オレオサイエンス
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特集総説論文
中性子・放射光X線を相補的に用いた生体膜の構造,タンパク質との相互作用の解析
平井 光博
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2016 年 16 巻 10 号 p. 473-486

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抄録

現在,放射光X線の利用は,生命科学や物質の基礎研究のみならず,創薬設計,新素材開発,様々な産業応用にとって,欠かせない極めて重要な一般的な手法となっている。そのため,欧米はもとより,アジア,オセアニア,南米など世界各地で大型の放射光施設の建設が続いている。一方,中性子の利用に関しては,放射光X線と同様に物質研究にとって有用であるにも関わらず,専用の原子炉や大型加速器を必要とするため,研究施設が限定されている。その点に関して,国内には,大型放射光施設のSPring-8とKEK-PF,研究用原子炉JRR-3Mと世界最大強度のパルス中性子源J-PARC MLFが存在するため,物質研究にとって大変有利な環境にある。また,中性子は,放射光X線が苦手とする水素を多く含有する生体物質やソフトマターの構造とダイナミックスの観測に適しており,両者を併用することで,ユニークな構造情報を得ることが可能である。本小論では,中性子と放射光X 線を相補的に用いた,生体膜の構造と膜とタンパク質との相互作用に関する研究例を中心に解説する。

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© 2016 公益社団法人 日本油化学会
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