2011 年の東京電力福島第一原子力発電所の事故の後,2012 年産の玄そば(そば子実)の放射性セシウム濃度に基準値 超過が認められた.そこで著者らは,圃場に沈着した放射性セシウムの玄そばへの移行を低減する技術の開発に取り組み,土壌の交換性カリ含量を30 mg K2O 100 g-1 以上とした上で地域の施肥基準に応じた施肥を行い栽培することで,玄そばの放射性セシウム濃度は基準値以下となることを明らかにした.また,倒伏した作物体から得られた玄そばには土壌等異物の混入や玄そば表面への土壌等の付着が認められ,倒伏のない作物体から得られた玄そばよりも脱穀・風選後の放射性セシウム濃度が高い値を示す場合があったが,それらについて磨きを行うことにより,玄そば表面への土壌の付着は除去され,放射性セシウム濃度は磨き前と比較して低減することを明らかにした.これらの知見をもとに実施された移行低減対策により,玄そばの放射性セシウム濃度の基準値超過は2013 年以降1 点のみである.2014 年からは避難指示が解除された地域の除染後圃場においても,玄そばへの放射性セシウムの移行を低減する技術を実証し,生産者団体による営農再開を支援した.