目的 超高齢社会に突入した本邦において,サルコペニアは重要な健康問題である。先行研究において筋量や筋力,身体機能からサルコペニア高齢者を選定するカットオフ値や診断アルゴリズムが報告されている。しかし,先行研究の方法では特別な機器の使用や体力測定の実施によるコストやマンパワーもかかり,一般住民へのスクリーニングには適していない。そこで本研究では,簡便で効率の良い抽出方法として,厚生労働省地域支援事業実施要綱にある基本チェックリストとその他質問を活用した方法を開発し,その有用性の検討を目的とした。
方法 愛知県3市町(東海市,大府市,東浦町)在住の高齢者を対象に基本チェックリストの運動器項目「No.6 (階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか) AND/OR No.7 (椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がってますか)」,尚且つ栄養項目「No.11 (6ヶ月間で2~3kg以上の体重減少はありましたか) AND/OR No.12 (BMI<22)」を抽出条件とし,該当した1,639名から身体状況と運動習慣に関する質問条件に合致する66名74.9±5.7歳(男性25名75.8±4.7歳,女性41名74.3±6.3歳)の筋量測定(DXA法)を実施した。骨格筋量指標(SMI=四肢筋量(kg)/身長2(m2))を算出し,日本人のサルコペニア参照値(男性:6.87kg/m2,女性:5.46kg/m2)をもとに評価した。
結果 SMIは男性6.22±0.47kg/m2,女性5.39±054kg/m2であった。男性では92.0%,女性では53.7%がサルコペニアに該当した。男性では基本チェックリストのNo.7該当者のSMI平均値は,No.6該当者のSMI平均値に比べ,小さい傾向がみられた。
結語 質問のみで簡便に行える本法のサルコペニア該当者抽出率は男性に対してとくに高かった。65歳以上であれば誰に対しても実施可能である基本チェックリストを用いた本法は,サルコペニアの疑いのある者を各市町村が簡便で効率よく抽出するために有用と考えられる。
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