琵琶湖における固有振動を明らかにするために,湖水位実測記録の周波数分析と有限要素法を用いた数値実験を行い,両者を比較した。
実際の琵琶湖での固有振動を明らかにするために,琵琶湖北湖と南湖の2カ所で湖水位を記録し,その振動の周波数分析を行った結果,五つの卓越振動周期が得られた。
有限要素法を用いた琵琶湖の固有振動の数値実験では,琵琶湖全域を241節点・357要素の三角形有限要素に分割し,それぞれの節点についての固有値・固有ベクトルを算出した。固有振動のうち,30分以上の長い周期の振動について,振動モードを求めた結果,振動周期の異なる七種類の振動モードを得た(ModeI~VII)。
琵琶湖内にある沖島が固有振動に与える影響を調べた結果,本研究で対象とした周期の長い振動では,影響はほとんど認められなかった。さらに,北湖と南湖の境界部の形状が,ModeIの振動に与える影響を明らかにするため,湖岸・湖底条件を変えて数値実験を行った結果,境界部の形状が浅いほど振動周期が長くなり,広いほど振動の形態に影響を与え,かつ振動周期が短くなることがわかった。
実測した湖水位記録を用いた周波数分析の結果得られた振動は,有限要素法を用いた数値実験結果のModeI・II・III・V・VIの五つの振動モードと対応しており,実測および数値実験の双方から琵琶湖の固有振動を明らかにすることができた。
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