畑地におけるアイガモの有効利用を図る上での基礎的知見を得ることを目的とし, 1996年6~11月に幼木茶園 (定植2年目, 樹高約60cm) , 1997年4~10月に成木茶園 (定植5年目, 樹高約1m) において, それぞれ4ヵ月齢以上のアイガモを放飼し, 雑草および害虫に及ぼす影響を検討した.得られた結果は次のとおりである.幼木茶園では, メヒシバ (
Digltarlaadscendens (H.B.K.) Henr.) を優占種とする10科12種の雑草がみられ, 雑草の乾物重量はアイガモ無放飼区 (以下, 対照区) に比ベアイガモ放飼区 (以下, アイガモ区) で8月下旬から有意に減少した (P<0.05) .主要害虫であるチャノミドリヒメヨコバイ (
Empoasca onukii Matsuda) の個体数は, 対照区とアイガモ区の間で有意な差が認められなかった.成木茶園では, 4~6月にハコベ (
Stellaria media (L.) Villars) , 7~9月にツユクサ (
Commelina communis L.) を優占種とする7科9種の雑草がみられ, アイガモ区における雑草の乾物重量は対照区に比べ極めて小さい値を示した (P<0.05) .ウスミドリメクラガメ (
Apolygus spinolai (Meyer-Dur) ) による被害葉数は, 対照区, 農薬散布区 (以下, 慣行区) およびアイガモ区の間で有意差がみられなかった.チャノキイロアザミウマ (
Scirtothrips dorsalis Hood) の個体数は各区とも6月上旬にピークを示し, アイガモ区の個体数は対照区に比べ有意に少なかった (P<0.05) .チャノミドリヒメヨコバイは対照区およびアイガモ区で2番茶摘採直前に個体数が増加し, 両区の生葉収量は慣行区に比べ減収した (P<0.05) .チャノホソガ (
Caloptilia theivora (Walsingham) ) については, 対照区および慣行区に比ベアイガモ区で被害葉数が増加する傾向を示した.放飼したアイガモは害虫が生息する茶樹への摂食行動をほとんど示さず, 胃内容物調査においても害虫の摂食は確認されなかった.以上の結果から, 茶園におけるアイガモ放飼は雑草防除に有効であるものの, 駆虫効果は小さいことが示された.
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