日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
リンゴの褐変に及ぼすポリフェノール成分とポリフェノールオキシダーゼ活性の影響
山王丸 靖子片山 脩樫村 芳記金子 勝芳
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 45 巻 1 号 p. 28-36

詳細
抄録

水耕栽培(‘ふじ’,‘ジョナゴールド’)および土耕栽培樹にカルシウム(Ca)溶液の樹上散布(‘スターキング’)を行い,褐変度とポリフェノール(PP)含有量および酵素(PPO)活性との関係について検討した.結果は以下の通りである.
(1) 総PPは,褐変度の低い水耕果およびCa散布果が対照果よりも高値を示した.果実の部位別では品種,栽培条件に関係なく果皮部に多く,他の部位の約1.5~3倍量含有された.
(2) クロロゲン酸は,水耕果が土耕果よりも高値を示したが,エピカテキンには差がみられなかった.Ca散布果では,両成分ともに無散布果との差はみられなかった.
(3) クロロゲン酸は栽培条件に関係なく,‘ふじ’,‘ジョナゴールド’の全部位でエピカテキンよりも多く含有されたが,‘スターキング’の果皮部のみ逆の結果を示した.
(4) PPO活性は,何れの水耕果も土耕果と比較して明らかに低値を示した.しかし,Ca散布による影響はみられなかった.
(5) PPOのNative電気泳動による活性染色では,染色バンドに品種による違いはみられたが,栽培条件による差異はみられなかった.これらの結果から,水耕果の褐変度が低い事はPPOの特性ではなく,量的なものに起因する事が示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本食品科学工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top