(1) マッ
シュルー
ム (
Agaricus bisporus) に存在する特殊な芳香族化合物, γ-L-glutamyl-4-hydroxymethyl-phenylhydrazine (Agaritine) とγ-L-gluthamyl-4-hy-droxyaniline (GHA) を定量する目的で, 簡便な比色法として, ジアゾ法及びインドフェノール法を確立した.
(2) 本実験で確立したジアゾ法とインドフェノール法で測定したAgaritine及びGHAは, 新鮮重量1g当たりおのおの1.64μmol (0.438mg), 3.16μmol (0.752mg) であった.
(3) 加熱調理条件下におけるマッ
シュルー
ム中のAgaritine及びGHAの90℃加熱下での水及び1%食塩水中への溶出挙動を検討した.Agaritineは両媒体中にてほぼ同一の挙動を示し, 10分間で約60%が速やかに溶出され, その後30分間の加熱で約80%が溶液中に徐々に溶出した.GHAは熱水中ではAgaritineと類似した挙動を示したが, 食塩の存在はGHAの溶出を促進するが, 一方で分解を伴うことが示された.30分の加熱においてもAgaritineは約20%子実体中に残存した.またマッ
シュルー
ムに含まれるAgaritine, GHA以外の遊離アミノ酸を主体とする可溶性窒素化合物は, 90℃, 30分の加熱でその約90%が溶出されることが示された.
(4) 市販のマッ
シュルー
ム水煮缶詰において, 3年間保存した缶詰中の溶液にもAgaritine及びGHAが検出された.この事実は, Agayitine及びGHAの分解が, 加工時に使用される還元剤の存在で抑えられたためと考えられる.しかしマッ
シュルー
ム本体には, 両化合物は検出されなかった.
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