スワロエイドは, 上顎にのみ装着される有床義歯形態の嚥下補助装置である。嚥下障害を有する高齢者に対する本装置の報告はあるものの, 痴呆 (認知症) 高齢者にどの程度有用であるかは不明である。本研究は, どのような患者にスワロエイド治療を行うことができたか (受容), また装置の使用を継続できたか (適応) を明らかにすることを目的とした。
某特別養護老人ホーム入居中の痴呆高齢者84名のうち, 条件を満たす39名を対象とした。まず, 口腔ケアおよび脱感作を行い, 口腔内状態が安定し, スワロエイド治療を受容可能と判断した者に対し, 装着に至るまでの過程, 装着時の状況, 装着後の調整に関して調査した。さらに, 適応できた者については, 装着時と非装着時にプリンの嚥下に至るまでの時間と咀嚼運動回数の計測を行った。
対象者39名中, 口腔ケアを終了し, スワロエイド治療を受容できた6名のうち, 装着後の使用に適応した者は5名であった。また, 5名の持つ条件を整理すると, スワロエイド治療を痴呆 (認知症) 高齢者に行う際の指標が10項目見出された。また, スワロエイドを装着することで, 嚥下に至るまでの時間の短縮と咀嚼運動回数の減少が見られた (P<0.01) 。
以上の結果から, 痴呆 (認知症) 高齢者において, 脱感作および口腔ケアを徹底して行い, スワロエイド治療を受容できた者においては, 装置の有用性が示唆された。
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