唇顎口蓋裂児におけるエナメル質形成不全の発現状況とその特徴を知る目的で,本調査を実施した。
平成14年2月から平成15年1月までの間に,本疾患診療班各科の定期検査のため,小児歯科にて口腔診査を受けた3歳から8歳4か月までの唇顎口蓋裂児239名を対象に調査を行い,以下の結果を得た。
1.エナメル質形成不全歯をもつ唇顎口蓋裂児は54.8%であった。乳歯列期の患児では55.2%が乳歯にエナメル質形成不全を発現しており,裂型別での発現率は唇裂で33.3%,唇顎裂で56.8%,唇顎口蓋裂で77.6%,口蓋裂で23.3%であった。混合歯列期の患児では永久歯にエナメル質形成不全をもつ者は27.6%であった。
2.乳歯列期の患児において,観察歯2643歯中,形成不全を発現している歯は5.2%であり,唇顎口蓋裂で7.0%,唇顎裂で5.5%,唇裂で2.2%,口蓋裂で1,9%の発現であった。混合歯列期については,観察永久歯672歯中7.7%にエナメル質形成不全が認められた。
3.唇裂,唇顎裂,唇顎口蓋裂では上顎前歯部で形成不全の発現率が高く,口蓋裂では第二乳臼歯で形成不全の発現率が高かった。
4.前歯部同名歯では裂側で形成不全の発現率が高かった。
5.永久歯の形成不全には白斑が多く認められたが,乳前歯のそれは白斑よりも着色や実質欠損が多かった。
6.形成不全発現と,出生体重や唇裂・口蓋裂手術時期との関連は認められなかった。
抄録全体を表示