【目的】
安全性試験におけるカニクイザルの血圧測定は,動物を拘束した状態で実施するカフ式検査が一般的である.しかし,カフ式検査は連続測定が実施できず,拘束ストレスにより血行動態が変化することで循環機能が正確に評価できない欠点がある.近年登場した小型血圧
送信機
(PA-C10-TOX)は,動物に埋植する事で無拘束状態の連続した血圧測定を可能にする機器であり,本機器の有用性および安全性試験に組み込んだときの問題点について検討した.
【方法】
実験1:カニクイザル4匹に小型血圧
送信機
の埋植処置を行い,降圧作用を有するhydralazine(10 mg/kg)を単回経口投与し,投与後24時間まで連続した血圧測定(以下,連続血圧測定)を実施した.また,同薬剤についてテレメトリー
送信機
を用いて測定した場合の結果と比較した.
実験2:カニクイザル15匹に小型血圧
送信機
の埋植処置を行い,手術前,手術後1,2,4,6週目に血液学的検査および血液生化学的検査を行うとともに,手術後6週目に病理組織検査を実施し、小型血圧
送信機
の埋植処置が生体に与える影響について評価した.
【結果】
実験1:連続血圧測定では投与後2時間をピークとする血圧低下(85%, vs 投与前値)が認められた.テレメトリー
送信機
を用いた場合も同様のピークを示し,減少率も同程度(83%, vs 投与前値)であった.
実験2:血液学的検査および血液生化学的検査に変化は認められなかった.病理組織検査では,血圧カテーテル留置部位の血管内膜増生が認められた.
【考察】
小型血圧
送信機
を用いた連続血圧測定は,テレメトリー
送信機
を用いた場合と同水準で血圧変化を検出可能であった.また
送信機
の埋植操作は、動物に軽度な組織変化を引き起こしたが、薬剤の安全性評価には支障は無いと考えられた.これらのことから安全性試験において、小型血圧
送信機
を使用し、血圧変化を評価することは有用であると考えられた.現在,カフ式検査との検出力の違い,および昇圧剤を反復投与した際の影響を検討しており,これらの結果を本学会で報告する.
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