オレオサイエンス
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特集総説論文
ラビリンチュラ類Aurantiochytrium sp. T7株によるω3-docosapentaenoic acid(ω3-DPA)の生産
安藤 晃規奥田 知生波多野 文美菊川 寛史松山 恵介小川 順
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2020 年 20 巻 3 号 p. 111-117

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抄録

ω3高度不飽和脂肪酸(ω3-PUFA)は,脳機能の発達促進やアレルギー抑制など多彩な生理機能を有することが知られており,哺乳類では生理活性物質の前駆体ともなることから,医薬品原料や食品添加物としての需要が高まっている。ω3-PUFAのうち,エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA),α-リノレン酸(ALA)は,天然資源に比較的多く存在することから,生理機能解析や商業利用がすでに進められている。一方,ステアリドン酸(SDA)やω3-ドコサペンタエン酸(ω3-DPA),ω3-エイコサテトラエン酸(ω3-ETA)といった天然に希少なω3-PUFAは,他のω3-PUFAと同様に有用な生理機能が期待されているものの,供給が不十分であるために研究が進んでいないのが現状である。例えば,ω3- DPAはタテゴトアザラシなどの抽出油に含まれていることが報告されているが,含有量は総脂肪酸の5%以下であり十分な供給は望めない。

近年,細菌や真菌,植物,微細藻類などによるω3-PUFAの生産に注目が集まっているなか,我々は特に希少ω3-PUFAに着目し,安価で大量かつ安定的に生産できる供給源として期待されているAurantiochytriumSchizochytriumをはじめとするラビリンチュラ類微生物を対象にスクリーニングを行なった。本稿では,希少ω3-PUFAの生産株探索に関して,新たに見出したAurantiochytrium sp. T7株によるω3-DPA 生産に関する研究について紹介する。

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© 2020 公益社団法人 日本油化学会
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