本研究では,(1)日本人大学生による日本語意見文(JJ),(2)韓国人大学生による韓国語意見文(KK),(3)韓国人日本語学習者による日本語意見文(KJ),をデータとし,主張の出現位置に着目してタイトルと文章構造の対照研究を行った.3者間のデータの異同を明らかにした上で,母語(KK)が学習言語(KJ)に与える影響について考察を加えた結果,次のことが明らかになった.1 タイトルは,JJは名詞止めによる「主張示唆」,KKは文による「主張明示」が最も多い.2 JJの文章構造は,「はじめ」と「おわり」に主張を置く型に集約されているが,KKは,「おわり」に主張を置く型,「なか」と「おわり」に置く型,「はじめ」と「おわり」に置く型の3つに拡散している.3 意見文の冒頭文は,JJでは「主張」か「背景」,KKでは「背景」が多い.また,最終文は,JJでは「主張」が多いが,KKはJJより,「根拠」や「補足」で締め括られる例が多い.4 上に示したKKの特徴は,KJにも反映されている.5 名詞止めによる「主張示唆」のタイトルは,母語(JJ,KK)での使用に比べ,学習言語(KJ)では産出されにくい.6 いずれの言語でも,タイトルか本文の「はじめ」(あるいはその両方)で主張を明示または示唆する意見文が典型的で,執筆者の主張が早い段階で読み取れる点は共通している.
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