富山救急医療学会
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第40回学術集会抄録集
  • 保坂 敏充
    原稿種別: 一般演題抄録
    2022 年 40 巻 1 号 p. 3-
    発行日: 2022/09/03
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
    市内飲食店において、来店客がトリカブトを誤食し中毒症状を発症した特異事例として発表する。
    また、不特定多数の人が出入りする飲食店において、複数名が中毒症状を発症した場合、現場での情報収集が困難であることを改めて痛感したので、現場活動での課題を挙げる。

    【検証方法】
    当事例における活動内容や課題について、所属内において検討会を実施する。
    複数傷病者が発生した現場を想定し、訓練や検討会を実施し、現場活動や医療機関との連携において、どういった活動や情報収集が必要かを検証する。

    【結果・考察】
    トリカブトの誤食は全国的にもしばしばみられる事例だが、救急現場では特定困難である可能性もある。当事例は、山菜やジビエ等を扱う飲食店での食中毒であり、提供された料理から食中毒を疑う食材が多かった。当事例では、医療機関からの指示や協力を得ることで、原因食材の特定に至ることができた。改めて、医療機関との情報共有を図ることが重要だと感じた。
    訓練においては、支援隊(ポンプ隊)が指揮統制と救急支援を兼務することが困難であることが見受けられた。また、情報収集に気をとられすぎて、傷病者管理がおろそかになる可能性がある。情報の集約や、更なる傷病者発生の可能性を考えると、支援隊や救急隊の増隊を考慮する必要がある。
  • 田中 貴大
    原稿種別: 一般演題抄録
    2022 年 40 巻 1 号 p. 4-
    発行日: 2022/09/03
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
    今回、砺波医療圏において、計6回除細動を実施した症例を経験したので紹介する。

    【症例】
    指令内容は、68歳男性、屋内で転倒し、動けなくなったもの。
    救急隊接触時、台所でうつ伏せ状態、ただちに観察を実施したところ、CPA状態で初期波形はVF、BVM換気は良好、現場で包括的除細動を2回実施し、静脈路確保を試みるが、うっ血なしのため早期搬送とした。その後、車内収容から病着までに医師の指示により4回の除細動を実施した。
    なお、救急車の部署位置から傷病者宅まで距離があり、車内収容に時間を要すると判断したため、支援隊を要請する。
    診断名:心室細動
    傷病程度:死亡

    【考察】
    平成31年2月の高岡MC検証委員会では、「3~4回以上の除細動の効果がない難治性VFは抗不整脈薬を投与する必要があり、抗不整脈薬は、救急隊では使用できない薬剤であるため、早期医療介入を考慮し、できるだけ時間ロスを避けるべきである」と助言があった。このことを踏まえると、今回の除細動回数が適正であったのか疑問が残る活動であった。 また、事故発生当時は他の医療圏へ搬送した救急事案は事後検証を受けることが困難であったため、医師によるフィードバックを受けることができなかった。
    このことについて高岡MC協議会に検証方法の見直しについて問題提起したところ、今後は、他医療機関へ搬送した事後検証事案について二次検証評価委員会で協議し、必要であれば三次検証を行うことになった。

    【結語】
    本事例のように、特異事案が発生した場合には、その都度協議により、よりよい協力関係を築いていきたい。
  • 田子 晃大
    原稿種別: 一般演題抄録
    2022 年 40 巻 1 号 p. 5-
    発行日: 2022/09/03
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル フリー
    【背景】
    消防法第2条9項では「医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを救急隊によって、医療機関その他の場所に搬送すること」と明記されているが本人または関係者が搬送を拒否した場合はこの限りではないとされている。しかし救急隊が緊急を要すると判断したにも関わらず本人が明確に搬送拒否を訴え、現場活動で苦慮する事案が少数ではあるが見受けられる。今回は搬送拒否し、その場から動こうとしない男性を警察と連携し病院搬送まで至った事案を考察する。

    【事例】
    41歳男性、自宅にて睡眠薬を多量摂取したのち家を出た。家族より警察へ連絡され捜索中の警察官が屋外にて保護。道路脇に居座り動こうとしない。警察官からの救急要請となる。救急隊現着時より「病院へは行かない」と訴える。意識レベルJCS1、他バイタル測定の一切を拒否している。
    警察官と共に病院に行くよう説得するも応じず、協議し警察官職務執行法の「強制保護」を適用。結果的に暴れることなく警察車両に傷病者を収容、救急救命士が警察車両へ同乗し病院への搬送に至る。

    【考察】
    強制保護、警察車両で病院に至ると言う稀な症例となりました。
    今回現場滞在時間が極端に遅延してしまいました。
    保護決定の段階で救急隊としてどうあるべきであったか。
    救急出動件数の増加が進む昨今、活動時間の短縮の一助になることを期待する。
  • 蓑輪 和人
    原稿種別: 一般演題抄録
    2022 年 40 巻 1 号 p. 6-
    発行日: 2022/09/03
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル フリー
    【背景】
    平成23年に傷病者の搬送及び受入れの実施に関する基準が制定され、10年が経過した。脳卒中疑について重要なポイントや症状、訴えはないかを再調査し、少しでも脳卒中疑いとして搬送することができれば市民へより質の高い救急を提供できると考え調査した。

    【対象と方法】
    調査の対象は、砺波地域消防組合管内の平成29年から令和3年までの5年間分の救急報告書を調査し、統計を抽出。富山県実施基準の脳卒中疑い分野の各キーワードの適合率を調査。

    救急件数  平成29年:4,656件  令和3年:4,603件
    脳卒中者(転院搬送含)  平成29年:353名  令和3年:332名
    富山県実施基準(脳卒中のみ)  平成29年:201名  令和3年:197名
    上記表は、調査した一部である。

    【結果】
    平成29年から令和3年までの5年間において脳卒中と診断された傷病者数は1,675名。富山県実施基準に該当有の傷病者数は810名であった。
    富山県実施基準に該当有の脳卒中者に一番多い症状等は、麻痺や痺れがあるもので60%を超えていた。次いで呂律が回らない等が23.4%であった。また、視力や視覚障害は0.2%と非常に稀であることも判明。

    【考察】
    令和3年で富山県実施基準(脳卒中)に該当されなかった138件について調査したところ、麻痺を認めたものが25件と非常に少なかった。しかし、高血圧であったものが82件、発症危険因子保有が47件、意識障害ありが74件であった。このことから麻痺がない場合でも脳卒中の可能性が少なからずあることが分かった。神経学的所見のみで判断するのではなく総合的に判断し、今後の活動の一助としたい。
  • 西島 正徳
    原稿種別: 一般演題抄録
    2022 年 40 巻 1 号 p. 7-
    発行日: 2022/09/03
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
    CO中毒による複数傷病者事案を経験したので紹介する。

    【発生日時】
    令和4年2月中旬 14時15分頃

    【覚知内容】
    71歳男性、会話中に意識を消失し、椅子から崩れ落ち呼びかけに反応がない。

    【活動状況】
    要請場所到着後、通報者の誘導により現場の作業所に案内される。作業所内の入口付近に通報内容の男性1名を確認、また同作業所内にいるもう2名の男性も、意識レベルが悪いのが見てわかる状態である。作業所内は狭く、窓が閉めきられており、薪ストーブや木炭を使用し肉や牡蠣を焼いていたことが確認できる。状況からCO中毒疑いによる複数傷病者事案と判断し、増隊要請、二次災害に十分注意しつつ環境改善を実施し活動に入る。観察の結果、意識レベルJCSⅡ桁2名、JCSⅠ桁1名、3名とも発語なし、会話不能。活動中に通報者の1名も不調を訴え、傷病者は計4名となる。

    【結果】
    追跡調査の結果、傷病名は一酸化炭素中毒、傷病程度は中等症であった。

    【おわりに】
    状況から早期にCO中毒疑いによる複数傷病者事案と判断し、増隊要請、環境改善、及び隊員の安全管理をスムーズに行うことできた。
    本事案では道路の積雪状況が悪かったため、救急隊と支援隊での出動となったが、今回のような覚知内容では、通常は救急隊1隊のみの出動となるため、後着隊が到着するまでは救急隊のみの活動も検討し、今後の救急活動に活かしていきたい。
  • 第21回日本高気圧環境・潜水医学会関東地方会学術集会でのコース開催を基に
    伊井 みず穂, 奥寺 敬, 若杉 雅浩, 池田 尚人, 三浦 邦久
    原稿種別: 一般演題抄録
    2022 年 40 巻 1 号 p. 8-10
    発行日: 2022/09/03
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル フリー
    2018年に日本臨床高気圧酸素・潜水学会が開発した海洋医療即時対応研修ICMM(Immediate Care on Marine Medicine)のVer.2を開発するにあたり、既存コース受講者の受講前後自己評価の検討と、Ver.2への関心度について調査した。分析対象者60名中、ICMM Ver.2に関心があるは54名(90.0%)であった。Ver.2の11モジュール毎では『溺水』、『海洋における安全確保と生存』、『非毒性海洋生物による外傷』の順に多く、すべてのモジュールで関心があるが40%を超えていた。今後は、オンライン受講の整備、テキストの電子化、コース全体受講と基本モジュールに加えて興味のあるモジュールだけを受講できるようなシステムの構築、各職種に特化したモジュールの構成などのコース展開について検討していく。
  • ―JTAS とエマルゴ2022 について―
    奥寺 敬, 若杉 雅浩, 坂元 美重, 伊井 みず穂, 木澤 晃代, 橋本 真由美
    原稿種別: 一般演題抄録
    2022 年 40 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2022/09/03
    公開日: 2023/02/07
    ジャーナル フリー
    救急医療は、時間的な制約があるなかで短時間で最大効率の医療を提供することが求められる。このため、心肺蘇生講習を始めとして様々な研修が考案されており展開している。ここでは我々が主として我が国への導入をおこなっているJTAS(Japan Triage and Acuity Scale)とエマルゴ(Emergo Train System)、いずれも、2023 年初頭に最新バージョンを提供するべく改訂作業をおこなっているので、現状と今後の動向を述べる。
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