【目的】 若年層の雇用問題が社会的に認識されるなかで、小・中・高等
学校
のみならず、大学においても勤労観・職業観の醸成や教育から職業へのスムーズな移行を目的とした様々なキャリア教育が行われている。大学進学者の多くは高等
学校の普通科
出身者であるが、同じ
普通科
であっても学生は多様化しており、大学ではその現状に柔軟に対応してキャリア教育を充実させる必要性が高まっている。また、高等
学校の専門学科では普通科
とは異なり、将来のスペシャリストに必要な専門性の基礎・基本の習得のための専門教育が行われている。その専門性を高めるため、あるいは資格取得のために専門学科からさらに大学へと進学する者は増える傾向にある。しかし、
普通科と専門学科では高等学校
段階で異なる教育を受けているにもかかわらず、大学段階では両者の違いやその特性を考慮したキャリア教育の在り方が論じられることは少ない。そこで、高等
学校
から大学への教育の継続性について、その現状と問題点を探ることを目的として、食物系四年制大学で学ぶ学生のキャリアパスに関する意識調査を行った。
【方法】 平成18年11~12月に、食物系四年制大学に在籍する1~4年生501名を対象としてアンケート調査を行った。その内訳は、
普通科
出身者402名、専門学科出身者99名であった。質問項目は、高等
学校
への進学動機や学習に対する満足度、大学への進学動機、高等
学校
と大学の学習の関連性等とした。また、家庭に関する専門学科の出身者は、今回の調査において特に高等
学校
と大学での学習内容が専門的に深く関係していることから、高等
学校
と大学での学習状況等についてさらに詳細に聞き取り調査を行った。
【結果】 高等
学校
への進学動機は、
普通科
出身者が「通学に便利だから」が最も多かったのに対し、専門学科出身者はその教育内容に魅力を感じて進学した者が多かった。また、専門学科出身者は高等
学校
での学習に満足している者が多く、その学習経験がその後の進路選択に大きく影響していた。しかし、大学への進学動機は学部の特性もあり、出身学科にかかわらず資格志向が強く現れていた。高等
学校
での学習が大学で役に立っていると答えた者は専門学科出身者に多く、その具体的な内容も
普通科
出身者とは異なっていた。
家庭に関する専門学科の出身者に対する聞き取り調査から、調理師免許が取得できる学科の出身者は着実に調理技術が身についたという自信を持っており、それを活かせる職業として栄養士や家庭科教諭の免許取得を目指していることから、比較的明確なキャリアパスが描けていると思われた。ただし、出身学科が「家庭」であるという認識は低かった。家政科出身者の事例では、コース選択により食物を重点的に学んだ者であっても「様々なことが経験できてよかった」という点で高等
学校
での学習に満足しており、特定の職業を想定した学習とはなっていない様子が伺われた。
今後の検討課題として、1.
普通科
、専門学科に限らず個々に応じた大学における導入教育の実施、2.専門学科出身者の大学選択の幅が広がるような入試形態、3.専門学科出身者であることの特性を活かした学習が継続できるような、高等
学校
と大学間の連携の在り方、4.資格の取得に偏重しすぎないキャリア教育の在り方等が挙げられる。
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