抄録
微小な質量変化を測定する手法として水晶振動子マイクロバランス (QCM) 法を用いて, 二元系合金の鉛ブリーはんだのイオンマイグレーション成長過程を解析した。その結果, マイグレーション成長に大きく影響するアノード溶出量, カソード析出量は, 従来の鉛はんだと比較し鉛フリーはんだは減少傾向にあった。また, マイグレーション成長による析出物は, 鉛フリーはんだはSn成分であり, 鉛はんだはPb成分であった。SnはPbに比べ酸化皮膜形成による不働態域が広く安定なため, 主成分がSnである鉛フリーはんだは, 電極表面に安定なSn酸化皮膜を形成しアノード溶解を抑制したと考えられ, 鉛はんだと比較し鉛フリーはんだは耐マイグレーション性が高いと考えられる。しかしながら, この酸化皮膜は, 印加電圧, 溶液中のpHの変動, フラックス残渣成分中のイオン性不純物の混入によっては, 酸化皮膜の形成能力や密着性を低下させマイグレーション成長を促進させる。本研究ではQCM法を用いて, アノード溶解, カソード析出をその場 (in situ) 解析することによって, これらの要因を解析した。