(1) ニンニク球根の乾燥速度は通風温度が高くなるにつれて指数関数的に増加した.また,球根温度は高温になるほど蒸発潜熱量と貫流熱量が大きくなり,通風温度との差が開いていった.
(2) 鱗茎の褐変は肉眼で通風温度50℃,乾燥時間168hから観察されるようになり,70℃(乾燥時間64h)以上になると濃厚な色調に変化した.ニンニク水抽出液の褐変の程度を波長420nmにおける吸光度で調べたところ,通風温度40℃と通風温度50℃の間で吸光度が急に高くなった.すなわち,ニンニク球根の乾燥には通風温度の上限を40℃とする必要があることが明らかにされた.
(3) ニンニクの水溶性褐色物質量は新鮮物と通風温度40℃で少なく,50℃以上で多くなったが,水で抽出されない物質の存在が示唆された.乾燥された鱗茎に含まれる水溶性のフェノール性物質量は,40℃で最も少なく,50℃で急増して最大値となり,60℃以上でその中間の値まで減少した.酢酸エチル可溶性フェノール性物質および水溶性ポリフェノール含量は50℃以下で多く,60℃以上では減少した.
(4) 酢酸エチル可溶性画分のフェノール性物質の組成を検討し,GCの保持時間と検出温度から,Catechol, Vanillic acid, Syringic acid, Ferulic acid, Pyrogallol.P-Hydroxybenzoic acid及びD(-)-Quinic acidの7種が推定された.その内Catechol以下の4種は40℃において含量が高く,Vanillic acidを除き通風温度が高くなるにつれて減少する傾向が見られた.Pyrogallol以下の3種はいずれも含量が少なかったが,D(-)-Quinic acidは通風温度が高くなるにつれて増加する傾向が見られた.
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