【目的・対象】脳梗塞治療には再発の予防として抗血小板薬・抗凝固薬が使用され、抗血小板薬の適応拡大や新規抗凝固薬の登場により、その使用頻度が増えている。その効果の一方で出血性合併症を来す症例も増えている。その現状を把握するために2004年より10年間に黒部市民病院脳神経外科に入院した2727例について後方視的に検討した。
【結果】10年間で当科に入院した症例数は減少傾向にあり、出血症例も増加傾向は認めていない。しかし出血症例の中に同薬使用例は10~20%程度だったものが最近では20~30%を占めている。また、一剤だけでは無く、二剤、三剤と服用している症例も増加している。非外傷性疾患の場合は、同薬使用例の予後は非使用例に比べて著しく不良であったが、全外傷症例では有意差がなかった。これは外傷症例の中に比較的予後良好な慢性硬膜下血腫症例が多く含まれていたためであり、急性期外傷症例に限るとやはり同薬使用例の予後は不良であった。
【考察】抗血小板薬・抗凝固薬は脳梗塞治療には外せないものではあるが、このような合併症があることを医療者は留意し適切な使用を心がける必要がある。また、救急隊にとっても回合することの多い頭蓋内出血症例の中には同薬の合併症によるものがあることを認識し、速やかに適切な対処が出来るように情報を収集し病院を選定する必要がある。そのためには車内収容の際に現在服用中の処方薬やお薬手帳を家族に確認するか、「いのちのバトン」の様な活動を全県に拡大し、処方内容が確認出来ることが望ましい 。
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