オレオサイエンス
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特集総説論文
コレステロールの腸管吸収機構
池田 郁男加藤 正樹
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キーワード: cholesterol, plant sterols, NPC1L1, ABCG5, ABCG8
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2012 年 12 巻 3 号 p. 107-114

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抄録

コレステロールが小腸上皮細胞へ吸収されるためには小腸内腔で胆汁酸ミセルへの溶解が必須である。胆汁酸ミセルは小腸上皮細胞表面を覆う不撹拌水層を通過し細胞表面の微絨毛に近づくと,コレステロールはミセルを離れ単分子として微絨毛膜から取り込まれる。難吸収性の植物ステロールとの比較から,ミセルへの溶解性とミセルに対する親和性がステロール吸収を決定する要因であることが示唆された。以前は,微絨毛膜へのステロールの取り込みは単純拡散と考えられていたが,最近,NPC1L1による取り込みが主であることが明らかとなった。取り込まれたコレステロールや植物ステロールの一部は,ABCG5/ABCG8 により小腸内腔へ排出されることが示唆されている。ABCG5あるいはABCG8の遺伝的変異はABCG5/ABCG8の機能を障害しステロール吸収を高め,体内に植物ステロールが蓄積すると考えられる。小腸上皮細胞の小胞体に到達したコレステロールはACAT2により80%程度がエステル化されカイロミクロンに取り込まれ,リンパへと放出される。

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© 2012 公益社団法人 日本油化学会
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