2018 年 18 巻 10 号 p. 499-505
私たちにとって最も身近な記録方法の一つとして存在する写真。多くの人が家族の写真やアルバムを所有しているだろうが時代を経てその形式も変化してきている。21世紀になってからデジタルカメラが広く普及し,写真は「もの」としてよりも「イメージ(画像)」として捉えられるようになった。現在,写真の撮影といえばデジタル方式が主流となり撮影したものが必ずしもプリントとして残されなくなっている。このような状況の中で,形ある「もの」として存在する写真の文化的,歴史的価値が注目され,評価される時がきている。ところが,写真の価値は写された内容や情報にあることも多く,積極的にデジタル化はされてもオリジナルの写真をどのように保存,管理していくかについては様々な課題がある。写真はその短い歴史にも関わらず,科学や産業の発展と共に常に変化し発展し続けてきたことで多くの技法や種類が存在している。技法によって材料も異なるため,保存修復においてはそれぞれに対応して挑まなければならないという難しさがある。ここでは写真の価値,保存修復を遂行する際に重要な技法の識別,劣化の種類を述ベる。またプリントに対するいくつかの処置方法を紹介する。