富山救急医療学会
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37 巻, 1 号
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一般演題Ⅰ
  • 横山 昂史
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 4-
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
     今回、救急活動中に妨害・暴行行為を受け、対応に苦慮した症例を経験したので紹介する。
    【症例】
     60歳代男性、体調不良を訴え救急要請したもの。
     救急隊到着時、酩酊状態で救急隊の観察等に応じない状態。
     一緒にいる妻及び救急隊に暴言を吐き、また足で蹴るなどの暴行行為を受けたため、救急隊のみでの活動は困難と判断し、警察官を要請。
     現場到着した警察官のパトカーを足で蹴り、パトカーを損傷させ現行犯逮捕された。
    【経過】
     今回の症例について当消防本部で会議を開催し、反省事項、今後の対応方法について検討した。
     また、所管警察署に救急活動中に妨害・暴行行為を受けた場合の対応方法についても意見を求めた。
    【考察】
     会議結果及び警察署からの回答を受け、救急隊としての対応方法、活動の方針について考察した。
  • 小澤 健治
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 5-
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
     山の斜面を転落し頸髄損傷による神経原性ショックが強く疑われる所見があったにも関わらず、通信手段が確保できないため特定行為指示要請が行なえなかった症例を体験したので報告する。
    【症例】
     66歳女性、山菜を採取中にめまいを起こして約3メートル下の斜面に転落したもの。
     現場は急傾斜地であり、活動困難な場所であった。また、直近の集落から約7.5キロメートル離れた山中で携帯電話の不感地帯であった。
    【経過】
     観察の結果、意識レベルはJCS20、呼吸状態に異状は無く、脈拍は橈骨動脈で微弱であった。明らかな外傷は無いが後頸部の圧痛と四肢麻痺を認めた。
     ネックカラーによる頸部固定及びスクープストレッチャーで全身固定を実施した。
     救急隊のみでは搬送困難であり、救助隊の到着を待ち、現場到着から31分後に救急車内へ収容した。
     富山県ドクターヘリのランデブーポイントまでの搬送時間を考慮すると心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液を行うべきであったが、通信手段が確保できないため特定行為指示要請が行なえなかった。
    【おわりに】
     特定行為は重要な処置となり得るが、本症例のように特定行為指示要請を受けられない場合は通信手段の確保に拘るのではなく、早期搬送等の傷病者にとって最も有益となることは何かを判断し活動することが重要である。
     今後は同様の症例があった場合に備えて、富山県東部消防組合消防本部通信指令課及び魚津消防署内で検討を行い、より良い対応を行いたい。
  • 藤井 裕
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 6-
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
     救急救命士の処置拡大に伴い、心肺停止前静脈路確保と血糖測定及びブドウ糖投与が開始された。
     富山医療圏MCでは意識障害の程度に関係なく血糖測定を実施するプロトコールを採用している。今回低血糖傷病者の意識レベルの程度と糖尿病の既往歴の有無について調査した。
    【方法】
     H27.7.1~H31.4.30 富山市消防局16隊が救急搬送した低血糖傷病を対象として接触時のJCSと既往歴ついて調査した。
    【結果】
     血糖測定した1846症例のうちブドウ糖投与対象となる血糖値50mg/dl未満であった傷病者は219名であり、JCSⅠで125名、JCSⅡで40名、JCSⅢで54名であった。
     また、糖尿病既往歴がない傷病者は、51名であった。
    【考察】
     JCSⅠである傷病者であっても低血糖となっている場合が多く、救急救命士が現場でブドウ糖投与することにより、傷病者の予後等に有益であると考えられる。
     また、糖尿病の既往歴がない意識障害の傷病者でも、51名が低血糖であり、意識障害の傷病者に血糖測定を実施することは、有益であると考えられる。
一般演題Ⅱ
  • 東海 達大, 桐澤 聡邦, 開田 達弥
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 7-
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
    【背景】
     昨今の高齢化社会の影響で、高齢者福祉施設からの救急要請件数が増加しており、さらに現場滞在時間が全国平均を超えている消防本部が多く見受けられる。また、平成28年度救急業務のあり方に関する検討会報告書において、福祉施設と救急隊間での情報収集シートなどの活用促進が検討された。
     当本部でも目撃した施設職員が不在であったり、また聞きのため詳細がわからなかったりして患者情報の聴取に時間がかかる等、現場滞在時間が延長しているのが現状である。
    【目的】
     「情報伝達カード」を利用することで、円滑に情報提供を受けることができる体制を構築し、現場滞在時間等の短縮を図る。
    【対象と方法】
     市内28箇所の福祉施設に、救急隊が必要とする項目を一覧にした「情報伝達カード」を事前に配布した。救急隊到着時の救急隊への提供の有無を調査し、提供があることで現場滞在時間等の短縮につながっているかどうかを確認する。
    【結果】
     平成30年、当救急隊出場件数1259件中、福祉施設へは77件出場している。うち、カードの提供ありは39件、なしは38件だった。現場滞在時間、接触から連絡(収容依頼)開始、車内収容から連絡開始の何れも、カードの提供があることで若干の時間短縮はみられたが、有意差はなかった。
    【考察】
     まだまだ施設職員に浸透しておらず、使用されなかった事案が約半数あった。救急通報受信時またはプレアライバルコールにて、カードの提供を依頼することで使用回数を増やしたい。また、今後は福祉施設と連携訓練等を実施し、必要な項目の共通認識を持つとともに、施設側の意見も取り入れていきたいと考えている。
  • 開発 恵里
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 8-
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
     平成23年2月に傷病者の搬送及び受入れの実施に関する基準が策定されて約8年が経過した。心筋梗塞疑い(急性冠症候群疑い)に該当するときの各キーワードの的中率を調査し、優先される項目について再認識することを目的に調査した。
     ACS傷病者のみを抜粋し、策定されてから平成30年度までの調査を実施した。中にはキーワードに当てはまるものの、実施基準非該当とされ、搬送病院についても適切に行われていない事案、実施基準に該当されていても搬送病院が異なっていた事案が多く見られた。
     富山県分類のキーワードで調査していくとACS傷病者のうち的中率が30%を超えているのが20分以上の持続する胸痛と冷汗、蒼白などの症状を呈する傷病者であった。次いで、心電図異常(ST上昇、低下など)がみられる傷病者も多くみられた。
     そこで心電図測定の重要性、心電図異常や持続する胸痛が見られた際にはACSを念頭に活動すべきだと再認識し、今後の活動での参考にしたい。
  • 石戸 佑一
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 9-
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
     人生の最終段階にある傷病者が延命処置を希望していない場合は救急車を要請しないことが望ましい。しかし、現実には容態が悪化した場合、家族が動揺又は助けを求め救急要請するといったことが全国で多々見受けられ、問題提起がされている。
     今回経験した症例は、心肺停止には至っていなかったが、延命処置を希望しない傷病者であり、容態が変化した場合の対応も決められていたが、救急要請となっている。
    【症例】
     81歳女性。声を掛けても返事がなく、目も開けない。呼吸状態が悪いとの内容で救急要請。意識がない為、要請基準1でDrヘリ要請されている。
     接触時、仰臥位、JCS-300、呼吸下顎様、総頸動脈弱く触知。胸痛の訴えあり、30分くらい目を離した間に上記の状態となっていた。家族によると、乳癌末期で肺にも転移しているとのこと。
     後日、家族に話を伺うとターミナルケアを受けており、最近A病院から近医のB病院へ通院先を変更し、容態が悪化しても延命処置はしないと本人・家族・医師の三者で話し合われ、急変時の対応も決めておられた。
    【考察】
     総務省消防庁では、「蘇生拒否傷病者に対して心肺蘇生法中止基準」について、現段階では全国統一方針の策定は困難と決定された。全国統一方針の見送りにより蘇生中止を巡る判断は現場に委ねられた。高岡医療圏では心肺蘇生法中止基準を「DNAR等の意思表示が書面等により確認された場合で、医師に連絡し、中止指示を得られた場合」と定められているが、問題は多岐に渡る。消防としてはDNARを広めることではなく、救急要請されない社会となるよう関係機関と協力し、普及・啓発していくことが重要であると考える。
一般演題Ⅲ
  • 水野 伸也
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 10-
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
     A病院では、急性冠症候群(以下ACSとする)や脳梗塞を発症した緊急度・重症度の高い患者に対して、来院から治療開始まで90分以内といった早期血管内治療を目指している。救急輪番日においてA病院では、循環器内科医や脳外科医は自宅待機としている。そして看護師は救急関連部門で勤務する看護師1名と他部署の看護師数名にて3交代勤務を行っている。そのような状況の中で時間短縮に向けた取り組みとして,救急輪番日に勤務している看護師を対象に定期的な学習会を実施している。煩雑する救急外来における血管内治療の現状と課題を分析し対策を検討する。
    【目的】
     救急輪番日における血管内治療の現状を分析し問題点の把握と対策を検討する。
    【方法】
     平成30年度における救急輪番日において,来院から血管内治療開始までの時間を調査した。
    【結果】
     ACSにおいては来院から血管内治療開始まで平均90分となっている。脳梗塞においては脳血管内治療開始まで100分である。時間は短縮傾向にあるが血管内治療決定から開始までに時間がかかっている。
    【考察】
     ACSにおいては再灌流時間である目標の90分以内は到達している。しかし、脳血管内治療においては平均100分であった。脳血管内治療決定してから開始までの時間短縮を図ることで90分に近づくと考えられる。治療の決定から開始まで看護師が関わっており、看護師への教育・指導の継続が時間短縮につながると考える。
    【結語】
     救急輪番日における脳血管内治療開始まで目標時間近づいているが目標時間には到達していない。到達するためには救急輪番日に勤務する看護師を中心としたスタッフを対象に継続した教育・指導が必要である。
  • 川田 由佳, 長山 菜穂美, 宮田 千賀子, 岩城 順子
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 11-12
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
     A病院における夜間の災害・救命センター(以下ER)看護師体制は、二次救急当番日以外1名で対応している。その中、2018年度に循環器センター開設以降、24時間体制で循環器疾患患者受け入れを行っており、対象患者の搬送件数は増加傾向にある。急性冠症候群(以下ACS)患者は、虚血から冠動脈再灌流までの時間が予後に大きく影響することから、病院到着後90分以内に再灌流させることが推奨されている。2018年度にERが関与したPCI症例は31件であり、看護師1名で対応した症例は7症例であった。今回、限られたマンパワーでのACS患者の受け入れを、安全、確実、且つ迅速に治療へつなげていくための取り組みについて報告する。
    【取り組み内容】
    1.「ACS患者搬送準備リスト」および「ACS患者経過表」の見直し
    2.ACS患者受け入れに関するフローチャート作成
    3.ACS受け入れ時の物品セット化
    4.シミュレーション技法を用いたACS勉強会の実施
    【倫理的配慮】
     ERスタッフに対しては、口頭で研究方法を説明し個人情報を特定できる情報を一切使用せず、プライバシーと守秘を遵守した。
    【結果・考察】
     「ACS患者搬送準備リスト」および「ACS受け入れ時の物品セット化」によって、『受け入れ準備時間の短縮が図れた』といった意見が得られた。「ACS患者経過表」の見直しによって、経過記録の記載はしやすくなり、血管造影室への必要事項の申し送りが不備なく行えるようになった。ACS患者受け入れに関するフローチャート作成では、全看護師が問題なく連絡が取れるようになった。シミュレーション技法を用いたACS勉強会を行うことで、看護手順を振り返ることができたと同時に、タイムリーなフィジカルアセスメントが不十分であることが分かった。勉強会などの技術支援は、救急看護師の仕事に関連するストレッサー因子のうち「仕事の困難さ」を軽減できるという報告もあり、今後も勉強会を継続することは必要である。
    【結論】
     ACS患者受け入れに関する、検査・治療の流れ・薬剤投与などを標準化することにより、看護師の申し送りや各部署への連絡が不備なく行うことができ、経過記録も記載しやすくなった。今後は業務改善と共に勉強会を継続的に行い、看護師のフィジカルアセスメント力の向上を図ることが必要である。
  • テキストマイニングを用いた自由記述分析に焦点を当てて
    伊井 みず穂, 奥寺 敬, 若杉 雅浩, 奈良 唯唯子, 橋本 真由美, 安田 智美
    原稿種別: 研究報告
    2019 年 37 巻 1 号 p. 13-14
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
     2018年度に開催した「剱ICLSコース」において,調査票を用い,コース前後の受講者の自己評価を施行し,受講者の自己評価と共に,自由記述についてテキストマイニングを用いて,コース受講の効果について検討した.質問紙の内容はICLSコース内5区分での5段階の自己評価と,受講後の学びや感じたことの自由記述を求めた.職種別に自由記述を分析した結果,医師は普段と違う立場を経験することで,他の職種との連携について学び,看護師は理解と実施の自信をコースで身に着けていることが分かった.学生は学生の立場で知識の不足への不安を抱きながら多くの職種の受講者と一緒に受講することで,チーム医療の重要性を学んでいることが分かった.
一般講演
特別講演
  • 奥寺 敬, 若杉 雅浩
    原稿種別: 講演記事
    2019 年 37 巻 1 号 p. 17-19
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
     最近の国内外の自然災害の動向としては、「異常気象」に起因する様々な事象が散見される。特に夏季になって、アメリカやヨーロッパ、国内でも明らかに「熱波」による気象災害が頻発している。また、自国第一主義の蔓延による国際情勢の不安定化による暴力行為や難民問題などが顕在化している点にも今後とも注意が必要である。国内では、依然として福島第一原発の廃炉作業は困難な状況が続いており、各地の災害の復興も順調とは言えない。その一方で、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの準備は、総力をあげて進められており、復興災害とのミスマッチが懸念される。このような複雑な状況下において、これまでのSociety 5.0から国連が提唱する「持続可能な開発目標 SDGs」(Susteinable Development Goals)を我が国のゴールとする指針が示され対応が喫緊の課題である。
教育講演
  • 守谷 俊
    原稿種別: 講演抄録
    2019 年 37 巻 1 号 p. 20-
    発行日: 2019/08/31
    公開日: 2019/10/07
    ジャーナル フリー
     埼玉県は現在も人口増加が認められ、救急要請件数も増加の一途を辿っている。急な病気やケガの際に一般市民が使用できる「#7119」は、電話による緊急度判定を行うシステムとして2007年から小児救急電話相談、2014年から大人の救急電話相談を開始した。2017年には相談時間を24時間化しているが、その利用件数は年々伸びていたことから、いずれは県民に対する救急医療サービスを維持するには困難な状況が予想された。埼玉県では知事が提言した「スマート社会へのシフト」という新たなビジョンの医療へAI(人工知能)の応用の中で計画が持ち上がり、チャットボット(自動応答ソフトウェア)による救急相談(埼玉県AI救急相談)を、2019年4月19日(金)午後3時から全国で初めて試験導入することとなった。
     AI相談を実現化するために対策を考慮した点を以下に示す。
     ●フリーに入力した訴えを108パターンの症状別のどれに最終的には紐付けするか
     ●電話相談との回答に齟齬は発生しないのか
     ●緊急度の分類は適切か
     ●ふたつの症状を相談した時はどうするのか
     ●AI相談が不適当な場合の責任はどうなるのか
     ●AI相談に向いていない症状は何か
     ●手軽に使ってもらうためにはどうすれば良いか
     ●「言葉の揺らぎ」における同義語集約は完全に可能か
     ●119番の必要な場合にどう画面構成を考えたら良いのか
     ●AI救急相談はどうあるべきなのか
    【今後の展開】
     「AI救急相談」におけるAIデータの動的な情報は、急な病気やケガによる救急相談の利便性向上と、適正受診の推進による救急医療機関の負荷軽減に向けて、救急医療における病院前医療の限りない需要拡大の可能性を吸収できるかもしれない。
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