<緒言>2005年2月1日、医療法施行規則の一部を改正する省令が公布され、手術室の構造設備に関する規定が、「滅菌水
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の設備が必須ではない。」と改正された。
当院でも設備の維持管理に年間約260万円の経費がかかっている。積極的なコスト削減策は重要な事項である。このため改正医療法に沿った取り組みを求められることは必定と思われた。
しかしただちに変更することに抵抗を覚えるスタッフが多いのではないかと考え、手術時
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に対する現在の考え方を知り、今後の方向性を見出す目的で調査に取り組んだ。
<方法>研究方法:無記名による質問紙調査
調査内容:法改正・水道水による
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・速乾性手指消毒剤の使用
調査期間:平成17年5月7日から9月9日
調査対象:外科系医師35名、麻酔科医師3名、研修医28名、手術室看護師20名
<結果>84名から回答を得た。回収率97.7%。
『平成15年度厚生労働科学研究費補助金による緊急特別研究「医療施設における院内感染(病院感染)の防止について」の研究報告について知っていますか。』に対し「知っている」28名、「知らない」54名。「水道水で
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をすることに抵抗を感じますか。」に対し、「抵抗あり」30名、「抵抗なし」54名。抵抗ありの理由は、「経験がないので、なんとなく戸惑いがある」20名と最も多かった。「
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後、速乾性手指消毒剤を使用していますか」は、「使用している」41名、「使用していない」39名。使用していない理由として、「手が荒れる・しみる」をあげた13名の
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方法は、ブラシ使用が11名であった。
「今後、水道水で
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を施行することとなった場合、取り組まなければいけない課題などはありますか」に対し、「速乾性手指消毒剤使用の徹底」を挙げたのは37名、「術中の手袋交換」は21名であった。
<考察>掲示した規則に対して、知らないとの答えが54名と多かったのは改正後、日が浅かったことや、カンファレンスルームへの出入りの頻度、日頃の感染に対する関心の程度が影響していると推察する。しかし法改正を知らなくとも水道水で
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をすることに抵抗を感じない人の方が多かった。法改正を知っているか知らないかは、手術時
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に水道水を使用することに対しての抵抗感に関連しないといえる。
2002年のCDCガイドラインで高く推奨されている速乾性手指消毒剤の使用は必須である。しかし半数が使用しておらず、理由として「手が荒れる・しみる」をあげた13名中11名は
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方法としてブラシを使用していた。微生物学的な観点から皮膚の損傷を最小限にする必要があり、個人のハンドケアや
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法の見直しも重要となってくる。さらに保湿効果のある速乾性手指消毒剤の導入などの検討が必要と判った。
<結論>1、法改正について知っている・いないに関わらず、54名(62.7%)が手術時
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に、水道水を使用することに抵抗を感じていないことが分かった。
2、水道水使用に抵抗があるは30名(35.7%)でその理由は経験がない、衛生管理が心配、習慣的なものであった。
3、速乾性手指消毒剤の使用は41名であった。使用しない理由として、手が荒れる・しみるが13名と最も多かった。
4、水道水に関わる衛生管理の状況報告や速乾性手指消毒剤使用の必要性・正しい知識の浸透など今後の取り組みの方向性がわかった。
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