富山救急医療学会
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39 巻, 1 号
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第39回学術集会抄録集
  • 穴田 靖子, 清水 繁, 桐谷 清徳, 前田 剛, 水野 勇, 池水 真未
    原稿種別: 一般演題抄録
    2021 年 39 巻 1 号 p. 3-
    発行日: 2021/09/04
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】
    平成28年3月に消防庁及び厚生労働省から「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」の通知が発出されましたが、現在、富山市では《転院搬送のルール》は定められていません。
    富山市の転院搬送の現状を通し、転院搬送のルールは必要か、またどのようなルールが必要かデータ等で検証した結果を発表する。
    【対象】
    平成28年から令和2年までの5年間を対象
    【方法】
    ・救急報告書データを集計解析
    ・救急隊への聞き取り調査
    【考察】
    期間中の転院搬送は全救急出動件数の約12.4%であり、全国や他の消防局や本部と比較しても非常に高い割合となっている。
    急患センターの積極的利用や輪番制の影響もあると考えられる。
    救急隊に対して指示や医療処置等が施されていない事案が57.0%あり、転院搬送の検証についてはデータを提供し、医療機関と共に分析が必要であると考えられる。
    現場の救急隊が危惧する点として、医師の同乗がない転院搬送や転院元医療機関から情報提供がない場合、搬送先医療機関に連絡が入っていない場合などがあげられたことから《転院搬送のルール》がないことは傷病者にとって医療安全上危険と考えられる。
    【結語】
    転院搬送事案における転院元医療機関からの救急隊に対しての情報提供体制や、搬送先の医療機関への連絡体制など、各機関における適切な転院搬送を実施するための《転院搬送のルール》を作ることで、安全で円滑な救急活動につながると考える。
  • 山崎 賢也
    原稿種別: 一般演題抄録
    2021 年 39 巻 1 号 p. 4-
    発行日: 2021/09/04
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー
     現在、高岡市消防本部に登録されている救急救命士は、救急振興財団の救急救命研修所を修了した救急救命士(以下「研修所救命士」という。)と、大学・専門学校による救急専門課程を修了した救急救命士(以下「学校救命士」という。)の2つの教育課程を経てきた者が救急救命士として勤務している。それぞれの救急救命士は資格取得までの過程が異なっており、研修所救命士は、2,000時間又は5年以上の現場経験を積んだうえで救急救命士になるのに対し、学校救命士は教育課程の中での資格取得のため、病院実習や同乗実習の機会はあるが、総じて現場経験が浅いのが現状であり、新任の学校救命士が現場活動をするうえで、研修所救命士との知識や技術、現場経験の差から不安を感じている者もいると思われる。
     今回、学校救命士が抱える現場活動への不安の要因についてアンケート調査したところ、研修所救命士との現場経験の差や生体への観察技術に差を感じているという結果となった。
     本市では、平成28年から救急隊員生涯教育制度により就業前病院実習までに知識、技術の確認を行うようになっており、学校救命士と研修所救命士とでは、知識、技術的な差は救急隊員生涯教育によって補えていると考える。
     このことから、生体への観察技術を身に着けていくためには、生体を使った実測訓練を取り入れるなど、現場に即した訓練を実施することが必要だと考えられる。
     また、出動後に現場活動の振り返りを常に実施することで、隊員間のコミュニケーションを促進させるとともに、知識の向上を図ることで、少ない現場経験の差を埋めていく必要があると考察する。
  • 中西 康次郎
    原稿種別: 一般演題抄録
    2021 年 39 巻 1 号 p. 5-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー
    【背景】
     心肺蘇生を望まないという傷病者の意思を伝えられるケースが相次ぐ中、対応は国で統一されておらず、各メディカルコントロール協議会に委ねられているのが実情である。砺波地域消防組合(以下当組合)管内においてもDNAR事案が年に数件報告されており、救急隊が苦慮するケースがある。
     当組合の救急活動プロトコールは、平成25年より隣接する高岡医療圏と共通のプロトコールを使用しており、DNR(現DNAR)についても作成当初より記載されていた。平成30年6月にはDNARに関する記述が一部改訂された。消防本部の実施する救急活動の事後検証会において対象事案の検証を行い、プロトコールの解釈を明確化した。
     解釈を明確化する前後のDNARへの対応を紹介するとともに、現状を考察し報告する。

    【対象と方法】
    DNAR事案 
    平成30年6月~令和3年8月末まで  7件
    「内訳」
      平成30年6月~令和2年6月(明確化前) 4件
      令和 2年7月~令和3年8月(明確化後) 3件

    ・DNARプロトコール明確化前と明確化後の救急活動の変化について

    【結果】
     心肺蘇生を実施し搬送した割合が、明確化前は25%、明確化後は100%であった。
     明確化後は、書面確認と担当医師の指示もしくは担当医師が現場に臨場してもらうという2パターンになったので活動がスムーズになった。

    【考察】
     救急活動の事後検証会でDNARプロトコールが明確化されたため、DNAR事案で判断に迷うことが少なくなった。DNAR意思表示がある傷病者及び家族等には救急隊の活動を適切に説明し、救急現場で混乱を招かないようにする必要がある。
  • 水島 元樹
    原稿種別: 一般演題抄録
    2021 年 39 巻 1 号 p. 6-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
     高速道路橋梁で塗装剥離作業中に心肺停止となった症例を経験したので紹介する。
    【症例】
     20代の男性、高速道路橋梁で塗装剥離作業中に倒れているのを発見されたもの。
     現場到着時、傷病者は橋脚上(高さ約7m)におり作業に使用されていた梯子で橋脚上まで行き傷病者に接触する。
     橋脚上は狭く活動スペースが限られており、更に熱気及びシンナー臭が漂っており隊員にも二次災害危険があり活動困難な現場であった。
    【経過】
     観察の結果、意識レベルJCSⅢ-300、呼吸感ぜず、総頸脈触れず、心肺停止状態。
     体表面に熱感があり、爛れている部位が確認できる。
     傷病者がいる場所では活動できないため、活動できるスペースまで移動させ心肺蘇生開始。
     現場到着から50分後に救助隊によりクレーンで地上へ救出し救急車内へ収容した。
    【結果】
     帰署後、搬送病院からベンジルアルコール中毒の可能性が高く、他の作業員も体調不良を訴え受診していると連絡をいただいた。また、体調不良を訴える隊員がいればすぐに受診するよう助言をいただいた。
     今回の症例について組合全体で共有し、注意事項、今後の対応等を検討した。
     また、情報共有として県内の各消防本部へ連絡をした。
    【おわりに】
     本症例の中毒事故は、近年増加しており厚生労働省からも案内が出ており今後も発生することが予想される。今回は救急隊及び救助隊での活動となったが、今後は早期に応援要請、隊員の安全確保、対応方法、病院との情報共有等が円滑にできるよう検討を行い、今後、より良い対応を行いたい。
  • 長山 菜穗美, 大坪 知佳, 宮田 千賀子, 富崎 真由美
    原稿種別: 一般演題抄録
    2021 年 39 巻 1 号 p. 7-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー
    【背景】
    A病院は、院内急変対応システム(Rapid Response System:以下RRSとする)導入後約3年が経過した。救急外来看護師は、Rapid Response Team(以下RRTとする)の一員であり、コードブルー要請時も救急科医師と共に対応を行っている。RRS導入後2年間のRRSおよびコードブルー症例を振り返り、現状と課題について報告する。

    【結果】
    RRS導入後の2年間の院内急変について、各項目総数および導入後1年目、2年目と単純比較した。RRS要請件数は 1年目11件、2年目24件で、コードブルーは1年目25件、2年目18件で2年間の事象合計は78件であった。
    RRS、コードブルー症例を、要請時刻より12時間前まで遡り、経過記録より前駆症状の有無について調査した。インシデントレベル3b以上の症例のうち、RRSおよびコードブルー併せて21件の症例に、要請12時間前に何らかのRRS要請基準を満たすバイタルサイン異常が認められ記録されていた。記録されていた症例は、RRS 12件、コードブルー 9件であった。そのうち、要請までに6時間以上経過している症例は10件、残りの31件には前兆症状と捉えられるバイタルサインの記録が残されていなかった。前兆症状として最も多かったバイタルサイン異常は、RRSおよびコードブルー共にSpO2低下であった。バイタルサインの血圧、心拍数、SpO2値は多くの症例で記載されていたが、呼吸数は、RRS 2件のみだった。

    【結論】
    1.RRS導入後2年間において、数値比較では経年的にRRS要請は増加、コードブルー要請は減少傾向にある。
    2.急変前の前兆症状として、SpO2低下がRRS、コードブルー共に多かったが、呼吸数の記録は2件のみだった。今後、呼吸数を含めたバイタルサイン異常を早期に捉えることができるよう啓蒙教育が必要である。
  • 澁谷 忠希, 原 由華, 波多野 智哉, 渕上 貴正, 川岸 利臣, 小宮 良輔, 若杉 雅浩
    2021 年 39 巻 1 号 p. 8-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー
     近年、急性期緩和医療という言葉が生まれてきた。緩和医療は担癌患者に対して行われる中長期的な医療という認識が一般的であると思われるが、救急外来や集中治療室にいる患者の中にも苦痛緩和や人生の最終段階についての話し合いが必要な患者は存在し、急性期においても緩和的な介入を行うことで患者・家族のQOLを高める事が可能である。
     しかし急性期緩和医療を行うに当たっての治療方針決定は患者と意思疎通がとれない・意思決定までの時間が限られているなど協議を困難にする状況で行われることが多い。そこでミスコミュニケーションが生まれると医療者も患者もその家族も本質的には誰も望んでいない方針になるリスクを抱えているにも関わらず、協議方法については学ぶ機会はほとんどなく不安を抱えたまま困難な状況を経験して自分なりの方法を模索していくしかない現状がある。
     今回は私が勉強したコミュニケーションスキルを紹介する。どのように話をすればミスコミュニケーションが生まれにくくなるか、協議の軸を何にすれば方針決定が円滑に行いやすくなるかといったスキルを確認し、困難な状況で協議を行う際に利用いただきたい。
  • 伊井 みず穂, 茂野 敬, 安田 智美
    原稿種別: 一般演題抄録
    2021 年 39 巻 1 号 p. 9-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー
    A大学医学部看護学科の講義科目「成人看護学総論」の講義を履修した、2年生78名を対象に、「健康生活の急激な破綻から回復を促す看護」の講義内で事例を用いて実施した、救急搬送された患者家族の思いを想像することで得られた学生の記述内容を検討した結果、203の記録単位(コード)が抽出され、6のカテゴリー「情報が欲しい」「後悔」「急ぎ駆けつける」「先のことを考える」「気持ちが揺らぐ」「できることを考える」に分類した。事例を用いることで、実際にその立場に立ったことは無くとも、様々な立場の感情を考えることが、現場における患者・家族への対応に役立つと考える。
  • 奥寺 敬, 坂元 美重, 若杉 雅浩, 山本 由加里, 橋本 真由美, 奈良 唯唯子, 伊井 みず穂
    原稿種別: 一般演題抄録
    2021 年 39 巻 1 号 p. 12-13
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル フリー
     ICLSはImmediate Cardiac Life Supportの略であり日本救急医学会により開発された我が国固有の心肺蘇生教育体系である。ICLSコースにおける学習目標は、「突然の心停止に出会った時にどのように対処すべきか」、という端的なもので、基本概念は、1)心停止はどの医療機関のどの部署においても起こりうる、2)心停止が発生すれば蘇生を開始するまで猶予はなく、即座の(immediate) の対応が求められる、3)蘇生に適した医療者が集まるまでの最初の10分間の対応はあらゆる医療者が蘇生チームの一員として参加し、蘇生を行う必要がある、と要約できる。また医療安全の視点からも病院に所属する全ての職員が参加できることが求められる。
     日本救急医学会は、2000年のAHA (American Heart Association) のガイドライン2000の公表における心肺蘇生の標準化に呼応して、AHAのACLS (Advanced Cardiovascular Life Support) 2日間コース、ERC (European Resuscitation Council) のALS (Advanced Life Support) 1日コースを調査し内容を検討し、ICLSをデザインした。ここでは、2003年より日本救急医学会により全国展開を行ったICLSの経緯と北陸における展開について解説する。
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