【目的】 これまでの献立学習は第6学年で栄養的なバランスを食品群の表で確認していたが,既習学習を活用しきれないことが課題であった。本研究では,第5学年の食領域の学習の最後に,既習料理の組合せから食事を考える学習を取り入れた。食事構成と各料理に含まれる食品の体内での働きを関連させた学習の効果を探ることを目的とする。
【方法】 研究対象にした授業は,千葉県内小学5年生119名を対象に2014年2月に実施した。概要は,最初に「飯,みそ汁,ゆで卵,ほうれん草のお浸し」という食事を提示し,この食事の栄養のバランスがとれていることを確認した後,料理のアレンジをさせた。授業効果の分析の対象は,児童の記述した料理や献立とした。アレンジした料理を主食,汁物,おかずの食事構成に分類してその数を集計した。また,料理をアレンジしたものを,さらに組み合わせ,新たな献立とした内容と人数をみた。さらに,児童の思考をみるために「食品・調理・栄養」の関連を記述する「食マップ」を用意し,児童がその中に単語を書き入れた(記述例;米→ご飯←炊く,米←エネルギー)。これも分析の資料とし,本授業を行わなかった2013年と比較した。
【結果】 小学校5年生の食領域の年間の学習の流れは,<1>6月ゆで方をマスターしよう,<2>10月ご飯とみそ汁を作ろう,<3>2月卵を知ろう,<4>食事について考えよう,である。各学習時に食品・調理・栄養を意識できるように<1>葉菜,ゆでる,<2>米,炊く,エネルギーとなる,<3>卵,ゆでる,体をつくる,に視点をおいた。そして<4>でこれらの内容をまとめるものとした。<4>で提示した食事のアレンジには以下の3つの方法を示した。1.食品を変える(例:ほうれん草→小松菜),2.調理法を変える(例:ゆで卵→卵焼き),3.調味を変える(例:お浸し→胡麻和え)である。児童の記述をみると,98.0%の児童がアレンジをし,その数は一人当たり4.3個であった。内訳は,主食:30.8%,汁物:14.4%,おかず(ゆで卵):27.1%,(お浸し):21.1%とほぼ偏りがなかった。内容は,ゆで卵の調理法を変えたものが多く(78.6%),肉料理へのアレンジは12.0%と少なかった。また「お浸し」のアレンジは,全てが野菜を用いた料理であった。詳細は,胡麻和え等調味の変更(34.7%),小松菜等食品の変更(15.3%)の他,サラダ(22.4%),漬け物(7.1%)等であった。また本学習では,32.4%の児童が献立を意識してアレンジをしていた。内訳は,和食献立(飯,みそ汁,和のおかず)36.7%,主食が飯でおかずに炒める料理等和洋の様式が混在していても献立として適切だと考えられたものが31.7%であった。「寿司,雑煮,
だし巻き卵
,サラダ」のように主食が重なる等献立として不適なものは10.0%であり,90.0%の児童が適切な献立を考えた。「主食が変わると副食が殆ど変わり,和風が洋風になったりするので影響が強い」と述べる等,食事構成を意識し献立としてのまとまりを認識した児童の多いことが分かった。
食マップで単語を3つ以上記述した者の割合を,<4>の授業の有無で比較した。[2013,2014]で示す。食品[98.2%,96.7%],調理[72.6%,82.5%],栄養[81.4%,90.0%]と大きな差はなかった。しかし,「食品と調理」を関連づけた者は[81.5%,94.1%],「食品と栄養」を関連づけた者は[ 33.6%, 61.7%]と差がみられた。本研究において,提示した献立の食事構成ごとに食品の体内での働きを意識させつつアレンジをする学習が,食事構成と体内での働きをおよそ関連づけて食事を意識し,食品・栄養・調理について関連づけができたと考える。また,アレンジに既習学習が活用され,児童が具体的イメージをもって献立を展開できたと考える。
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