富山救急医療学会
Online ISSN : 2434-8457
Print ISSN : 2185-4424
33 巻
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一般演題
  • 高田 誠
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 2-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    高岡市では、平成2 5年中の自損事故による救急出場は7 6件で、内5 2名を医療機関へ搬送した。
    その中で、昨年伏木消防署管内において、7 0代の男性が自宅で刃物を使用し、頸部を損傷する事故が発生、伏木救急隊が出場した。
    応急処置を行い厚生連救命センターへ救急搬送を実施し、医師への引継ぎ後に負傷部位を再確認すると、気管が切断されている状態であった。
    救急活動における観察・処置など色々と考えさせられる症例であり、今後の活動に生かせるよう発表する。
  • 坂本 駿介
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 3-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    現在の救急活動において、集団救急事案に限らず、複数の傷病者が発生した場合や、2名以上の重症傷病者が発生した場合、複数の救急車によって所属医療圏または他の所属医療圏に搬送している。また、内因性疾患においても脳疾患や心筋梗塞などを対応できる病院が所属医療圏では限定されているのが現状である。このことから、搬送に時間を要し、初期診療が遅れ、傷病者への負担、予後の悪化を及ぼす事に成りかねない。
    ドクターヘリ導入に伴い、医師のプレホスピタルの現場への早期到着、高度医療を提供できる病院への早期搬送が期待される。
    今後のドクターヘリ運用による救急活動について考察します。
  • 谷口 静雄
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 4-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    平成2 5年3月に富山県東部消防組合が発足以来、年間約3,500件の救急事案に対応している。現場に出動する救急隊員の中では救急車の乗車回数(現場経験)が少ないことによる隊員の知識及び技能が低下している職員も存在していると思われる。このことは現場活動にも支障をきたす非常に大きな問題であるため、富山県東部消防組合消防本部では救急救命士及び救急隊員の指導体制を整備し、平成2 6年度には指導救命士を要請、救急隊員の再教育の運用要領を制定し施行した結果、様々な問題が出てきた。ドクターヘリ運用開始に伴い、救急隊員の更なるレベルアップも求められる。そのため、今後、より重要になると思われる救急隊員の再教育について検討した結果を発表する。
  • 野上 弘人
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 5-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    20代の男性が、コンビニエンスストア内のトイレで意識障害が発現との指令内容で出動し、現場到着時はトイレのドアが施錠されている状態であり、トイレ内に約2時間入ったままであるとの情報を得た。
    ドアを開放して状況を確認したところ、トイレ内の床等に多量の血痕が付着しており、傷病者は血まみれの状態であった。
    コンビニエンスストア内の状況等から救急車内へ収容し、初期評価及び全身観察等を実施してロード&ゴー対応とした。
    観察の結果、実施した処置及び今後の活動(安全管理や心身ケア)等について検証した結果を発表する。
  • 筒井 亜希, 佐々木 祐一朗, 林 奈保, 中 千秋, 四十田 真理子, 吉沢 紀子, 小倉 憲一
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 6-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    平成27年8月下旬に富山県ドクターヘリが運航開始となる。北陸初の導入であり、救急医療に対する県民の期待は高まっている。そこでフライトナースとして、ドクターヘリ 運航開始までの取り組みについて報告する。
    運航開始にあたり、フライトナースマニュアルの作成、医療機器や物品の準備、点検項目の作成、現場で使用するナースバッグの運用方法を検討した。また他病院や消防機関との運航前訓練では、実際に胸痛・外傷患者を想定したシミュレーションを行った。そこで、傷病者情報の共有や病院選定など他機関との連携が不可欠であり、フライトナースとしてこれらの連携を調整する役割の重要性を認識することができた。
    フライトナースの役割は、患者・家族への身体的・心理的看護、治療処置介助、医療機器の点検•管理、操縦士•整備士•消防•警察など他職種との連携・コーディネート、安全管理と多岐にわたる。特に重要な役割は、限られた環境下において冷静な判断力・行動力を持って、傷病者の病態を把握し即応性・予測性・準備性を兼ね備えたアセスメント能力を発揮することである。また、治療処置が優先されがちな状況下でも傷病者や家族への心理的なアセスメントを行い、看護ケアすることが大切である。
    今後は、マニュアル修正や物品の見直し等の検討を継続するとともに、看護実践を振り返り、プレホスピタルケアの中でフライトナースとしての役割を遂行していけるよう日々研鑽していきたい。
  • 中川 由理恵, 島 美貴子, 浦井 幸枝, 本田 里佳, 横川 紀美子, 中山 和典, 田中 麻菜美
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 7-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】
    当院ではウォークイン患者に緊急度判定支援システムを使用しトリアージレベルを5段階で評価している。今回トリアージレベル4(以下低緊急)と判定した患者のうち入院に至った症例を調査し、緊急度判定について考察したので報告する。
    【方法】
    平成26年4月~9月までウォークイン患者4690名のトリアージシートのデータを基に一ヶ月のレベル別平均受診患者率と入院率を調査した。
    【結果】
    低緊急と判定し入院した患者の見た目の印象は「普通」77%、「まあまあ良い」21%、「あまり良くない」8%。またトリアージ理由は「症状」79%、「第一印象」11%、「疼痛スケール」5%だった。
    検査結果から「CT・XP異常」50%、「採血・検尿の異常」39%の割合で入院していた。その検査結果と18項目に分類した患者の主訴を分析すると、CT・XP異常がある患者の主訴は「整形」34%、「消化器」30%、「神経」8%、採血・検尿異常は「一般」37%、「消化器」35%だった。
    低緊急と判定した患者の入院率は紹介受診患者36%、直接救急を受診する患者6%だった。
    【考察】
    低緊急と判定した患者の中には、重症度の高い患者も存在すると考える。そのキーワードに、トリアージ理由は「症状」、主訴は「一般」「消化器」来院方法は「紹介」などがあり、低緊急と判定しても診察後の検査結果から入院に至る場合もある。低緊急と判定後も緊急度や重症度が高くなる可能性も考慮し、時間を意識した診療補助が大切である。現在、看護師や他職種間での情報共有や業務分担など患者に応じた連携を進めており、適切な診療時間の調整や迅速な検査の実施を強化していきたい。
  • 若林 妙子
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 8-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】
    二次救急輪番日の時間外緊急内視鏡は、一般内科の初期対応後、内視鏡医に連絡し対応している。消化器医師3名、内視鏡看護師5名の当番待機制で、基本的に処置は、医師1名と、看護師1名で行っている。少ないスタッフでの処置で、迅速・安全に行われているかを評価するために、輪番日の現状と内視鏡看護師にアンケート調査を行ったので報告する。
    【対象と方法】
    1.平成26年4月から平成27年3月までの輪番日の緊急内視鏡に関して、電子カルテより1)患者年齢、2)緊急内視鏡の内容、3)患者来院から検査開始までの時間、4)待機看護師登院から検査開始までの時間、5)検査所要時間、6) 上部消化管止血術を受けた患者の検査前の輸血の有無、7)偶発症の有無について収集
    2.看護師に対するアンケート:調査内容として1)検査開始までに時間を要した理由、2)検査中に困ったことなど
    【結果】
    輪番日94日
    1.
     1)平均66歳(27歳~90歳)
     2)緊急内視鏡(計59症例):上部消化管 49症例(止血術28例、EVL5例、異物除去1例、観察のみ13例 他)、下部消化管 6症例(止血術1例、S 状結腸捻転解除1例、観察のみ4例)、胆道系4例(EST)
     3)平均116分(30分~234分)
     4)平均約40. 5分(11分~143分)
     5)約20分(9分~72分)
     6)輸血有57%
     7)なし
    2.
     1)理由:同意書待ち、輸血待ち、検査結果待ちなど
     2)内容:患者の体勢保持や観察、急変時の患者対応に対する不安など
    【今後の課題】
    迅速に対応できるようチームの連携強化を図り、安全に緊急検査が行えるような人員の確保が必要である。
  • 浜外 世津子, 長谷川 薫, 若杉 雅浩
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 9-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    マラニックはマラソン+ピクニックの造語である。立山登山マラニックは、平成10年に始まり、毎年8月最終土曜日が開催日で、全国各地から選手および家族が集まってくる。富山湾の海抜0m~北アルプス立山•雄山山頂3003mを踏破するコースである。現在、救護体制は、称名滝に医師1名、看護師1名、室堂に医師1名、看護師1名が配置されている。
    救護活動の内容は開催年度の気候によって左右される。炎天下では、熱痙攣、熱疲労などの熱中症症状、外傷は擦過傷などの軽傷、雨天では、濡れて体温低下による症状が見られ、意識状態確認し、水分摂取促したり下肢拳上、または保温に努めたりした。救急車要請(救急車→ヘリコプター搬送)は1名であり、心肺停止等の重症者は発生しなかった。
    重症者が少ないのは、立山登山マラニックがタイムや順位を競争するレースでないことが影響している。また、参加資格として、マラソン経験に加え、登山経験者、山岳地で起こりうる様々な自然環境の変化に適切に対応できることを挙げている。この事前チエックに加え、大会主旨である富山の豊かな大自然を体感しながらルール・マナー・モラルを守って安全に、途中エイドなどで食事を摂りながら立山登頂に挑戦するという大会規制が浸透していると考える。 今回は救護活動に関して、これまで経験した症例を含めて紹介する。
  • 圓角 文英
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 10-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    【目的】今夏富山県ドクターヘリが導入されるに当たり、新川医療圏での有用性を最近の症例から評価する。
    【対象・方法】平成26年には当院への救急搬送患者はヘリが12人、救急車が2107人いた。平成27年1月から6月まではヘリが4人、救急車が1044人いた。その中でドクターヘリ運航時間帯に搬送されたのは平成26年には1084人、平成27年の6ヶ月間では567人いた。ほぼ全域が基地病院から10分圏内となる新川医療圏において、覚知から現着までに16分以上を有した症例、覚知から病院到着までに41分以上を要した症例、キーワードからドクターヘリの対象となりうる症例を抽出し検討した。
    【結果】平成26年の統計では新川消防管内では覚知から現着までが平均7.7分、病院到着までは平均29.1分とされ、平成27年のこの6ヶ月間に当院に搬送された症例では覚知から現着までが平均7分、病院到着までは平均30分となった。CPA症例は16人であり、全て11分以内に救急隊は到着していたが、両側血気胸の症例はドクターヘリの対象であったと思われた。病着までに41分以上を要した69人の中でドクターヘリの対象と思われたのは10人あり、郊外・山間地での疾病や事故、高速道路での事故と言った症例であった。病状から対象と思われる26人では4人が現着までに16分以上を要していた。他に朝日町からの転院搬送、重症多発外傷症例、当院から高次病院への転院ではドクターヘリが有用と思われた。
    【考察】新川医療圏では半年で20人程度は有用性が見込まれ、生命予後、機能予後の改善が期待される。
  • 中村 真司, 中川 貴美子, 原田 樹, 栗田 康寿, 藤井 真広, 伊藤 宏保, 菊川 哲英, 吉田 昌弘
    原稿種別: 一般演題抄録
    2015 年 33 巻 p. 11-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    【はじめに】多数傷病者発生事案では分散搬送が原則であるが、医療圏を越えての搬送は実際には難しい。今回、4人家族の交通事故において分散搬送し、状態安定後再集約する事案を経験した。
    【症例】トンネル内での軽自動車と4tトラックの衝突事故。軽自動車乗車中の4人(両親、長男、長女)が受傷した。救急隊トリアージにて父親は骨盤骨折疑い、母親は大腿骨骨折疑い、子供2人は心肺停止であった。砺波医療圏MC医師の判断により、母親、長男は市立砺波総合病院へ、父親および長女は当院へ搬送された。
    症例1: 2歳女児。来院時心肺停止。病着後8分、受傷後54分で心拍再開した。全身CTで外傷性くも膜下出血、高度脳腫脹、頸部血管損傷疑い、骨盤骨折、左大腿骨骨幹部骨折を認めた。脳腫脹強く、神経学的な改善は望めない状熊であった。
    症例2: 28歳男性。右股関節脱臼骨折を認め、整復後にICU入室となった。
    女児が重度脳機能障害のためBSCの方針となり、家族の集約を目的に、父親が第3病日に、女児が第4病日に市立砺波総合病院へ転院となった。なお、母親は大腿骨骨折、長男も心肺停止であったが、蘇生に成功した。
    【考察】3次病院においても、小児2名の外傷CPAの初療は難しい。また、救急隊の判断による医療圈を越えた分散搬送は現実には難しい。今回はオンライン指示によるMC 医師の調整により、2名とも心拍再開することができた。現場医師要請、あるいは県全体のルール策定などにより、よりスムーズな現場分散搬送体制の構築が重要と思われた。
    【まとめ】今回、我々は4名の傷病者、うち2名が小児の心肺停止であった事案を経験した。分散搬送することにより2名の心肺停止の小児を蘇生することができた。
特別講演
  • 町田 浩志
    原稿種別: 講演抄録
    2015 年 33 巻 p. 12-
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー
    群馬県ドクターヘリは2009年2月に運航を開始してから要請数•出動数は年々増加の一途をたどり、2014年度は要請数1298件、出動数881件と全国トップクラスの活動数を誇っている。
    もともと群馬県はドクターヘリにより片道20分圏内でカバーできるコンパクトサイズの県のため山間部を中心とした医療過疎地域を主に活動の主体として考えていたが、実際に運用を開始する救急車搬送で30分以内のエリアからも多くの要請があり、実際にヘリによる早期医療接触のおかげで救命、社会復帰へつながった症例も数多く認められた。
    ドクターヘリの大きな役割として「傷病者への早期医療開始」、「傷病者の早期搬送」、そして「地元の救急資源の保持」の3つがあげられる。特に搬送時間がさほどかからないコンパクトサイズの県のドクターヘリは、「傷病者の早期搬送」ではなく「傷病者への早期医療開始」により存在価値がある。また早期の初療によって比較的安定した傷病者に関しては、地元の医療機関に搬送することにより傷病者•家族の移動の負担軽減、そして何よりも地域の医療圏と連携したドクターヘリ活動が展開されるため、県全体でより一体感が強まった救急医療が展開されるようになる。
    また重複要請など未出動の増加に対して消防防災ヘリ、隣県ドクターヘリ、そしてドクターカーとの連携による対応や、局地災害時にドクターヘリを有効に活用するコツなどについて紹介する。
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