日本教育工学会論文誌
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論文
長期の協調学習において協調的議論はどのように生まれるのか
PBLにおけるチーム活動の質的分析
奥本 素子岩瀬 峰代
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2016 年 39 巻 4 号 p. 271-282

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抄録

 長期にわたる協調学習であるPBL(Project Based Learning)では,人間関係やチームの雰囲気が協調学習にも影響を与えていると考えられる.しかし,これまでPBLにおけるチーム内の協調学習支援の在り方は十分に検討されることが少なかった.本研究では,チーム内で議論がどのようにデザインされ,どのように協調学習を成立させているのかということをPBLに参加した成員に対して実施したインタビュー内容を分析することによって検討した.その結果,活動初期に目的が共有されたチームは協調的議論自体をデザインし,客観的な評価軸以外にチームが納得できる評価軸を構築することにより,多様な意見を受け入れる素地を生み出すことが確認された.加えて,このようなプロセスを経た協調的議論では課題が共有されやすいため,活動の効率化にも効果があることが示された.これらは先行研究で指摘されている共有された認識主体性 (Shared Epistemic Agency)に類似した概念であり,協調学習では学習自体がチームによってデザインされているということが明らかになった.

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© 2016 日本教育工学会
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