抄録
エチレン処理された温州ミカン (Citrus unshiu Marc.) 果実のクロロフィル分解経路を明らかにするため, 貯蔵に伴うクロロフィル含量, フラボノイド, クロロフィル分解活性, ペルオキシダーゼならびにクロロフィラーゼ活性の変化について検討を行った。
エチレン処理果は20℃貯蔵に伴い脱緑がみられたが, 無処理果では貯蔵4日までほとんど変化がみられなかった。クロロフィル含量についてみたところ, エチレン処理中に減少し, 処理後貯蔵に伴い急減した。処理果のフラボノイドは増大がみられ, 貯蔵2日で最大値を示し, その後処理前の値に減少した。クロロフィル分解活性 (ペルオキシダーゼによるクロロフィル分解に関与するフェノール化合物量) は, フラボノイドの変化と同様の傾向を示し, その変化割合はより顕著であった。温州ミカンに含まれるフラボノイド・アグリコソであるナリンゲニン, ヘスペレチン, アピゲニンおよびヘスペレチンと同じB環構造を持つフラボンのジオスメチン存在下でのペルオキシダーゼによるクロロフィル分解を調べたところ, クロロフィルはすべてのフラボノイドにより分解され, 特にナリンゲニンとアピゲニンの効果が顕著であった。ペルオキシダーゼならびにクロロフィラーゼ活性についてみたところ, 両活性ともエチレン処理中に増大がみられ, ペルオキシダーゼ活性は貯蔵2日から減少したが, クロロフィラーゼは貯蔵中, 高活性を維持した。
以上の結果より, エチレン処理された温州ミカンのクロロフィル分解は, クロロフィルがクロロフィラーゼにより分解され, その後生成したクロロフィリッドがフラボノイド存在下でペルオキシダーゼにより無色の物質に分解されるものと推察された。