経過観察できた胃腺腫71症例,82病巣中,最終的にポリペクトミーまたは外科的切除により確認された31病巣につき,癌化群9病巣,癌化はみられないが異型度の組織学的変化群12病巣および組織学的不変群10病巣の3群に分類し,表層部(異型腺管部)と深部(非異型腺管部)の生理的および病的核分裂を計測算定した.さらに,Paneth細胞,goblet細胞,brushborderの分布検討を行い,次の成績を得た. 1)癌化群で初回検査時におけるGroup IIIの表層部の生理的核分裂は平均6.4cells/mm
2で,後にGroup IVに変化した時には平均26.5cells/mm
2,最終生検,ポリペクトミーまたは外科的切除標本でGroupVの時には39.4cells/mm
2と異型度が進行するにつれ,核分裂の増加傾向を示した.しかし深部では表層部の如き著明な差はみられなかった.この組織学的変化におけるPaneth細胞,goblet細胞,brush borderの分布をみると,逆に異型度が強くなるにつれ,減少または消失を認めた. 2)組織学的に異型度の変化した病巣でも同様な成績が得られたが,組織学的不変群では初回時10病巣の表層部平均核分裂数は4.4cells/mm
2に対して,最終的には5.1cells/mm
2と有意差はみられなかった. 3)癌化群の表層部の病的核分裂像はGroupIIIでは9病巣中2病巣(22.2%)に平均0.8cells/mm
2,GroupIVでは平均3.1cells/mm
2で2病巣,GroupVでは平均5.6cells/mm
2で全病巣にみられた. 4)組織の異型度別(GroupI~V)の表層部における生理的および病的核分裂数,Paneth細胞,goblet細胞,brush borderの算定分布からみると,GroupI,IIは近似した成績を呈する組織群であるが,GroupIIIは前者と異なった組織群であり,さらにGroup IVはGroup IIIよりもむしろGroup Vに類似した成績を呈する組織群であることが示唆された.
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