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クエリ検索: "こころ医療福祉専門学校"
27件中 1-20の結果を表示しています
  • *樋口 隆志, *古里 尚也, *宝田 圭子, *庄崎 賢剛, *濱中 博之
    九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
    2016年 2016 巻
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/22
    会議録・要旨集 フリー

    【背景】

    持久力は学力と関連することが知られている.先行研究の多くは学童期の学生を対象としているが,青年期にあたる専門学校学生については不明である.

    【目的】

    本研究の目的は,本校理学療法科1年次における学生の持久力と学力の関連性を調査することとした.

    【意義】

    持久力と学力の関連性を調査し,より良い学内教育の一助とすることである.

    【方法】

    2015年度に本校理学療法科に入学した新入生38名のうち,データ測定が可能であった33名を対象に,後期授業開始直後に持久力の測定としてシャトルランを実施した.前期試験として実施した解剖学,運動学,生理学の平均点(3科目試験結果)とシャトルランの回数の相関を検討した.その他,社会人経験の有無および家庭環境として母子家庭か否かについて,入学時の個人調書から情報を得て,それぞれ2群間の比較を行った.また,上記検討項目について,性別によるサブグループ解析を行った.有意水準は5%とした.

    【結果】

    対象者33名は男性27名,女性6名,平均年齢23.4±17.1歳,社会人経験者7名,母子家庭9名であった.シャトルランの回数は全体で75.8±24.2回,男性78.5±23.4回,女性47.0±14.6回であった.3科目試験の結果は,全体で74.6±12.8点,男性74.0±14.1点,女性77.1±7.5点であった.3科目試験結果とシャトルランの回数の相関は,全体において有意差はみられなかったが,男性において有意差が認められた(p = 0.03, r = 0.4).社会人経験の有無と母子家庭か否かの比較は,それぞれ有意差はみられなかった(p = 0.4, p = 0.8).

    【考察】

    シャトルランの回数と3科目試験結果は,男性において有意な相関関係にあった.先行研究において,持久力と学力は相関関係にあることが示されており,本研究においても同様の結果が得られた.また,多くの先行研究が学童期の学生を対象としているのに対し,本研究は高校卒業以降の青年期を対象としたが,上記の相関において同様の結果であった.運動が学力に影響を及ぼすメカニズムとして,運動に伴う海馬の血流量増加及び神経新生の増加などが考えられているが,本研究は横断研究であり因果関係については考察できない.女性において相関関係が認められなかった原因として,本研究では女性が6名とサンプルサイズが少なく,βエラーの可能性が考えられる.社会人経験や家庭環境の違いによる差は有意ではなかった.今後,更なる検討を重ねると共に運動介入による効果を検証していきたい.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究への参加は自由意志とし,不参加による不利益は生じないことを説明した.本研究実施に際し,利益相反に関する開示事項は無い.

  • 筆記試験の有用性
    松本 真一郎, 濱中 博之, 田中 努, 山内 満, 川副 巧成
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 422
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当校は「臨床に側した理学療法士の育成」を教育目標に掲げている。学生において知識の習得は必要ではあるが、臨床にける実技能力の必要不可欠である。卒業までに3回の学外実習を設けているが、学内での臨床教育実習が学外実習にどのように関連づけていけるか協議を続けているところである。より客観的に知識と技術の学生の能力を把握できる指標を確定していきたいと考えている。今回、理学療法科1年前期の試験総合得点および評価学の科目試験の筆記および実技試験の相関関係を調べ、学生の能力との相関関係を調べた。
    【方法】対象は当校理学療法科1年の学生42名(男性30名、女性10名、平均年齢19.9±2.1歳)とした。1年前期の評価学の筆記試験および実技試験の点数および前期試験の総合得点を上位5名、下位5名を抽出し、その相関関係をしらべた。評価学の科目試験における実技試験の内容は、学生2名を1組として関節可動域および徒手筋力検査の2項目に対して、それぞれ教員2名が試験管として配置した。試験時間は1項目に対して1人5分間で、教員が課題を告げ学生が実施する。オリエンテーションおよび手技について4~5項目の評価基準にしたいがい所定の評価用紙に教員が記載しながら、必要に応じて試験直後にフィードバックを行った。(表1)
    【結果】試験結果は評価学の実技試験40点満点中上位5名の平均は34.8±2.5点、下位5名の平均は16.3±1.3点。評価学の筆記試験60点満点中上位5名の平均は37.7±1.5点、下位5名の平均は27.5±1.7点。評価学の実技および筆記試験の総点100点満点中上位5名の平均は69.4±3.3点、下位5名の平均は48.2±3.1点。理学療法科1年前期試験の総得点1500点満点中上位5名の平均は837.4±25.1点、下位5名の平均は560.2±33.7点。実技試験においてはあいさつ等のオリエンテーション、実技の正確性が今後の課題であることが把握できた。
    【考察】今回は入学後はじめて実技試験をおこない、筆記試験および前期試験の総得点との相関関係を調べた。評価学において、一部の学生を除くと知識が高い学生が実技能力も高い傾向であることが把握できた。
    【まとめ】今回、理学療法科1年前期試験の総得点および科目試験である評価学の筆記試験および実技試験の上位5名と下位5名の得点について、相関関係を調べた。その結果、筆記試験で高得点を有する者は、比較的実技試験においても得点が高い傾向がみられた。また前期試験の総得点にも有意に相関して高得点が得られていた。この結果から、今後、学内で高い得点の得にくい者に対する重点的な指導内容につて検討していく必要性を感じた。これからさらに他の科目において客観的臨床能力試験等を踏まえた取り組みもしていきたい。
  • 二村 正之, 若原 弘之, 宮本 龍夫
    蝶と蛾
    2014年 65 巻 2 号 60-64
    発行日: 2014/07/29
    公開日: 2017/08/10
    ジャーナル フリー
    イナズマチョウ属Euthaliaの幼虫の棘に毒性があるかどうかを調べるために,モニナイナズマEuthalia moninaとビャッコイナズマE. byakko各々5齢幼虫の形態を観察し,さらに被験者(50歳,男性)の皮膚へ直接触れさせる方法により皮膚炎発症の有無を確認する実験を行った.形態観察の結果,E. moninaの幼虫背面の棘に黄色の球状部が多数認められるのに対し,E. byakkoにはほとんど認められないことが判明した.さらに,被験者の前腕部に虫体を付着させる実験で,E. moninaでは虫体が皮膚に触れると疼痛をもたらし,10分後に早くも付着部皮膚に皮膚炎(痒みを伴う紅斑や膨疹)が出現し,48時間後にはそれが幼虫の形に浮き出るほど進行した.結局,これらの症状が消失するまでに120時間(5日間)以上を要した.これは既に毒棘による皮膚炎の発症が報告されているマダラガ科Zygaenidae幼虫による反応に近いと考えられた.一方,E. byakkoでは皮膚にそのような変化はまったく認められなかった.以上の結果から,E. monina 5齢幼虫の棘から毒液が分泌される可能性が示され,これが,背部の棘にある黄色の球状部に含まれている可能性があることが示唆された.一方E. byakko 5齢幼虫にはそのようなことがなかったという事実は,毒棘がEuthalia属幼虫すべてに存在するものではないことを示している.
  • 高齢者施設におけるレクリエーション実践前後の比較
    占部 尊士, 大西 良, 村岡 則子
    Leisure & Recreation(自由時間研究)
    2009年 35 巻 1 号 10-30
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/11/30
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • 樋口 隆志, 井上 茂樹, 川上 照彦, 河村 顕治, 横山 茂樹
    理学療法学
    2016年 43 巻 5 号 383-389
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    [早期公開] 公開日: 2016/07/13
    ジャーナル フリー
    【目的】2 種類の異なる小胸筋ストレッチ方法の効果の違いを明らかにすることである。【方法】対象は高校野球部員34 名とした。測定項目は小胸筋長,安静時の肩甲骨位置,上肢挙上時の肩甲骨回旋角度とした。ストレッチ方法はdoorway stretch(以下,DW-stretch 法)とretraction30° stretch(以下,R30-stretch 法)とした。【結果】二元配置分散分析の結果,小胸筋長の指標であるRib4-CP および肩甲骨位置の指標であるAD-R において交互作用が認められた。また,2 つのストレッチ法でRib4-CP およびAD-R の変化量に有意差が認められた。【結論】小胸筋を伸張させるとされるDW-stretch 法とR30-stretch 法のうち,DWstretch 法は安静時の小胸筋長や肩甲骨の位置をより変化させる可能性が示唆された。
  • ―第34回PT・OT養成施設教員講習会参加者に対するアンケート調査を踏まえて―
    銭田 良博, 高島 恵, 竹下 典子, 竹林 由希代, 田中 努, 豊田 美紀
    理学療法学Supplement
    2009年 2008 巻 P2-553
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/04/25
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    触診は、臨床において重要な評価技術であるが、触診技術という感覚を習得した後それを教える、ということは、様々な教育的配慮と教材研究が必要である.そこで今回、第34回PT・OT養成施設等教員講習会で、参加者に対する触診の教育に関するアンケートと、アンケート調査結果を踏まえ教員が学生に触診を教えるための教育モデルの開発を試みた.
    【方法】
    第34回PT・OT養成施設等教員講習会の参加者61名(PT30名、OT31名)に対し、参加者の卒前卒後における触診に関する教育歴と学生に対する触診の教育経験、参加者が所属する養成校の触診に関する講義の必要性と教育カリキュラムの有無、触診を教えている参加者に対し評価方法や触診を教える上での困ったこと、などについてアンケート調査を行った.その調査結果をもとに、PT・OT養成校の教員が、初めて具体的な触診の講義を受ける学生に対して「烏口突起の触診を教えることができるようになる」ことを教授目標とした教育モデルを作成した.
    【結果】
    アンケート結果では参加者全員が、学校の教育カリキュラムに触診の講義は必要である、と考えていることがわかった.参加者の卒前卒後における触診に関する教育歴と学生に対する触診の教育経験、所属する養成校の触診の教育カリキュラム内容については、現状においてばらつきがあることがわかった.触診を教える上での教員側の困った点は、教員自身の理解不足、マンパワー不足、感覚を伝える事の難しさ、などが挙げられた.触診を教える上での学生側の困った点は、土台となる基礎医学の知識不足、触診の重要性が理解されにくい、三次元的なイメージができにくい、男女間での実技が行いにくい、などが挙げられた.
    【考察】
    アンケートによる調査結果を検討した際、初めて触診の講義を学ぶ学生が「烏口突起の触診ができるようになる」ための教育モデルを作成するためには、まず最初に教員側の教授目標及び単元と本時の下位項目に関する目標分析を行うことが必要であると考えられた.次に、学習指導案及びマインドマップ、などの授業設計が必要であると考えられた.そして、目標分析と授業設計を行ってから、教材研究を行うことが重要であることが考えられた.具体的な教材として、触診の講義を行う前の認知領域に対する事前学習のチェック用スライド、情意領域に対する視覚的教材や模型の活用、大人数の前でデモンストレーションを行うためのVAKモデルを活用した動画、5~6人の小集団でのグループ学習にコーチングの要素を取り入れる、個別指導後に触診ができるようになったかどうかを確認するための触診チェックシート、テスト問題や実技テストを行う際の評価ツール、誰もが知っている歌の歌詞を烏口突起を触診する手順がわかるように変え、その歌を歌いながら被検者や自分自身の烏口突起を触診して学生の自己学習に取り入れる、などが考えられた.
  • ソーシャルマーケティングを用いた介護予防マネジメントにおける住民意識とソーシャルキャピタルとの関係
    川副 巧成, 飯島 幸枝, 松林 大和, 林田 早代, 山見 将司, 松本 純芳, 太田 徹, 山内 淳, 光武 誠吾
    理学療法学Supplement
    2011年 2010 巻 PI2-389
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/26
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】介護予防は、超高齢化社会における日本の新たなライフスタイルの一つであり、その普及・啓発には、地域住民の意識と理解が重要である。しかし、住民全てが介護予防への意識や理解が深い訳ではない。その為、効果的な介護予防の普及・啓発にはイノベーター(未知の商品やサービスに自ら進んで手を伸ばす者)としての住民の存在が不可欠との報告がある。しかし、イノベーターとなる住民の「資質」について研究された報告は殆ど無い。そこで本研究では、個人の関係から創出される意識としての「ソーシャルキャピタル」に注目し、介護予防普及・啓発活動に関わった地域住民を対象に、住民意識の中のソーシャルキャピタルの存在を明らかにする目的で調査を行った。
    【方法】南長崎地区にて同地区のNPO法人が主催する介護予防普及・啓発イベントに自主的に参加した地域住民116名を対象に、ソーシャルキャピタルに関するアンケート調査を行った。ソーシャルキャピタルとは、個人間の繋がりや結びつきから築かれた関係や、その関係から創出されたある種の「力」と定義され、今回我々はそれを「地域愛」と表現する。緒家の報告を基に、ソーシャルキャピタル研究における概念上の共通項として「信頼」「規範」「ネットワーク」の3つの次元を仮定し、その次元を構成するインディケータとして、住民の日常生活が反映された価値や行動についての質問項目を各次元おいて3問ずつを設定した地域愛に関するアンケート用紙を作成して調査を行った。
    【説明と同意】本調査は、記名式のアンケート用紙を用い、対面形式で回答を得た。調査対象者には、調査者が本調査の趣旨と内容を説明し、本人の意思を確認して書面に記入し回答直後に回収した。また、アンケート用紙はプライバシー保護を明記し、分析終了後は、厳重に保管及び処分等により個人を特定できない様配慮する旨、説明を行った。
    【結果】参加者数116名のうち、アンケート回答者は69名であった(有効回答率59.5%)。回答者の内訳は男性9名、女性60名で、平均年齢は72.3±13.0歳であった。実施したアンケートの結果から、3要素9変数間の関連について因子分析を用いて解析した結果、2つの因子が求められた。因子を検討したところ、今回の調査対象者が有する住民意識として「ネットワーク」と「規範」の2つの因子を表している事が解った。また、ネットワークの因子は全変動の約35%、規範の因子は約15%を説明していることが判明した。
    【考察】自主的に関わった地域住民の意識の中にはソーシャルキャピタルが存在していた。これは個人のレベルで自身の心身に対する意識が高く、それらに対し自ら情報収集を行い、行動し得る住民の中には、その人個人の行動や価値を通して地域にも関心がある事を伺わせる。さらに、ソーシャルキャピタル自体、概念としての「信頼」「規範」「ネットワーク」の3つの次元を有する事から、その存在は、地域で行われる介護予防普及・啓発に関する事業やイベント等への参加を通し、住民間のコミュニケーションの深まりや協調性や協働意識等の促進する事も期待される。すなわち、地域で自主的に行動し得る住民の持つ意識は、介護予防普及・啓発の為のイノベーターとしての可能性を示唆していると考えられた。今後、自主的に行動し得る住民の意識を、介護予防普及・啓発の理解や行動に結びつけていく為に、イノベーターやアーリーアダプター(早期採用者)との関係性についての検討が必要であろう。
    【理学療法研究としての意義】地域での介護予防活動の推進は、保健福祉理学療法の領域と考えられるが具体的技法についての研究は少ない。本調査は、保健福祉領域のソーシャルマーケティングの技法を一部用い行った。マーケティングとは、目的とする行動を他者に採択してもらう為の全ての活動を指しており、特に地域における健康教育等への応用は他の保健福祉分野でも積極的に研究が進められている。職域拡大に向け理学療法士の地域での保健福祉活動は重要であろう。その為の新たな知識・技法への取り組みは不可欠との視点で、本調査に理学療法研究としての価値を見る。
  • 田中 康明, 樋口 隆志, 小森 峻, 前田 亮
    理学療法学Supplement
    2020年 47S1 巻 O-196
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    会議録・要旨集 フリー
  • ―2D/3D registration法での3次元動態解析―
    乾 哲也, 佐原 亘, 吉尾 雅春, 菅本 一臣
    理学療法学Supplement
    2020年 47S1 巻 O-195
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/03/31
    会議録・要旨集 フリー
  • 加賀 順子, 金田 嘉清, 櫻井 宏明, 澤 俊二
    理学療法学Supplement
    2008年 2007 巻 421
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/13
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当学科は4年前に開設され、今回行われた4年次の地域リハビリテーション学実習では、その一部である介護体験を通して学生は我が国の施設介護の現状の一旦を知る機会を得た。実習報告会では、グループによる話し合いの後全体にその内容が発表され、その報告会記録を学生の学びの観点から質的記述的に内容の分析を行った。
    【対象と方法】
    4年生理学療法(PT)専攻48名、作業療法(OT)専攻36名、計84名を三期に分け地域リハビリテーション学実習を行った。実習の構成は、1.実習前オリエンテーション、2.公的福祉用具展示施設見学、3.障害者福祉施設見学、4.介護体験、5.実習報告会である。1、2、5はまとめて各半日、3はPT専攻は二日、OT専攻は一日、4は老人保健施設5施設、特別養護老人ホーム4施設に分散し、PT専攻は二日、OT専攻は一日実施した。実習報告会では、できるだけ異なる施設で介護実習を行った学生を各期4グループに編成し、A:実習を通して知り得たこと、B:対処、解決策について話し合いを行った。話し合いは学生主体で行い、助言は発表の最後に加えるにとどめた。報告会での発表内容の記録を後日、質的記述的に内容を分析し、複数のカテゴリーを抽出した。さらに学生には報告会後、無記名にてVAS(最大10点)により実習満足度を調査した。
    【結果と考察】
    実習における満足度は上記1と5は7.7±1.5、2は7.5±1.7、3は8.7±1.5、4は7.0±1.9で、最大値および最小値はそれぞれ10と3、10と3、10と2、10と1であった。全体的に概ね満足度は高い傾向であったが、開きが見られたのは、同時期に行われていた卒業研究課題の進行状況の差、地域リハビリテーションに対する興味の程度の差が推測された。報告会での発表内容の分析については、Aは「ケアの質の問題」、「制度の理解と問題」、「介護業務の大変さ」、「療法士について介護職の認知不足」、「介護職との連携不足」、「利用者の自発性の乏しさと健康上のリスク」、「生活感のない生活施設」、「療法士と家族の希望とのギャップ」、「自分の無知と無力感」の9カテゴリーが、Bは「コミュニケーションの工夫」、「施設ケアの質の向上」、「療法士の質の向上」、「病院リハの課題」、「無力感」の 5カテゴリーが抽出された。療法士の職域が施設に広がっている現状の中で、卒業前に介護職の立場から実習を行ったことは、若い学生には驚きと現実の課題の大きさを知ることになった。学生は介護職の業務の大変さを身をもって体験するとともに、施設ケアの現状と自らの無力さ、それをもたらしている制度や何か大きな力の存在に気がつくに至った。
  • ブレインリハビリテーション
    *坂口 隆一
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 1082
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】わが国は、世界に類をみない速度で人口の高齢化が進行している今、高齢者の医療、福祉においてサービスの質の向上が求められている。
    介護施設においては、入所者に占める認知症高齢者は年々増加傾向にある。この状況下において認知症高齢者へ提供するリハビリテーションは乏しく方法として身体運動が主体のレクリェーションが大半を占めるのが現状である様に思う。
    当法人では、脳のリハビリテーションという概念をもち近年空前の「脳トレーニングブーム」に先駆け2003年秋頃より脳機能、特に記憶力や認知機能を直接的に鍛える事を目的にパソコンソフトの開発を行い施設利用者様に提供してきた。これをブレインリハビリテーション(以下ブレインリハ)と命名した。ブレインリハは、学習課題(計算6項目、記憶・図形構成5項目、音読7項目からなる)を提供し脳への刺激と課題達成時の自信、意欲の高揚を目的としている。
    今回は高齢者施設において身体運動に脳トレーニングを付加した場合と身体運動のみを実施した差異を報告する。
    【方法】対象は当法人介護施設を利用中でMMSE15~25点範囲内の週3回リハビリテーション実施可能な64名、平均年齢75.5±6.37歳、平均介護度は2.18である。対象者のリハビリテーション内容を身体運動のみ実施群25名、身体運動と脳トレーニング実施群39名に分別した。脳トレーニングには前記のブレインリハを実施した。心理評価はMMSEを各群の開始前、13週、26週を評価した。評価結果を開始前と13週、開始前と26週の変化を調査した。
    【結果】MMSEにおいては、身体運動のみ実施群は平均点で開始前と13週は0.43向上した。開始前と26週は0.7低下した。身体運動と脳トレーニング実施群は平均点で開始前と13週は1.69向上した。開始前と26週は1.92向上した。また変化の内訳として開始前と26週の比較では身体運動のみ実施群の向上者は4名、維持者は3名、低下者は18名である。身体運動と脳トレーニング実施群は向上者29名、維持者3名、低下者7名である。
    【考察】結果、MMSEからはリハビリテーション内容が身体運動のみ実施群は開始後13週では向上するがその後、維持困難になり26週では開始時より低下する。身体運動と脳トレーニング実施群においては開始前より13週、26週と向上傾向にあるが向上性は徐々に減少していく事がわかつた。この事より運動に脳トレーニング及びブレインリハを付加する事は認知機能改善と低下防止に関与する可能性が示唆された。今後、脳トレーニングが対象者の生活行為、介護者への負担の影響も含めて検討する事は今後の課題である。







  • 筋力向上トレーニングによる運動介入と脳機能との関連
    *川副 巧成, 山内 淳, 松尾 亜弓, 松本 真一郎, 古名 丈人
    理学療法学Supplement
    2007年 2006 巻 1081
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/09
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】効果的な認知症予防を行う為には,認知機能低下の兆候を早期に発見することが重要である.認知機能の低下は,感覚入力から情報統合を経た意識的出力(以下,パフォーマンス)に大きな影響をおよぼすと想定でき,早期発見の為には,パフォーマンスに対する現場の気づきが重要である.そこで本研究では,マシンを使用した運動器の機能向上プログラムに参加する高齢者を対象に,定期的に認知機能及び運動器機能に関する評価を行い,認知機能の状態とパフォーマンスの関係から,認知機能低下を示す兆候について検討した.
    【方法】リエゾン長崎およびデイサービスくぬぎ(橡)の利用者で,同デイサービスのマシンを使用した筋力向上トレーニングに週1回以上の頻度で参加している要支援・要介護高齢者83名を対象とした.平成18年4月から10月まで,3ヶ月毎に3回の評価を実施した.評価内容は,属性,および認知機能の指標としてMini- Mental State (以下,MMS)とFrontal Assessment Battery (以下,FAB),運動器機能の指標はバランス,巧緻性,粗大筋力,歩行能力とした.その後,対象者の6ヶ月間の認知機能評価の経過から,6ヶ月後の得点が維持・向上された群と,初期評価の値より低位にある群の二群に分割し,認知機評価の得点の経時的変化について検討を行った.さらに,認知機能評価の結果で分類した二群について,各運動器評価項目の経時的変化の差を検討した.
    【結果】83名の対象の内,上記の運動器評価が適切に行え,平成18年10月までに3回の評価を終えた方は46名.男性23名,女性23名,介護度は要支援1から要介護3までで,平均年齢は77.4±7.1歳であった.また,MMS得点の経過で6ヶ月後の得点が維持・向上した方は39名(以下,維持・向上群),初期評価の値より低位にあった方が7名(以下,低位群)であった.維持・向上群の平均得点の推移は24.8±3.1点→25.7±2.9点→27.2±2.1点,低位群は23.1±3.8点→21.5±3.6点→20.8±4.2点で,二群ともに3ヶ月後,6ヶ月後のMMS得点に有意差を認めた.さらに,3ヶ月後,6ヶ月後のMMS得点の結果から二群間にも有意差を認めた.次に,運動器評価の各項目を二群間で比較したところ,リーチテストで維持・向上群が16.7±7.5cm→18.8±7.6cm→23.2±7.7cm,低位群が12.3±5.0cm→10.3±6.3cm→15.1±5.5cm,6m歩行の歩数で維持・向上群が14.1±3.3歩→12.7±2.5歩→13.6±3.3歩,低位群が18.0±7.2歩→18.0±6.6歩→17.4±5.5歩と,この二項目において二群間に有意差を認めた.
    【考察】今回の結果は,認知機能低下の「兆し」が,バランス機能や歩数で表出される可能性を示唆した.本研究の低位群においては,運動介入後,運動器機能の向上が認められつつも,実際のパフォーマンスの安定に結びつかない状況にあり,認知機能の低下が要因となり,感覚入力から情報統合を経た意識的出力に不具合を来していると推察された.
  • -主成分分析を用いた波形の特徴-
    柳原 稔, 梶田 山護, 小松 晃, 廣津 志穂, 木藤 伸宏
    理学療法学Supplement
    2019年 46S1 巻 1-P-C-1-6
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    膝前十字靭帯(以下,ACL)損傷は,膝関節のスポーツ外傷の中で頻度の高い外傷である.ACL損傷は非接触型損傷が多く,女性に頻発する.先行研究では,ACL損傷の発生に外部膝関節外反モーメントと膝関節外反角度の大きさが関連することが報告されている.その一方で,先行研究の多くはパラメーターのピーク値の比較を行っている.しかし,被験者間の波形のパターンには多くのばらつきがあり,すべての被験者で同様なパラメーターを定義することが困難である可能性がある.そのため本研究は,側方カッティング動作中の解析時間全体における健常男女間の膝関節内外反角度と内外反モーメント波形の特徴を抽出し,比較することを目的とした.

    【方法】

    被験者は男性20名,女性20名の2群を対象とした.課題動作は,側方へのカッティング動作とした.動作中の運動学・運動力学的データは,3次元動作解析装置Vicon MXと床反力計10基を用いて取得した.解析時間は,足部が床反力計に接触している間の時間とし,膝関節内外反角度と内外反モーメントを算出した.

     主成分分析を用いて,側方カッティング動作中の膝関節内外反角度と内外反モーメント波形の特徴を抽出した.各群の主成分分析によって得られた主成分得点に対してshapiro-wilk検定を用いて,データの正規性を確認した.正規性を認め等分散の場合は,一元配置分散分析を用い,その後Tukeyの多重比較法を行った.正規性が認められなかった場合はKruskal - Wallis検定を用い,有意な差を認めた場合は,Bonferroniの補正を行ったMann - WhitneyのU検定を用いた.一元配置分散分析,Tukeyの多重比較法,Kruskal - Wallis検定では有意水準を5 %未満に設定した.Bonferroniの補正を行ったMann - WhitneyのU検定では有意水準を0.016%未満に設定した.

    【結果】

    膝関節内外反角度と内外反モーメントの主成分をそれぞれ3つ採択し,累積寄与率は80%以上であった.

    膝関節内外反角度の主成分得点を比較し,第2主成分では,女性は男性と比較して主成分得点が有意に大きかった(男性 vs 女性:p= 0.001).また第3主成分では,女性は男性と比較し主成分得点が有意に小さかった(男性 vs 女性:p= 0.000).膝関節内外反モーメントの主成分得点を比較し,第1主成分では,女性は男性と比較して主成分得点が有意に大きかった(男性 vs 女性:p = 0.035).第2主成分では,女性は男性と比較し主成分得点が有意に大きかった(男性 vs 女性:p = 0.000).

    【結論(考察も含む)】

    側方カッティング動作において,女性は男性とは異なる運動学的および運動力学的動作を行っていることが示唆された.特に動作初期での外部膝関節外反モーメントと膝関節外反運動の組み合わせがACL損傷の発生に関与する可能性がある.

    【倫理的配慮,説明と同意】

    研究に先立ち,広島国際大学の人を対象とする医学系研究倫理委員会にて承認を得た(承認番号:倫16 – 47)。全ての被験者に研究の目的と趣旨を十分に説明し,文書による同意を得た上で計測を行った.

  • 野口 薫, 古川 敬三, 松本 伸一, 中尾 雄一, 栗山 亜希子, 下迫 淳平, 樋口 隆志
    理学療法学Supplement
    2019年 46S1 巻 1-P-C-1-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    変形性膝関節症(以下、膝OA)における疼痛や膝関節機能低下、歩行能力低下はQOLに影響を与える。そのため、QOLを反映する身体特性を把握することは理学療法を行う上で重要であると考える。近年、膝OAの疾患特異的QOL評価尺度として変形性膝関節症患者機能評価尺度(以下、JKOM)が用いられており、信頼性、妥当性が確認されている。しかし、JKOMと身体機能の関係についての報告は少ない。そこで本研究の目的は、膝OA患者におけるJKOMと身体特性との関係を明らかにすることである。

    【方法】

    対象は、平成29年10月から平成30年5月の間に当院で初回理学療法を行った膝OA患者23名(女性23名、年齢69.1±11.1歳、BMI29.6±3.9、片側罹患9名、両側罹患14名)とした。重症度は横浜市大式分類にて判定し、grade1:2名、2:7名、3:8名、4:4名、5:2名であった。評価は初回理学療法時にJKOM合計および下位項目、疼痛検査としてVisual Analogue Scale(以下、VAS)、機能評価として患側膝関節可動域(屈曲、伸展)、徒手筋力計を用いた筋力(患側膝関節屈曲、伸展、体幹伸展)、5回立ち座りテスト、Timed Up and Go(以下、TUG)、2ステップテスト(以下、2ST)を行った。筋力は2回測定を行い、平均筋力を体重で除した値を使用した。なお、両側罹患例に関しては疼痛が強い側を患側として測定した。統計学的処理は、JKOMの合計ならびに下位項目に対する各評価項目との関連性をPearsonの相関係数、Spearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は5%とした。

    【結果】

    JKOM合計はVAS・自動伸展可動域・膝伸展筋力・体幹伸展筋力・TUG・2STとの間で相関が認められた。下位項目は「痛みやこわばり」がVAS・自動伸展可動域と、「日常生活の状態」がVAS・膝伸展筋力・体幹伸展筋力・TUG・2STと、「ふだんの活動」がVAS・膝伸展筋力・TUG ・ 2STと、「健康状態」がVAS・膝伸展筋力,・2STとの間でそれぞれ相関が認められた。

    【結論(考察も含む)】

    JKOM合計と身体特性の関連から、疼痛や膝関節機能、歩行能力といった身体機能の低下がQOLに影響することが示唆された。下位項目との関係ではVASが全ての項目と関連し、疼痛が強いほど階段や買い物などのADL低下をきたし、外出等も困難となり、さらにはQOLを低下させる可能性があることが示唆された。加えて、「痛みやこわばり」は自動伸展可動域制限との関連がみられ、「日常生活の状態」、「ふだんの活動」は膝伸展筋力やTUG、2STに関連がみられた。このことから、膝OAの疼痛が強い症例とADL能力の障害が強い症例では原因となる身体機能が異なる可能性があると考えられる。また、体幹伸展筋力は下位項目において「日常生活の状態」にのみ関連を示し、膝OAの膝伸展筋力のみではなく、体幹伸展筋力もADL能力に関与することが示唆された。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究はヘルシンキ宣言に基づき、対象者に研究の内容について十分に説明した上で同意を得た。

  • -超音波画像診断装置を用いた検討-
    田中 康明, 一瀬 加奈子, 前田 亮, 樋口 隆志, 小森 峻, 衛藤 正雄
    理学療法学Supplement
    2019年 46S1 巻 1-M-1-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】肩甲上腕関節において、上腕骨頭の上方変位は腱板断裂、前方変位はインピンジメント症候群との関連性が報告されており、その原因の一つとして肩甲骨のアライメントや肩関節の可動域との関連が示唆されている。しかし、上腕骨頭の変位の評価は単純X線やCT、MRIを用いたものが多く、理学療法士がリアルタイムに上腕骨頭の変位を確認できる、超音波画像診断装置を用いた報告は少ない。そこで本研究の目的として、上腕骨頭の変位ついて、肩峰骨頭間距離(AHD)と前後方向の変位(APD)を超音波画像診断装置を用いて評価し、肩甲骨アライメントおよび肩関節可動域との関連性について検討することとした。

    【方法】被験者は肩関節に愁訴や既往のない健常男性20名、40肩(平均年齢30.7±8.2歳)とした。測定姿勢は椅子座位,股関節・膝関節90°屈曲位で、両上肢は体側に自然に下垂させ、肩関節は内外旋中間位とした。測定部位は肩関節側面および前面とし、超音波画像診断装置(SonoSite S-Nerve)にて画像を記録し、画像解析ソフトImage Jを用いて、画像上の上腕骨頭の最上部から肩峰までの最短距離をAHD、烏口突起の最前面に引いた接線から上腕骨頭最前面に引いた接線間の距離をAPDとして、各距離を計測した。肩甲骨アライメントは、テープメジャーおよびデジタル傾斜計を使用し、肩甲棘内側縁と同じ高さの棘突起との距離を肩甲骨脊柱間距離、肩甲骨面での肩峰と肩甲棘三角を結んだ線と水平線とのなす角を肩甲骨上方回旋角度、矢状面での肩甲骨内側縁の傾斜と鉛直線のなす角を肩甲骨前傾角度として測定した。肩関節可動域に関しては、屈曲、外転、2nd外旋・内旋、水平内転角度を傾斜計を用いて測定した。AHD・APDと肩甲骨アライメントおよび肩関節可動域の関連性についてはSpearmanの相関係数を用いて検討を行った。有意水準はすべて5%未満とした。

    【結果】AHDについて、肩甲骨前傾角度との間に有意な正の相関が認められた(r=0.32,p<0.05)が可動域との関連は見られなかった。APDについては2nd内旋角度と有意な負の相関が認められた(r=-0.33,p<0.05)が肩甲骨アライメントとの有意な関連は認められなかった。

    【結論】肩甲骨前傾角度増加はAHD減少させると考えられているが、今回の結果では肩甲骨前傾角度増加とAHD拡大に関連がみられ、これまでの報告とは異なる結果が得られた。また、APD増加は肩関節内旋角度減少と関連がみられ、肩関節内旋時の回転中心が前方へ移動することにより、生理的な回旋運動を阻害している可能性があることが考えられた。本研究は肩に愁訴の無い健常成人を対象としており、因果関係を明らかにできていないため、今後は肩関節疾患を有した症例による検討が必要であると考えられる。

    【倫理的配慮,説明と同意】本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、 個人情報の保護について口頭で説明を行い、参加をもって同意を得られたものとした。

  • 宮本 浩樹, 飯田 尚哉, 谷口 達也, 渡邉 耕太
    理学療法学Supplement
    2019年 46S1 巻 1-M-1-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    超高齢社会の我が国で肩関節機能障害に対する理学療法が多い。棘上筋腱は血行が少なく、腱の変性が進行する部位であり、過剰な機械的応力刺激が加わることで機能障害のリスクが高まる。そのため安全で有効な肩の理学療法のためにはこの部位の生体工学的特性を知る必要がある。我々は、棘上筋の等尺性収縮に伴う腱板の緊張を定量的に再現し、肩甲骨面挙上角度の減少に伴い、棘上筋腱表層線維の伸び率は有意に増加することを報告した。先行研究では、棘上筋腱の表層線維と深層線維の機械的特性が異なることが報告されているが、肩甲上腕関節角度による棘上筋腱深層線維の生体工学的特性について計測した報告はない。

     本研究の目的は、未固定人体標本を用いて、肩甲骨面挙上角度による棘上筋腱深層線維の伸び率を計測することである。未固定人体標本を用いる理由として、薬剤により固定された標本ではなく、生体に近い状態であること、棘上筋腱のみの生体工学的特性を計測するため、他の筋の影響を受けず、筋収縮を伴わない状態で計測できるためである。

    【方法】

    未固定標本6肩を用いて、電磁気式三次元位置計測装置(3Space Tracker System、Polhemus社)を用いて肩甲骨面挙上角度-10~30°を10°ごとに規定し、木製ジグに固定した。プッシュプルゲージ(アイコーエンジニアリング社製RZ-50)を用いて棘上筋腱に0~110Nの牽引力を負荷し、肩甲上腕関節を挙上する棘上筋の等尺性収縮を再現した。生体における上肢全体を30°拳上した肢位での値を想定し、棘上筋腱の牽引力を最大110Nとした。ストレインゲージ(パルスコーダー、Levex社、京都)を用いて棘上筋腱深層線維の伸び率を測定し、反復測定二元配置分散分析とBonferroniの多重比較検定を行い、有意水準は5%とした。

    【結果】

     肩甲骨面挙上角度の増加に伴い、棘上筋腱深層線維の伸び率は有意に増加した(p<0.03)。棘上筋腱の牽引力の増加に伴い、棘上筋腱深層線維の伸び率は有意に増加し(p<0.05)、最大牽引力110Nを負荷した際の伸び率は肩甲骨面挙上30°で最大2.85%、20°で2.08%、10~-10°で約1.32~1.49%であった。

    【考察】

    我々が行った以前の研究では、棘上筋腱表層線維の伸び率は肩甲骨面挙上10~30°に対し、-10°、0°で有意に増加した。一方、本研究では棘上筋腱深層線維の伸び率は20°、30°で有意に増加した。このことから肩甲骨面挙上角度が変化すると、牽引力がかかる棘上筋腱内の線維が異なることがわかった。本研究で得られた知見は、肩関節角度による腱板への負荷の影響についての理解を深め、病態に応じた安全で有効な肩の理学療法に応用できると考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    標本は本学医学部解剖学第二講座が管理し、本研究は本学倫理委員会が制定した献体の未固定標本利用に関する指針に基づき、本学倫理委員会の承認を受けた(承認番号:29-2-30)。個人情報の保護対策、及び研究者の感染防止対策を実施した。

  • 尾崎 尚代, 前田 卓哉, 千葉 慎一, 田村 将希, 西中 直也
    理学療法学Supplement
    2019年 46S1 巻 1-O-17-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】

     リバース型人工肩関節全置換術(以下、rTSA)の先進国である欧米では、rTSAの問題と合併症に関する報告で様々な症状が挙げられている。なかでもscapular notch(以下、notch)は合併症の50%を占め(Zumsteinら、2011)、notchの進行は再手術の要因になり得る。また、日本では再手術は5%に至り、原因の約1/3は可動域制限である。我々は第1報にてnotchの発生は過剰な肩甲骨の上方回旋が関与していることを報告した。今回、rTSA後の肩関節機能について調査した結果、興味ある知見が得られたので報告する。

    【方法】

     対象は、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院にてrTSAを施行し、術後1年以上観察が可能であった53例54肩(男性17例、女性36例、平均年齢75歳、観察期間1年1か月~4年)である。

     術前と術後1年時の肩甲骨面上45度挙上位像(以下、S45像)を用いて肩甲骨上方回旋角度(Scapula Index、以下、SI)を調査した。また、術後1年時の肩関節屈曲と外旋の角度を診療録から調査した。

     notchの有無は、術直後からの経時的なS45像によって医師が発生時期を判断し、対象をnotchあり群(以下、あり群)・notchなし群(以下、なし群)に分類した。

     術後1年時の外旋と屈曲の関係、および術前と術後1年時のSIと外旋の関係について2群間で比較した。統計学的処理はSpearman's rank correlation coefficientおよびχ2 testを用いて危険率5%にて行った。

    【結果】

     54肩中、notchが発生したのは13肩(24.1%、男性5肩、女性8肩)であり、そのうち8名(61.5%)が術後1年以内に発生していた。

     術前のSI平均値はあり群 23.8 度・なし群23.1度、外旋平均値はあり群 23.8 度・なし群19.9度、術後1年時の屈曲平均値はあり群 114.6 度・なし群117.8度、SI平均値はあり群14.6 度・なし群13.0度、外旋平均値はあり群 23.8 度・なし群19.9度だった。

     術後1年時の外旋と屈曲の関係は、なし群で外旋が大きいほど屈曲も大きくなった(p=0.005)。全症例のSIの平均値を基準とした時のSIと外旋の関係は、術前のSIが大きく外旋が大きいとnotchが発生した(p=0.006)。

    【結論】

     rTSA術後のnotch発生率は44%~96%と諸家は報告している。今回の調査における発生率は22.2%と低かったが、術後1年未満での発生は約60%と比較的早期に発生していた。

     今回の結果から、rTSA術後の外旋角度と屈曲可動域が関与することが示唆された。また、術前のSIが大きく外旋が大きいとnotch 発生の危険性があることが示唆された。これらのことから、rTSA症例の術前SIと外旋角度を調査することでnotch発生や可動域制限残存の危険性を予測することが可能と考える。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    当院整形外科受診時に医師が患者の同意を得て撮影されたレントゲン像を用いた。なお、個人情報は各種法令に基づいた当院規定に準ずるものとし、当院倫理委員会の承認を得た。

  • -超音波画像診断装置を用いた検討-
    前田 亮, 田中 康明, 一瀬 加奈子, 樋口 隆志, 小森 峻, 衛藤 正雄
    理学療法学Supplement
    2019年 46S1 巻 1-O-17-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに、目的】

    肩関節の安定化メカニズムとして、腱板筋群が重要な役割を担っているとされている。特に棘上筋(以下;SSP)の持つ役割は重要であり、多くのトレーニング方法が報告されている。その中で、筋電図を用いて肩関節内転でSSPの筋活動が見られたという報告があり、前回の本学会において我々は実際に腱板筋群がどのように活動しているか超音波画像診断装置を用いて検討を行った。その結果、運動時の筋厚は有意に増加していたが、臨床的に意味を持つ変化ではなかった。そこで本研究の目的として前回よりも運動時の負荷量を増加させた時の筋厚の変化を調査することとした。

    【方法】

    対象は肩関節に既往のない健常男性27名、54肩(平均年齢28.7±8.3歳)とした。測定姿勢は椅子座位、股関節・膝関節90°屈曲位で、肩関節は30°外転位とし、SSPの測定部位は肩甲棘上(肩峰角から肩甲骨上角までの直線距離)の50%部位にマジックにてマーカーをつけ、超音波画像診断装置(SonoSite S-Nerve)を用いて、筋の長軸に対して垂直にプローブを当て、縦画像を記録した。その後、画像解析ソフトImage Jを用いて、僧帽筋との境界にある筋膜から肩甲骨までの最大距離を筋厚とした。運動負荷は予め肩関節外転30°位でその肢位を保持し外転方向への抵抗を加え、最大等尺性収縮を計測し、その値の20%を負荷量として設定した。そしてSSPの安静時及び収縮時の筋厚を測定し、Image Jを用いた計測を2名の検者によって行った。測定法の信頼性について、相対信頼性は検者内・検者間の級内相関係数(ICC(1.1)、ICC(2.1))を用いて検討し、絶対信頼性はBland Altman分析を用い、系統誤差の確認と測定値の標準誤差(SEM)、最小可検変化量(MDC95)を算出し、偶然誤差の検討を行った。また、肩関節内転時の腱板筋群の活動としてSSPの安静時と収縮時の筋厚の変化についてWilcoxonの符号順位和検定を用いて検討を行った。有意水準はすべて5%未満とした。

    【結果】

    今回用いた計測方法ではICC(1,1)、ICC(2,1)ともに0.9以上であり、Bland Altman分析では同一検査者におけるSEMは0.37mm、MDC95は1mmであった。系統誤差は各項目に認められなかった。SSPの安静時(19±0.2㎜)と収縮時(19.3±0.2㎜)の筋厚については収縮時において有意に増大が見られたが(p<0.05)、MDC95以下の変化であった。

    【結論(考察も含む)】

    前回検討を行った最大筋力の10%の負荷量と同様に、20%の負荷においても肩関節内転時にSSPの筋厚に変化が見られたが、MDC95以下の変化であり、筋厚の変化は臨床的な意味を持つものではない可能性が考えられる。今後は肩関節内転運動による肩関節の運動性や変化等についても検討を行う必要がある。

    【倫理的配慮,説明と同意】

    本研究参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、個人情報の保護について口頭で説明を行い、参加を持って同意得られたものとした。

  • 林 健太朗, 徳竹 忠司, 濱田 淳, 宮本 俊和
    日本東洋医学系物理療法学会誌
    2015年 40 巻 2 号 101-107
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】肩こりに対する低周波鍼通電療法の治療直後から治療後 7 日までの持続的な影響を明らかにすること。
    【方法】対象者は、本研究の趣旨と概要を説明し同意が得られ、頚・肩上部に肩こりを自覚する成人8名(男性 5 名、女性 3 名、年齢 29.8 ± 7.2 歳)で、除外条件に該当しないものとした。治療肢位は腹臥位とし、刺鍼部位は左右肩こり感の強い側の頚・肩上部の筋2か所のとし、1ヶ所は肩上部の筋とした。長さ50mm、太さ0.2mmのディスポーザブルステンレス鍼を使用し、刺入深度は筋内に達する深さとし、1Hz、15 分間の低周波鍼通電を行った。測定項目は、左右の肩こり感の程度 (Visual Analog Scale)、筋硬度(肩井、肩外兪穴相当部位)、側屈時の乳様突起 - 肩峰間距離、頚部側屈時の伸張痛の程度、圧痛の程度(風池、肩井、肩外兪穴相当部位)とした。測定は、治療直前、治療直後、治療後 7 日に同一の検査者が行った。なお、肩こり感の程度は治療直前、治療直後、治療日夜から治療後7日に測定を行い、治療日夜から治療後 6 日までは対象者に肩こり日誌への自己記入を依頼した。統計処理は、一元配置分散分析、Bonferroni/Dunn 法で検定した。有意水準は5%未満とした。
    【結果】肩こりの程度、筋硬度、側屈時の乳様突起 - 肩峰間距離、頚部側屈時の伸張痛の程度、圧痛の程度の各測定間に、有意差は認められなかった。
    【考察・結論】肩こりに対する低周波鍼通電療法の治療直後から治療後7日までの持続的な影響を明らかにするために、自覚的な所見、他覚的な所見を指標に検討した。各測定項目の各測定間に有意差は認められなかった。
  • - 治療頻度を考慮した検討 -
    林 健太郎, 徳竹 忠司, 濱田 淳, 宮本 俊和
    日本東洋医学系物理療法学会誌
    2016年 41 巻 2 号 73-79
    発行日: 2016年
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー
    【目的】肩こりに対する低周波鍼通電療法(以下 EAT)の影響を明らかにすることおよび肩こりの程度と関連する測定項目を検討すること。 【方法】対象者は、本研究の主旨と概要を説明し同意が得られ、頸・肩上部に1年以上肩こりを自覚している8 名(男3名、女5名、年齢30.9±5.5歳)で、除外条件に該当しない者とした。治療肢位は腹臥位、刺鍼部位は肩こりの自覚が強い頸部外側または後側と肩上部の僧帽筋の左右2部位ずつ合計4部位とし、筋肉の押圧や把握により愁訴が再現した部位とした。使用鍼は長さ50mm、太さ0.2mmの単回使用鍼を使用し、刺入深度は筋内に達する深さとし、1Hz、15分間のEATを行った。EATは1週間に2回(2~3日に1回の頻度)、2週間で合計4回行った。測定項目は、肩こりの程度(VAS)、筋硬度(肩井、肩外兪穴相当部位)、頸部側屈時の乳様突起-肩峰間距離および伸張痛の程度、圧痛の程度(風池、肩井、肩外兪穴相当部位)とした。測定は、同一の測定者が治療開始前、治療期間終了時、治療期間終了後7 日、14日に行った。統計処理は、一元配置分散分析、ダネット法、ピアソンの相関係数の検定、スピアマンの順位相関係数の検定で検定した。有意水準は5%とした。 【結果】肩こりおよび頸部側屈時の伸張痛の程度は、治療開始前と比べ治療期間終了時に有意に低下した。治療開始時の肩こりの程度は、頸部側屈時の伸張痛の程度と圧痛の程度(肩外兪穴相当部位)との間、治療期間前後の肩こりの程度の変化量は、筋硬度(肩井穴相当部位)と頸部側屈時の伸張痛の程度の各変化量との間に有意な正の相関を認めた。 【結語】肩こりを自覚する者に対してEATの治療頻度を考慮することにより肩こりおよび頸部側屈時の伸張痛の程度の軽減が認められた。頸部側屈時の伸張痛の程度は、肩こりの程度と相関が認められたことから、治療前後に肩こりの程度を聴取することで、伸張痛の効果判定となる可能性がある。
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