東海公衆衛生雑誌
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1 巻, 1 号
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論文
  • 立山 美子
    2013 年 1 巻 1 号 p. 54-63
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 本研究は,市町村合併を経験した保健師が,合併前の保健活動と比較し,現状の保健活動をどのように認識しているかを合併方式の対等,吸収する側の市町村,吸収される側の市町村に所属する保健師別に把握することを目的とした。

    方法 2009年8月,愛知県,岐阜県,三重県内で調査協力が得られた25市町村の合併を経験した保健師を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った。調査内容は,基本属性,現状の保健活動に対する認識,母子保健および成人保健事業に対する認識,自由記載で構成した。分析方法は,合併方式を対等,吸収する側の市町村,吸収される側の市町村の3群に分類した。質問項目の回答を「低下した」1点から「向上した」5点の5件法とし,得点が高い値ほど保健活動が向上した,あるいは,支援回数が増えたと認識していることを示す。Kruskal-Wallis検定を行い,有意水準は5%未満とした。

    結果 送付調査票は212人,回収は128人(回収率60.4%),有効回答は123人だった。合併方式は,対等69人,吸収する側の市町村32人,吸収される側の市町村22人であった。現状の保健活動に対する認識のうち,住民へのサービスの質,住民との距離感,地域把握,研修回数の項目が3群間で有意に差がみられた。母子保健では2項目,成人保健では5項目が3群間で有意に差がみられた。

    結論 現状の保健活動の認識,母子保健および成人保健事業の認識について,吸収される側の市町村に所属する保健師の平均ランクは,対等,吸収する側の市町村に所属する保健師に比べ低い値であった。保健事業のうち,特に成人保健が,合併後の保健事業に反映されていないことが示唆された。

  • 中村 誉, 秋元 悠里奈, 松尾 知恵子, 早瀬 智文, 村本 あき子, 津下 一代
    2013 年 1 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 特定保健指導開始後5年が経過し,有所見率の変化や医療費に効果がある可能性が先行研究において示されてきた。しかし,保健指導による生活習慣変化を定量的に評価し,改善につながる具体策を示した研究報告は少ない。そのため,詳細な生活習慣の問診データを分析し,体重減少や検査データの改善に有効な要因を明らかにすることを目的とした。

    方法 初回支援でグループ支援,6ヶ月後に血液検査を行うコースを選択した対象者のうち,初回支援受講者は積極的支援1,038名,動機づけ支援359名の計1,397名であり,プログラム完遂者は1,389名であった(脱落者8名,継続率99.6%)。分析対象は全データが揃っている1,227名とし,特定健診データと保健指導終了時検査データの前後比較,保健指導の初回時と終了時の問診データの前後比較,検査データ変化量と問診データの相関係数の算出,4%減量達成群と非達成群の検査データ変化量の比較,運動量(METs・時/週)の変化四分位による体重変化量の比較,重回帰分析による体重変化量と問診データの関連について検討した。

    結果 保健指導の前後で,体重,BMI,腹囲,血圧,脂質代謝,HbA1cにおいて有意な改善がみられた。また,エネルギー摂取量,昼食および夕食の摂取量,飲酒量,間食量,炭水化物,脂質,たんぱく質の各摂取量が有意に減少し,運動量が有意に増加した。体重変化量と検討に用いたすべての検査データの変化量は有意な正(HDL-Cでは負)の相関を示した。体重変化量を調整因子とした偏相関分析を行ったところ,脂質摂取量と拡張期血圧およびLDL-C,運動量とHDL‐CおよびLDL‐C,エネルギー摂取量と空腹時血糖の各変化量間の関連が認められなくなった。また,4%減量達成群では血圧,脂質代謝,糖代謝,肝機能が有意に改善していた。運動変化量が5.3 METs・時/週 以上の増加群では運動増加量が5.3 METs・時/週未満の3群に比べて有意に体重が減少していた。体重変化量を説明する変数としては運動増加量とエネルギー摂取量がステップワイズ法により選択された。

    結語 検査データの改善には体重減少が強く関連しており,生活習慣の変化とは弱い関連がみられることが分かった。また,体重減少につながる要因としては運動量増加とエネルギー摂取量減少が考えられるため,それらをふまえて個人や対象の特性に合わせた支援を行うことが重要であると考えられる。

  • 仲村 秀子, 尾島 俊之, 中村 美詠子, 鈴木 孝太, 山縣 然太朗, 橋本 修二
    2013 年 1 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 2011年に発生した東日本大震災前後の岩手県・宮城県・福島県の出生率・男児出生割合・低出生体重児割合の変化を明らかにすることである。

    方法 2007年から2011年の人口動態統計を用いて,全国,岩手県,宮城県,福島県における各年の出生数・出生率,男児出生割合,低出生体重児数と割合の推移を,それぞれの変化率を用いて検討した。出生数・出生率は男女を合わせた総数を,低出生体重児数と割合は,総数と男女別の検討を行った。次に,2007年から2010年を合わせた出生率,男児出生割合,低出生体重児割合と2011年のものと比較し,χ2検定を行った(有意水準を5%)。

    結果 2007年から2011年にかけて全国,岩手県,宮城県,福島県の出生数と出生率は,概ね低下していた。2007年から2010年を合わせた出生率と2011年との比較では,全国,岩手県,宮城県,福島県いずれも2011年は有意に低下していた。男児出生割合は,2007年から2011年にかけて全国は緩やかに減少していた。岩手県は52.26%から50.44%に年々減少し,宮城県,福島県は50.78%から51.91%の間を増減しながら全体としては横ばいであった。2007年から2010年を合わせた男児出生割合と2011年との比較では全国と岩手県は有意に減少していた。低出生体重児割合は,2007年から2011年にかけて総数では,全国は安定していたが,岩手県・福島県は年によって増減しながら,ほぼ横ばいであった。宮城県は概ね上昇していた。男女別にみると,男児は2007年から2011年にかけて,全国は8.50%前後を推移したが,岩手県,宮城県,福島県は増減を繰り返し,ほぼ横ばいであった。福島県は他県と比較して増減の幅が大きかった。女児は全国では10.70%前後を推移したが,宮城県は概ね上昇していた。岩手県,福島県は増減を繰り返しながら横ばいであった。2007年~2010年を合わせた低出生体重児割合と2011年との比較では,宮城県の女児は10.02%から11.04%へと有意に増加し,福島県の男児は8.25%から7.56%へと有意に減少していた。

    結論 東日本大震災が起こった2011年の全国・岩手県・宮城県・福島県の出生率は2007年から2010年と比較して有意に低下し,男児出生割合は全国と岩手県で有意に減少していた。低出生体重児割合は,宮城県の女児で有意に増加し,福島県の男児で有意に減少していた。今後,より詳細な分析が必要である。

  • ~平成22年度特定健康診査データから~
    藤山 快惠, 宇津木 志のぶ, 中村 美詠子
    2013 年 1 巻 1 号 p. 76-82
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 静岡県西部地域における糖尿病の実態を明らかにするとともに、糖尿病有病状況と関連する要因を明らかにし、今後の生活習慣病対策に活かすことを目的とした。

    方法 平成22年度静岡県市町国保特定健診受診者データを用いて、1.静岡県西部健康福祉センター管内の特定健診受診者38,356人の男女別、年齢階級別の健診結果を県平均と比較した。2.標準的質問票回答結果を用いて、生活習慣指標(12項目)の県平均を基準として標準化該当比を算出した。3.健診結果と生活習慣指標のクロス集計を行い、県計と西部管内計を比較した。

    結果 1.健診結果では、西部管内の糖尿病有病状況(40-74歳)は、男性では有病者15.2%(県平均14.8%)、予備群24.0%(県平均21.5%)、女性では有病者8.7% (県平均8.1%)、予備群25.7%(県平均22.1%)と、いずれも県平均より高かった。一方、メタボリックシンドローム、肥満、高血圧、脂質異常の割合は県平均より低かった。年齢階級別では男女とも壮年期から糖尿病有病者と予備群の計は県平均より高かった。

    2. 生活習慣指標の標準化該当比で西部管内に好ましくない傾向がみられたのは、男性では「運動習慣:いいえ」(該当比104.5)、「歩行程度の身体活動1日1時間以上:いいえ」(該当比107.2)、「食べる速度:速い」(該当比103.7)の3項目であった。女性では「運動習慣:いいえ」(該当比105.5)、「歩行程度の身体活動1日1時間以上:いいえ」(該当比112.0)、「歩行速度が速い:いいえ」(該当比105.0)、「食べる速度:速い」(該当比101.7)の4項目であった。

    3. 糖尿病判定結果と健診結果・生活習慣指標項目とのクロス集計では、「肥満」、「20歳から+10kg以上の体重増加」、「この1年間で±3kg以上の体重変化」に関連がみられた。生活習慣改善済みの割合が少ない40-59歳のクロス集計では、糖尿病有病と有意な関連がみられた生活習慣は、男性では「歩行程度の身体活動1日1時間以上:いいえ」、「食べる速度:速い」の2項目、女性では「食べる速度:速い」の1項目であった。

    結論 当地域における健康課題として糖尿病予防対策が必要であることが確認された。その対策は日常的な身体活動量を増加させる習慣づけが効果的であると考えられるので、関係市町や団体、健康づくり地区組織などに情報発信し、改善をすすめていく必要がある。

  • 渡邊 全美
    2013 年 1 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル フリー

    目的 超高齢社会が進む中、地域社会において高齢者の健康をサポートする手段の一つとして、スマートフォンなどの情報通信技術(ICT)を活用することにより、地域社会等の連携や絆の構築・再生といった仕組みにおいて高齢者に「意識させない見守りシステム」を構築することができる。そこで、高齢者がスマートフォンを抵抗なく操作し、活用してもらうために必要となる使いやすいユーザーインターフェース(UI)を開発し、その有効性について調査を行った。

    方法 2011-2012年にかけて、高齢者のスマートフォンの操作を容易にすると考えられる音声UI及び画面UIを持つアプリケーションを開発し、あいちITSワールド2011(ブース来場者320人)及び三重県玉城町でのスマートフォン講習会(3回開催、述べ119人)において、実際に高齢者に使用してもらい、その有効性を確認した。

    結果 画面表示等により音声入力を促す従来の音声UIでは、話すタイミングが掴めない或いは話すことに躊躇してしまう人が多く、音声により入力を促す会話型の音声UIが有効であった。また、画面UIでは、操作のためのボタンを大きくする必要があり、特にボタンの横幅を広く取る必要があることが判明した。

    結論 UIを工夫することで、高齢者に対する健康サポートの仕組みにおいてスマートフォンを有効に活用することができる。

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