2025 年 49 巻 1 号 p. 65-77
本研究は,ウェアラブル式アイトラッカー (W-ET) を用いて,熟練保育者の「みえ」を明らかにし,中堅保育者と共有することを目的とした.従来の映像では保育者の視点を完全に再現できない課題に対し,W-ETは保育者が見ている範囲と注視箇所をそのまま記録できるため,より具体的な事象に即してリフレクションを進めることが可能となった.対話リフレクションを通じて熟練保育者が子どもの内面の変化を予測して支援する際に,「二人称視点」,「この場では知り得ない情報」,「遊びの文脈」,「内発的動機付け」の4つの観点に留意していることが明らかになった.W-ETを通して熟練保育者の「みる」が具体的に示されることで,中堅保育者は熟練保育者の「みえ」と自身の「みえ」の違いに気づき,そこから学びを得た.W-ETを用いた対話リフレクションが中堅保育者の「みえ」の枠組みを再構築し,保育実践を省察する能力を高める効果を持つことが示唆された.