 坂本 京子, 岩谷 潔
    2021 年 12 巻 p. 1-30
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー
    2020 年7 月6 日から8 日にかけて梅雨前線が九州北部付近に停滞し,太平洋高気圧の周辺から暖かく湿った空気が 流れ込み,広い範囲で記録的な大雨となった。6 日の日降水量は大牟田のアメダスで388.5mm(観測史上第1 位)を観 測し,7 月6 日0 時から翌日の8 日24 時までの48 時間降水量(2 日間)は,福岡県南筑後地方,熊本県山鹿・菊池地 方,大分県日田市南部の東西40km,南北20km の帯状の範囲で,600mm 以上の地域が広がっていた。本豪雨により大牟田市では内水氾濫が発生し,死者2 人,住家被害は全壊11 棟,床上浸水1,341 戸,床下浸水713 戸の計2,054 戸に上った。特に,諏訪川下流左岸の三川地区では,三川ポンプ場の排水能力(64.4mm/時間)を超える集中豪雨に見舞われたことにより,ポンプ場が内水氾濫により浸水して排水機能が停止した。これにより,三川地区では約800 戸が最高2m 近くまで浸水し,復旧が進んでいない住宅も数多く見受けられた。浸水被害が甚大であった三川地区の汐屋町,樋口町,上屋敷町1・2 丁目付近は,戦前はレンコン畑や水田が広がる低平地であったが,1960 年代に入って埋め立て工事に伴う区画整備が急速に進み,標高が周囲より低く浸水リスクの高い地域での開発が被害の拡大を助長していた。
  • 大久保 心
    2021 年 12 巻 p. 31-51
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー
    生活時間研究を通じて,子どもの日常生活の階層間格差や地域間格差,特定の行動の時系列変化が明らかにされてきたが,子どものライフスタイルの総合的な趨勢の検討は十分でなかった。そこで本稿は,子どものライフスタイルの変化と安定の傾向を長期的に把握することを目的とした。10歳以上を対象とした「国民生活時間調査」の小学生,中学生,高校生,および親世代の40代の集計データを用いて,1970年から2020年までの時間量とタイミングの情報から生活時間の時系列変化を確認した。その結果,夜帯の生活時間の時系列変化について,40代と小学生は連動しやすい傾向が見られた一方で,中高生は40代と独立した傾向が見られた。また,日中の生活時間の多様性について,平日は50年間かなり安定していたが,日曜では一貫した変化と安定の傾向は見られなかった。平日と日曜の夜帯について,どの年齢層でも長期にわたり行動の多様化が見られたが,40代と小学生は徐々に夜型化していたのに対して,中高生は夜型傾向の維持と同時に自由行動の増加が確認された。以上の結果から,生活時間データからライフスタイルを捉える場合に時間量とタイミングの両情報の利用が有効であること,生活時間研究が子どもの社会化を長期的かつ客観的に把握するために重要であることが示された。
  • 井邑 智哉, 岡崎 善弘, 高村 真広, 徳永 智子
    2021 年 12 巻 p. 53-60
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,児童の時間管理が長期休暇中の学習時間や長期休暇後の学習意欲に影響を及ぼすのかを検討することであった。長期休暇前に児童の時間管理(生活リズムの確立,目標設定・優先順位)と学習計画,長期休暇中には毎日の学習時間,そして長期休暇後には自己効力感と学習意欲を測定した。分析の結果,生活リズムの確立得点の高い児童ほど,宿題の予定と実際の取り組みが一致しており,学習時間も長いことが明らかとなった。また生活リズムの確立は,学習意欲,自己効力感に対して正の影響を及ぼし,目標設定・優先順位は自己効力感に対して正の影響を及ぼしていた。
  • 呼吸による時計をめぐって
    金 博男
    2021 年 12 巻 p. 61-78
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー
    本稿は中国における呼吸による理想的時間論がいかなるものであったかについて考察するものである。人間が一昼夜において1万3500回息をするという説は,現存する中国最古の医書である『霊枢』に記されており,後に朱子が考える天地の運行を支持する理論のひとつへと発展していった。「息」自体は,本義が鼻息と思われ,前漢時代からすでに「短い時間」と関係づけられ,一定の程度で時間単位としても機能していた。1万3500回息説は,日本へも伝わり,数多くの『日本書紀』の注釈書に提示されているが,日本人は中国人より一日の呼吸数が少ないという新たな理論展開も見られる。そして,一条兼良『日本書紀纂疏』において,この説を利用して,逆に時刻を知り得ることが述べられている。『西遊記』においては,孫悟空がこれを「実践」したと思しい。所詮は机上の理論にすぎなかったこの説ではあるが,鼻息によって時刻を知る方法が,南宋以降,新たに「発見」され,兪琰『席上腐談』や方以智『物理小識』に記されるに至った。それは,鼻の穴に左右交代に息を通すことによって時辰を知るという説である。この説がさらなる「進化」を遂げたものは,民国時期にも見られるが,中国人の伝統的呼吸論および呼吸にまつわる理想的時間は,西洋の科学知識および現代医学の到来によって崩れつつあった。
  • 近世中後半期の下野国黒羽藩の士民の昼間の各時刻ごとの行動を中心に
    大沼 美雄
    2021 年 12 巻 p. 79-95
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー
    中国にも日本にもいわゆる年中行事の類がまとめて記述された古文献が数多く伝わっている。例えば,中国に伝わったものを挙げれば『詩経』七月・『礼記』月令・『大戴礼記』夏小正・『四民月令』・『逸周書』時訓解・『同』月令解・『荊楚歳時記』・『管子』四時・『呂氏春秋』十二紀・『淮南子』時則訓・『三才図会』時令など,日本に伝わったものを挙げれば『本朝月令』・『両朝時令』・『日本歳時記』・『東都歳事記』・『九条年中行事』などと枚挙に遑が無いが,これらによれば1年のうちの何月に或いはもっと具体的にその何日に何が行われていたかを知ることができる。ただ,あくまでも1年間の行事を月ごとに又は月日ごとに記述したものであり,1日のうちに行われることを時刻ごとに記述したものではないので,1日のうちのいつ頃に何が行われていたかは殆ど知ることができない。1日のうちのいつ頃に人々がどのような行動を取っていたかについては殆ど知ることができないのである。実は下野国(現栃木県)の旧黒羽城の「時鐘銘」の中の近世中期に撰文された箇所には昼間のみに限定されてはいるが士民の行動を各時刻ごとに記述した部分がある。また,近世後期に成立した黒羽藩政史料『創垂可継』には藩士たちが取るべき行動を具体的な時刻を交えて記述した部分などがある。それで本研究では,旧黒羽城の「時鐘銘」の中の士民の昼間の行動を各時刻ごとに記述した部分を取り上げ,それを専門的な漢学(中国学)の手法や『創垂可継』の中に見える藩士が取るべき行動を具体的な時刻を交えて記述してある部分,また時刻の異名(十二時異名)の中でも特にその時刻に取られる人間の行動を語源とするものなどを用いて解読し,近世中後半期の黒羽藩の士民が昼間の各時刻ごとにどのような行動を取っていたかを明らかにしたものである。
  • 安田 一美
    2021 年 12 巻 p. 97-111
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー
    人間が経験する時間に物理的時間tと心理的時間 τがある(松田他 1996)。人間の各個体に注目したとき,常にこれら2つの時間が同時に経験されている。経験される(t,τ)の組み合わせは,その個体の一生を通して,t-τ平面上にひとつの軌跡を描く。その軌跡を解析することが本論文の主題である。特に注目するのは,生命の発現期と終末期における軌跡の挙動である。本論文では,特殊相対性理論が時間に及ぼす効果は無視する。解析のために本論文では個体の生命力を表す無次元パラメタとして,生命機能指数α(t)という概念を設定した。α(t)は個体の生命発現時と生命終焉時に0で,中間の時間帯(常態期)で正の有限値をとるtに関する連続で微分可能な関数である。t,τ,αは,相互に関係しあって変化する。その関係式を dt/dτ=α(t) と設定しこれを「2つの時間の方程式」,或いは短く「生命指数方程式」と名付けた。α(t)の発現期と終末期における関数形はTaylorの定理を用いて,一般性を失わないように決めた。個体の一生にわたる(t,τ)軌道を計算し次のことが判明した。軌跡は単調増加の連続曲線を描き,tに関しては有限区間に,τに関しては無限区間に分布する。すなわち物理的時間(体の時間)は有限であるが,心理的時間(心の時間)は前方と後方に無限,即ち始まりも終わりもない,ことが判明した。
  • 矢野 幸介
    2021 年 12 巻 p. 113-117
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー
    私たちは学習・仕事と余暇と休息の時間を使って生活している。つまり,時間は私たちの効用の鍵となる概念である。本稿では,これらの時間で構成される効用のモデルをつくるときに,このモデルは何を説明するのかを考えることにする。初めに,私たちの効用は賃金と余暇時間から得られると本稿では仮定する。このとき,この効用を構成する賃金は,人的資本と労働時間より生じると仮定する。そして,また,この人的資本は,余暇時間と労働時間から生じると仮定する。このようにみることで,労働時間と余暇時間はともに効用に影響を及ぼす結果となる。私たちは,労働時間と余暇時間とからなるこの効用への影響のつりあいをもつ。このとき,労働時間は人的資本を高めたり,労働生産性を高めたりする。このことは,余暇時間が人的資本を高めたり,効用を高めたりするのと等しいことを意味する。
  • どうして,こうであって,他ではなかったのか?
    一川 誠
    2021 年 12 巻 p. 119-120
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/07/01
    ジャーナル フリー
feedback
Top