抄録
本研究では,理科教育において PCK を研究する意義について論考することを目的とした。まず,理科教育における PCKの研究動向から,現在の理科教育において PCK がどのように解釈されているのかを検討した。次に,PCK に関する研究の実際を,教員養成教育段階の学生と現職教師のそれぞれの段階について概観した。その結果,PCK が,教授する特定の科学的概念に基づいて,特定の文脈の中で教師が実践に用いる知識や思考様式を検討するようになって きていること示した。また,PCKの研究を行うことは,これまで暗黙的なものであった教師の経験や実践知を共有することが可能となることに加えて,その成果は被対象者となる教師 自身への還元にも繋がることを示した。