2017 年 17 巻 2 号 p. 41-48
生体高分子は,特定の高次構造(Nativeな構造)に折りたたまれ(フォールディング),場合によっては多分子組織化(アッセンブリング)し,多岐な生体機能を発現する。我々は,生体高分子の構造形成を制御することを目的に,イオン電荷を持つ主鎖と親水性の側鎖からなるくし型共重合体を設計した。共重合体は,反対電荷を持つ生体高分子と可溶性の高分子電解質複合体(IPEC)形成を介し,生体高分子間の静電反発を抑制し,その構造形成を促した。たとえば核酸の二重鎖,三重鎖および四重鎖形成速度を共重合体は顕著に高めた。共重合体のこのような効果は,分子ビーコンや核酸酵素などの機能性核酸の活性を高めるのに有用であった。共重合体は,電荷を持つペプチドのフォールディングも促しその機能を向上させた。脂質膜破壊活性を持つE5ペプチドの活性な構造への転移を促し,その膜破壊活性を顕著に高めることがわかった。イオン性くし型共重合体を基盤としたソフトで可溶性のIPEC形成は,生体高分子の活用を広げると期待される。