本論文では,「言語構造の世界地図」(The World Atlas of Language Structures (WALS), Haspelmath, et al. (Eds.), 2005)を利用して,
ユーラシア
地域の様々な言語における,格の数や語順等の文法的特徴について概観した.加えて,WALSを使用した文法情報の収集と言語類型論の手法を利用することで,
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言語の多様性を視覚的に観察する一研究を紹介した.
ユーラシア
地域の言語は基本的に格を多く持つ傾向があり,それらの格の多様性として,対格言語と能格言語の相違は存在するが,大まかに地域内で共通の特徴がある.また,
ユーラシア
の言語はSOV語順及び指示詞の2種類使い分け(「この」と「あの」)の傾向を持つ.WALSに含まれるいくつかの文法情報を整理し,その結果を視覚化することで,典型的な
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言語とはどのようなものであるかを考察した.その結果,言語の特徴が
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地域と欧州地域で明確に分かれることが判明し,その境界上にフィン=ウゴル語が存在する.
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